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新潟地方裁判所 昭和56年(ワ)456号 判決 1986年5月23日

甲、乙事件原告

西山実

甲、乙事件原告

西山ヒロ

甲、乙事件原告ら訴訟代理人弁護士

足立定夫

渡辺昇三

鈴木俊

渡辺隆夫

川上耕

大倉強

砂田徹也

甲事件原告ら訴訟代理人弁護士

鈴木勝紀

甲事件被告

右代表者法務大臣

鈴木省吾

乙事件被告

新潟県

右代表者知事

君健男

乙事件被告

亀田郷土地改良区

右代表者理事長

佐野藤三郎

甲、乙事件被告ら指定代理人

大沼洋一

外三名

甲事件被告国指定代理人

星野一雄

外一一名

主文

一  甲事件

原告らの被告国に対する請求をいずれも棄却する。

二  乙事件

1  被告新潟県及び被告亀田郷土地改良区は、原告らに対し、各自、それぞれ金五六八万八七三九円及び内金五一八万八七三九円に対する昭和五五年五月八日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

2  原告らの被告新潟県及び被告亀田郷土地改良区に対するその余の請求をいずれも棄却する。

三  訴訟費用は、甲、乙事件を通じ、原告らに生じた費用の二分の一と被告国に生じた費用の全部を原告らの負担とし、原告らに生じたその余の費用と被告新潟県及び被告亀田郷土地改良区に生じた費用の合計を三分し、その一を原告らの負担とし、その余を被告新潟県及び被告亀田郷土地改良区の負担とする。

四  この判決は、二の1に限り仮に執行することができる。但し、被告新潟県及び被告亀田郷土地改良区が、それぞれ、各原告に対し金二〇〇万円の担保を供するときは、その原告の右仮執行を免れることができる。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  甲事件

1  請求の趣旨

(一) 被告国は、原告らに対し、それぞれ金一一〇〇万円及び内金一〇〇〇万円に対する昭和五五年五月八日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

(二) 訴訟費用は被告国の負担とする。

(三) 仮執行宣言

2  請求の趣旨に対する答弁

(一) 原告らの請求をいずれも棄却する。

(二) 訴訟費用は原告らの負担とする。

(三) 仮執行免脱宣言

二  乙事件

1  請求の趣旨

(一) 被告新潟県(以下「被告県」という。)及び被告亀田郷土地改良区(以下「被告改良区」という。)は、原告らに対し、各自、それぞれ金一一〇〇万円及び内金一〇〇〇万円に対する昭和五五年五月八日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

(二) 訴訟費用は被告県及び被告改良区の負担とする。

(三) 仮執行宣言

2  請求の趣旨に対する答弁

(一) 原告らの請求をいずれも棄却する。

(二) 訴訟費用は原告らの負担とする。

(三) 仮執行免脱宣言

<以下、省略>

理由

甲、乙事件を一括して以下検討する。

一原告らの地位について

<証拠>によれば、原告実は貴芳の父、原告ヒロは貴芳の母であることが認められ、右認定に反する証拠はない。

二本件事故の発生について

1  <証拠>によれば、貴芳は、昭和五五年五月七日午後三時半過ぎ頃、原告実から消しゴム代として金一〇〇円をもらい、同級生の西山伸明及び五十嵐まさひとと連れだつて自転車に乗つて家を出たこと、原告実は、同日午後五時過ぎ頃、右西山伸明らから貴芳が本件排水路に転落したことを伝えられたこと、原告実を始め、警察、消防関係者らが貴芳を捜索し、午後九時過ぎ頃、別紙図面一表示のの付近の亀田排水路内から死亡していた貴芳が発見されたこと、貴芳の死因は溺死(窒息死)であること、貴芳は死亡当時満七歳五か月であつたこと、貴芳の死亡について調査にあたつた新潟南警察署は、西山伸明及び五十歳まさひとからの事情聴取の結果から、貴芳は新潟県中蒲原郡亀田町城山四丁目三五八番地先の亀田跨線橋直下部分の亀田排水路(本件排水路)にかかつている本件護岸施設の上流側から数えて二本目の梁から転落したものと判断したことが認められ、右認定に反する証拠はない。

右認定事実によれば、貴芳は、昭和五五年五月七日午後五時頃、亀田跨線橋直下の本件排水路に転落して死亡したこと(本件事故の発生)を推認することができる。

2  ところで、貴芳が本件排水路へ転落する直前の行動については、前記認定事実の外、証人小林博昭の証言によれば、西山伸明及び五十嵐まさひとから事情聴取したところ、貴芳は本件護岸施設の上流側から数えて二本目の梁の上を行つたり来たりしていた旨の供述があつたことが認められるだけで、他に貴芳が本件排水路のどの部分からどのような態様で排水路内に入り、前記梁に到達したのかについてはこれを認めるに足りる証拠は全くない。

