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新潟地方裁判所 平成14年(わ)216号 判決 2002年12月12日

主文

被告人Aを懲役4年以上8年以下に,同Bを懲役3年6月以上7年以下に,同Cを懲役3年以上6年以下に,同Dを懲役3年6月以上6年以下にそれぞれ処する。

被告人らに対し,未決勾留日数中各150日をそれぞれその刑に算入する。

理由

(犯行に至る経緯)

被告人Aは,平成13年3月に新潟市立a中学校を卒業し,その後は同市内で鳶職として稼働していたものの,2か月程でやめてしまい,引き続き建築会社及び身内が経営する建設会社等で土木作業員として稼働していたが,平成14年2月ころには勤務先会社を辞めて無為徒食の生活をしていたもの,被告人Bは,平成13年3月に同校を卒業し,同年4月ころ,新潟県立高校に入学したが,授業中に教室の内外を徘徊したり,教師の注意を無視するなどの問題行動が多く,同年5月には校内でたばこを持っていたことで,また,同年7月には同級生を殴るという暴力行為をしたことで,2度にわたり自宅謹慎処分を受け,同年7月下旬ころからは登校せず,飲食店や運送会社等でアルバイトをするなどして同校を退学し,無為徒食の生活をしていたもの,被告人Cは,平成13年3月に前記a中学校を卒業し,被告人Bと同じ新潟県立高校に入学したが,教室の内外を徘徊するなどの問題行動が多く,同年5月には被告人Bが校内でたばこを持っていたことに関与したことで自宅謹慎処分を受け,同年6月ころ,同校を退学し,運送会社や飲食店等でアルバイトをした後,人材派遣会社に実兄の氏名で登録していたものの,稼働せず無為徒食の生活をしていたもの,被告人Dは,同年3月に新潟市立b中学校を卒業し,その後は一時酒店の店員として稼働していたものの,すぐ辞めて土建会社で土木作業員として稼働していたが,自動二輪の運転免許を取得するため平成14年1月ころから勤務先を休職して昼間は自動車教習所に通うかたわら,夜間には被告人Aらと交遊していたものである。このように被告人らは,被告人Dがその出身中学校が違うものの,被告人Aと同C及び同Dは,いずれも前記a中学校に在学していたころから遊び仲間として交遊があり,被告人Bは,前記高校に入学後,被告人Cと親しく交際するうちに被告人A及び同Dとも親しく交際するようになった。

ところで,被告人Aらが卒業したa中学校では,かねてから学校内で授業中に生徒が勝手に出歩くなどして授業にならなかったり,あるいは,万引きなどの問題行動をする生徒が目立つようになり,また,在校生による恐喝や暴行・傷害事件が発生し,さらには卒業生が中心となり,在校生と他の中学校の生徒をも巻き込んだ暴力事件が発生したこともあった。そうした中で,特に素行不良の上級生に当たる先輩の在校生,あるいは,卒業生が後輩の在校生を呼びつけては暴力を加える事件が発生し,とりわけ,いわゆる悪ぶった格好するなどの目立った行動をする後輩の在校生をその先輩らが目を付けて呼び出しては暴力を振るう事件が後を絶たず,そして,この暴力を振るわれた生徒が進級して上級生となると,今度は後輩に対し,同様の行為をするなど暴力を背景とした先輩と後輩の上下関係が形成されていった。そして,平成12年ころからは,そのような上下関係を背景として,先輩が後輩に対し,いわゆる「パーティー券」と称するチケットを買うことを押し付けて,それを売り捌くことなどを命じるということが行われるようになり,押し付けられた側では自らそのチケットを買い取るか,場合によっては,下級生に当たる後輩を脅し付けたりしてまでそのチケットを購入させたりしていた。このような問題に対し,a中学校では,担当教諭をはじめとして,生徒指導主事等関係機関とも連携した上で対応を検討し,被害に遭った在校生達に服装等の乱れなどが認められる場合にはこれを指摘し,上級生から目を付けられないように注意するなどの指導をするほか,問題のある生徒に対しては,保護者も交えて個別の指導を行い,また,他の中学校との連携が必要な場合には学校長を通じて当該中学校の生徒指導担当教諭と連絡を取るなどし,さらに,警察署や児童相談所等とも連絡を取り,その対応策や指導体制を検討していた。しかし,同校では,下校後の生徒達の夜間の行動を把握できないなどの隘路等があり,実効ある生徒指導や対応を取るところまでは行かず,問題を根絶することはできないままでいた。

