大判例

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新潟地方裁判所 事件番号不詳 判決

主文

被告人七名を各罰金弐百円に処す。

右罰金を完納すること能わざるときは金弐拾円を壱日に換算した期間当該被告人を労役場に留置す。

訴訟費用は全部被告人等の負担とす。

理由

被告人等はいずれも新潟市関屋所在の各種ワクチン、ヂフテリヤ血清等予防医薬製造を事業目的とする東京芝浦電氣株式会社生物理化学研究所新潟支所に工員として勤務し昭和二十一年五月一日同支所の従業員を以つて組織する。労働組合法に依る労働組合たる東京芝浦電氣株式会社生物理化学研究所従業員組合が結成せられてよりその組合員となつたものであるが、同組合はその所属する東芝労働組合関東聯合会の指定に基き同年九月末頃臨時大会開催の結果その頃馘首反対待遇改善等の要求項目を掲げ全国的に展開せられていた東芝労働争議に呼應してこれに参加することとなり同年十月一日より罷業態勢に入つたところ、同月十一日頃同組合員の中から、当時問題となつていた右新潟支所の工場移転により従業員の大部分が職を失うことを憂えて先ずこの問題を解決すべきであるとし、又罷業による生産低下の結果資材配給を減少せられ惹て同支所の死活に関する虞ありとして組合の罷業に反対を唱うる者七十数名が分裂したので同月十四日遂にこれ等罷業反対派を組合より除名するに至り、その後右罷業反対派は〓々会社の業務に従事し罷業決行派はこれを制止せんとして互に反目抗争を続けて来たところ、

第一、罷業決行派に属する被告人金沢末司は右罷業反対派の操業を不能ならしめるために同年十月二十三日頃及び同年十一月二日の二回にわたり前記会社の意に反して同支所本館西南方約五米の地上に設置してある変圧器(五十キヨワット二個)取付のトランスヒューズ三個の内一個を取外して合計約八日間会社への電氣の供給を遮断してその使用を不能ならしめ以て威力を用いて前記会社の予防医薬製造の業務を妨害し、

第二、同じく罷業決行派に属する被告人〓口鶴作、同上杉四代司、同舟山俊〓、同廣橋亀太郎、同鈴木三郎及び同中山鉄三郎は同年十一月六日午後二時半頃罷業反対派の者約三十名が同支所培地室において硝子器の綿栓、洗滌等の作業に従事していることを知るや前記争議目的達成の為にはこれを制止し且つ作業場外に退去せしめる外はないと考え直ちに他の罷業決行派の者二十数名と共に右培地室に赴き作業中の罷業反対派の者に作業の中止を勧告し室外へ退去を求めたがこれに応じようとしないので共同して矢庭に作業中の罷業反対派の武子鮮太郎、津〓〓吉等を抱き上げて室外に押出し又は押倒す等の暴行を加えて同人等の前記作業の継続を不能ならしめ、以て威力を用いて同人等の右会社業務の執行を妨害し

たものであつて被告人金沢末司の前記第一の所為は犯意継続に係るものである。

(証拠説明省略)

法律に照すと被告人金沢末司の判示所為は電氣事業法第三十三條第一項に該当すると共に刑法第二百三十四條第二百三十三條に該当するのでいずれも所定刑中罰金刑を選択し以上は一個の行為が同時に数個の罪名に触れ且つ犯意継続の上為されたものであるから同法第五十四條第一項前段第十條昭和二十二年十月二十六日法律第百二十四号附則第四項刑法第五十五條に則り重い電氣事業法違反の罪の刑に従い、又その余の被告人六名の判示所為はいずれも暴力行為等処罰に関する法律第一條第一項刑法第二百八條に該当すると共に同法第二百三十四條第二百三十三條に該当するのでいずれも所定刑中罰金刑を選択し、右は一個の行為が同時に数個の罪名に触れる場合であるから同法第五十四條第一項前段第十條に則り重い業務妨害罪の刑に従い以上各所定罰金額の範囲内で被告人等七名を各罰金弐百円に処し右罰金を完納すること能わざるときは同法第十八條に従い金弐拾円を壱日に換算した期間当該被告人を労役場に留置すべく訴訟費用は刑事訴訟法第二百三十七條第一項に依り全部被告人等をして負担せしむべきものとする。

なお被告人等全部並びに弁護人出塚助衞同笠原貞〓同上村〓はいずれも被告人等の本件行為は労働組合の争議権の範囲内に属し正当な行為であるから無罪であると主張するのであるが本件の如く会社の他の従業員が会社の業務に従事中その操業を妨げる目的を以て会社への送電を遮断し又は多数共同して右従業員等に暴行を加えるが如き所為は労働組合法第一條第二項に所謂同法の目的を達成する為に為された正当なものとは認め難く被告人等及弁護人等の右主張は到底これを採用し難い。よつて主文の通り判決する。

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