三亀田排水路の設置、管理者について

1  亀田排水路は新潟県中蒲原郡亀田町城所地区から城山地区を貫流し、栗ノ木川に通じる農業灌漑用水の排水路であることは、当事者間に争いがない。

2  <証拠>によれば、以下(一)ないし(三)の事実が認められる。

(一) 亀田排水路は、古来より水路として存在(公図上青線で表示されていた。以下「旧水路」という。)していたものであり、現在その底地は一部を除き被告国が所有している。旧水路の流れる亀田郷は、阿賀野川、信濃川、小阿賀野川によつて囲まれた約一万ヘクタール余の低湿地帯であつた。旧水路は素掘りで堀のようなものであつたが、地元住民からは通称城所川と呼ばれ、用排水用の水路として利用されていた。

(二) 被告国は、昭和二四年から昭和三六年までの間に、当時の農林省(現在の農林水産省)の所管による土地改良事業である国営阿賀野川農業水利事業において、素掘りであつた旧水路全域にわたり、間知石を使つた石積み工法若しくは長さ約一・八メートル、幅約三〇センチメートルの板を柵状に打ちつける板柵工法若しくは約一・八メートルないし二メートルに切つた粗朶という樹木を使い、約六〇センチメートル間隔で千鳥状に打ちつける粗朶柵工法による水路の側壁法面の崩壊を防止する護岸工事を実施し、旧水路の改修をした。以後、旧水路は排水用水路とされ、幹線排水路としての位置を占めるものとなり、右事業により周辺農地は湿田から乾田化へと移行していつた(以下、国営阿賀野川農業水利事業による改修後の亀田排水路を「旧亀田排水路」という。)。その後、被告国は、土地改良法九四条の六、同法施行令五六条に基づき旧亀田排水路の管理を被告改良区に委託した(但し、被告国が亀田排水路の底地をその一部を除いて所有していることは、原告らと被告国との間において争いがない。)。

(三) 旧亀田排水路は、昭和三〇年頃から水溶性ガスの大量汲み上げによる地盤沈下現象が顕著になり、通水能力が低下し、排水に障害が生じてきた。そこで、被告土地改良区は、被告県に対し、土地改良事業としての旧亀田排水路の改修を申請し、被告県は、土地改良法に基づき県営新潟地域特殊排水事業(県営事業)を実施した。右県営事業では、昭和四〇年から昭和四四年にかけて旧亀田排水路全域にわたり、被告国が造成した護岸施設を取り毀し、新たに一部水路の付け替えを含め、拡幅、浚渫及び護岸工事を行い、被告国が改修した当時の旧亀田排水路の排水機能を回復するための改修が行われた(以後、県営事業による改修後の亀田排水路を「新亀田排水路」という。)。また、県営事業の一環として、昭和四四年及び昭和五二年に亀田排水路の一部にガードレール等の安全施設が設置された(なお、県営事業は昭和五〇年に地盤沈下対策事業と名称変更されているが、以下いずれも「県営事業」という。)。被告県は、県営事業により生じた土地改良施設たる護岸等の施設をいずれも完成後間もなく被告改良区に引き渡し、土地改良法九四条の一〇に基づきその管理を被告改良区に委託し、被告改良区はこれを維持管理している。現在の亀田排水路の総延長は七一五〇メートル、流域面積(受益面積)は一二八五ヘクタールである(但し、被告改良区が、被告県から県営事業により造成された土地改良施設たる護岸等の施設の管理委託を受け、これを維持管理していることは、原告と被告県及び被告改良区との間では争いがない。)。

(四) 以上(一)ないし(三)の事実が認められ、右認定に反する証拠はない。

3  右1及び2の事実によれば、亀田排水路は、昭和二四年頃までは用排水用水路として、それ以後は排水路として公に利用されてきているものと認められるから、国家賠償法二条一項に規定する公の営造物に該当するものである。

ところで、亀田排水路は古来より水路として存在していたものであることからすると、明治時代に近代的私的所有権が法的に承認され、官民有区分が行われた際に民有地とならなかつた脱落地等が国有地とされたことにより被告国が所有することになつたものと推認できるところ、右の経緯からすると、被告国が亀田排水路を開設したものでないことは明らかである。亀田排水路は、昭和二二年以降土地改良法に基づく国営及び県営の土地改良事業が行われているが、同法二条二項一号によれば、土地改良事業行為には、土地改良施設の新設、管理、廃止又は変更があるところ、右の管理とは施設の機能を維持保存する保全行為で災害復旧を含まないもの並びに施設をその用法に従つて支配運用する行為及びこれのためにする改築、追加工事を含むものである(同法施行令五六条)が、水路を拡幅するような施設の機能を拡大する行為は右の管理行為に含まれるものではなく、変更行為に該当するものと解される。右の解釈を前提にすると、国家賠償法二条一項にいう設置または管理との関係は、同法上の設置には土地改良法上の新設及び変更が該当し、国家賠償法上の管理は土地改良法上の管理とほぼ同意義であるといえる。