そして,こうした同校での状況のもとで,被告人Aは,同校1年生当時には,同学年の生徒の中で孤立した存在となっていったが,次第に誰からも軽く見られたくないなどの思いから暴力に依存する傾向を強めて行き,同校2年生当時に前記のように素行不良の上級生達から目を付けられて呼び出されたことなどをきっかけに,そのころからこれらの上級生や,他の中学校の素行不良の生徒と深く付き合うようになり,以後,無断欠席・早退をはじめ,同校内での喫煙,授業放棄や授業妨害,クラブ活動の妨害,窓ガラスを割るなどの問題行動及び教師や下級生などへの暴力行為,恐喝を繰り返すようになり,さらには,先輩である卒業生などから売り捌くように命じられた前記「パーティー券」を後輩に無理矢理売りつけるなどして,その代金をこれらの先輩達に渡すなどしていた。さらに,被告人Aは,平成12年6月ころには授業を抜け出して校内を徘徊し,下級生の教室に立ち入ったことを注意した同校教諭に対し,暴力を振るった非行で,同年暮れには新潟家庭裁判所で保護観察処分に付され,その後一時は生活態度に改善が見受けられたかに見えたが長くは続かなかった。また,被告人Cは,同校に入学してからは,同校に兄が在校していたため,その影響力を背景とするなどして素行不良が目立つ存在となっていたが,同校2年生のころ,被告人Aから一対一の喧嘩(いわゆるタイマン)を申し込まれ,その際同被告人に対し,土下座をして謝ったことなどを契機として,しばらく途絶えていた同被告人との交際が復活し,同校3年生のころからは学校内での徘徊,喫煙などの問題行動を繰り返すようになった。一方,被告人Bは,同校在学当時は,万引きで補導されたことがあるが,学校内で授業妨害や暴力行為等の問題行動を起こしたことはなく,同校3年生当時には被告人Aから蹴られたりしたことから,同被告人とは深い交際はなかったものの,そのころ犯したひったくり窃盗の非行で,平成13年2月に前記家庭裁判所で保護観察処分を受けるに至った。

そして,被告人Aは,平成14年1月10日に,被告人Bは,平成13年9月10日にそれぞれ前記の保護観察処分が解除になったが,被告人らは,平成14年2月から3月にかけて,被告人Aの自宅などに夜間,頻繁に集まっては飲酒をしたり,賭けトランプなどをするなどの不良交遊を続けていた。

(罪となるべき事実)

第1(1)  被告人Aは,平成13年10月下旬ころの午後9時ころ,新潟市c所在のd信用金庫e支店駐車場において,先に同所に呼び出した前記a中学校3年生のE(当時15歳)に対し,以前に前記「パーティー券」を売りつけようとしたところ,同人がこれに応じなかったことを思い出し,その旨因縁を付け,同人の顔面,腹部等を多数回手拳で殴打し,さらに同人を投げ飛ばすなどの暴行を加え,その暴行により同人が畏怖していることに乗じて同人から金員を喝取しようと企て,同所に隣接する同市f所在のg店付近路上において,同人に対し,「このままボコられて2万か,このまま止めて5万円か,どっちがいい。」などと申し向けて金員の交付を要求し,もしこの要求に応じなければ同人の身体にさらにどのような危害を加えるかもしれない気勢を示してその旨同人を畏怖させ,よって,同年11月中旬ころの午後9時ころ,同市h所在のi駐車場において,被告人Bを介して前記Eから現金5万円の交付を受けてこれを喝取した,

(2)  被告人Bは,被告人Aが,前記第1(1)記載の日時場所において,前記Eに対し,同記載の脅迫文言を申し向けて畏怖させた同人から現金5万円を交付させてこれを喝取する際,その情を知りながら,被告人Aの依頼を受け,同記載の日時場所において,前記Eから前記喝取金5万円の交付を受けてこれを被告人Aに手渡し,もって,同人の恐喝の犯行を容易にしてこれを幇助した,

第2被告人Aは,平成14年2月22日,同市j所在のショッピングセンター「k」店舗内において,前記a中学校で同学年であったF(当時16歳)及びその友人のG(当時15歳)に出会ったことを奇貨として,

(1)  前記Gから金員を喝取しようと企て,同日午後7時40分ころ,同人を前記kにある映画館「l」の人気がないロビー付近に連れ込み,同所において,同人に対し,「カネ。」などと凄み,同人に手を差し出すなどして金員の交付を要求し,金員を所持していない旨告げる同人に対し,さらに「1円でも持っていたらボコるからな。」などと申し向けるなどして金員の交付を要求し,もしこの要求に応じなければ同人の身体にどのような危害を加えるかもしれない気勢を示してその旨同人を畏怖させたが,同人が金員を所持していなかったため,その目的を遂げなかった,

