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新潟地方裁判所 平成12年(行ウ)4号 判決 2002年4月19日

原告

株式会社A

同代表者代表取締役

同訴訟代理人弁護士

宮本裕将

被告

新潟税務署長 矢島義幸

同指定代理人

浅香幹子

畑山茂樹

佐久間光男

藤井烈

角屋順一

鈴木次男

山口徹

関野和宏

主文

1  原告の請求をいずれも棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第1請求

被告がした次の各処分をいずれも取り消す。

1  平成10年2月3日付でした原告の平成6年7月1日から平成7年6月30日までの事業年度以後の法人税に係る青色申告の承認の取消処分

2  平成10年2月4日付でした原告の平成6年7月1日から平成7年6月30日までの事業年度の法人税更正処分のうち所得金額886万6565円、納付すべき税額256万2400円を超える部分及び原告の平成7年7月1日から平成8年6月30日までの事業年度の法人税更正処分のうち所得金額785万3823円、納付すべき税額219万3300円を超える部分並びに両事業年度に係る重加算税の各賦課決定処分(ただし、平成7年7月1日から平成8年6月30日までの事業年度の法人税の更正処分及び重加算税の賦課決定処分については、異議決定により一部取り消された後のもの)

3  平成10年2月4日付でした原告の平成7年7月1日から平成8年6月30日までの課税期間の消費税の更正処分のうち課税標準額1億8861万6000円、納付すべき税額110万4500円を超える部分及び重加算税の賦課決定処分

4  平成10年10月26日付でした原告の平成9年7月1日から平成10年6月30日までの事業年度の法人税の更正処分のうち所得金額1531万4150円、納付すべき税額497万9200円を超える部分及び過少申告加算税の賦課決定処分

第2事案の概要

本件は、ゲームセンターの経営を目的とする株式会社である原告が、帳簿書類に実際より少ない売上を記載し、所得金額を過少に税務申告したとして、被告から、法人税についての青色申告承認を取り消され、法人税の更正処分、重加算税及び過少申告加算税の各賦課決定処分並びに消費税の更正処分及び重加算税の賦課決定処分を受けたのに対し、帳簿書類の記載に隠蔽はなく、売上除外の事実もないとして前記各処分の取消しを求める事案である。

1  前提事実(当事者間に争いのない事実並びに証拠〔甲B1〕及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)

(1)  原告は、ゲームセンターの経営を目的とする同族会社である。

ア 原告、株式会社B(以下「B」という。)及び株式会社C(以下「C」という。)は、乙によりBグループとして一体的に経営されており、Bグループの経理責任者は、原告代表取締役の甲である。

イ Bグループの各店舗は、以下のとおり、パチンコ店が2店舗、コインレストラン形式のゲームセンター等が10店舗である。

(ア) Bの店舗

a コインレストランD 白根店(以下「白根店」という。)

b コインレストランD 柏崎店(以下「柏崎店」という。)

c コインレストランD 上越店(以下「上越店」という。)

d コインレストランD 中条店(以下「中条店」という。)

e E(以下「Eホテル」という。)

f アミューズメントスタジアムF

g パチンコG 小須戸店

h カラオケH

i アミューズメントスポットI 代々木店(以下「I店」という。)

j パーラーJ 古町店

(イ) 原告の店舗

プレイランドK 白根店(以下「K店」という。)

(ウ) Cの店舗

ゲームスポットL(以下「L店」という。)

ウ Bグループの各店舗は、I店が東京都渋谷区代々木に所在しているほかは、すべて新潟県内に所在している。また、Bグループは、グループ内の各店舗を東事業所及び西事業所に二分し、事業所制により運営している。東事業所が管轄している店舗は、白根店、中条店、I店、K店及びL店であり、東事業所5店舗の総責任者は、原告の取締役でBの営業部長でもあり、Cの代表取締役である丙である。

(2)  原告は、平成6年7月1日から平成7年6月30日まで及び平成7年7月1日から平成8年6月30日までの各事業年度(以下、順次「平成7年6月期」及び「平成8年6月期」といい、これらを併せて「本件両事業年度」という。)の法人税については青色の確定申告書に、また、平成7年7月1日から平成8年6月30日までの課税期間(以下「本件課税期間」という。)の消費税については確定申告書に、別紙1の「確定申告」欄のとおり記載し、いずれも法定申告期限までに申告した。

被告は、これに対し、平成10年2月3日付で平成7年6月期以後の法人税に係る青色申告の承認の取消処分(以下「本件処分1」という。)をした後、同月4日付で別紙1の「更正処分等」欄記載のとおり、本件両事業年度の法人税及び本件課税期間の消費税の各更正処分並びに重加算税の各賦課決定処分をした。

原告は、これらの各処分を不服として、平成10年3月31日、異議申立てをしたところ、異議審理庁である被告は、同年7月7日付で別紙1の「異議決定」欄記載のとおり、平成8年6月期の法人税の更正処分及び重加算税の賦課決定処分についてはその一部を取り消し、その他の処分についてはいずれも棄却する旨の異議決定をした(以下、平成7年6月期の法人税についての更正処分のうち所得金額886万6565円、納付すべき税額256万2400円を超える部分を「本件処分2」と、重加算税賦課決定処分を「本件処分3」といい、平成8年6月期の法人税についての更正処分〔異議決定により一部取り消された後のもの〕のうち所得金額785万3823円、納付すべき税額219万3300円を超える部分を「本件処分4」と重加算税賦課決定処分〔異議決定により一部取り消された後のもの〕を「本件処分5」といい、本件課税期間の消費税の更正処分のうち課税標準額1億8861万6000円、納付すべき税額110万4500円を超える部分を「本件処分6」と、重加算税賦課決定処分を「本件処分7」という。)。

原告は、同年8月5日、異議決定を経た後の本件処分1ないし7に不服があるとして国税不服審判所長に審査請求をした。

(3)  その後、原告は、平成9年7月1日から平成10年6月30日までの事業年度(以下「平成10年6月期」という。)の法人税について、青色の確定申告書に別紙1(「確定申告、更正処分等及び異議決定の状況」)の「確定申告」欄のとおり記載して、法定申告期限までに申告した。

被告は、これに対し、同年10月26日付で、別紙1の「更正処分等」欄記載のとおり、平成10年6月期の法人税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をした。

原告は、これら各処分を不服として、同年11月26日、異議申立てをしたところ、異議審理庁である被告は、平成11年1月26日付で異議申立てをいずれも棄却する旨の決定をし、同月27日、決定書謄本を原告に送達した(以下、平成10年6月期の法人税の更正処分のうち所得金額1531万4150円、納付すべき税額497万9200円を超える部分を「本件処分8」と、過少申告加算税賦課決定処分を「本件処分9」という。)。

原告は、平成11年3月1日、異議決定を経た後の本件処分8及び9に不服があるとして、国税不服審判所長に審査請求をした。

(4)  本件処分1ないし7についての審査請求と本件処分8及び9についての審査請求は併合審理され、国税不服審判所長は、平成12年3月6日、原告の審査請求をいずれも棄却する旨の裁決をした。

2  争点

(1)  原告が平成7年6月期及び平成8年6月期の総勘定元帳に真実のものより過少な虚偽の売上金額を記載したか(本件処分1、8及び9の適法性)。

(2)  被告による所得金額の認定が実額課税か推計課税か、推計課税であるとして、推計課税の必要性・合理性が認められるか(本件処分2ないし7の適法性)。

3  争点に関する当事者の主張

(1)  争点(1)(原告が平成7年6月期及び平成8年6月期の総勘定元帳に真実のものより過少な虚偽の売上金額を記載したか)について

ア 被告の主張

原告は、K店の売上げにつき、平成7年6月期に1726万1070円、平成8年6月期に3443万6520円をそれぞれ除外し、総勘定元帳に虚偽の売上金額を記載し、上記金額に基づいて平成7年6月期及び平成8年6月期の法人税の確定申告書をそれぞれ提出した。これらの行為は、青色申告制度の趣旨に反するものであって、法人税法127条1項3号に規定する「その事業年度に係る帳簿書類に取引の全部又は一部を隠ぺいし又は仮装して記載し、その他その記載事項の全体についてその真実性を疑うに足りる相当の理由があること」に該当する。