そうすると、被告国が国営阿賀野川農業水利事業により素掘りであつた旧水路を改修し、旧亀田排水路とした土地改良事業は、その工事内容からすると土地改良法上の変更行為に該当するものといえる。しかし、その後、被告県が実施した県営事業により被告国が改修した部分は全て取り毀され、新たに被告県において改修して新亀田排水路としたものであるから、新亀田排水路については、被告国の設置行為にかかる排水路施設は存在せず、専ら被告県の施設行為にかかる排水路施設から構成されているものであるので、新亀田排水路の設置者は、被告国ではなく、被告県である。

なお、公の営造物に関する責任は、当該営造物に対する所有権または占有権等の帰属者たる地位に基づくものではないから、本件においても亀田排水路の施設の所有権が誰に帰属するかは右の認定を左右するものではない。

4  被告国が県営事業についてその費用の六〇パーセントを国庫補助したことは被告国の自認するところであるが、県営事業は土地改良法に基づく都道府県の行う土地改良事業として被告県が実施したものであり、同法第二章第二節の各規定の適用を受けるものであるところ、右規定中には都道府県の行う土地改良事業について被告国の指揮監督を認める規定はなく、且つ、右国庫補助に際して被告国が県営事業に関して実質的な指揮監督をしたことを認めるに足りる証拠はないから、この点においても被告国は新亀田排水路の設置者ということはできない。

5  次に、亀田排水路の管理者について検討する。被告県が新亀田排水路の設置者であることは前記判示のとおりであるところ、設置者は特段の事情がない限り本来的に設置物の管理者でもある。しかし、本件では、被告県は土地改良法九四条の一〇に基づき被告改良区に新亀田排水路についての管理を委託し、被告改良区がこれを維持管理していることも前記判示のとおりであるから、右のように管理の委託がなされた場合の管理責任の帰属が問題となる。ところで、土地改良法上、管理の受託者は善良な管理者の注意をもつて管理を行うべきものとされ(同法施行令五八条一項)、受託に係る土地改良財産について管理上支障のある事故が発生したときは直ちに当該土地改良財産の保全のため必要な措置を講じなければならず(同法施行令五八条二項)、その管理費用は管理受託者が負担する(同法施行令六三条)ものとされていることからすると、一見管理の委託者の管理責任が免除されていると解せられなくもない。しかし、右の管理の委託は、土地改良事業によつて生じた土地改良財産たる土地改良施設について、その施設の利益を受ける地元の土地改良区に管理を委託することが便宜であり、且つ、適切な管理を行う所以であるということから認められたものであること、管理の委託は一種の公法上の契約であると解せられるが、管理の委託をするについて、管理委託者と管理受託者間の協議により管理の方法、委託の条件、その他必要な事項を定め(同法施行令五六条)、その定められたところに準拠して管理が行われることになる(同法九四条の一〇、九四条の六第一項)ことに照らすと、管理委託者の管理責務が全て管理受託者に引き受けられるものと解することはできない。また、地方自治法二条二項、三項一号及び六項によれば、地方公共団体はその固有事務として用排水路につき行政的管理責務を負うものであるが、亀田排水路は右の用排水路に該当する法定外公共物であることからすると、被告県は、地方公共団体としての存立目的に内在する固有の機能に基づく住民福祉行政の一環として公共排水路としての亀田排水路の管理責務が認められるものである。そうすると、被告県は、新亀田排水路を被告改良区に管理を委託したことにより事実的管理行為については被告改良区の専権に任すことはできても、一切の管理責務を免れるものではなく、被告改良区と並んで新亀田排水路の管理者であるというべきである。

6  被告国は、新亀田排水路の設置者ではなく、単なる底地の所有者であるところ、底地はそれ自体排水路としての機能を持つものではなく、新亀田排水路に設置されている護岸施設等と一体をなすものであり、右施設は被告県が設置し、これについては被告改良区に管理が委託されていることに鑑みると、被告国の底地についての管理権限の範囲は、国有地についての国有財産法に規定する事務の範囲、すなわち財産管理にとどまり、行政的事実行為的管理についての権限は有しないものと解される。