(2)  前記渡邊から金員を喝取しようと企て,同日午後8時ころ,前記k西側エレベーター内において,同人の腹部を手拳で1回殴打する暴行を加え,さらに,前記k西側出口付近において,同人に対し,「今ボコられるのと,金用意するのとどっちがいい。」「1週間後に3万円持って来て。」などと申し向けて金員の交付を要求し,この要求に応じなければ同人の身体にさらにどのような危害を加えるかもしれない気勢を示してその旨同人を畏怖させ,よって,同年3月3日午後2時ころ,同市m所在のn店裏路上において,同人から現金3万円の交付を受けてこれを喝取した,

第3(1)  被告人Bは,前記a中学校で同級生だったH(当時16歳)に対し,原動機付自転車を1万円で売却することにしたところ,その後同人が無免許であることを友人から聞き及び,同人が無免許運転をして警察に検挙されたりすれば自分にもその累が及びかねないなどと思い立腹し,その旨,被告人Aにも話したところ,同被告人においても,前記Hが自分の遊び仲間である被告人Bを騙すのは許せないなどと思って立腹し,被告人Dを誘い,被告人A,同B及び同Dは,共謀の上,同年3月30日午後10時ころから同日午後10時30分ころまでの間,同市o所在の同市立p小学校校庭において,同所に呼び出した前記Hに対し,先ず被告人Aにおいて,前記Hの頭髪を後方から引っ張り,その顔面を手拳で数回殴打した後,被告人A及び同Dにおいて,その顔面及び腹部等を多数回殴打及び足蹴にした上,被告人A,同B及び同Dがこもごも前記Hの顔面及び胸部等を多数回殴打し,さらに,同人の顔面及び大腿部等を多数回足蹴にするなどし,もって,数人共同して暴行を加えた,

(2) 被告人Bは,前記Hが前記(1)の暴行により畏怖していることに乗じ,同人から金員を喝取しようと企て,同人を伴い同市寺尾上3丁目1番36号所在の同市立a中学校に移動し,同日午後11時ころ,同校校庭において,同人に対し,「どうしてくれるんだ。いくらだったら払えるんだ。2か月で10万円払え。」などと申し向けて金員の交付を要求し,もしこの要求に応じなければ,同人の身体等にさらにどのような危害を加えるかもしれない気勢を示してその旨同人を畏怖させ,現金10万円を喝取しようとしたが,その後,後記第4の犯行を敢行し警察官に逮捕されたため,その目的を遂げなかった,

第4被告人Aは,同年3月中旬ころ,被告人Bとともに前記a中学校の1学年後輩の生徒らが写っている卒業アルバムを見ていた際,その写真の中のソフトテニス部の集合写真に学生服の上着のボタンを外し,顎を上げ加減にして,斜め上方を見るような姿勢で写っている同校3年生のI(当時15歳)の写真を見付けるや,そのような格好は,不良仲間がするものであるにもかかわらず,不良仲間でないIがそのような格好をするのは生意気であると思って立腹し,さらにその数日後,被告人Cにも前記写真を見せたところ,同被告人も同様に立腹し,被告人A,同B及び同Cは,Iを「ボコる」,つまり,同人に暴行を加えるとの意向を固め,その後,同月下旬ころ,被告人Aが被告人Dに対しても,前記の意向を伝えたところ,同被告人もこれに参加する意思を表明し,その後,Iの友人である前記第1(1)記載のEを通じてIを呼び出し暴行を加えようとしたが,被告人Aらが暴行を加えるつもりであることを関知したIは,その呼び出しに応じなかった。そうこうするうち,被告人Aは,同年4月1日夜,自宅の自室で,被告人B,同D及び同Aから前記第2(2)の恐喝の被害後,被告人Aらの遊び仲間に加わった前記Fらとトランプをするなどして遊んでいた際,被告人DがIに暴行を加える話を切り出したことをきっかけに,そのころ,最終的にIを呼び出し暴行を加えることについて共謀を遂げ,これを受けて被告人Dが前記Eに電話をかけ,Iを前記a中学校に呼び出すよう命じる一方,その後被告人Cにも連絡を取った上,同被告人とも合流し,その道すがら,Iに暴行を加える旨話して被告人Cもこれを了承して犯行に加わることになった。このようにして被告人A,同B,同C,同D及び前記Fは,共謀を遂げた上,同月2日午前零時30分ころから同日午前零時50分ころまでの間,前記第3(2)記載のa中学校校庭において,前記呼出しに応じて同所に来たIに対し,被告人Aが,Iの両腕を持った状態で「はい,頑張って。」などと言ってIの身体を被告人Dらの前に突き出すや,先ず被告人Dが,Iの左顔面を右手拳で殴打し,被告人Dが付近に落ちていた長さ約75センチメートルの木製の標柱でその大腿部を殴打し,続いて被告人CがIの顔面を蹴りつけ,同人の背中にそのかかとを振り落とし,同人が地面に倒れたところを被告人B,同C及び同Dが地面に仰向けに寝かせた上,その両手両足を押さえ付けて身動きできないようにした上で,付近にあった高さ約1メートルほどの演台に上がった被告人Aが,そこからIの腹部付近の上に両足から飛び降り,その場に座り込んだIに対し,被告人A及び同Bがかたわらにあった自動車用古タイヤでそれぞれIを殴り付けるなどした上,被告人Cが,Iの顔面を蹴り付けるなどし,被告人らがこもごも手拳でIの頭部及び顔面等を多数回殴打し,同人の頭部等を多数回足蹴にするなどの暴行を加え,それに止まらず,被告人Aは,同所でIに対する暴行を続けると付近住民に気付かれることなどをおそれて場所を移すことを提案し,これを受け,被告人Bが前記第3(1)記載のp小学校に移動することを言い出したため,Iを連れて同小学校まで移動することとし,さらに,同日午前1時10分ころから同日午前1時30分ころまでの間,同小学校校庭において,Iに対し,先ず被告人Bが,Iの顎から上胸部辺りを力一杯蹴り付け,その後,被告人Cがじゃんけんに勝った者がIの身体を殴打することなどを提案し,その提案に応じて被告人DがIの顔面を手拳で殴打するなどし,さらに被告人Aが地面に倒れたIの身体に馬乗りになって手拳で同人の顔面を数回殴打するなどし,その後も,被告人らにおいて,こもごも手拳でIの頭部及び顔面等を多数回殴打し,その頭部等を多数回足蹴にするなどの暴行を加え,被告人Bが,仰向けに倒れていたIの頭部を足で強く蹴り付ける暴行を加え,よって,前記一連の暴行により同人に急性硬膜下血腫等の傷害を負わせ,同月8日午前零時30分ころ,同市q所在のr病院において,同人を前記傷害に基づく頭蓋内圧亢進症により死亡させた