したがって、同項の規定に基づいて行った本件処分1は適法である。また、原告は、法人税法57条により、平成8年7月1日から平成9年6月30日までの事業年度に生じた欠損金152万8580円を繰り越して平成10年6月期の確定申告をしたが、本件処分1により、上記金額は損金不算入となるため、本件処分8及び9は適法である。

(ア) 原告に対する税務調査

被告は、平成8年12月2日、Bグループ(原告、B及びC)に対する税務調査に着手した(以下「本件調査」という。)。Bの総務部(以下「本社」という。)及びK店等における本件調査の経過は以下のとおりである。

a 平成8年12月2日

(a) 本社

丙が使用する机から把握されたフロッピーディスクには、第13期東事業所年間目標推移(乙A1の1、2、以下「本件資料1」という。)、平成8年度東事業所年間売上実績(乙A2、以下「本件資料2」という。)及び平成7年9月度におけるI店の収支表(乙A3、「以下「I店収支表」という。)が保存されていた。また、被告所部係官は、丙が使用する机から、東事業所店別対前年同月比売上表(乙A4、以下「本件資料3」という。)、平成8年8月分のI店収支計算表(乙A5、以下「I店収支計算表」という。)及び「6/15K」、「6/15I」などと記載された7部のメモ(乙A6、以下「本件売上メモ」という。)を把握した。

被告所部係官は、I店収支計算表(乙A5)に記載されたゲームその他部門のゲーム機の売上げ426万7100円とI店の平成8年8月の公表売上げ(乙A7の19)のゲーム機の合計売上金額186万7100円を照合し、240万円の開差があることを把握した。

また、被告所部係官は、本件資料3(乙A4)に「代々木」及び「K」と記載されている平成7年5月ないし同年7月、同年8月1日ないし同年8月15日、平成8年5月ないし同年7月及び同年8月1日ないし同年8月15日の金額と、同じ時期についてのI店及びK店の公表売上げ(乙A7の5ないし8、同号証の16ないし19、乙A8の6ないし9、同号証の17ないし20)の合計金額を照合したところ、I店においては、別表7の1及び2の区分「B3店舗・I店」欄の差額欄記載のとおりの開差があり、K店においては、別表2の売上除外額欄並びに別表7の1及び2の区分「K店」欄の差額欄記載のとおりの開差があった。

(b) K店

被告所部係官は、K店事務室内の調査をし、丁店長(以下「丁店長」という。)が使用する机から、平成5年5月、平成8年1月ないし同年3月及び平成8年8月ないし同年10月のK店収支計算表(乙A9の1ないし7)、平成8年1月ないし同年8月までのK店粗利益表(乙A10の1ないし5)を把握した。

被告所部係官は、K店収支計算表(乙A9の1ないし7)及びK店粗利益表(乙A10の1ないし5)とK店の公表売上げ(乙A8の1、同号証の13ないし22)を照合したところ、平成5年5月のK店収支計算表(乙A9の1)に記載された売上げ(1310万6850円)が上記同月のK店の公表売上げ(乙A8の1)の合計額(1210万6850円)より100万円多額であり、平成8年1月ないし同年3月及び同年8月ないし同年10月のK店収支計算表(乙A9の2ないし7)に記載されたゲームその他部門のゲーム機の売上金額とK店の上記各月の公表売上げ(乙A8の13ないし15、同号証の20ないし22)のゲーム機の売上金額との開差が別表3のとおりであり、平成8年1月ないし同年8月のK店粗利益表(乙A10の1ないし5)に記載された売上金額とK店の上記各月公表売上げ(乙A8の13ないし20)の合計金額との開差が、別表4のとおりであることを把握した。

また、被告所部係官は、K店内の金庫の中に現金150万円が100円硬貨で50万円ずつ3つの麻袋に入れて保管されていることを把握した(以下、この現金を「本件現金」という。)。

b 平成8年12月3日

被告所部係官は、本社及びK店に臨場し、前日に把握した事実を基に丙及び丁店長に対し、質問調査を行い、上記調査を終了した後、M銀行大野支店において、本件現金に関する調査を行った。

(a) 本社

被告所部係官は、丙と面接し、I店収支表(乙A3)、I店収支計算表(乙A5)及び本件資料3(乙A4)と、公表売上げ(乙A7)との開差について説明を求めたが、丙は、I店収支表、I店収支計算表及び本件資料3に記載されている売上金額は、売上目標の金額である旨の答弁を繰り返すのみであった。

(b) K店

被告所部係官は、丁店長と面接し、本件現金について説明を求めたところ、丁店長は、ゲーム機等の11月後期の売上代金を入金するために、平成8年12月2日の午前8時45分ころにK店を出て、M銀行大野支店に到着し、ゲーム代等の合計金額289万0240円の入金票をそれぞれ記入し、上記入金票を上記銀行に預け、また、同日午後12時30分すぎに上記銀行にゲーム代の売上代金として、100円玉で1万5000枚の本件現金を上記銀行に預けた旨を記載した確認書(乙A11の1)を提出した。

また、K店収支計算表(乙A9)及びK店粗利益表(乙A10)と公表売上げ(乙A8)の開差について説明を求めたところ、丁店長は、K店収支計算表等は、丁店長自身が売上目標や利益を分析する目的で作成した資料で、記載されている数字は、目標数字であり、丁店長自身の分析材料であるため、本社への提出及び報告は一切行っていない旨を答え、同内容を記載した確認書(乙A11の2)を提出した。

(c) M銀行大野支店

被告所部係官は、本件現金についての丁店長の答弁を確認するため、M銀行大野支店に臨場し、調査を行った。被告所部係官は、平成8年12月2日の入金状況を入金伝票により確認したところ、原告名義の普通預金(納税準備預金・貯蓄預金)口座への入金を表す入金票4枚(乙A12の1ないし4)を把握し、これにより同口座に合計金額439万0240円の現金が入金されていることを確認できたが、これら以外の入金は確認できなかった。そして、被告所部係官が、上記入金票4枚の記載内容と丁店長が提出した確認書(乙A11の1)の記載内容を検討したところ、同日において同口座に「ゲーム代」として入金された金額はいずれも237万8300円であると認められたものの、摘要欄に「ゲーム」と記載された入金票(乙A12の3)によれば、同金額のうち100円玉で入金されたのは145万8300円であり(同入金票の「ご持参金額」欄)、上記確認書に記載されているように本件現金(100円玉1万5000枚)がゲーム代として入金されている事実はなかった。

c 平成8年12月11日

被告所部係官は、丙と新潟税務署の会議室において面接し、調査において把握した収支計算表等について質問を行った。丙は、K店及びI店については、実際の売上げとは関係なく、平成7年5月ころから単純に毎月の売上げに200万ないし300万円の売上目標分を加算している旨の答弁を行った。

また、丙は、本件現金は丙と丁店長の個人の現金で、月に300万円の売上目標を立てたため、実感がわくようにそれに見合う現金を置くことにしたのであり、本件現金は、平成8年12月3日の朝には丁店長の車の中に置いていたが、現在は、K店の金庫の中に戻してある旨の答弁を行った。そして、本件現金の調達方法について、丙は、最初に平成7年5月に丙が30万円、丁店長が20万円用意し、その後、平成7年6月から平成8年9月まで、毎月の給料日後に、丙及び丁店長が3万円ずつ出し合ったものであり、ゲーム売上げは100円玉なので、札で置くより現実感を出すために、100円玉で置いていた旨の答弁を行った。

