新潟地方裁判所 昭和26年(行)19号 判決
原告 五十嵐新次
被告 新潟県知事
一、主 文
原告の本訴請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
二、事 実
原告は被告が原告に対し昭和二十五年九月二十七日附でなした昭和二十五年度の県税事業税五千七百六十円の賦課処分は之を取消す、被告は原告に対し金二千八百八十円を支払え、訴訟費用は被告の負担とする、この趣旨の判決を求め、その請求の原因として、
(一) 被告は昭和二十五年九月二十七日原告の昭和二十四年度(昭和二十四年一月一日より同年十二月三十一日迄)に得たる原告の事業所得(課税標準額)を金四万八千円とし昭和二十五年度の原告の事業税額を金五千七百六十円と決定して、同日附の徴税令書が昭和二十五年九月二十七日原告居村役場経由で発送され数日後原告に交付された。
(二) 之に対し、原告は昭和二十五年十一月二十五日被告に対し異議を申立ると共に昭和二十六年三月五日その一部である金二千八百八十円の納付をなしたのであるが、被告は昭和二十六年二月二十八日附を以て減額の理由なきものとして右異議を却下し同書面が同年三月六日原告に交付された。
(三) 併し乍ら原告は日雇大工であつて建築等の請負をなすものでなく普通労務者に過ぎないのであるからその所得は事業税の対象となるものではない。よつて被告のなした本件賦課処分は違法であるから其の取消を求めると共に、既に第一期分として納入した金二千八百八十円の返還を求めるため本訴に及んだのである。
と述べ
被告の主張事実中、原告が大工であること、被告主張の如き各申告をなしたこと、被告がその主張のような算定方法により本件賦課処分をしたことは認めるがその余は否認する。原告が地方事務所長に対し被告主張の如き申告をなしたのは、申告用紙が配布されたため収入の有無に拘らず自己の所得を申告しなければならないと考えて申告用紙に記入したのであつて錯誤に基くものである。
と述べた。(立証省略)
被告指定代理人は、原告の請求棄却の判決を求め、
一、原告の主張事実中、(一)(二)は認めるがその他は否認する。
二、原告は大工であつて小規模ではあるが請負を業としているものであつて、所轄税務署に対しては昭和二十四年度の総所得を八万五千円として申告し、地方事務所長に対しては同年度の事業税所得金額を六万円として申告したが、被告はその差額二万五千円は日雇による所得と看做し右六万円からその二割を差引いた四万八千円を家屋建築其の他工事の請負によつて得たる所得と認定して之を課税標準額とし本件賦課処分をなしたのである。
三、尚異議申立は時期に遅れたものであつたが同業者との権衡上その期限を猶予したこととして之を受理し審査の結果減額すべき理由なきものとして却下したのである。
四、又、原告は右申告を錯誤に基くものと主張するけれども、同人は昭和二十三年度に於ても事業税の申告をなし之を納入しているのであつて、同主張は之を肯認することができない。
と述べた。(立証省略)
三、理 由
原告主張の(一)(二)の事実は当事者間に争のないところである。
よつて、原告が本件賦課処分の違法理由として主張するところの請負を業としているかどうかの点について判断すると、成立に争のない乙第一、二、三号証及び証人石井長太郎の証言を綜合するときは原告は多少なりとも家屋建築等の請負を業としていることが認められ、此の点に関する証人広田伝治郎の証言及び原告本人訊問の結果は遽に措信し難いし他に右認定を覆えし原告が単なる日雇大工であつて乙第二号証の申告が錯誤に基くものであると認めるに足る証拠は存しない。
されば、原告を請負を業とする事業税の納入義務者と認め、その申告を基礎としてなした、被告の本件賦課処分は適法であり原告の主張は理由がない。
仍て原告の本訴請求は失当として棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九条を適用して主文の通り判決する。
(裁判官)