ものである。

(証拠の標目)

(弁護人の主張に対する判断)

1  被告人C及び同Dの両弁護人は,被告人両名の本件犯行への関与の程度,その犯行後の反省状況,本件犯行に至るまでの生活状況及びその非行歴等に照らすと,その非行化傾向がそれほど進んでいないこと,その父母等による今後の指導監督が期待できること,あるいは共犯者の処分結果との均衡等に照らすと,被告人両名は矯正教育こそが重要であり,刑事処分はその処遇としては不適切で保護処分が選択されるべきであるとして,少年法55条により家庭裁判所に移送すべきである旨主張するので,その点について検討する。

2  なるほど,被告人両名は,年長少年とまではいえず,また,これまでの学習状況等に照らすと,被告人両名ともその年齢相応には社会的に成熟しておらず社会教育の必要性が高いこと,その父母らによる今後の指導監督体制が一応整っていること等の諸事情は認められるものの,被告人両名のこれまでの生活歴から認められる素行不良性と,前記のとおりの本件の罪質及び犯情の悪質さ,とりわけ判示第4の傷害致死の犯行の動機に酌量の余地がなく,犯行態様等が執拗で極めて悪質であること,その犯行による被害結果が極めて重大であり,被害者本人に与えた肉体的精神的苦痛が極めて大きい上,その遺族の被害感情が厳しく,地域社会に与えた影響も大きいこと,それに,少年法20条2項は,少年による重大事件の増加傾向と被害者の被害感情や社会の正義感情の高まりを踏まえて,「故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪の事件」であって,その罪を犯すとき16歳以上の少年に係るものについては検察官に送致する決定(以下,「検送」という。)をしなければならない旨規定し,家庭裁判所において被告人両名についての調査及び鑑別結果等を勘案し,審判の結果,前記少年法の規定に従って被告人両名を検送したものであること等を考慮すると,被告人両名を現段階で保護処分に付することが相当とは解されず,むしろ刑事処分が相当と思料される。

したがって,前記の弁護人の主張はいずれも採用しない。

(法令の適用)

1  被告人Aについて

被告人の判示第1の(1)及び第2の(2)の各所為はいずれも刑法249条1項に,判示第2の(1)の所為は同法250条,249条1項に,判示第3の(1)の所為は暴力行為等処罰に関する法律1条(刑法208条)に,判示第4の所為は刑法60条,205条にそれぞれ該当するが,判示第3の(1)の罪について所定刑中懲役刑を選択し,以上は同法45条前段の併合罪であるから,同法47条本文,10条により最も重い判示第4の罪の刑に同法14条の制限内で法定の加重をした刑期の範囲内で,少年法52条1項により,被告人を懲役4年以上8年以下に処し,刑法21条を適用して未決勾留日数中150日をその刑に算入することとし,訴訟費用は,刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。

