新潟地方裁判所三条支部 平成10年(ワ)62号 判決 1999年6月22日
新潟県三条市大字上須頃二〇〇番地
原告
伊藤勝通
右訴訟代理人弁護士
高橋賢一
右補佐人弁理士
吉井剛
同
吉井雅栄
埼玉県鶴ケ島市大字脚折一三八六番地六
被告
株式会社ロストアロー
右代表者代表取締役
坂下直枝
主文
一 被告は、別紙イ号物件目録記載の「ロープ連結環」を展示し、または、販売してはならない。
二 被告は、被告の本店、営業所及び店舗に存在する別紙イ号物件目録記載の「ロープ連結環」を廃棄せよ。
三 被告は原告に対し、金三九万二五〇〇円及びこれに対する平成一〇年八月二八日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
四 原告のその余の請求を棄却する。
五 訴訟費用はこれを四分し、その一を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。
六 この判決は、第三項に限り仮に執行することができる。
事実及び理由
以下、別紙イ号物件目録記載の「ロープ連結環」を「イ号物件」、別紙ロ号物件目録記載の「ロープ連結環」を「ロ号物件」という。
第一 請求
一 被告は、イ号物件及びロ号物件を展示及び販売してはならない。
二 被告は、被告の本店、営業所及び店舗に存在するイ号物件及びロ号物件を廃棄せよ。
三 被告は原告に対し、一三二万六八五〇円及びこれに対する訴状送達の日の翌日(平成一〇年八月二八日)から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
第二 事案の概要
一 証拠(甲一ないし四)によれば左記の事実が認められる。
1 原告は、左記の意匠権(以下「本件意匠権」といい、その登録意匠を「本件登録意匠」という。)の意匠権者である。
(一) 意匠に係る物品 ロープ連結環
(二) 出願日 昭和五九年一一月二六日
(三) 登録日 平成元年六月二九日
(四) 物登録番号 第七七〇五八五号
(五) 登録意匠 別紙一(意匠公報(甲二))に示すとおりのロープ連結環の形状
2 原告は、左記の意匠権(以下「類似意匠権(一)」といい、その登録意匠を「登録類似意匠(一)」という。)の意匠権者である。
(一) 意匠に係る物品 ロープ連結環
(二) 出願日 昭和五九年一一月二六日
(三) 登録日 平成元年六月二九日
(四) 登録番号 第七七〇五八五号の類似一
(五) 登録意匠 別紙二(意匠公報(甲三))に示すとおりのロープ連結環の形状
3 原告は、左記の意匠権(以下「類似意匠権(二)」といい、その登録意匠を「登録類似意匠(二)」という。)の意匠権者である。
(一) 意匠に係る物品 ロープ連結環
(二) 出願日 平成七年一〇月一六日
(三) 登録日 平成九年四月一一日
(四) 登録番号 第七七〇五八五号の類似二
(五) 登録意匠 別紙三(意匠公報(甲四))に示すとおりのロープ連結環の形状
4 被告は、輸入品であるイ号物件及びロ号物件を展示販売している(甲五、弁論の全趣旨)。
二 争いのない事実
1 イ号物件は、カラビナと呼称される登山用具であり、岩の隙間に打ち込まれたピトン(ハーケン、金属製の釘のようなもの)と登山用ロープを繋ぐための道具である。
イ号物件の本体変形C型の上端部内側に存在する鉤部は引っ張り強度二五〇〇キログラムを保つための重要な部分であり、登山用として使われるものには必須のものである。
2 ロ号物件は、イ号物件と形状を同じくするプラスチック製のキーホルダーである。
3 被告は、過去三年間(平成七年七月一日から平成一〇年六井末日まで)において、少なくとも年間一〇〇〇個の銀色のイ号物件を販売し、それ以外に少なくとも年間五〇〇個の着色したイ号物件を販売した。
