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新潟地方裁判所 平成18年(む)18号 決定 2006年2月09日

主文

1  検察官に対し,本件申立てにかかる各証拠のうち,別紙記載のNo.1の証拠について,A,B,C及びDにかかる各不採用通知書を開示し,その余の部分について弁護人に閲覧する機会を与えることを命ずる。

2  検察官に対し,本件申立てにかかる各証拠のうち,別紙記載のNo.2の証拠について開示を命ずる。

3  本件申立てにかかる各証拠のうち,別紙記載のNo.27,28,38の各証拠について,開示命令の請求をいずれも棄却する。

理由

1  弁護人が申し立てた裁定にかかる各証拠及びその理由は,弁護人作成の「裁定申立書」のとおりである。

そこで,一件書類及び別紙記載の提示命令にかかるNo.1,2の各証拠を前提に検討する。

2  まず,本件申立てにかかる各証拠のうち,別紙記載のNo.2の証拠については,刑事訴訟法316条の15第1項1号に該当し,各生徒の採用,不採用の最終的な結果を記載したものであって,就職指導業務の内容,各生徒の就職状況についてのEを含む学校側の認識について客観的かつ端的に推認せしむる証拠であるから,検察官請求証拠であるEの供述調書(甲4ないし6)の証明力を判断する上で重要な証拠であり,これを開示することが被告人の防御にとって必要であると認められる。そして,開示によって生じるおそれのある弊害について,検察官においては,平成18年1月27日付け「類型証拠開示請求に対する意見」中でプライバシー保護,少年保護の観点といった理由を抽象的に述べるにすぎないものであるが,上記No.2の証拠の体裁及び内容,被告人がF高校の進路指導アドバイザーとして勤務していたという事情を考え併せると,開示に伴う弊害が開示の必要性を上回るようなものであるとは認められない。

したがって,上記No.2の証拠について開示を命ずるのが相当である。

3  次に,本件申立てにかかる各証拠のうち,別紙記載のNo.1の証拠については,刑事訴訟法316条の15第1項1号に該当するところ,上記No.1の証拠のうち,A,B,C及びDにかかる各不採用通知書については,検察官請求証拠であるEの供述調書(甲4ないし6)の裏付けとなる客観的証拠であって,同供述調書の証明力を判断する上で重要な証拠であり,これを開示することが被告人の防御のために必要であると認められ,検察官においても,平成18年2月6日付け「証拠開示請求に対する意見書(追加)」中で開示する意思を明らかにしている。

他方,上記No.1の証拠のうち,上記Aらにかかる各不採用通知書以外の部分については,本件とは直接関係のない生徒に対する採用通知書や不採用通知書など上記Aらにかかる各不採用通知書とは性質の異なるものも含まれており,採否の結果を示すだけに止まらず,不採用についての具体的な理由が記載されているものなども存するので,これら全部について無条件の開示を許せば,本件とは全く無関係の生徒等の名誉,プライバシーの侵害といった弊害が生じるおそれが容易に想定される。反面,弁護人がEの供述調書(甲4ないし6)の証明力を吟味するためには,同証拠全体を弁護人に閲覧させ,その管理,保管状況等を検討,確認する機会を与える必要性が存することは,本件証拠物が全体としてEの業務遂行状況に関連する重要性を有することからして否定できないと考えられる。そこで,検察官は,開示の弊害が極めて大きいなどと概括的,抽象的な意見を述べているにすぎず,開示方法の指定によっても弊害の発生を防止できない旨の具体的意見を述べていない事情も勘案し,上記弊害を考慮し,当該部分の開示の方法を弁護人に対し閲覧の機会を与えることに限定することによって防止することを必要かつ妥当と認める。

以上によれば,上記No.1の証拠のうち,A,B,C及びDにかかる各不採用通知書の開示を命じ,その余の部分については弁護人に閲覧する機会を与えることを命ずるのが相当である。

4  さらに,その余の本件申立てにかかる別紙記載のNo.27,28,38の各証拠についてはいずれも存在しないものと認められることから,弁護人の請求をいずれも棄却すべきものと判断される。

5  したがって,主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 大谷吉史 裁判官 三村三緒 裁判官 佐藤哲郎)

別紙

No.

1

生徒の採用通知書及び不採用通知書が綴じてあるファイル(新潟地方検察庁平成17年領第793号符第82号)

2

生徒の就職応募台帳(生徒の就職応募状況,採否の結果等を記載した台帳)(新潟地方検察庁平成17年領第793号符第57号)

27

Gの作成にかかるすべての告訴状,被害届ないし被害申告書等並びにそれらの添付書類

28

G以外の者(同人の代理人を含む)の作成にかかるすべての告訴状ないし被害申告書並びにその添付書類

38

H以外の者が同人の供述内容を記録したすべての捜査報告書その他の供述書

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