四本件排水路の設置または管理の瑕疵について

1  本件排水路及び付近の状況について

<証拠>によれば、以下(一)ないし(六)の事実が認められる。

(一) 本件排水路の現況は次のとおりである。亀田跨線橋のほぼ中央部直下に位置する本件護岸施設の起始部から上流側は両岸とも土堤にコンクリート柱を打ちつけた護岸施設があり、土堤の上半分は四五度から六〇度の勾配になつている。下流側は両岸にコンクリート製矢板を垂直に隙間なく打ちつけてこれを側壁とし、これに右矢板の起始部から約一・七メートル間隔で一辺約二五センチメートル角のコンクリート製の梁を渡し、側壁が土圧によつて内側に倒壊しないよう補強がされている(本件護岸施設の設置)。上流側から数えて一本目と二本目の梁の間の幅員は約四・四メートル、二本目と三本目の梁の間の幅員は約四・二メートル、三本目から下流部分の幅員は約三・八メートルである。本件事故現場から下流約五〇メートルのところから国鉄信越線を渡つたところまでは暗渠となつており、それより下流は本件護岸施設と同様の護岸施設が設置された排水路が続いている。城山地区を流れる亀田排水路の長さは約二二〇メートルであり、その間に別紙図面一表示の、及びの各地点に洗い場が設置されている(但し、本件護岸施設の構造については、当事者間に争いがない。)。

(二) 本件排水路に併行して右岸側に町道が存するが、右町道は、亀田跨線橋下の部分から下流側はアスファルトで舗装され、上流側は未舗装の道路であり、亀田跨線橋直下の部分はそれに続く上流側及び下流側双方の町道部分よりかなり幅員が広く、小さな広場程度の広さがある。右部分は跨線橋の存在により雨が当たらない場所であり、また、車の通行量も少ない場所である。本件護岸施設の設置部分より上流側の本件排水路の右岸側土手は直接町道と接しているが、本件護岸施設の設置部分は、コンクリート製矢板側壁と町道左側端との間に、二本目の梁のところで幅約二・八メートル、それから下流に向かつて徐々に幅が狭くなつていく状態で空地がある。右空地は町道から排水路に向かつてゆるい下り勾配になつている。本件排水路左岸側にも未舗装の農道があつて、本件護岸施設の設置部分から上流側は排水路と平行に走つているが、本件護岸施設の起始部にあたりで左に逆くの字形に折れ、下流に向かつて排水路から離れていくように走つている。右の折れ曲がり点から下流側の左岸側矢板側壁と左岸側農道との間はほぼ平で、排水路に沿つて樹木が植えられており、その余の部分は畑として使用されている。本件事故現場から上流約一〇〇メートルのところに橋が掛かつており、下流約五〇メートルのところの暗渠部分の道路になつている(但し、亀田跨線橋直下部分が雨の当たらない場所であることは当事者間に争いがない。)。

(三) 本件事故当時、右岸側町道には本件護岸施設に沿つた部分に限り高さ約七五センチメートルの鉄製ガードレールが設置されていたが、それ以外の右岸側町道(本件護岸施設の起始部から上流側)及び左岸側農道にはガードレール等の設置は全くなく、排水路への立入禁止等の立札もなかつた。なお、右ガードレールは本件事故当時破損等していなかつた(但し、本件事故当時、本件排水路の右岸側にガードレールが設置されていた部分があつたこと、その他の部分に立入防止のための設備がない部分があつたことは、当事者間に争いがない。)。

(四) 本件事故現場は、亀田町城山地区の住宅地域の南端部分に位置し、国道四九号線を境にすると、南東側(本件事故現場より上流側)は農地が続き、付近に人家は全くない。本件排水路左岸と国鉄信越線との間も農地であり、人家はなく、右岸側の亀田跨線橋の橋台の北側に野口専二方が存在し、それより北西側及び国鉄信越線西側(本件事故現場より下流側)は住宅地域であり、順次北に向かつて城山地区、城所地区、元町地区、船戸山地区、亀田町中心部となつている(別紙図面一参照)。

(五) 本件排水路の流水量は、田植時期の五、六月頃及び大雨時に多くなるが、その他の時期は水量が少ない。本件事故当日の水深は約一・六ないし一・七メートルであり、二本目の梁のところでは、水面から梁までの距離は約一・四ないし一・五メートルであつた。

(六) 本件排水路には、本件事故から数日後に本件排水路右岸の既設ガードレール設置部分から上流の舗装部分までと左岸の一部にそれぞれ有刺鉄線で柵が設けられ、一本目の梁の西岸に「あぶない、ちかよるな、あそぶな」と書かれた立看板が設置された。更にその後、昭和五七年七月までの間に本件排水路両岸にガードレール及びネットフェンスが設置されている。

(七) 以上(一)ないし(六)の事実が認定でき、原告実本人尋問の結果中、本件事故現場に設置してあつたガードレールの一部が破損していた旨の供述は前掲各証拠に照らし措信できず、その他右認定に反する証拠はない。