銀色のイ号物件の販売価格は一個一二五〇円であり、それ以外の着色したイ号物件の販売価格は一個一四〇〇円である。
4 被告は、過去三年間(平成七年七月一日から平成一〇年六月末日まで)において、少なくとも年間一五〇〇個の大きいサイズのロ号物件を販売し、それ以外に少なくとも年間一五〇〇個の小さいサイズのロ号物件を販売した。
大きいサイズのロ号物件の販売価格は一個三六〇円であり、それ以外の小さいサイズのロ号物件の販売価格は一個三三〇円である。
三 原告の主張
1 イ号物件及びロ号物件は左記のとおり本件意匠権の権利範囲に属する。
(一) イ号物件について
(1) 同一物品である。
(2) 本件登録意匠とイ号物件は基本的形態においてほぼ等しい。
(3) 相違点は、具体的形態における「変形C状体の断面形状」及び「リング体が弾圧当接する変形C状体の上端部内側の形状」のみである。
(4) 登録類似意匠(一)及び登録類似意匠(二)が、いずれも本件登録意匠の類似範囲内であることを考慮するならば、右相違点は微差であり、イ号物件は、本件登録意匠の類似範囲内にあるといえる。
(二) ロ号物件について
(1) ロ号物件はイ号物件と基本的形態において同一である。キーホルダーと呼ぶか否かは名称の決め方の問題であり、本件登録意匠は連結するものがロープであり、ロ号物件は例えばキーやバッグであり、両者は連結するものが異なるにすぎない。
(2) 相違点は、大きさのみである。
(3) にそれゆえ、ロ号物件は、本件登録意匠の類似範囲内にあるといえる
2 被告が、イ号物件及びロ号物件を展示及び販売する行為は本件意匠権を侵害する。
よって、原告は被告に対し、意匠法三七条一項、二項に基づき、イ号物件及びロ号物件の展示及び販売の差止並びにその廃棄を請求する権利を有する。
また、原告は被告に対し、意匠法三九条二項に基づき、被告のイ号物件及びロ号物件販売行為により原告が被った損害として、実施料相当額の賠償を請求できる。実施料率は七パーセントが相当である。
3 原告の損害額は一三二万六八五〇円であり、内訳は左記のとおりである。
(一) イ号物件について
(1) 銀色のもの
一二五〇円×七パーセント×一〇〇〇個×三年=二六万二五〇〇円
(2) 着色のもの
一四〇〇円×七パーセント×五〇〇個×三年=一四万七〇〇〇円
(3) 合計 四〇万九五〇〇円
(二) ロ号物件について
(1) 大きいサイズのもの
三六〇円×七パーセント×一五〇〇個×三年=一一万三四〇〇円
(2) 小さいサイズのもの
三三〇円×七パーセント×一五〇〇個×三年=一〇万三九五〇円
(3) 合計 二一万七三五〇円
(三) 弁護士費用について
七〇万円
四 被告の主張
1 本件意匠権の無効
(一) 本件登録意匠の本体形状については、ロープ連結環の機能的必然の形状として、C型、D型、変形D型、新D型、O型等が本件登録意匠の出願前に周知である。
本件登録意匠の本体形状、すなわち、全体形状は、創作性が認められないか、認められても低いものであって意匠として保護に値しないものである。
(二) 本件登録意匠及び登録類似意匠(一)、(二)は、変形C型の本体形状の開口部分を閉じるスプリング状部材(リング体)において、意匠の形状を共有しており、右部分が、本件登録意匠の要部といえる。
(三) 外国で頒布された公刊物(乙六号証、八号証の二)には、本件登録意匠の要部であるリング体がそのまま記載されており、本件登録意匠のリング体には創作性が認められない。
(四) このように、本件登録意匠には客観的創作性がなく、本件登録意匠は、意匠法三条一項各号に該当し、意匠法四八条一項一号により本件意匠権は無効とされるべきものである。
2 本件登録意匠の公知性