2  被告人Bについて

被告人の判示第1の(2)の所為は刑法62条1項,249条1項に,判示第3の(1)の所為は暴力行為等処罰に関する法律1条(刑法208条)に,判示第3の(2)の所為は刑法250条,249条1項に,判示第4の所為は同法60条,205条にそれぞれ該当するが,判示第3の(1)の罪について所定刑中懲役刑を選択し,判示第1の(2)の罪は従犯であるから同法63条,68条3号により法律上の減軽をし,以上は同法45条前段の併合罪であるから,同法47条本文,10条により最も重い判示第4の罪の刑に同法14条の制限内で法定の加重をした刑期の範囲内で,少年法52条1項により,被告人を懲役3年6月以上7年以下に処し,刑法21条を適用して未決勾留日数中150日をその刑に算入することとし,訴訟費用は,刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。

3  被告人Cについて

被告人の判示第4の所為は刑法60条,205条に該当するので,その所定刑期の範囲内で,少年法52条1項により,被告人を懲役3年以上6年以下に処し,刑法21条を適用して未決勾留日数中150日をその刑に算入することとし,訴訟費用は,刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。

4  被告人Dについて

被告人の判示第3の(1)の所為は暴力行為等処罰に関する法律1条(刑法208条)に,判示第4の所為は刑法60条,205条にそれぞれ該当するが,判示第3の(1)の罪について所定刑中懲役刑を選択し,以上は同法45条前段の併合罪であるから,同法47条本文,10条により重い判示第4の罪の刑に同法47条ただし書の制限内で法定の加重をした刑期の範囲内で,少年法52条1項により,被告人を懲役3年6月以上6年以下に処し,刑法21条を適用して未決勾留日数中150日をその刑に算入することとし,訴訟費用は,刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。

(量刑の理由)

本件判示第1の犯行は,被告人Aが,中学校の後輩である被害者に対し,パーティー券を売りつけるべく呼び出した際,同人がこれに応じなかったことなどに因縁を付け,その顔面,腹部等を殴打し,投げ飛ばすなどの暴行を加えた上,その暴行で畏怖した同人から金員を喝取しようと企て,同人を脅迫し,被告人Bをして現金5万円を受け取らせて喝取した被告人Aの恐喝及び被告人Bの恐喝幇助の事案である。

被告人Aは,遊興費欲しさから判示第1の犯行を敢行したものであって,利欲的なその犯行動機には酌量の余地は全くなく,かねてから被告人Aが不良仲間のリーダー格であることを知り逆らえない立場にある後輩の被害者に対し,強烈な暴行を加えた上,脅迫し,金員を喝取したものであり,その犯行態様は,粗暴かつ卑劣で悪質である。その被害者は,前記犯行により現金5万円を喝取されており,同人が当時中学3年生であり,要求された現金を自分のみでは準備できず,友人らから借りてまでこれを用意して被告人Aに交付しており,その被害結果は軽視できず,その被害感情が厳しいのは当然のことである。

被告人Bは,被告人Aが後輩の被害者に対し,強烈な暴行を加えて金員を脅し取ろうとしていることを知りながら,その犯行に協力したものであり,その犯情は芳しくない。

また,本件判示第2の各犯行は,被告人Aが,ショッピングセンターで出会った中学時代の同学年の被害者及びその友人から金員を脅し取ろうとしたものの,その友人が金員を所持していなかったために未遂に終わった恐喝未遂及び自分と同学年の被害者の腹部を手拳で殴打する暴行を加えた上で脅迫し,現金3万円を喝取した恐喝の各事案である。

被告人Aは,遊興費欲しさから判示第2の各犯行を敢行したもので,その動機に酌量の余地はなく,判示第2の(1)の被害者は,金員を所持しておらず,金員を喝取されなかったものの,その恐怖感が大きかったことは想像するに難くなく,また,判示第2(2)の被害者は,単にその態度が気に入らないなどの理由からいきなり暴行を加えられた上,現金を喝取されたものであって,その各犯行態様はいずれも悪質である。そして,判示第2(2)の被害者は,現金3万円を喝取されており,同人が当時高校生であり,判示第1の被害者と同様友人らから借りてまで現金を準備せざるを得なかったことをも考慮すると,その被害結果は軽視できない。しかも,被告人Aは,前記の判示第1及び第2(2)の各犯行で喝取した現金をその犯行後遊興費等に費消していること,中学校在学中から恐喝行為に繰り返してきており,前記各犯行はその一環となるものであることなどを勘案すると,その犯情は相当に悪質である。