2  亀田排水路の安全施設の設置状況について

<証拠>によれば、以下(一)ないし(三)の事実が認められる。

(一) 亀田排水路には昭和四四年以前転落防止等のための設備は全くなかつたが、被告県は、県営事業により新亀田排水路を設置した際、昭和四四年に同年度の事業分として、城山地区に限ると別紙図面三表示の⑬、⑭、⑲及びの部分にそれぞれガードレールを設置し、次いで、昭和五二年九年から一二月にかけて、県営事業により同年度の事業分として、城山地区に限ると別紙図面三表示の⑦、⑭、⑲、、及びの部分にガードレールを新設しまたは付け替えた。亀田町は、県営事業とは別に昭和五五年七月から昭和五九年三月までの間に、城山地区に限ると別紙図面四表示のとおりガードレール(Gと表示。)及びネットフェンス(NFと表示。)を設置した。

(二) 昭和四四年度の県営事業において安全施設が設置されたのは、人または車が亀田排水路へ転落することを防止するためであり、亀田排水路と住宅または道路が接する部分が設置対象場所として選定された。但し、亀田排水路と道路が接する部分であつても、道路が農道として利用されているだけで一般人の通行または車の通行の用に供されていなかつた場合や、住宅に通ずる道路であつても当該住宅に住む人が通るだけで、車の通り抜け等ができない場合には安全施設の設置対象場所から除外された。

(三) 昭和五二年度の県営事業における安全施設の設置は、地元住民から安全施設設置の要望が持ち上がり、右要望を受けた被告改良区が被告県に対し安全施設の設置申請をなし、被告県が右申請を受けて県営事業の一環として行つたものである。被告県は、安全施設を設置するにあたり、被告改良区の担当者、被告改良区の亀田工区内の各分区の組合員、亀田町建設課職員等を集め、被告改良区から出された設置対象場所を検討し、亀田排水路に接する住宅地、子供の遊び場、公園、広場、通学路を設置対象場所として選定し、設置施設として、ガードレール若しくはガードパイプ若しくはネットフェンスの設置または暗渠工事の中から、地元住民において冬期間の除排雪の問題上ネットフェンス設置の要望が少なかつたこと及び強度、耐久性、排水路の草刈りや泥上げ等の管理上の必要性を検討した結果、主としてガードレールを選定した。但し、公園等子供の遊び場として利用されていたことが明らかな場所にはネットフェンスが設置された。なお、ガードレールの設置費用はネットフェンスに比べ二、三割高いものであるが、新潟県下においては、前記の除排雪及び排水路の管理の必要上、安全施設の設置部分中ガードレールが設置されている割合が圧倒的に多い。

(四) 以上(一)ないし(三)の事実が認められ、右認定に反する証拠はない。

3  城山地区の人口動態

<証拠>によれば、亀田町は近年宅地化が進み住宅地として発展してきている地域であり、城山地区はその中でも発展の著しい地区であること、亀田町城山の人口は、昭和四〇年が一二三七人、昭和五〇年が一二九一人、昭和五一年が一二七八人、昭和五八年が一五九九人と変動していることが認められ、右認定に反する証拠はない。

4  本件事故現場付近の利用状況

(一) 本件事故現場付近は人家がほとんどなく、その回りが農地であることは前記1で認定のとおりであり、証人村山栄二の証言及び弁論の全趣旨によれば、本件排水路付近は従前はその上流側に農地を所有し、耕作している人が農作業のために通行する程度の利用がなされていたにすぎない場所であつたことが認められ、右認定に反する証拠はない。

(二) 証人野口キンの証言によれば、野口キンは本件事故現場のすぐ北東側に住む者であるが、近年日曜日の休日になると本件排水路の右岸側町道の亀田跨線橋の下の部分で遊ぶ子供が見うけられ、中にはガードレールを越えて中へ入ろうとする子供も見られたこと、野口キンはそのような子供に対しいつも口やかましく注意していたことが認められる。弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる甲第一四号証によれば、石本和子は弁護士足立定夫に対し、石本和子は本件事故現場を見通せる所に住んでいる者であるが、小学生位の子供が放課後や土曜、日曜日に本件排水路の右岸側町道の亀田跨線橋の下の部分で遊んでいるのを見かける旨の供述をしていることが認められ、原告ヒロ本人尋問の結果中にも、原告ヒロは本件事故現場付近が子供の遊び場であることを人から聞いた旨の供述をしているところ、前掲乙第八号証及び証人野口キンの証言によれば石本和子の家から本件事故現場を見通すことができないことが認められ、また、原告ヒロは普段本件事故現場をほとんど通ることがなく、同人の前記供述も伝聞にすぎないものであることからすると、石本和子及び原告ヒロの各供述内容の正確性に疑問が持たれるが、証人野口キンの証言内容と符合こそすれ、矛盾するものではない。以上の事実によれば、本件事故以前から本件排水路の右岸側町道の亀田跨線橋の下の部分は常時ではないとしても子供達が遊び場所として利用していた場所であつたことが推認できる。もつとも証人村山栄二の証言中に、同人は被告改良区の職員として一ケ月に一回程度本件排水路付近を見回つたことがあり、その時本件排水路の右岸側町道で人が遊んでいるのを見たことがない旨の供述があるが、右供述は右認定を覆すに足りるものではなく、乙第三号証の野口キンの新潟地方法務局職員に対する供述書中本件事故現場右岸側の町道が遊び場ではなかつた旨の供述も、前記の同人の当裁判所での証人尋問における具体的な供述に対比すると採用できず、その他右認定に反する証拠はない。