本件登録意匠と同様のカラビナが、フランス、イタリア、イギリス、アメリカなど欧米諸国において二〇年以上前からヨットのロープ係留具として広く使用されており、本件登録意匠は、その出願時公知のものであって、誤って登録された無効なものである。
3 本件登録意匠との非類似性
左記のとおり、イ号物件の意匠及びロ号物件の意匠は、本件登録意匠と非類似であり、本件意匠権を侵害するものではない。
(一) 本件登録意匠の要部はリング体である。
(二) 本件登録意匠のリング体の形状は、縦長にして下側程幅広で本体内側面にリング体の先端部外側面が接する。
(三) イ号物件及びロ号物件のリング体の形状は、下側程幅広ではなく、リング体の先端部は、その全体が本体の鉤溝内に収められる。また、本体及びリング体がほぼ同じ断面形状の径となるように統一され、全体として突起のない滑らかな調和した形態となっている。
第三 当裁判所の判断
一 被告は、本件登録意匠には客観的創作性がなく、かつ、出願時公知のものであり、誤って登録された無効なものである旨主張するので、この点について検討する。
1 たしかに、公知意匠(または公知意匠に類似する意匠)が存在するのに誤って登録された意匠は、瑕疵ある意匠権ゆえ、右意匠権に基づいて差止請求を受けた相手方は、自己の実施意匠が公知意匠と同一であり、登録意匠の範囲には含まれないとの抗弁(請求権不発生の抗弁)を主張することができる。
2 また、意匠が意匠法三条一項各号に該当し、本来意匠登録を受けられないものであることを十二分に知りながら意匠登録を出願し、意匠登録を受けた者が、右意匠権に基づいて差止請求をすることは、権利の濫用として許されないといえる。
3 しかしながら、登録意匠を無効とする審判がなされていない以上、安易に登録意匠を無効とするべきではなく、その判断は厳格になされるべきところ、本件登録意匠が公知のものであることを立証するための証拠として、被告から書証が提出されているものの、これのみでは未だ本件登録意匠が無効であるという認定をすることはできないものといえる。
二 イ号物件が本件意匠権の権利範囲に属するか否かについて検討するに一件記録によれば以下の事実が認められる。
1 本件登録意匠の構成は左記のとおりである。
(一) ロープ連結環である。
(二) 本体の形状は左記のとおりである。
正面から見て上部側が下部側より幅広い変形C状体であり、右側の上下端部間にはロープを右C状体内に挿入する間隔が設けられている。
C状体の構成杆の断面は円形である。
(三) リング体の形状は左記のとおりである。
C状体の間隔部分に縦長にして下側の方が幅が広いリング体が架設されている。リング体の下端部は、両側が上下にずれる状態でC状体に嵌入されている。リング体の上端部は、C状体の上端部の内側に弾圧当接している。
リング体の下側の幅は上側の幅の約二倍弱である。
2 イ号物件にあらわれる意匠的部分の構成は左記のとおりである。
(一) 金属製のロープ連結環である。
正面から見て上部側が下部側より幅広い変形C状体であり、右側の上下端部間にはロープを右C状体内に挿入する間隔が設けられている。
C状体の構成杆の断面は円形ではなく、別紙イ号図面記載のとおり変形三角形状である。
(二) リング体の形状は左記のとおりである。
C状体の間隔部分に縦長のリング体が架設されている。リング体の下端部は、両側が上下にずれる状態でC状体に嵌入されている。リング体の上端部は、C状体の上端部の内側に弾圧当接している。
リング体の下側の幅は上側の幅よりわずかに広い。
3 本件登録意匠とイ号物件の意匠を対比すると左記のとおりである。
(一) 両意匠は、いずれもロープ連結環の意匠である。
(二) おもうに、この種のロープ連結環においては、本体の形状及びリング体の形状は、そのいずれの部分においても看者の注意を惹くものであり、本件登録意匠の要部を構成しているものといえる。
