新潟地方裁判所 昭和25年(行)17号 判決
原告 伊藤文明
被告 新潟県知事
一、主 文
本件訴を却下する。
訴訟費用は原告の負担とする。
二、事 実
原告訴訟代理人は、被告が別紙目録記戴の農地について爲した買取申入処分はこれを取消す。訴訟費用は被告の負担とするとの判決を求めた。その請求の原因として、(一)原告は先に昭和二十二、三年中自作農創設特別措置法第十六條により別紙目録記戴の農地の賣渡を受け之を自作していたのであるが、その後右農地につき自作を止めようとし、同法施行規則第十條に基き昭和二十四年九月八日附届出書を眞野村農地委員会を経由して同月下旬被告に提出した。(二)けれどもその後原告は再び右農地につき自作を続けることを決意し、同年十一月下旬眞野村農地委員会を通じて被告に対し文書を以て右届出を撤回し自作を続ける旨の申出をなした。(三)然るに被告は原告が自作を止めようとしていたものとなし、自作農創設特別措置法第二十八條により右農地につき買取の申入を爲すことに決し、昭和二十五年一月二十日附買取申入書が眞野村農地委員会を経由して同年二月十四日原告に送達された。(四)併しながら原告は先に爲した自作廃止の届出を撤回し、右買取申入当時に於ては自作を止めようとしていたものではないのであるから、被告の爲した右買取申入の処分は違法である。よつてその取消を求める次第であると述べ、被告の本案前の抗弁に対し、その主張事実を否認し、本件買取申入書は昭和二十五年二月十四日原告に送達されたが、当時原告は不在中であつて同月十八日右買取申入のあつたことを知つたのである。從て本訴は同日から一ケ月以内に提起されたものであるから適法であると述べた。(立証省略)
被告指定代理人は、本案前の抗弁として、被告は眞野村農地委員会を通じ昭和二十五年二月九日原告に対し本件買取申入書を交付するため之を示してその受領を求めたところ、原告に於て拒絶したのであつて、原告は同日右買取申入の処分があつたことを知つたのである。仮に然らずとするも本件買取申入書はその後同年二月十三日郵便により原告に送達されたのであつて、原告は同日右処分のあつたことを知つたのである。從つて何れにするも、右処分のあつたことを知つた日から一ケ月の期間経過後に提起された本訴は不適法であるから原告の訴は却下せらるべきものと述べ、本案につき原告の請求を棄却するとの判決を求め、原告主張の事実中(一)は認める。(二)は否認する。(三)の内買取申入書が原告に送達された日時の点は否認する。そのほかの点は認める。(四)は否認する。原告は先に爲した自作廃止の届出を撤回したものでなく、本件買取申入当時に於ても自作を止めようとしていたのであるから、被告の爲した本件買取申入の処分には原告のような違法はないと述べた。(立証省略)
三、理 由
被告の本案前の抗弁について判断するに、被告が原告に対し別紙目録記戴の農地につき昭和二十五年一月二十日附買取申入書を以て本件買取申入の処分を爲したこと(処分のあつた日時の点は除く)は当事者間に爭いがない。しかして証人中野竜太郎の証言によれば、右買取申入書は昭和二十五年一月二十三日被告から眞野村農地委員会に送付され、同年二月九日同農地委員会に於て原告に対し右買取申入書を提示してその受領を求めたところ、原告に於てそれが被告の買取申入書であることを知りながら受領しなかつたことが認められる。右認定に反する原告本人訊問(第二回)の結果は信用し難く、他に右認定を覆えすに足る証拠はない。然らば本件買取申入の処分は同年二月九日原告に対しその効力を生じたものであつて、原告は同日処分のあつたことを知つたものと云うべきである。然らば本訴は同日から一ケ月の期間経過後に提起されたものであること記録上明かであるから、不適法として却下するの外はない。
よつて訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九條を適用して主文の通り判決する。
(裁判官 山村仁 中村憲一郎 小林信次)
(目録省略)