5  安全施設の設置以外の亀田排水路転落防止対策について

(一) <証拠>によれば新潟県は全国的にみて水死事故の多い県であることもあつて、昭和三八年頃から青少年健全育成対策の一環として子供を水から守る運動が提唱され、県、市町村、学校等の関係諸機関及び団体が連携のうえ、水死事故に対する啓発活動が進められてきていること、亀田町内においても、広報「かめだ」を通じて例年子供の水死事故防止の注意がなされていること、また、小学校においては春休みや夏休みの際に水死事故に対する注意がなされていること、右の各注意は、主として保護者に対し注意喚起を訴え、自衛対策をとらせることを内容としたものであること、しかし、昭和五二年には新潟県は全国一の水死事故者を数えており、同年度の新潟県の水死事故に関する資料によれば、月別では四月から八月が多く、発生場所では海、河川、湖沼池、用水堀で全体の約八五パーセントを占めていること、以上の事実が認められ、右認定に反する証拠はない。

(二) 前掲甲第一一号証によれば、昭和五五年五月九日付の朝日新聞に、原告実の談話として本件事故現場の排水路に以前から蓋をして欲しい旨の要望をしていた旨の記事が載つており、また、証人熊谷政蔵の証言中に亀田排水路について暗渠計画がある旨の供述があるが、暗渠化の要望または計画が本件事故前からあつたと認めるに足りる証拠はなく、その他、本件事故前に本件排水路について既設のガードレール以外に転落防止のための施設の設置が地元住民またはその他から求められていたことを認めるに足りる証拠はない。

6  亀田排水路への転落事故例について

証人熊谷政蔵の証言、検証の結果及び弁論の全趣旨によれば、亀田排水路における転落事故として明らかなものは別表のとおりであること、別表番号①及び③ないし⑦の事故はいずれも本件事故現場より下流部分の住宅地域で発生したものであることが認められ、右認定に反する証拠はない。

7  以上1ないし6の認定事実に基づき、本件排水路の設置または管理の瑕疵について検討する。

(一)  一般に公の営造物の設置または管理に瑕疵がある場合とは、当該営造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいい、右の安全性の存否は、当該営造物の用途、構造、場所的環境及び利用状況並びに身体、生命に対する危険性の程度、内容等諸般の事情を総合し、当該

別 表

番号

年・月・日(頃)

(昭和)

名前

年齢

結果

場所

態様

三一・五・二九

熊谷政芳

三歳

死亡

城山

不明

三二・六・六

堀内悦子

一歳一〇か月

右同

右同

右同

三三・七・二六

勝山由美

一二歳

右同

右同

右同

四一・二・一〇

坂爪勉

四歳

無傷

右同

右同

四二・五・二〇

西山タツミ

四五歳

死亡

右同

護岸上でよもぎつみ

四五・六・一八

中林浩也

一三歳

軽傷

右同

不明

四八・一〇・一五

中林順司

八歳

肩骨折

右同

右同

五五・五・七

西山貴芳

七歳

死亡

右同

本件事故

五六・八・九

小野松太郎

七五歳

右同

船戸山

不明

営造物がその危険性の度合に応じ、危険防止のために必要な設備を備えているかどうかによつて判断されるべきものである。以下、右の立場に立つて検討する。

(二) 新亀田排水路は、地盤沈下現象が生じた亀田地域の農業排水機能の回復を図り、通水能力を高める目的で設置(改修)されたものであり、本件排水路の本件護岸施設はその用途に適する構造となつている。しかし、他方、本件護岸施設はコンクリート製矢板切梁式の構造であつて、その側壁は垂直で、一旦転落すると這い上がるための手がかりになるものがなく、その深さからすると子供が転落した場合には容易に脱出することが困難であり、水量の多い時期にはその生命、身体に対する危険性が高いものと認められる。ところで、新亀田排水路を設置した当時の本件排水路付近は人家が少なく、農地に囲まれた場所であり、日常的に人または車の通行する場所ではなかつたこと、右当時においても排水路と人家または一般に人や車の通行の用に供されていた道路と接する部分には人や車の転落防止のためにガードレールが設置されていたことに鑑みると、本件護岸施設はその構造上前記の危険性が内在するものであるが、新亀田排水路設置当時において本件排水路付近が一般に人や車の通行場所であつたり、子供の遊び場であつたというようなことのない限り子供の転落事故は通常予想されない事柄であり、本件では右の特段の事情は認められないから、新亀田排水路設置当時の本件排水路付近は転落防止措置を講ずべき必要性があつたものと認めることはできない。したがつて、本件排水路の設置について、安全施設等の設置を伴わないことをもつて瑕疵があるということはできない。