さらに,本件判示第3の共同暴行及び恐喝未遂の犯行は,被告人Bと被害者との間の原動機付自転車の売買を巡るトラブルに端を発し,被告人Aが,被告人Bから被害者が無免許であることを被告人Bに告げていなかったことを聞きつけるや,自分の仲間を騙したなどと立腹して被告人Dを誘い,さらには,被告人Bを前記共同暴行の犯行に加わるよう誘い,集団で被害者に暴行を加えたものであり,そのような動機や経緯は,被害者の心情を全く顧みない極めて短絡的かつ暴力的な発想であり,酌量の余地はない。被告人Aらは,無抵抗の被害者に対し,集団で約30分間にわたり,一方的に多数回手拳でその顔面等を殴打し,足蹴にする暴行を加えたものであり,その犯行態様は,粗暴かつ執拗なものであり,非常に悪質である。そして,被告人Bは,被告人Aらと共同して暴行を加え,その被害者が暴行を受けて畏怖していることに乗じて同人から金員を喝取しようとしており,利欲的かつ自己中心的なその動機や経緯に酌量の余地は全くなく,自分のためには仲間の犯行さえ利用しようとするなど,その犯行態様は狡猾で悪質である。被害者には,このような被害を受ける落ち度はなく,夜間,いきなり呼び出された上,被告人A,同B及び同Dから集団で暴行され,その上,被告人Bからは金員まで要求されたのであり,金員の喝取自体は未遂に終わったものの,長時間にわたる暴行により味わったその身体的な苦痛及び恐怖感が極めて大きく,その被害結果は重大であり,被害弁償をしているとはいえ,その被害感情が厳しいことが認められる。

さらに,本件判示第4の犯行は,被告人4名が共犯者の少年とともに,出身中学校の後輩に当たる被害者を深夜,中学校の校庭に呼び出し,同所において,こもごも同人の頭部及び顔面等を多数回殴打あるいは足蹴にするなどの強烈な暴行を加え,その後,近くの小学校校庭に場所を移動し,同所において,前同様の暴行を加え続けて,同人に急性硬膜下血腫等の傷害を負わせた上,同人を頭蓋内圧亢進症により死亡させたという傷害致死の事案である。

被告人Aは,その出身中学校の卒業アルバムの写真に写った被害者の態度が生意気であるなどと思って立腹し,「ボコる」と称して,同人に対し,一方的に集団で暴行を加えることを被告人B及び同Cに提案し,同被告人らもこれに同調し,その後,さらに被告人Dにも声をかけ,判示第4の犯行を敢行したもので,その動機や経緯は,被告人らの集団でしか通用しない価値観等をもとにしてその被害者に対し,私的な制裁を加えたと言っても過言ではなく,一方的に暴行を加えられる被害者の心情や痛みなどを全く考えない余りにも常軌を逸したものであり,自己中心的かつ身勝手極まりないというほかなく,酌量の余地は全くない。そして,被告人らは,その友人を通じて何回も被害者を呼び出そうとした上,ついに,深夜,同中学校の校庭に被害者を呼び出すことに成功すると,同人をその校庭内の人目の付かない場所に連れ込んだ上,全く無抵抗の同人を集団で取り囲み,一方的にその顔面や腹部等を殴打し,あるいは,その顔面や頭部等を足蹴にするという極めて強烈で危険性の高い暴行を加え,その痛みと苦しみの余り,暴行を止めて欲しいと涙ながらに懇願する被害者の悲痛な叫びを無視し,約40分間もの長時間にわたり,強烈な暴行を加え,なおもその犯行が人目に付き発覚することをおそれて,犯行現場を移動し,その犯行現場でも人目に付かない場所を慎重に選んだ上で執拗に暴行を加えることを反覆しており,さらに,被害者の身体が震えるなどの異変に気付きながらも敢えて暴行を継続し,それどころか,第2の犯行現場では,ゲーム感覚で被害者に暴行を加え,その被害者をあたかも玩具のように扱い,同人を暴行すること自体を楽しんでいた一面も窺われ,その犯行態様及びその程度は,常軌を逸した極めて執拗で無慈悲極まりなく,極めて悪質というべきである。