さらに、丙は、丁店長が被告所部係官に対して、本件現金を同年12月2日午後にM銀行大野支店に預け入れた旨の偽りの答弁を行った理由について、丁店長が、同日の調査の際に被告所部係官に対して、本件現金が売上金の残金であると1回説明したため、それとつじつまを合わせるために嘘を言ったのではないかと思うとの答弁を行った。

d 平成9年2月14日

被告所部係官及び関東信越国税局所部係官は、I店の取引銀行であるN銀行代々木支店に臨場し、戊次長兼営業課長及びO支店長と面接し、I店の取引内容の調査を実施したところ、平成6年1月26日に「P」名義で貯蓄預金2口(口座番号○○○及び△△△)(以下「本件預金」という。)が開設され、本件預金が平成9年1月10日に解約されていたことを把握した。そして、本件預金の貯蓄預金印鑑届は、本人記載事項の黒枠内に、住所が新潟県西蒲原郡黒埼町山田(丙様方)、名前がP、性別が女、生年月日が昭和41年11月23日と記載されており、銀行が記載する本人確認欄に、「保」、「H4.2.26交付」、「㈱B」、「新潟県」と記載されていた(乙A13の1、2)。

また、本件預金の入出金の内容については、口座開設後、各月ごとに10万円単位の入金が発生しているが、出金は、平成7年3月16日に、それぞれの口座から1000万円の出金があり、その後、平成8年12月16日、本件預金のうち、口座番号○○○の口座から216万4059円、口座番号△△△の口座から223万3544円が出金され、本件預金の残高が0円になっていることを把握した。

そこで、被告所部係官らは、平成7年3月16日及び平成8年12月16日の本件預金の払戻請求書(乙A14の1ないし4)を基に、N銀行代々木支店において払戻しの手続を担当したQ行員に、本件預金の出金及び解約の状況について質問調査を行ったところ、Q行員は、平成8年12月16日の出金時に来店したのは男性で、本件預金を解約する目的で来店したが、名義人「P」本人の身分証明ではなく、来店者である男性自身の免許証を持参しただけであったことから本件預金を解約することができなかったため、同日は通帳と印鑑で出金のみを行い、その後、上記出金時と同じ男性が平成9年1月10日に来店して本件預金の解約の申込みを行ったこと、その際には、本件預金の残高が0円であったこと、上記男性が「P」名義のキャッシュカードを持参したこと及び解約時の伝票の筆跡と開設した印鑑届の筆跡が一致したことから解約処理を行ったこと、上記男性の免許証を確認し、氏名が「丙」であったこと、上記男性が本件預金の口座開設も自分が行ったと話していたことを記憶している旨の答弁を行った(乙Al5)。

e 平成9年2月27日

被告所部係官は、B本社に臨場し、乙と面接し、売上除外の事実の有無及び本件預金について確認したところ、乙は、「従業員との人間関係を信用している。」と答えるのみであった。

(イ) 原告の売上除外

次のaないしjの事実から、原告が売上除外をしたことは明らかである。

a 本件資料1

本件資料1(乙A1の2)のデータは、丙が使用しているフロッピーディスクに保存されていたものである。本件資料1は、平成7年1月ないし同年11月までの期間の売上実績額に基づき、東事業所5店舗総責任者である丙が店舗別の売上分析を行った表である。

b 本件資料2

本件資料2(乙A2)のデータは、本件資料1と同様に丙が使用しているフロッピーディスクに保存されていたものである。本件資料2は、平成8年1月ないし同年9月までの期間の売上実績額に基づき、総責任者である丙が店舗別の売上分析を行った表である。

c 本件資料3

本件資料3(乙A4)は、丙が作成し、東事業所5店舗の平成7年5月ないし同年8月15日まで及び平成8年5月ないし同年8月15日までの各期間における各店舗ごとの売上金額を前年対比の手法により分析した表であり、同期間における真実の売上金額が記載されているものである。

d I店収支表

I店収支表(乙A3)は、ゲーム機ごとの売上金額、仕入、人件費等の各費用が詳細に記載され、粗利益も記載されていることから、I店の経営状態を詳細に分析した表である。

e I店収支計算表

I店収支計算表(乙A5)も本件資料3と同様に、真実の売上げを基に作成した表である。

f K店収支計算表

K店収支計算表(乙A9の2ないし7)は、K店全体の利益率を算出し、食堂部門の人件費、電気料、ガス代、水道料も案分計算されている表であり、K店の経営状態を詳細に分析した表である。

g K店粗利益表

K店粗利益表(乙A10の1ないし5)は、経営の実態把握、効率化等を図る目的でK店の売上実績を基に粗利益を算出し、同店の経営状態を分析したK店の真実の粗利益表である。

h 本件売上メモ

本件売上メモ(乙A6)は、K店、I店、Eホテル、L店、柏崎店、中条店及び上越店に係る売上メモであり、平成8年6月15日の各店舗のゲーム機の真実の売上金額を記載したものである。

i 本件現金

本件現金は、同日にM銀行に入金された売上代金以外の売上げと考えざるを得ず、平成8年11月末日又は同年12月1日に回収したゲーム機の売上げのうち、公表売上から除外するために別途保管していた現金である。

j 本件預金

本件預金は、丙個人の預金ではなく、売上げを除外して預金されたものである。

イ 原告の主張

原告は、平成7年6月期に売上を除外した事実がないから、本件処分1は違法であり、取り消すべきである。また、本件処分1を前提とする本件処分8及び9も違法であり、取り消すべきである。

(ア) 本件3資料等

本件資料1ないし3(以下、併せて「本件3資料」という。)は、丙が作成したものであるが、法令に基づきB、原告の真実の売上額を記録したものではない。丙の恣意的な意図により作成したにすぎず、記載が真実の売上金額を記載したものと推認する根拠にはなりえない。

丙は、東事業所5店舗の総責任者であり、I店及びK店(以下「担当2店舗」という。)を直接担当していたが、東事業所5店舗の各店舗ごとの売上実績を踏まえ、それぞれの売上目標及び達成状況を示して、白根店、中条店及びL店(以下「担当外3店舗」という。)の各店長に売上げを上げるよう努力してもらうべく強力に指揮・指導しなければならない立場にあり、営業部長として、担当2店舗の売上げを上げるため尽力し、他の従業員の模範とならなければならない立場にあった。丙は、自分に対する信頼感を強調することにより各店長に対する指導力を増大させたいという気持ちがあったし、これだけの売上実績があると信じさせることで、努力次第ではこれだけの収益力を発揮できると他の店舗責任者らに確信させることを意図した。

このため、本件3資料に記載された売上実績額の金額のうち担当2店舗の売上実績額は、実際の売上金額を水増しし、実際より多額の売上げがあったかのように装ったものである。月に1回、東事業所5店舗の店長会議がK店敷地内の建物で行われていたが、その際に、上記のような意図から、一部、売り上げを水増しして作成した本件3資料を閲覧させて、従業員の志気を高め、また丙自身も願望実現法(イメージトレーニング)の応用として活用していた。

(イ) 本件3資料等の作成意図、経過等は以下のとおりである。

a 本件資料1(第13期東事業所年間目標推移)

平成7年1月ころに各店長が、各店舗の売上げの目標を設定し、それを基準として、同年10月末の時点での売上実績を踏まえて達成率を計算したものである。売上予測は、10月までの月平均売上額を11月、12月分の2か月分として、プラスしたものである。ただし、売上高は、上記の理由から、I店については月240万円、Kについては月300万円を水増しした金額を記載していた。

b 本件資料2(平成8年度東事業所年間売上実績)