(三) 本件排水路には、地元住民の要望が端緒となつて昭和五二年に本件護岸施設に沿つて右岸側町道との境にガードレールが設置されている。ガードレールは、豪雪地帯の除排雪の問題、排水路の泥上げ等の管理上の利便性の点においてネットフェンスより優れ、意識的な侵入に対してはともかく、通常の人車の通行における立入、転落防止のための安全施設としてその機能に欠けるところもなく、村山栄二が昭和五九年一〇月一二日に撮影した亀田郷内の防護柵破損状況の写真である乙第七号証の三の一ないし一一及び証人村山栄二の証言によれば、ネットフェンスは耐久性に欠け、ガードレールはネットフェンスに比べ耐久性に優れていることが認められることからすると、恒久的防護施設としてガードレールを選択したことに相当性及び合理性が一応認められる。

(四) ところで、本件事故当時の本件排水路付近の人家等の立地状況は新亀田排水路の設置当時と大きく変わつていないが、城山地区は近年宅地化が進み、人口が急増している地域であり、また、本件排水路の右岸側町道は小さな広場程度の広さがあつて、車の通行量が少ない場所であり、右町道は本件事故以前から近隣の子供の遊び場所になつていたものである。右町道には前記認定のとおり高さ七五センチメートルの鉄製ガードレールが設置されていたのであるが、これは一般に通行に供されている道路における排水路への立入、転落防止のための安全施設としては十分機能し得るものとしても、右町道が事実上子供の遊び場所となつた場合には、右ガードレールは子供でも容易に乗り越えられるものであり、また、右ガードレールの設置箇所は本件排水路全体にわたるものでなく、その他本件排水路付近には立入を規制する措置が全くなかつたことからすると、本件事故現場付近における本件排水路への立入、転落防止のための安全施設として、右ガードレールだけでは不十分なものになつていたということができる。

(五) 右のような事情の変化は、全国的にみて水死事故の多い新潟県において昭和三八年以降一貫して水死事故対策を講じてきている被告県及び水死事故の代表的な発生場所である用排水路を管理する被告改良区にとつて全く予測できない事柄ではなく、昭和五二年に安全施設を設置してから以後本件事故までの間新亀田排水路で転落事故が起きていないからといつて、その間の場所的環境の変化や排水路近辺の利用状況の変化を全く度外視することは許されないというべきである。

また、本件護岸施設の梁は、本来通行の用に供されるものではなく、護岸側壁の倒壊防止のための補強材であるが、その幅が約二五センチメートルある角柱様のもので、これを通路代わりに通つて対岸に渡ることは危険を伴うが困難なものではなく、この付近で遊ぶ子供にとつて本件護岸施設の梁は一個の誘惑的存在であることは容易に看取し得るところであり、本件事故当時満七歳五か月であつた貴芳が本件事故の原因と考えられる梁を渡る行動をとつたことが、その管理者である被告県及び被告改良区にとつて全く予測を超えた異常な行動であつたとすることもできない。

なお、本件護岸施設の梁が普段から通行の用に利用されていたか否か、また、本件事故現場の梁の両側に草が生えていない部分があるが、これが人の通行によるものか否かについては相反する証拠があり、右の点についてはいずれが真実かにわかに断定し得ないが、本件事故現場から最も近い所に住む証人野口キンの証言によれば、本件排水路の右岸とガードレールとの間の空地部分に子供が立ち入ることがあつたことを現認していることが認められ、この事実は右判示を補強するものである。

(六) 以上によれば、本件排水路は、本件護岸施設の構造上危険性を有するものであり、本件事故当時、既に本件排水路右岸側の町道が子供の遊び場所となつていたのであるから、本件排水路の管理者である被告県及び被告改良区は、本件排水路付近の場所的環境や利用状況の変化に対応して適宜本件排水路への立入、転落防止措置を講じて、その安全性を確保すべきものであつた。しかしながら、本件排水路には部分的に高さ七五センチメートルのガードレールが設置されていただけで、その右岸及び左岸のいずれからも容易に立ち入ることができる状況になつており、立入、転落防止のための十分な措置が講じられていなかつたのであるから、貴芳にも後記のとおり本件排水路への立入、転落につき重大な過失があるが、本件排水路は十分な危険防止設備を備えていなかつたものと認めるのが相当であり、この点において通常備えるべき安全性を欠いていたものであつて、その管理者たる被告県及び被告改良区の管理には瑕疵があつたというべきである。

五被告国の費用負担者としての責任について

被告国は、新亀田排水路の設置に際し、その費用の六〇パーセントを国庫補助しているが、右設置について瑕疵が認められないことは前記四の6の(二)で判示のとおりであり、本件事故当時、被告国が新亀田排水路の管理につき費用を負担していることを示す証拠は全くない。したがつて、被告国に新亀田排水路(本件排水路)の設置または管理における費用負担者としての責任は認められない。