その被害者は,その卒業アルバムの写真では一見目立つ態度で写ってはいるものの,そのこと自体,他人から因縁を付けられるようなものではなく,ましてや本件の如き被害を受けなければならないような落ち度はなく,当時進学予定の高校の入学式を目前に控え,それを楽しみにしていた被害者が,被告人らによる理不尽かつ極めて執拗な暴行を長時間受けた挙げ句に急性硬膜下血腫というまさに瀕死の重傷を負い,その後緊急手術を施された甲斐もなく,脳死状態に陥り,その約6日後に死亡するに至ったものであり,その犯行で発生した結果は極めて重大である。被害者の被った肉体的及び精神的苦痛が極めて大きかったことは勿論,僅か15歳にしてその将来性豊かな生命を無惨にも絶たれたことによる悔しさと無念さは察するに余りあり,その被害者の遺族らが極めて激しい被害感情を露わにし,その処罰感情が非常に厳しいことも誠に当然のことというべきである。そして,被告人らは,原動機付自転車に乗車してその第2の犯行現場に来た被害者に同行したその友人の母親から,そのライトで照らされたことをきっかけに被害者に対する暴行を止めているが,その後も倒れている被害者があたかも酔いつぶれているかのような言動をしてその場を取り繕うとしたり,倒れている同人を人目に付かない場所に隠そうとして,同人の身体を持ち上げて移動し,その後,瀕死の状態で地面に倒れている同人をその場に放置したまま逃走したばかりか,その犯行後には,その犯行現場に居合わせた前記被害者に同行していた後輩にその責任を押し付けるよう画策し,また,警察の事情聴取に備えて口裏合わせをし,さらには新潟県外への逃亡することまでも相談し,被告人Dにおいては自己の友人にアリバイ工作を依頼するなどしていて,自分達の犯行の重大さを全く認識していない行動に及んでいること,被告人らが本件各犯行に至った原因の一端は,真面目に稼働せず,深夜まで友人らと遊びに興じるなど不規則な生活を送り,他人の迷惑を顧みず,その感情や欲望の赴くままに身勝手な行動を繰り返していたことにあり,判示第4の犯行は,起こるべくして起こったという側面も否定できないこと,さらに,同犯行は,中学校を卒業後僅か1年余りしか経過していないいずれも16歳の少年である被告人らが,集団で中学校を卒業したばかりの15歳の少年である被害者に強烈な暴行を加えて死亡させた事件として,さらにはその犯行は,中学校の教育現場における荒れた状況,あるいは,問題のある生徒に対する指導が必ずしも功を奏さず,放置されていたことなどを背景に敢行されたものであることが露呈し,中学校における生徒指導の問題点やその難しさが指摘され,広く報道されるなどして社会に与えた衝撃及びその影響等が大きいことなどを考慮すると,被告人らの刑事責任は重大である。

そこで,以上の一般的な情状を前提として,以下,個別に検討する。

まず,被告人Aは,判示の各犯行について,主体的かつ,積極的に関与しており,とりわけ,本件の中心となる判示第4の犯行では,被害者への暴行を提案してその発端を作った張本人であり,加えて,その第1の犯行現場の中学校では,他の被告人らの前に被害者の身体を突き出して暴行を開始する契機を作り,自らも高さが約1メートルの演台の上から他の共犯者らによって手足を押さえ付けられている被害者の腹部辺りの上に両足から飛び降り,あるいは付近にあった自動車用古タイヤで同人を殴打し,また,人目に付くことをおそれて犯行場所を変えることを提案し,その後も,校庭脇の池の水中に同人をわざわざ突き落とすなどしており,さらに,その第2の犯行現場である小学校に赴く途中にも,他の被告人らに被害者への暴行を継続するかどうかを確認するなどしてその続行を決定し,その第2の犯行現場である小学校では,他の被告人らに暴行を受けて倒れた被害者を無理矢理立たせて暴行を加え,さらに同人に馬乗りになり,その顔面を手拳で何度も殴打するなどの暴行を加えるなど,被告人B及び同Cをはじめとするいわゆる不良グループの中心的存在としてその犯行を主導し,自らも積極的に,被害者に対し,強烈な暴行を加えていること,翻って被告人Aは,その中学校在学当時から授業やクラブ活動への妨害,同級生や下級生に対する暴行や恐喝を繰り返すなど問題行動を繰り返し,その生活状態が乱れていた上,いわゆる不良グループの中心的存在として行動し,平成12年12月,中学校教諭に対する傷害事件を起こして保護観察処分を受けたにもかかわらず,その後も生活態度の乱れを根本的に改善することなく,本件各犯行に及んでおり,本件各犯行には,このような日頃からの生活や交遊関係の乱れと短絡的で粗暴な性格・行動傾向に起因するところが大きく,再犯のおそれが大きいことなどを考慮すると,被告人Aの果たした役割とその刑事責任は他の被告人らと比較すると重いものがあると言わざるを得ない。