これは平成8年度のもので、上記のように年初に設定した売上目標を踏まえ、9月までの実績を基礎として、達成率を算定するという趣旨のものであるが、実際は担当2店舗の売上げを水増しした。

c 本件資料3

これは店長に示すための売上実績としての資料作成のための手書きの下書きである。途中で作業をやめたため、白根店の後半部分は書いてない。中途半端な下書であるため、もともと保管しておくものではないが、たまたま処分し忘れていた。書いているときに上記のように一部水増ししたりするため、混乱して、間違って書いた部分がかなりあり、線を引いて書き直している。上記の意図から作成したもので、担当2店舗については実際の売上げとは異なる額を記載している。

d I店収支表

これはI店店長であったR(以下「R」という。)に示すために作成した資料である。同人は、その店の実際の売上を知っているので、説明なしに水増しした数字を店長会議で示した場合、不自然になることもありうるため、実際の売上げに月240万円水増しした金額として、これだけの金額を示すという説明をすること、また実際、この位の売上げを上げてほしいという意味で作成し、示した。また、売上げが240万円増加すれば、支払は約3分1は増加することから、支出の部で80万円追加になるとして記載した。収入の部、支出の部の各項目の記載金額は実際の金額である。

e I店収支計算表

収支計算表は、各店長に店舗の管理や実態把握のため、作成することを勧めていたが、平成8年8月のものとして、店長会議で示すために当時のI店店長であったRに作成してもらったものである。そのため、やはり上記のような理由から、ゲームその他部門の内のゲームの売上げの金額を月240万円ずつ水増しをして記載するよう指示していた。ゲーム機の集金は月2回であるため、月の合計額しか把握されていなかったので、合計額を水増しして資料を作成する方が容易であった。景品ゲーム機の売上げは各機種ごとに、毎日集計して、本社に送信していたので、明細が細かくなっているが、他のゲーム機は月2回の集金であったため、合計の数字を加えることは比較的簡単にできた。

f K店収支計算表

g K店粗利益表

これらはK店の当時の丁店長に指示し、上記と同様の意図から、ゲーム機について水増しした売上げを記載し、それを前提に資料を作成したものである。

h 本件売上メモ(平成8年6月15日の機械集金額のメモ)

これは本来はゲーム機の集金の時に、集金額を記載するものであるが、機械ごとに集金金額を記載するのは、新機種など各機種の売り上げを把握したいものだけである。その他は、集金日に全部の機械から集金した硬貨をすぐ一括してコイン計数機に入れて数えるので、大半の機械については個々の集金額は出していない。

1ないし3枚目のものが、K店のものである。1、2枚目は個々の機種の集金額で、実際の数字である。3枚目の、ゲームの合計の数字は、120万円水増しした金額を記載したものであるが、これは店長会議でその売上げを示すための裏付資料として作成したもので、丙の担当2店舗の売上げ額の信憑性を高めるため、個々のゲーム機ごとの集金額も適当に上乗せして記載しておき、さらにトータルの額を120万円水増しして記載したものである。当時、いわゆる対戦台という機種がブームだったので、そのゲーム機の集金額を特に水増しして、その機械に力を入れてもらいたいと言う趣旨で店長を指導する資料として使っていた。

4枚目から6枚目はI店のものである。これもK店のものと同じように作成したものである。

7枚目以下のものは、他の各店舗のメモで、これらは作為のない数字が記載されている。

本来は、集金の時に、このようなメモに記載し、それに基づいて売上表を作成し、これを本社にファックスしている。上記のメモは、選定された一部のゲーム機の個々の集金額などが記載されているので、保管しておいて店長会議等の説明資料、また機種の選定や事業展開の資料として使うので、丙が全事業所のものを保管していた。したがって、K店については、売上表作成の基になったメモと別に、水増ししたものを保管しており、店長会議等で使用した後は、廃棄していたが、たまたま、本件売上メモだけを捨て忘れた。

i 本件現金

丙と丁店長が自分たちのお金を貯めていたもので、150万円の内、丙が90万円、丁店長が60万円を出していた。当初、2人で50万円出し、それから毎月、丙が3ないし5万円、丁店長が1ないし3万円を追加して貯め、最終的に合計150万円となった。本件調査の際、最初、丙がおらず、丁店長だけが応対した際に、自分たちのお金を置いていたということが会社に知れると、公私混同と誤解されるのではないかと不安になり、「売上げだ。」と言った。そして、売上げと言った以上、銀行に預けなければ矛盾すると思い、銀行に入金した。預けたものの、預けた時期などについての回答に関して、心配になり、口裏合わせのつもりで銀行に要請した。丙は、その事情は不明であるが、最初に事実と違うことを言ったことや、突然の調査のため、動転して、矛盾した対応になった。しかし、実際は、上記のとおり、丙らの資金であったから、150万円は払い戻し、丙と丁店長に返還した。

j 本件預金

丙は、I店店長のRから、普通預金口座を開設するのに妻の名義を借りたいと頼まれ、やむなく同人と一緒に銀行に行き、妻の代理として口座開設の手続をした。なお、当時は、丙は日本に帰化しておらず、韓国籍だったため、夫婦でも氏が違っていた。当初は、普通預金口座の予定であったが、結局、利息の関係で貯蓄預金の口座を開設した。平成8年11月20日ころ、丙が上京するときに、Rに話があるので事前に店で待っているように言っていたにもかかわらず、同人が行方不明になった。そこで、Rのアパートを家主からあけてもらい、調べたところ、本件の通帳があった。そこで、丙は、これを全額払い戻し、保管することにしたが、金庫の在庫金、両替予備金の1000円札が不足しているように思われ、Rが会社の現金を着服しているように疑われたこともあり、解約するつもりで残金をおろした。

Rが丙に妻の名義を借りたいと頼んだ背景事情も不明確だったこともあり、本件調査では、銀行が本来すべきでない配慮をしてくれたことや、Rが他人名義の口座を作ったことがわかると迷惑がかかると思い、「知らない。」と言った。また、丙は、本件調査の際の差別的言動や、被告職員の態度から憤慨し、本件訴訟の証人として証言するまで本件預金については知らないと言って通してきた。

(2)  争点(2)(被告による所得金額の認定が実額課税か推計課税か。推計課税であるとして、推計課税の必要性・合理性が認められるか。)について

ア 被告の主張

(ア) 法人税法131条は、青色申告の場合、課税は帳簿書類の調査に基づく直接的資料に基づくものでなければならないとするが、直接的資料を基礎にして課税漏れ所得を推認することを一切禁止する趣旨ではなく、調査の結果得られた直接的資料から合理的な推認をするという局限された形の推認は、同条の定める推計課税ではなく、実額課税と解される。

被告による原告の所得金額の認定は、本件調査によって把握した本件3資料等の直接的な資料に基づく所得金額の算出であり、実額課税である。

(イ) 被告による原告の売上除外額の算定は次のとおりである(別表1)。

a 平成7年6月期

(a) 平成7年1月ないし同年4月 1256万7360円

本件資料1(乙A1)とK店公表売上げ(乙A8)の比較から、K店における平成7年1月ないし同年11月までの11か月間の売上除外額は.3244万9200円である(別表5の③)。また、本件資料3(乙A4)とK店公表売上げの比較から、同年5月ないし同年7月までの3か月間の売上除外額は731万4470円である(別表2の④)。

したがって、同年1月ないし同年4月、同年8月ないし同年11月の8か月分の売上除外額合計は、3244万9200円から731万4470円を引いた2513万4730円であり、これを8で割ると、上記8か月の1か月当たりの平均除外金額は314万1840円となる。これに4を乗じた1256万7360円が同年1月ないし同年4月までの期間の売上除外額となる。

(b) 平成7年5月及び同年6月 469万3710円

本件資料3(乙A4)とK店公表売上げの比較から、別表2の①及び②のとおりとなる。

b 平成8年6月期

(a) 平成7年7月 262万0760円

本件資料3とK店公表売上げの比較から、別表2の③のとおりとなる。

(b) 平成7年8月ないし同年11月 1256万7360円

前述の314万1840円に4を乗じたもの。

(c) 平成7年12月 287万5600円

本件資料2(乙A2)とK店公表売上げの比較から、K店における平成8年1月ないし同年9月の9か月間の売上除外額合計は、2506万2890円である(別表6の③)。これに、前述の3244万9200円(平成7年1月ないし同年11月の11か月間の売上除外額合計)を加え、20か月で割ると、287万5600円となる。

(d) 平成8年1月ないし同年4月 1138万0080円

本件資料3とK店公表売上げの比較から、平成8年5月ないし同年7月の3か月間のK店における売上除外額は、799万2720円である(別表2の⑧)。前述の2506万2890円からこれを引くと、1707万0170円となる。これは、同年1月ないし4月、同年8月及び9月の6か月分の売上除外金額であるから、これを6で割った284万5020円が1か月当たりの平均金額となり、これに4をかけると1138万0080円となる。

