徳島池田簡易裁判所 事件番号不詳 判決
主文
被告人等を各懲役六月に処する。
但し被告人等をこの裁判確定の日から弐年間右刑の執行を猶予する。
右執行猶予期間中被告人等を保護観察に付する。
訴訟費用は全部これを被告人等の連帯負担とする。
理由
罪となるべき事実
被告人両名は共謀の上昭和三十一年九月八日三好郡三縄村大字中西吉野川岸において中村順所有の動力用電線約四メートルのもの三本(時価金千二百円相当)を切断して窃取したものである。
証拠の標目(省略)
法令の適用
刑法第二百三十五条第六十条第二十五条第一項第二十五条ノ二第一項前段
訴訟費用の負担につき刑事訴訟法第百八十一条第一項本文第百八十二条
弁護人は、被告人等は不法領得の意思がなかつたのであつて寧ろ器物毀棄罪をもつて論ずべきだから窃盗としては無罪であると主張し、被告人等は本件電線は廃線である旨陳弁するから案ずるに、被害者の中村順の被害届によると本件電線は製紙用水揚設備所のモーターに送電用の同人所有物件であつて偶々本年九月八日台風接近に伴う出水に備え午前十一時頃該電線とその取付けある支柱を取りはずし本柱に巻きつけていたものであること明かであるから、本件電線は中村順がその所有権を抛棄したものでなく、又その占有を離脱したものでもないことを認めることができる。而して被告人等が本件電線を切断して吉野川の流木を繋ぎとめるのに使用したことは同人等の供述するところであるから、その使途がそのとおりならば好意的であると謂うことができるが斯る電線を切断した以上、これは他人の所有物の占有を侵奪して自己のものと同様に処分したものであつて不法領得の意思であつたものと謂うべく、窃盗罪を構成するや勿論であり、従つて器物毀棄罪をもつて目することはできない。よつて弁護人及び被告人等の主張は採用しない。(昭和三一年一一月三〇日徳島池田簡易裁判所)