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新潟地方裁判所 平成5年(わ)306号 判決 1994年2月07日

本店の所在地

新潟県西蒲原郡黒埼町大字善久一〇六八番地一

株式会社

国土

右代表者代表取締役

屋茂

本籍及び住居

新潟県西蒲原郡黒埼町小平方一七一五番地

会社員

野﨑太策

昭和一七年三月七日生

本籍及び住居

新潟県西蒲原郡黒埼町大字鳥原二五六四番地八

会社役員

屋茂

昭和二三年四月一二日生

右の者らに対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官中井國緒出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人株式会社国土を罰金二二〇〇万円に、被告人野﨑太策を懲役一年六月に、被告人屋茂を懲役一年に処する。

被告人野﨑太策及び被告人屋茂の両名に対し、この裁判の確定した日から三年間それぞれその刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人株式会社国土(以下「被告会社」という。)は、新潟県西蒲原郡黒埼町大字善久一〇六八番地一に本店を置き、橋梁仮設工事等を中心とする土木事業及び運送業を営む会社であり、被告人野﨑太策は、被告会社の実質的経営者あるいは代表取締役として、その経営・業務全般を統括していた者、被告人屋茂は、被告会社の代表取締役として、その経営・業務全般を統括していた者であるが、被告人野﨑太策及び被告人屋茂の両名は、共謀の上、被告会社の業務に関し、その法人税を免れようと企て、架空、水増し外注費を計上したり、雑収入を除外するなどの不正な方法により所得を秘匿した上、

第一  平成二年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が二億〇三五一万四六六三円(別紙(1)修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、同三年二月二八日、新潟県西蒲原郡巻町大字巻甲四二六五番地所在の所轄巻税務署において、同税務署長に対し、所得金額が二三八一万〇三四六円であり、これに対する法人税額が七二八万六〇〇〇円である旨を記載した内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定の納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額八〇四六万二六〇〇円と右申告額との差額七三一七万六六〇〇円(別紙(3)脱税額計算書参照)を免れ、

第二  同三年一月一日から同年十二月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が一億四二三〇万五八一四円(別紙(2)修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、同四年三月二日、前記巻税務署において、同税務署長に対し、所得金額が三三二三万四六一六円であり、これに対する法人税額が一二八三万六七〇〇円である旨を記載した内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定の納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額五三七三万八三〇〇円と右申告額との差額四〇九〇万一六〇〇円(別紙(4)脱税額計算書参照)を免れ

たものである

(証拠の標目)

判示全事実につき

一  被告人野﨑太策及び被告人屋茂の当公判廷における各供述

一  被告人野﨑太策の検察官に対する各供述調書(三通)及び大蔵事務官に対する質問てん末書

一  被告人屋茂の検察官に対する各供述調書(九通)及び大蔵事務官に対する質問てん末書

一  佐々木照子(三通)、笠原健一、北村幸雄、高井一男、山田浩樹及び久代武夫の検察官に対する各供述調書

一  石附三木夫、白井悦郎(平成四年六月二四日付)、輪達光春、近藤裕行及び田中正幸の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一  大蔵事務官作成の売上高調査書、雑給調査書、福利厚生費調査書、外注加工費調査書、交際費調査書、期末仕掛品棚卸高調査書、広告宣伝費調査書、受取利息調査書、雑収入調査書、損金算入利子割額調査書、交際費損金不算入額調査書、貸倒引当金繰入超過額調査書及び事業税認定損調査書

一  登記簿謄本(平成五年九月七日に閉鎖した役員欄の用紙に関するもの)

判示第一の事実につき

一  田島吉一郎の検察官に対する供述調書及び大蔵事務官に対する質問てん末書

一  植木義一、青木道雄及び竹内宏の検察官に対する各供述調書

一  小林伸二、丸山治三郎、佐藤明正、関屋園壹こと崔園壹及び白井悦郎(平成四年一〇月一三日付け)の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一  大蔵事務官作成のその他所得調査書

一  押収してある平成二年一二月期確定申告書等一綴及び平成二年一二月期修正申告書一綴(平成五年押第四八号の1、2)

