大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

徳島家庭裁判所 平成13年(少)1105号 決定 2002年4月11日

少年 O・K(昭和60.5.27生)

主文

1  少年を中等少年院に送致する。

2  本件戻し収容申請を却下する。

理由

第1戻し収容申請の要旨

少年は、平成12年3月27日当庁において初等少年院送致の決定を受けた後、平成13年3月29日四国地方更生保護委員会において同少年院からの仮退院を許可され(仮退院期間平成17年5月26日)、併せて徳島保護観察所の保護観察に付されて社会福祉法人○○園(園長○○)に帰住したが、平成13年5月6日、上記○○園を出奔し、それ以降、同年6月7日に保護されるまでの間、所在不明となっていたものであり、かかる行為は一般遵守事項(「一定の住居に居住し、正業に従事すること。」「住居を転じ、又は長期の旅行をするときは、あらかじめ、保護観察を行う者の許可を求めること。」)及び特別遵守事項(「家出や無断外泊をしないこと。」)に違反する上、出奔後は不特定多数の男性とラブホテル等に宿泊していたほか風俗店で稼働するなど乱れた生活を続けていたものであり、その行状等に照らすと、保護観察を継続することによって改善更生を図ることは著しく困難な状況にあると認められることから、少年を少年院に戻して収容することが相当である。

第2ぐ犯保護事件について

(非行事実)

少年は、本件戻し収容申請保護事件で審判の結果、平成13年7月6日に試験観察及び補導委託に付する決定を受け、補導委託先の社会福祉法人△△園(施設長△△)において生活していたものであるが、同年9月8日午後10時ころ、同所から逃走して所在不明となり、それ以降、同年11月7日に保護されるまでの間、友人宅やテレホンクラブで知り合った男性の住居を転々とし、生活費等を得るため売春行為を繰り返していたものであり、少年には、保護者の正当な監督に服しない性癖がある上、自己の徳性を害する行為をする性癖があり、このまま放置すると、少年の性格及び環境に照らして、将来、窃盗、売春防止法違反等の罪を犯すおそれがある。

(法令の適用)

少年法3条1項3号イ、ニ

第3処遇決定の理由

1  少年は、未婚の母親の子として出生したが、母親に養育の意思はなく、幼少の頃から養護施設で養育されてきたものであり、中学校入学以降、施設からの無断外出を繰り返した上、テレホンクラブを通じて知り合った不特定多数の男性と売春をして遊興費を稼ぐなどの乱れた生活を続け、その結果、前件ぐ犯保護事件により平成12年3月27日当庁において初等少年院送致の決定を受けたものである。その後仮退院を許可されてからの生活状況は、前記戻し収容申請の要旨のとおりであり、本件戻し収容申請事件について、同年7月6日試験観察決定及び補導委託の決定を受け、さらに、平成13年12月6日には再試験観察決定及び補導委託先を施設から個人方に変更する旨の決定を受けたにもかかわらず、いずれの補導委託先でも安定した生活は長続きせず、結局は補導委託先から無断で出奔して長期間所在不明となり、その間生活費等を得るために再び不特定多数の男性と売春行為を重ねては保護されるという行動を繰り返している。

2  上記のとおり、少年は不遇な家庭環境で育ち、不遇感が根強いことから、大人や社会に対する不信感が強く、周囲の指導に対しても被害感情ばかりを募らせるため、安定した対人関係を築きにくい上、自己の行動に対する内省も深まりづらい。また、少年は身近な親族に愛された経験がないことから、愛情飢餓感が強い反面、自尊感情が乏しいため、自己の要求が通らないと思うと自棄な気分となり逸脱行動に走りやすく、素行不良者との売春行為等刹那的な遊興を重ねることで自己の寂しい気持ちを埋め合わせようとする傾向が強い。このような少年の資質上の問題点は、前件少年院における矯正教育によっても十分な改善はみられず、仮退院後、前記のとおり再三にわたり更生の機会を与えられながら、無断で出奔しては売春行為を繰り返すという従前のパターンから脱却できない状態にあることからすれば、在宅処遇によって少年の改善更生を図ることは著しく困難といわざるを得ない。したがって、少年を再度少年院に収容した上、安定した環境のもとで受容されているという安心感を与えて自尊感情を育てるとともに、規律ある生活態度を身に付けさせて社会適応力の向上を図る必要があると考える。

3  よって、ぐ犯保護事件については少年法24条1項3号、少年審判規則37条1項を適用して少年を中等少年院に送致することとし、戻し収容申請事件については上記の保護処分により、その必要性を欠くに至ったから却下するのが相当であり、主文のとおり決定する。

(裁判官 井出弘隆)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例