六過失相殺について

貴芳が本件事故当時満七歳五か月であつたこと、被告県及び亀田町において水死事故防止のための活動が行われていたことは前記認定のとおりであり、原告実及び原告ヒロ各本人尋問の結果によれば、貴芳に同年齢の児童が有する平均的知識及び判断力に欠ける点は全く窺われず、原告実や原告ヒロは貴芳に対し平素から亀田排水路と国鉄信越線の傍で遊ばないよう注意していたことが認められ、右認定に反する証拠はない。

右認定事実によれば、貴芳は本件排水路の危険性を認識し、これに立ち入つて転落の危険性がより高いと考えられる梁の上を渡つて遊ぶ等の危険な行動を回避する能力を有していたものと推認できる。そして、本件排水路にガードレールが設置されていることから本件排水路への立入が禁止されていることを判断できるものであるところ、貴芳は、両親の平素からの注意を無視して本件排水路に入り込んだうえ、転落の危険性のより高い梁を渡つて遊んだという重大な不注意があり、右不注意は本件事故発生の重大な原因になつたものといわざるを得ない。そして、右貴芳の不注意は、貴芳と原告らとの身分関係からすると原告ら被害者側の過失ということもできる。したがつて、損害賠償額の算定につき右過失を斟酌することとし、その割合は、過失の重大性を考慮すると七割と認めるのが相当である。

七損害について

1  貴芳の逸失利益について

貴芳は死亡当時満七歳五か月であつたことは前記認定のとおりであり、原告実及び原告ヒロ各本人尋問の結果によれば、貴芳は健康な男子小学生であつたことが認められるので、本件事故に遭わなければ満一八歳から満六七歳までの四九年間稼動し得たものと推認できる。そして、当裁判所に顕著な昭和五三年度賃金センサス第一巻第一表産業計、企業規模計、学歴計の男子労働者の平均給与額が一月当たり金一九万五二〇〇円、年間賞与その他特別給与額が金六六万二三〇〇円であることが認められ、貴芳も就労時において右の金額の収入を得られるものと推認できるところ、特別の事情の認められない本件においては生活費としてその五割を控除し、ホフマン式計算により中間利息を控除(新ホフマン係数一八、七六五)して貴芳の逸失利益の現在額を算出すると金二八一九万一五九七円(但し、円未満切り捨て。以下同じ。)となる。

(195200×12+662300)×(1−0.5)×18,765−28,191,597

そして、原告らが貴芳の父母であることは前記認定のとおりであるから、原告らは、貴芳の死亡によりそれぞれ右金額の二分の一(金一四〇九万五七九八円)にあたる損害賠償債権を相続により取得したものである。

2  葬儀費用について

弁論の全趣旨によれば、原告らは貴芳の葬儀費として金四〇万円を要し、同額の損害を被つたことが認められる。

3  原告ら固有の慰籍料

原告実及び原告ヒロ各本人尋問の結果によれば、原告らはその長男である貴芳を愛情をもつて養育し、その将来に希望を託していたことが認められ、本件事故により突如として貴芳を失い、それにより重大な精神的苦痛を被つたであろうことは推認するに難くなく、その他諸般の事情を考慮すると原告らの慰籍料はそれぞれ金三〇〇万円と認めるのが相当である。

4  過失相殺後の損害額

右1ないし3を合計すると原告らの損害はそれぞれ金一七二九万五七九八円となるが、前記貴芳の過失を斟酌し、その七割を控除するとそれぞれ金五一八万八七三九円となる。

5  弁護士費用について

弁論の全趣旨によれば、原告らは本件訴訟の提起、追行を原告ら訴訟代理人らに委任し、その費用を支払うことを約束したことが認められるところ、本件訴訟の審理経過、本件事案の難易、認容額等諸般の事情を考慮すると、本件事故と相当因果関係のある損害として原告らが支払を求め得る弁護士費用は、それぞれ金五〇万円と認めるのが相当である。

6  原告らの損害額

以上のとおり、原告らの損害は、それぞれ右4及び5の合計金五六八万八七三九円となる。

八結語

よつて、原告らの被告国に対する甲事件請求は理由がないからこれを棄却し、被告県及び被告改良区に対する乙事件請求は、右被告ら各自に対し、それぞれ金五六八万八七三九円及びこれから弁護士費用を除いた金五一八万八七三九円に対する本件事故の日の翌日である昭和五五年五月八日から支払ずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し、その余の請求は理由がないからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九二条、九三条、仮執行の宣言につき同法一九六条一項、仮執行免脱宣言につき同法一九六条二項を、それぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官山中紀行 裁判官青野洋士 裁判官清水信雄は転補につき署名捺印することができない。裁判長裁判官山中紀行)

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