なかでも、本体においては変形C状体の形状が特に看者の注意を惹く部分といえる。また、リング体においてはC状体の間隔部分に縦長のリング体が架設されて、リング体の下端部の両側が上下にずれる状態でC状体に嵌入され、リング体の上端部が、C状体の上端部の内側に弾圧当接している形状が特に看者の注意を惹く部分といえる。
(三) そして、両意匠におけるC状体の構成杆の断面の形状の相違は、登録類似意匠(二)の断面形状が変形三角形状であっても本件登録意匠の類似範囲内とされていることから、両意匠の右相違の程度は微小であって、両者は看者に対して、極めて類似している、ないしは、同一に近いという印象を与えるものというべきである。
また、両意匠におけるリング体の下側の幅が上側の幅よりどの程度広いかという点における相違は、リング体の他の部分の形状に比べて特に看者の注意を惹く部分とはいえず、両者は看者に対して、極めて類似している、ないしは、同一に近いという印象を与えるものというべきである。
そして、両意匠を全体的に観察した場合においても、看者に与える美感は同一のものというべきである。
4 よって、イ号物件の意匠は本件登録意匠に類似するものといえる。原告は被告に対し、イ号物件の展示及び販売の差止並びにその廃棄を請求する権利を有する。
三 ロ号物件が本件意匠権の権利範囲に属するか否かについて検討するに一件記録によれば以下の事実が認められる。
1 ロ号物件は、大きさの点を除いて基本的形態はイ号物件と同一である。もっとも、イ号物件が金属製の登山用のロープ連結環であるのに対し、ロ号物件はプラスチック製のキーホルダーである。
2 たしかに、意匠は、物品の外観であり、物品と形態とで構成されるものではあるが、意匠権侵害の有無の判断においては、当該意匠にかかる物品が流通過程におかれて、取引者、需要者が両意匠を類似していると認識することにより、当該物品の誤認混同を生じ、意匠権の実質的保護が失われる結果とならないか否かという観点も重要である。
とするならば、本件登録意匠にかかる物品はロープ連結環であるのに対し、ロ号物件はプラスチック製のキーホルダーという全く用途の異なる物品であり、両物品との間に誤認混同の生じるおそれは少ないといえることから、ロ号物件は本件意匠権の権利範囲に属しないものといえる。
四 イ号物件の展示販売により原告の受けた損害について
1 前記第二(事案の概要)二(争いのない事実)の3よりイ号物件の売上高は、少なくとも三年間で五八五万円であることが認められる。
事案の性格上、実施料率は五パーセンドが相当といえる。
したがって、原告は被告に対し、実施料相当額の賠償として二九万二五〇〇円(五八五万円の五パーセント)の支払いを求めることができる。
2 弁護士費用については一〇万円をもって相当とする。
五 よって、主文のとおり判決する。
なお、仮執行宣言は、金銭の支払いを命ずる部分を除いては相当でないので、これを付さないこととする。
(裁判官 小林元二)
別紙一
日本国特許庁
平成1年(1989)9月21日発行 意匠公報 (S) M3-00
770585 意願 昭59―48523 出願 昭59(1984)11月26日
登録 平1(1989)6月29日
創作者 伊藤勝通 新潟県三条市大野畑16番30号
意匠権者 伊藤勝通 新潟県三条市大野畑16番30号
代理人 弁理士 吉井昭栄 外1名
審査官 中川シゲ子
意匠に係る物品 ロープ連結環
正面図
背面図
平面図
底面図
左側面図
A―A 断面図
右側面図
<省略>
別紙二
日本国特許庁
平成1年(1989)10月5日発行 意匠公報 (S) M3-00類似
770585の類似1 意願 昭59―48524 出願 昭59(1984)11月26日
登録 平1(1989)6月29日
創作者 伊藤勝通 新潟県三条市大野畑16番30号