判示第二の事実につき

一  尾竹末一、山際輝充及び菊地隆一郎の検察官に対する各供述調書

一  大蔵事務官作成の賃金給料調査書、通信費調査書、消耗品費調査書(二通)、燃料費調査書、事故弁償金調査書、期首仕掛品棚卸高調査書、雑費調査書、事故費調査書、新規取得土地等に係る負債利子損金不算入額調査書及び貸倒引当金繰入超過額認容額調査書

一  押収してある平成三年一二月期確定申告書等一綴(平成五年押第四八号の3)

(法令の適用)

罰条 判示第一、第二の各所為につき

被告会社の関係

法人税法一六四条一項、一五九条一項、二項

被告人野﨑太策及び被告人調査書屋茂の関係

法人税法一五九条一項、刑法六〇条

刑種の選択 被告人野﨑太策及び被告人屋茂につき

いずれも懲役刑を選択

併合罪の処理 被告会社につき

刑法四五条前段、四八条二項

被告人野﨑太策及び被告人屋茂につき

刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(いずれも犯情の重い判示第一の罪の刑に加重)

刑の執行猶予 被告人野﨑太策及び被告人屋茂につき

刑法二五条一項

(量刑の理由)

本件は、判示のような不正な方法を用いて、被告会社の二事業年度にわたる法人税合計一億一四〇七万八二〇〇円を逋脱したものであって、その逋脱額が多い上、逋脱率も約八五パーセントに達するなど、正規の法人税の大半を免れた事案であり、国の租税収入を著しく害した点で被告人らの各所為は強く非難されなければならない。

被告会社の実質的経営者あるいはその代表取締役の地位にあって、常々被告会社の法人税につき、赤字にならない程度の所得を計上すれば足りるものと考えていた被告人野﨑が、新潟県議会議員の選挙に立候補を決意し、その選挙資金として約一億円を必要としたので、予めその資金を貯蓄しておこうと考え、被告人屋にその意図を説明して協力を求めた上、その了解を得て本件各犯行に及んだものであって、納税意識を欠いた計画的な犯行であり、動機の点でも何ら酌むべきものが認められない。しかも、被告人両名が一緒に、あるいは被告人屋が単独で、事前に脱税協力者一〇社を訪ねて、架空計上の二割相当額を脱税協力費として支払う約束の下に、その協力を取り付けた後、架空外注費を計上して、一旦その架空外注費を実際に支払い、しかる後に脱税協力費を控除した残額を還流させているのであって、その手段方法が巧妙悪質である上、消耗品費の繰上げ計上、雑収入の計上除外、給料の水増し計上をも行っており、脱税の手口が多岐にわたっている。そして、このようにして秘匿した裏金の殆どが被告人野﨑の選挙費用等に費消され、また、被告人屋も被告人野﨑から依頼されたとはいえ、所得秘匿行為に積極的に加担したばかりでなく、内容虚偽の各法人税確定申告書を作成して過少申告に及ぶなど、本件各犯行の重要な役割を担当しているのであって、以上の諸点に徴すると、被告人らの刑責はいずれも甚だ重いというべきである。

しかしながら、被告会社は、本件法人税のうち、脱税協力費分を除外した所得についてはすべて修正申告をして、その法人税を全部納付したこと、役員の交代を図るなど、経営・管理を強化して二度と本件のような違反を繰り返さないよう社内体制を刷新したこと、被告人野﨑が逮捕・勾留されたこともあって被告人野﨑及び被告人屋の両名は、いずれも本件犯行を重く受け止め深く反省していること、特に、被告人野﨑は、役員を辞任したほか、被告会社との債権債務関係を明確にして、その返済に努力する旨述べており、被告人野﨑には全科前歴がないこと、被告人屋には業務上過失傷害等により二回処罰されたことがあるけれども、いずれも古いものであって、本件と同種の前科は存しないことなどが認められる。これらの諸事情に、更に、被告人らに有利な諸般の各情状を十分斟酌して、今回は被告人らを主文掲記の各刑で処断した上、被告人野﨑及び被告人屋の両名に対し、それぞれその刑の執行を猶予することとした次第である。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 新田誠志)

別紙(1) 修正損益計算書

<省略>

修正損益計算書

<省略>

別紙(2) 修正損益計算書

<省略>

修正損益計算書

<省略>

別紙(3)

<省略>

別紙(4)

<省略>

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