次に,被告人Bは,判示第1,第3及び第4の各犯行に積極的に関与しており,とりわけ,本件判示第3の各犯行では,そのきっかけを作り,その被害者から金員を喝取しようとし,また,判示第4の犯行でも,被告人Aが被害者に対し暴行を加えることを提案したのに対し,積極的に賛成してその犯行に加わり,被告人Aが前記中学校で演台から被害者目掛けて飛び降りる際には被害者の手足を押さえ付けて動けないようにし,前記小学校に移動する際にも被告人Aから被害者への暴行を継続するか否かを問われたのに対しこれに賛成し,さらにその際,付近にあった自動車用古タイヤを被害者に投げつけ,また,人目に付くことなどをおそれた被告人Aの前記提案を受けて,前記小学校に移動することを言い出し,前記小学校に移動後も,他の被告人らの暴行に先立ち,先ず被害者の上半身を蹴り付ける暴行を加えて暴行開始のきっかけを作り出し,最後には暴行を受けて倒れた同人の頭部をまるでサッカーボールを蹴るかのように力を込めてその足の甲で蹴り付けるなどの暴行を積極的に加えていること,また,平成13年2月,窃盗罪により保護観察処分を受けたことがあるにもかかわらず,なおその生活態度を改めることなく過ごし,日頃から被告人Aらと行動をともにし,また,判示第4の犯行の数日前には原動機付自転車を窃取した件で警察官の取調べを受けて注意されていたにもかかわらず,その後にその犯行に及んでいることなどを併せ考慮すると,被告人Aに次いでその刑事責任は重大である。

さらに,被告人Cは,判示第4の犯行では,被告人Aが被害者に対し暴行を加えることを提案したのに対し積極的に賛成してその犯行に加わり,前記のように被告人Aが演台の上から被害者目掛けて飛び降りる際にはその手足を押さえ付けて動けないようにし,前記小学校に移動する際にも被告人Aから被害者への暴行を継続するかを問われるやこれに賛成し,このほかにも,前記中学校において,被告人Aから突き出された被害者の背中にその利き足のかかとを振り落として蹴り付け,その後,うつぶせになった同人の背中目掛けて数回にわたり同様の攻撃を繰り返し,あるいは,その顔面を蹴り付けるなどの危険な暴行を加えたほか,前記小学校でも前記と同様の暴行を加えたばかりか,被告人Dとじゃんけんをして勝った方が被害者の顔面を殴るなどまるでゲーム感覚で遊んでいるかのように様々な暴行を加えており,その犯行に積極的に関与していること,また,中学校在学当時から下級生に対して一方的に暴力行為に及ぶなどし,その日常生活において逸脱した行動を繰り返してきたにもかかわらず,これまで十分に反省することなく,被告人Aらと行動をともにし,乱れた交遊生活を送るなどの逸脱行動を繰り返した挙げ句,判示第4の犯行に及んでいることなどを併せ考慮すると,その加担の程度等に応じその刑事責任は厳しく問われなければならない。

最後に,被告人Dは,被告人Aに誘われたためとはいえ判示第3及び第4の各犯行に積極的に関与し,犯行直前に前記第4の被害者に暴行を加える話を切り出してその犯行のきっかけを作り出し,前記中学校では,被告人Aから突き出された被害者にまず最初にその左顔面を手拳で殴打する一撃を加えて口火を切り,その後も木製の標柱で同人の大腿部を殴打するなどの暴行を積極的に加えた上,前記のように被告人Aが演台から被害者目掛けて飛び降りる際にその手足を押さえ付けて動けないようにし,前記小学校に移動した後も前記のように被告人Cとゲーム感覚で被害者に対し暴行を加え,被告人Aが倒れた被害者を無理矢理立たせて暴行を加えた際にも自らこれに参加し,積極的に暴行を加えるなどしていること,中学校在学当時からその学校生活,あるいは交遊関係において乱れた逸脱行動を繰り返し,判示第3(1)の犯行の前日には原動機付自転車への定員外乗車の件で警察官の取調べを受けているにもかかわらず,十分に反省することなく,前記の各犯行に及んだことなどを併せ考慮すると,再犯の危険性が否定できず,その刑事責任はその加担の程度等に応じ厳しく問われなければならない。

以上の犯情に加え,被告人らの犯行は,被告人らがいずれも社会的に相当未成熟であることが根底にあり敢行されたことが窺えること,被告人らは,いずれも事実を認めて反省していること,被告人らが可塑性に富む少年であり,これまで前科もなく,本件で公判請求されたことをきっかけに事案の重大性を自覚し,今後の更生を誓い,その保護者が今後の指導監督と更生に協力することを表明していること,被告人A,同B及び同Dの保護者が,判示第3の被害者に対し,見舞金を持参して謝罪に出向いていること,被告人らの保護者が,判示第4の被害者の遺族に対し,その治療費191万8660円を共同して支払い,被害者方に謝罪に出向くなどし,その後もその遺族に対し,その損害賠償金の一部について支払いを準備するなどして被害弁償と慰謝の努力をしていること,共犯者間の刑の均衡など一切の情状を勘案して,被告人らに対しては,それぞれ主文の刑を科するのを相当と認めた。

よって,主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 榊五十雄 裁判官 金子大作 裁判官 入江克明)

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