(e) 平成8年5月及び6月 499万2720円

本件資料3とK店公表売上げの比較から、別表2の⑤、⑥のとおりとなる。

(ウ) 以上のとおり、原告には売上除外が認められるから、本件処分2、4及び6は、いずれも適法である。また、原告は、故意に事実を隠ぺい又は仮装しながら、真実の所得の一部だけを作為的に記載した申告書を連年提出し続けていたのであるから、国税通則法68条1項の「基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたとき」に該当することは明らかであるから、本件処分3、5及び7は、いずれも適法である。

イ 原告の主張

(ア) 青色申告の場合は推計課税をすることはできないから(法人税法130条1項)、本件処分1が違法であるとして取り消されれば、推計課税は認められないこととなる。したがって、帳簿に基づかず、特に法令上の根拠のない本件3資料によって恣意的に算定して更正処分をすることは認められない。更に、同条2項は、処分庁の判断の慎重、合理性を担保し、その恣意を抑制するとともに、処分の理由を相手方に知らせて不服申立に便宜を与えるため、更正処分について理由付記を要求している。したがって、更正処分には理由を記載しなければならず、形式的に同項の規定する国税通則法28条2項記載の要件のみを記載すれば足りるというものではなく、更正処分の算定経緯を明記する必要がある。本件処分2ないし9は、十分な合理的な理由を示しておらず、違法である。

(イ) また、仮に本件処分1が適法であるとしても、推計が無条件に認められるものではなく、本件は帳簿書類の備え付けがあるのであるから推計課税の必要性がない。さらに、被告は、本件3資料、K店収支計算表、K店粗利益表、本件売上メモの記載の一部(L店、中条店、白根店についての記載)が原告の公表売上(乙A8)に一致するというだけで他の売上げも全て真実の売上げを記載したものであると断定するが、そのような推論は、信用できないとする原告の公表額を真実性の裏付けとするものであり、公表額と本件3資料等の記載のうち金額が多額である方を真実の売上げであるとする恣意的なものである。

(ウ) したがって、原告が売上除外をしたことを前提とする本件処分2ないし7は、いずれも違法なものとして取り消されるべきである。

第3争点に対する判断

1  争点(1)(原告が平成7年6月期及び平成8年6月期の総勘定元帳に真実のものより過少な虚偽の売上金額を記載したか)について

(1)  証拠(甲A4、乙A1ないし18〔枝番号を含む。以下同じ。〕、証人丙)及び弁論の全趣旨に前提事実を総合すると、次の事実が認められる。

ア Bグループに対する税務調査

被告は、平成8年12月2日、Bグループ(原告、B及びC)に対する本件調査に着手した。本社及びK店等における本件調査の経過は以下のとおりである。

(ア) 平成8年12月2日

a 本社

原告取締役、B営業部長及びC代表者であった丙が使用する机から把握されたフロッピーディスクには、本件資料1(乙A1の1、2)、本件資料2(乙A2)及びI店収支表(乙A3)が保存されていた。また、被告所部係官は、丙が使用する机から、本件資料3(乙A4)、I店収支計算表(乙A5、平成8年8月分)及び本件売上メモ(乙A6)を把握した。

被告所部係官は、I店収支計算表(平成8年8月分、乙A5)に記載された「ゲームその他部門」のゲーム機の売上げ426万7100円とI店の平成8年8月の公表売上げ(乙A7の19)のゲーム機の合計売上金額186万7100円を照合し、240万円の開差があることを把握した。

また、被告所部係官は、本件資料3(乙A4)に「代々木」及び「K」と記載されている平成7年5月ないし同年7月、同年8月1日ないし同年8月15日、平成8年5月ないし同年7月及び同年8月1日ないし同年8月15日の金額と、同じ時期についてのI店及びK店の公表売上げ(乙A7の5ないし8、同号証の16ないし19、乙A8の6ないし9、同号証の17ないし20)の合計金額を照合したところ、I店においては、別表7の1及び2の区分「B3店舗・I店」欄の差額欄記載のとおりの開差があり、K店においては、別表2の売上除外額欄並びに別表7の1及び2の区分「K店」欄の差額欄記載のとおりの開差があった。

b K店

被告所部係官は、K店事務室内の調査をし、丁店長が使用する机から、平成5年5月、平成8年1月ないし同年3月及び平成8年8月ないし同年10月のK店収支計算表(乙A9の1ないし7)、平成8年1月ないし同年8月までのK店粗利益表(乙A10の1ないし5)を把握した。

被告所部係官は、K店収支計算表(乙A9の1ないし7)及びK店粗利益表(乙A10の1ないし5)とK店の公表売上げ(乙A8の1、同号証の13ないし22)を照合したところ、平成5年5月のK店収支計算表(乙A9の1)に記載された売上げ(1310万6850円)が上記同月のK店の公表売上げ(乙A8の1)の合計額(1210万6850円)より100万円多額であり、平成8年1月ないし同年3月及び同年8月ないし同年10月のK店収支計算表(乙A9の2ないし7)に記載されたゲームその他部門のゲーム機の売上金額とK店の上記各月の公表売上げ(乙A8の13ないし15、同号証の20ないし22)のゲーム機の売上金額との開差が別表3のとおりであり、平成8年1月ないし同年8月のK店粗利益表(乙A10の1ないし5)に記載された売上金額とK店の上記各月公表売上げ(乙A8の13ないし20)の合計金額との開差が、別表4のとおりであることを把握した。

また、被告所部係官は、K店内の金庫の中に100円硬貨で50万円ずつ3つの麻袋に入れて保管されている本件現金を把握した。

(イ) 平成8年12月3日

被告所部係官は、本社及びK店に臨場し、前日に把握した事実を基に丙及び丁店長に対し、質問調査を行い、上記調査を終了した後、M銀行大野支店において、本件現金に関する調査を行った。

a 本社

被告所部係官は、丙と面接し、I店収支表(乙A3)、I店収支計算表(乙A5)及び本件資料3(乙A4)と、公表売上げ(乙A7)との開差について説明を求めたところ、丙は、I店収支表、I店収支計算表及び本件資料3に記載されている売上金額は、売上目標の金額である旨の答弁を繰り返した。

b K店

被告所部係官は、丁店長と面接し、本件現金について説明を求めたところ、丁店長は、ゲーム機等の11月後期の売上代金を入金するために、平成8年12月2日の午前8時45分ころにK店を出て、M銀行大野支店に到着し、ゲーム代等の合計金額289万0240円の入金票をそれぞれ記入し、上記入金票を上記銀行に預け、また、同日午後12時30分すぎに上記銀行にゲーム代の売上代金として、100円玉で1万5000枚の本件現金を上記銀行に預けた旨を記載した確認書(乙A11の1)を提出した。

また、被告所部係員が、K店収支計算表(乙A9)及びK店粗利益表(乙A10)と公表売上げ(乙A8)の開差について説明を求めたところ、丁店長は、K店収支計算表等は、丁店長自身が売上目標や利益を分析する目的で作成した資料で、記載されている数字は、目標数字であり、丁店長自身の分析材料であるため、本社への提出及び報告は一切行っていない旨を答え、同内容を記載した確認書(乙A11の2)を提出した。

c M銀行大野支店

被告所部係官は、本件現金についての丁店長の答弁を確認するため、M銀行大野支店に臨場し、調査を行った。被告所部係官は、平成8年12月2日の入金状況を入金伝票により確認したところ、原告名義の普通預金(納税準備預金・貯蓄預金)口座への入金を表す入金票4枚(乙A12の1ないし4)を把握し、これにより同口座に合計金額439万0240円の現金が入金されていることを確認できたが、これら以外の入金は確認できなかった。そして、被告所部係官が、上記入金票4枚の記載内容と丁店長が提出した確認書(乙A11の1)の記載内容を検討したところ、同日、同口座に「ゲーム代」として入金された金額はいずれも237万8300円であったものの、摘要欄に「ゲーム」と記載された入金票(乙A12の3)によれば、同金額のうち、100円玉で入金されたものは145万8300円であり(同入金票の「ご持参金額」欄)、本件現金(100円玉1万5000枚)がゲーム代として入金されていなかった。

