新潟地方裁判所 昭和59年(わ)55号 判決 1984年7月19日
裁判所書記官
廣瀬一秀
本籍
新潟県三条市南新保一一五五番地
住居
同県同市南新保八番二四号
会社役員
遠藤吉一
昭和一七年三月二一日生
右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官渡邊公進出席のうえ審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人を懲役一年四月及び罰金二〇〇〇万円に処する。
右罰金を完納することができないときは、金五万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、新潟県三条市南新保八番二四号及び同市曲淵三丁目九六番三号において、土木建設用鋼材の販売及びリース等の業を営んでいたものであるが、自己の所得税を免れようと企て、借名預金を設定するなどの方法により所得を秘匿したうえ、
第一 昭和五五年分の実際の総所得金額が三三七七万四〇三円であったにもかかわらず、同五六年三月一六日、同市南新保四番九号所在の所轄三条税務署において、同税務署長に対し、同年分の総所得金額が二七〇万円で、これに対する所得税額が一二万六〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、同年分の正規の所得税額一一三六万四一〇〇円との差額一一二四万三五〇〇円を免れ
第二 同五六年分の実際の総所得金額が四九一八万五六一三円であったにもかかわらず、同五七年三月一五日、前記三条税務署において、同税務署長に対し、同年分の総所得金額が三〇〇万円で、これに対する所得税額が一七万八五〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、同年分の正規の所得税額二一八九万九〇〇〇円との差額二一七二万五〇〇円を免れ
第三 同五七年分の実際の総所得金額が九二五六万六五一五円であったにもかかわらず、同五八年三月一五日、前記三条税務署において、同税務署長に対し、同年分の総所得金額が三七〇万円で、これに対する所得税額が二八万一九〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、同年分の正規の所得税額四八四九万四八〇〇円との差額四八二一万二九〇〇円を免れ
たものである。
(証拠の標目)
判示各事実につき
一 被告人の当公判廷における供述
一 被告人の検察官に対する供述調書三通
一 被告人の大蔵事務官に対する質問てん末書六通
一 被告人作成の答申書一七通及び上申書二通
一 検察官作成の報告書三通
一 大蔵事務官作成の調査書三四通及び写真撮影てん末書
一 検察事務官作成の電話通信書謄本
(法令の適用)
一、罰条
判示第一の所為について刑法六条、一〇条、昭和五六年法律第五四号による改正前の所得税法二三八条一項、二項(懲役刑と罰金刑とを併科)
判示第二及び第三の各所為について所得税法二三八条一項、二項(各懲役刑と罰金刑とを併科)
一、併合罪の処理
判示各罪について刑法四五条前段、四七条本文、一〇条、四八条二項(懲役刑について刑及び犯情の最も重い判示第三の罪の刑に加重)
一、労役場留置
刑法一八条
一、刑の執行猶予
刑法二五条一項
(裁判官 出田孝一)