(ウ) 平成8年12月11日

被告所部係官は、丙と新潟税務署の会議室において面接し、調査において把握した収支計算表等について質問を行った。丙は、K店及びI店については、実際の売上げとは関係なく、平成7年5月ころから単鈍に毎月の売上げに200万ないし300万円の売上目標分を加算している旨の答弁を行った。

また、丙は、本件現金は丙と丁店長の個人の現金で、月に300万円の売上目標を立てたため、実感がわくようにそれに見合う現金を置くことにしたのであり、本件現金は、平成8年12月3日の朝には丁店長の車の中に置いていたが、現在は、K店の金庫の中に戻してある旨の答弁を行った。そして、本件現金の調達方法について、丙は、最初に平成7年5月に丙が30万円、丁店長が20万円用意し、その後、平成7年6月から平成8年9月まで、毎月の給料日後に、丙及び丁店長が3万円ずつ出し合ったものであり、ゲーム売上げは100円玉なので、札で置くより現実感を出すために、100円玉で置いていた旨の答弁を行った。

さらに、丙は、丁店長が被告所部係官に対して、本件現金を同年12月2日午後にM銀行大野支店に預け入れた旨の偽りの答弁を行った理由について、丁店長が、同日の調査の際に被告所部係官に対して、本件現金が売上金の残金であると1回説明したため、それとつじつまを合わせるために嘘を言ったのではないかと思うとの答弁を行った。

(エ) 平成9年2月14日

被告所部係官及び関東信越国税局所部係官は、I店の取引銀行であるN銀行代々木支店に臨場し、戊次長兼営業課長及びO支店長と面接し、I店の取引内容の調査を実施したところ、平成6年1月26日に「P」名義で本件預金の口座(貯蓄預金2口、口座番号○○○及び△△△)が開設され、本件預金が平成9年1月10日に解約されていたことを把握した。そして、本件預金の貯蓄預金印鑑届は、本人記載事項の黒枠内に、住所が新潟県西蒲原郡黒埼町山田(丙様方)、名前がP、性別が女、生年月日が昭和41年11月23日と記載されており、銀行が記載する本人確認欄に、「保」、「H4.2.26交付」、「㈱B」、「新潟県」と記載されていた(乙A13の1、2)。

また、本件預金の入出金の内容については、口座開設後、各月ごとに10万円単位の入金が発生しているが、出金は、平成7年3月16日に、それぞれの口座から1000万円の出金があり、その後、平成8年12月16日、本件預金のうち、口座番号○○○の口座から216万4059円、口座番号△△△の口座から223万3544円が出金され、本件預金の残高が0円になっていることを把握した。

そこで、被告所部係官らは、平成7年3月16日及び平成8年12月16日の本件預金の払戻請求書(乙A14の1ないし4)を基に、N銀行代々木支店において払戻しの手続を担当したQ行員に、本件預金の出金及び解約の状況について質問調査を行ったところ、Q行員は、平成8年12月16日の出金時に来店したのは男性で、本件預金を解約する目的で来店したが、名義人「P」本人の身分証明ではなく、来店者である男性自身の免許証を持参しただけであったことから本件預金を解約することができなかったため、同日は通帳と印鑑で出金のみを行い、その後、上記出金時と同じ男性が平成9年1月10日に来店して本件預金の解約の申込みを行ったこと、その際には、本件預金の残高が0円であったこと、上記男性が「P」名義のキャッシュカードを持参したこと及び解約時の伝票の筆跡と開設した印鑑届の筆跡が一致したことから解約処理を行ったこと、上記男性の免許証を確認し、氏名が「丙」であったこと、上記男性が本件預金の口座開設も自分が行ったと話していたことを記憶している旨の答弁を行った(乙Al5)

(オ) 平成9年2月27日

被告所部係官は、本社に臨場し、乙と面接し、売上除外の事実の有無及び本件預金について確認したところ、乙は、「従業員との人間関係を信用している。」と答えるのみであった。

イ Bグループにおける売上げの集計

Bグループ東事業所のゲームセンターにおいては、景品を獲得するゲーム機については毎日集金していたが、それ以外のゲーム機(ビデオゲームのゲーム機)については、1か月に2回ゲーム機を開けて集金を行っていた。

各店舗ごとの売上げの集計は、売上表に記載され、全て本社にファックス送信されていた。また、東事業所では、1か月に1回の頻度で、各店舗の店長が集まって店長会議が開催されていた。

ウ 本件における資料等

(ア) 本件資料1

本件資料1(乙A1の2)のデータは、丙が使用しているフロッピーディスクに保存されていたものであり、L店の11月末現在売上高欄に記載されている8989万5300円は、同店の平成7年1月ないし同年11月までの公表売上(乙A16の1ないし11)の合計金額と一致している(別表5の「L店」欄)。

(イ) 本件資料2

本件資料2(乙A2)のデータは、本件資料1と同様に丙が使用しているフロッピーディスクに保存されていたものであり、中条店及び白根店の9月末現在売上高欄に記載されている1億2675万7840円及び1966万1140円を、上記中条店及び白根店の平成8年1月ないし同年9月までの期間の公表売上(乙A17の12ないし20及び乙A18の12ないし20)の合計金額と照合すると、中条店は10円、白根店は100円の不突合があるが、ほぼ一致する(別表6「B3店舗・中条店」欄及び「B3店舗・白根店」欄)。

(ウ) 本件資料3

本件資料3(乙A4)は、丙が作成したものであり、中条店、L店及び白根店の平成7年5月、同年6月、同年7月、平成8年5月、同年6月及び同年7月の各店舗の各欄の金額は、原告の公表売上(乙A17の5ないし7、同号証の16ないし18、乙A16の5ないし7、同号証の12ないし14、乙A18の5ないし7、同号証の16ないし18)の合計金額と一致する。本件資料3の中条店、L店及び白根店の平成7年8月1日ないし同月15日までの期間及び中条店及びL店の平成8年8月1日ないし同月15日までの期間の金額は、上記期間の中条店、L店及び白根店の公表売上(乙A17の8及び19、乙A16の8及び15、乙A18号証の8)の合計金額と一致する(別表7の1及び2の「B3店舗・中条店」欄、「L店」欄、別表7の1の「B3店舗・白根店」欄)。

(エ) I店収支表

I店収支表(乙A3)は、平成7年9月分の収支表であり、収入の部に記載されたゲーム機種ごとの売上金額709万9300円は、平成7年9月のI店の公表売上(乙A7の9)のゲーム機種ごとの合計金額709万9300円と一致するが、I店収支表の収入の部の合計欄に記載された949万9300円と照合すると240万円の開差が認められる。

(オ) I店収支計算表

I店収支計算表(乙A5)は、平成8年8月分の収支計算表であり、売上(収入)欄に記載されたゲームその他部門のビデオゲーム機の売上げ426万7100円を、平成8年8月分のI店の公表売上(乙A7の19)のビデオゲーム機の売上金額の合計額186万7100円と照合すると、240万円の開差が認められる。本件資料3におけるI店の平成8年8月1日ないし同年8月15日の売上げと公表売上との開差が120万円である。

(カ) K店収支計算表

K店収支計算表(乙A9の2ないし7)の各「売上(収入)」欄記載の売上金額について、公表売上金額と一致しないのは、月2回売上金額を回収するビデオゲーム機に係る売上金額のみであり、ゲームその他部門のビデオゲーム機の売上げとK店の公表売上(乙A8の13ないし15及び同号証の20ないし22)のビデオゲーム機の売上金額の合計額を照合すると、平成8年1月分及び同年2月分については各250万円の開差が認められ、平成8年3月分、同年8月分ないし同年10月分については、各300万円の開差が認められる(別表3)。

(キ) K店粗利益表

K店粗利益表(乙A10の1ないし5)に記載された総売上とK店の公表売上(乙A8の13ないし20)の売上金額の合計額を照合すると、平成8年4月分については、264万8050円の開差が認められ、平成8年1月分ないし同年3月分及び平成8年5月分ないし同年8月分については、各300万円の開差が認められる(別表4)。

K店粗利益表は、費用を固定費と変動費とに区分した上、粗利益を算出した詳細な記載形態となっており、ノートに手書きで記載された表であり、同表の書き出しである平成8年1月(乙A10の1)の下部余白に、固定費、変動費及び利益等の説明書きが書き加えられている。

(ク) 本件売上メモ

本件売上メモ(乙A6)の上部には、「6/15K」、「6/15I」、「6/15ホテル」、「6/15L」、「6/15原町」、「6/15中条」及び「6/15上越」と記載されている。

また、本件売上メモには、各店舗ごとに、具体的なビデオゲーム機の機種ごとの回収金額が記載され、上記回収金額を「ビデオ」、「大型」、「メダル」及び「プライズ」に区分して集計し、上記集計を合計した「ゲーム」と題する金額及び「トータル」と題する金額が記載されており、一部現金回収額を訂正して書き直している箇所が存在する。さらに、L店に係る本件売上メモに「ゲーム」と記載されたビデオゲーム機の売上金額120万4500円は、平成8年6月15日までの上記店舗の公表売上(乙A16の13)のビデオゲーム機の売上げと一致しており、本件売上メモの「トータル」と記載された金額285万5200円は、上記店舗の平成8年6月1日ないし同年6月15日までの公表売上の売上金額の小計額に一致する。また、K店、I店及び中条店の本件売上メモに記載されたビデオゲーム機の売上金額と上記各店舗の平成8年6月15日の公表売上(乙A8の18、乙A7の17及び乙A17の17)のビデオゲーム機の売上金額を照合すると、K店について100万円、I店について120万円、中条店について100円の開差がある。

(ケ) 本件現金

丁店長が、平成8年12月2日にM銀行大野支店のA名義の普通預金口座に入金したのは439万0240円だけであり、本件現金は同日に同行には入金されていない。

(コ) 本件預金

丙が本件預金の口座を開設し、預金の払出し手続及び口座解約の手続を行った。丙は、本件調査の着手後の平成8年12月16日に払い戻しを受けて残高を0円とし、平成9年1月10日に本件預金を解約した。

(2)  総勘定元帳における売上金額の記載

以上の認定事実及び前提事実をもとに、原告の総勘定元帳の記載の売上金額が真実のものといえるか検討する。

ア 本件における資料等

(ア) 前記認定の本件3資料、I店収支表、I店収支計算表、K店収支計算表、K店粗利益表及び本件売上メモ(以下、これらを併せて単に「本件書類」という。)における記載内容を検討すると、L店、中条店及び白根店(丙の担当外3店舗)の売上高は、時期を問わず、いずれも公表売上げ(乙A16ないし18)における数値と完全に一致するか、開差があるにしても極めて小さいものであるのに対し、K店及びI店(担当2店舗)についての数値は、I店収支表の収入の部に記載されたゲーム機種ごとの売上金額709万9300円が公表売上げのゲーム機種ごとの合計金額に一致しているのを除いて、別表2ないし7の差額欄等記載のとおりの開差が認められることからすると、担当2店舗については、本件書類か公表売上げのいずれかの数値が真実の数値に加減を加えて作為的に導き出されたものであるということができる。

そして、本件訴訟において提出されている書証のうち、本件書類が、文書の種類としても「第13期東事業所年間目標推移」、「平成8年度東事業所年間売上実績」、「収支表」、「収支計算表」など多様であり、記載事項についても多様であるにもかかわらず、いずれも本件2店舗の売上げについての数値が公表売上げと比較して1店舗の1か月当たり200万円ないし300万円程度多額となっていることからすれば、特段の合理的な理由がない限り、本件書類に記載された数値が真実の売上げを反映したものであり、他方、公表売上げがその数値から作為的に一定額を差し引いて導き出された虚偽の数値であることが強く推認されるというべきである。

(イ) 原告は、公表売上げの数値が真実のものであり、本件書類に記載された数値が意図的に水増ししたものである旨主張し、本件書類の作成意図や作成経緯について縷々主張し、証人丙もそれに沿う供述をする。

しかし、原告の主張や証人丙の供述は、個別の資料についての作成経緯や作成意図について審査請求や本件訴訟において変遷しており、丁店長と丙の本件調査における答弁の間に齟齬があるものが多い。また、原告が本件調査の当初から一貫して述べている本件3資料の作成意図(丙のイメージトレーニング)についても、それ自体で合理的な説明と首肯することは大いに疑問である上、前記のとおり、複数の多様な文書について水増しした数値を記載する根拠としてははなはだ薄弱であるといわざるを得ない。さらに、丙が東事業所の総責任者として各店長に対する指導力を増大させたいとの気持ちがあったとの主張についても、本件資料1及び2についてみると、担当2店舗の目標達成率が担当外3店舗のそれと比較してけして高い数値ではないのであるから、この点についての原告の主張も合理的なものであるとは言い難い。

(ウ) そうすると、本件における公表売上げ(原告の総勘定元帳に記載されているものもこれと同一であると解される。)は、本件書類に記載された真実の売上げから一定額を除外し、所得を隠ぺいする目的で作出された虚偽の数値であると認めることができる。

イ 以上の観点から本件書類の記載内容等を検討すると、以下のとおりの事実が推認される。

(ア) 本件資料1は、平成7年1月ないし同年11月までの期間の売上実績額に基づき、東事業所5店舗総責任者である丙が店舗別の売上分析に用いたものであり、11月末現在売上高欄の金額は、同期間における東事業所5店舗の各店舗ごとの真実の売上金額である。

したがって、本件資料1におけるK店の11月現在売上高欄の合計額2億2006万7880円とK店の平成7年1月ないし同年11月までの期間の公表売上(乙A8の2ないし12)の売上金額の合計額1億8761万8680円との差額である3244万9200円は、平成7年1月ないし同年11月までの期間における原告の売上除外金額である(別表5「K店」欄)。

(イ) 本件資料2は、平成8年1月ないし同年9月までの期間の売上実績額に基づき、総責任者である丙が店舗別の売上分析を行った表であり、9月末現在売上高欄の金額は、同期間における東事業所5店舗の各店舗ごとの真実の売上金額である。

したがって、本件資料2におけるK店の9月末現在売上高欄の合計額1億6790万0800円及びK店の平成8年1月ないし同年9月までの期間の公表売上(乙A8の13ないし21)の売上金額の合計額1億4283万7910円との差額である2506万2890円は、平成8年1月ないし同年9月までの期間の原告の売上除外金額である(別表6の「K店」欄参照)。

(ウ) 本件資料3は、東事業所5店舗の平成7年5月ないし同年8月15日まで及び平成8年5月ないし同年8月15日までの各期間における各店舗ごとの売上金額を前年対比の手法により分析した表であり、同期間における真実の売上金額が記載されているものである。

したがって、K店の平成7年5月、同年6月及び同年7月の本件資料3に記載された金額の合計額5697万6240円とK店の同期間の公表売上(乙A8の6ないし8)の合計金額4966万1770円との差額731万4470円及びK店の平成8年5月、同年6月及び同年7月の本件資料3に記載された金額の合計額5329万3680円とK店の同期間の公表売上(乙A8の17ないし19)の合計金額4530万0960円との差額799万2720円は、原告の売上除外金額である(別表2、別表7の1及び2の「K店」欄)。

(エ) I店収支表は、ゲーム機ごとの売上金額、仕入、人件費等の各費用が詳細に記載され、粗利益も記載されていることから、I店の経営状態を詳細に分析した表であるということができる。

(オ) 前記2つの資料の開差が半月で120万円と一致することからすると、I店収支計算表も本件資料3と同様に、真実の売上げを基に作成した表である。

(カ) K店収支計算表は、K店全体の利益率を算出し、食堂部門の人件費、電気料、ガス代、水道料も案分計算されている表であり、K店の経営状態を詳細に分析した表である。

(キ) K店粗利益表は、K店の売上実績を基に粗利益を算出し、同店の経営状態を分析したK店の真実の粗利益表である。

(ク) 本件売上メモは、平成8年6月15日の各店舗(K店、I店、Eホテル、L店、柏崎店、中条店及び上越店)のゲーム機の真実の売上金額を記載したものであり、「トータル」と記載された金額は、平成8年6月1日ないし同月15日までの売上金額の合計額を示すものである。

(ケ) 本件現金は、平成8年11月末日又は同年12月1日に回収したゲーム機の売上げのうち、公表売上から除外するために別途保管していた現金である。

(コ) 本件預金は、丙個人の預金ではなく、売上げを除外して預金されたものである。

ウ そうすると、原告は、K店につき、平成7年6月期及び平成8年6月期の総勘定元帳に虚偽の売上金額を記載し、上記金額に基づいて平成7年6月期及び平成8年6月期の法人税の確定申告書を提出したということができ、これらの行為は、法人税法127条1項3号に規定する「その事業年度に係る帳簿書類に取引の全部又は一部を隠ぺいし又は仮装して記載し、その他その記載事項の全体についてその真実性を疑うに足りる相当の理由があること」に該当することは明らかというべきである。

したがって、同項の規定に基づいて行った本件処分1は適法であるし、本件処分1の適法性を前提とする本件処分8及び9は適法である。

2  争点(2)(被告による所得金額の認定が実額課税か推計課税か。推計課税であるとして、推計課税の必要性・合理性が認められるか。)について

(1)  被告による原告の所得金額(売上除外額)認定の具体的な手順は、争点(2)に関する被告の主張(イ)に記載のとおりである(別表1)。

被告は、この所得金額の認定は、調査の結果得られた直接的資料から合理的な推認をするという局限された形の推認であるから、法人税法131条の推計課税ではなく、いわゆる実額課税である旨主張する。

しかし、被告による認定方法は、1か月ごとの個別の売上除外額を本件書類から直接認定することができる月の金額を利用して、1か月ごとの個別の売上除外額を本件書類から直接認定できない月の前後の数か月間の平均値を求め、それを当該月の売上除外額とみなすというものである。そうすると、その個別の売上除外額を本件書類から直接認定できない期間についての所得金額の認定は、いわゆる実額課税であるということはできない。

(2)  もっとも、争点(1)についての判断のとおり、本件処分1が適法であるから、被告は、必要性及び合理性がある限り、本件両業年度の法人税につき、推計課税をすることができる。

そして、前述のとおり、本件両事業年度における原告の公表売上げは、真実の売上金額から別表1記載のとおりの除外をしたものであり、帳簿書類の調査によっては除外額を認定できない期間については、推計課税の必要性があるということができる。また、個別の売上除外額が本件書類から判明しない月については、前後の月の平均値から売上除外額を推認するという前述の算定方法は、可能な限り実額に近い認定をする方法として合理性を有する。

(3)  そうすると、被告による原告の本件両事業年度の売上除外額の認定に違法はなく、本件処分2、4及び6はいずれも適法というべきである。

また、前記認定のとおり、原告は、本件両事業年度及び本件課税期間において、故意に所得を隠ぺいし、それに基づいて納税申告書を提出していたのであるから、本件処分3、5及び7はいずれも適法というべきである。

3  結論

以上の次第であるから、原告の本訴請求をいずれも棄却することとし、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 片野悟好 裁判官 飯塚圭一 裁判官 和田健)

別紙1 確定申告、更正処分等及び異議決定の状況

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売上除外金額の算定

file_3.jpgseer iets 11 92,449, 2000818850) 7 1,314,470GR2@) 3.141, 89] HAH 25,134,790 3.141, 84] 84, 7908F| = 473,141,840, death y 11 2,620, 76000829) 200(5)825@) s10m2@) 3.141, 240 295 25,194,120 3.141, 240 94, 75028 A] = 49, 41.840 ait RALLY 200 (8185) sete 500 04m6@) 875, 600] 00 20A = 412,875,600 6A = 8/2, 885 0 FS. 1~F8.9 25,062, 00060) 11,380,089 2,492,720] KARAS Y Fa.5 2,492, 72008)ROG) ooo ERR FRE 2,600, 0069/R2@)

別表2

本件資料3のうちK店の売上除外金額

file_4.jpgRAS Rites DRT LG FE LM et 19, 973, 899] B11, 150] 68, 140] 113, 450[_@ 2, 620, 760] ai 49, 661, 770] @ 7,341, 470 FREESAT 18,369,040] 15,876, 220] 2, 492, FREEGA] 16,562,730] 14,062, 730| © 500, 009| FRE=ETAL 18,361,910 15,361, 9101 @ 3, 000, 000] ai 53,293, 680 45, 300, 960] @ 1992, 724

別表3

K店収支計算表と公表売上金額におけるビデオゲーム機の売上金額の開差

file_5.jpg(aftr A) FAP ROTEL RB [racy KRORRT LM KG se ARSE LAS 8,870, 909] 9, 370, 900] 9] ACR ED AS 5, 599, 109] 8, 099, 109] 004 FAS FAS 6, 177, 809] 9, 17, 800] 04] RSE RAS 6,587, 900] 9,587, 900[ 3, 000, ovo] SE 9 AS 6, 654, 300] 9, 654, 200] 3, 000, 009] 1 08S 6, 097, 709] 9, 097, 700] 3, 000, ovo]

別表4

K店粗利益表と公表売上金額の開差

file_6.jpgRTE Sete KIB RLBLER me PAS EL AS 17, 061, 750] 3, 000, 009] REEL AD 14, 069, 050] 17,089, 050[ 3, 000, a00] #3 AS sof 19,592, 040] 3, 000, 009] 844 ASS 15,062, 000[ 17,700, 050| __2, 648, 050] ERR ES AS 15,876, 320[ 18,876, 920[ 3, 000, PASEO AS 14, 0 17, 062, 730] 3, 000, 000] PASE T AS 15, 361, 18,361, 910] __3, 000, 000] CEERAD 1,7 20,717,650] 3, 000, 009]

別表5

本件資料1と公表売上金額の開差

file_7.jpgciti att 243, 640] 17,320 8,513, 620 48,536, 700 7,917, 500 17,538, 620 g 19,637, 04 7 sad 15,917,010 51,577,740 X 1s, 022s 55,988,020 15, 56,410 60,188 970 7,441,420) 4,748,630 41,021, 169 6,210, 20} 18,773,940 44,636,764 5 ef. nl Tool 17055 0] 55 06H I] 8, 806,90 “Ico, 90, 943 295, Ton, wo] 35, 100,00) 60, 988, 25

別表6

本件資料2と公表売上金額の開差

file_8.jpgtty Fa) 22, 743, 149] CET et | aie 7166, Go] 2.454, 199] 46046. 5,712,010] 2,179,680 41, 62, 070 3,980, 890] 224,130 45,48, 50 4.765, 41o] 1,971,230 1,728,450 z 7,08 +40] 2, 130300 45,446,110 z 6,508,210] 2, 0660s 41, 94,10 & 6,364,790] 2,126,410] 45,447, 60 s 2,485, 00] 52, 298, 00 2,06, 50] 49,41, 850 19,651, 00 499, 409,79 Tot 657,950 RTE CTT 6,30, ERT ERT i 47, 489, 922|

別表7の1

本件資料3と公表売上金額の開差

file_9.jpgKi rE tit = — —{+—_ oR poe a Berea a 113, 450] 2,384, 980)_51, 577, 740] Ed 61, 123, 460) i or & 4,902,580] 8, 617, 632, 600] 1. 706, 980] * 200, 130, 200] er es ail ee * 363, 130 15,203, 310] 8,645,560] 2,278,380) 51,052,880 ; pee leer el igee ibe ba ‘976, 240) 24, 018, 810]_46, 583, 460) 27, 497, 600] # 162, 199, 57 : 2 (22 | Eaaeeal mz conceal) sazen|| caswel ar rallaree # Bones ee eS - — — — q ie ne ee f = oe = — & 7,200, 000] _14, 514, 470] a ia an aa : it cae =a

別表7の2

本件資料3と公表売上金額の開差

file_10.jpg46,281, 290] 13, 030, 850] 6, 066,080 8,125, 126] 2,128, ato] Beebe 5,177,470)

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