意匠権者 伊藤勝通 新潟県三条市大野畑16番30号
代理人 弁理士 吉井昭栄 外1名
審査官 中川シゲ子
意匠に係る物品 ロープ連結環
左側面図
正面図
A―A 断面図
背面図
右側面図
平面図
底面図
<省略>
別紙三
日本国特許庁 登録意匠番号
平成9年(1997)7月3日発行 意匠公報 (S) 770585の類似2
M3-00類似
意願 平7―31039 (22)出願 平7(1995)10月16日
登録 平9(1997)4月11日
創作者 伊藤勝通 新潟県三条市大野畑16番30号
意匠権者 伊藤勝通 新潟県三条市大野畑16番30号
代理人 弁理士 吉井昭栄 外2名
審査官 遠藤行久
意匠に係る物品 ロープ連結環
参考文献 意登 770585
正面図
背面図
平面図
底面図
左側面図
右側面図
A―A 断面図
<省略>
イ号物件目録
イ号物件に係る図面の説明
イ号物件に係る図面
一 イ号物件に係る図面(以下、イ号図面)の説明
イ号物件は被告が商品名「ホットワイヤー」で販売している金属製の「ロープ連結環」であり、図一はその正面図、図二はその右側面図、図三はA―A指示線断面図、図四は平面図、図五はBーB指示線拡大端面図である。尚、イ号物件は地金の銀色のもの(シルバーと称するもの)と、他に着色されたもの(アナダイズと称するもの)との二種があるが、両者の形態は同一である。
二 イ号物件の形態
イ号物件の形態はイ号図面に記載されているとおり、次の<1>乃至<5>及び<1>、乃至<8>、として特定される。
1 基本的形態
<1> イ号物件は正面から見て、上部側が下部側より巾広い変形C状体である。
<2> 右変形C状体の右側における上下端部間にはロープを該変形C状体内に挿入する間隔が設けられている。
<3> 右間隔には縦長にして下側程巾広のリング体が架設されている。
<4> 右リング体の下端部は変形C状体の下端部にその両側が上下にズレる状態で嵌入されている。
<5> 右リング体の折曲上端部は変形C状体の上端部内側に弾圧当接している。
2 具体的形態
<1>’ 変形C状体はストレート杆の上端部に斜め下方に六〇度程度で傾斜し、ストレート杆の約二分の一の長さの上杆が連設され、この上杆の端部には湾曲して下端部が真っすぐおりずやや内側へ向かった状態にして上杆の長さの約半分の長さの湾曲上短杆が連設され、またストレート杆の下端部には下杆という程でもない湾曲部が存在し、この湾曲部の端部には真っすぐ上がらずやや外側へ、即ち右湾曲上短杆へ向かう下短杆が連設されている。
<2>’ ストレート杆、上杆、湾曲上短杆、湾曲部及び下短杆(変形C状体の構成杆)は、ストレート杆部が断面略三角形状(側辺は凹湾曲辺)、その余の杆部が断面変形三角形状、即ち、内縁より外縁の方が肉薄な構成であり、この内縁の肉厚巾は湾曲上短杆の長さの約三分の一である。また、下短杆の先端部表裏面には一部つぶれた面が存在する。また、湾曲上短杆と下短杆との間のロープを挿入する間隔の長さは湾曲上短杆の長さとほぼ等しい長さである。
<3>’ リング体を構成する線材はその径が変形C状体を構成する杆の内縁肉厚部の約四分の一であり、また、このリング体の下側の巾は上側の巾より僅かに広くなっている。
<4>’ リング体の下端部の両側におけるズレはおよそ一方が他方よりリング体構成線材の径一つ分である。
<5>’ リング体の折曲上端部の変形C状体の上部内側への当接長さはおよそ変形C状体の構成杆の内緑肉厚部とはほぼ等しい長さであり、また、この変形C状体の上部内側には凹部及び鉤部が形成され、この凹部にリング体の折曲上端部が当接するように構成されている。
イ号図面
図1
図2
図3
図4
図5
<省略>
ロ号物件目録
ロ号物件に係る図面の説明
ロ号物件に係る図面
一 ロ号物件に係る図面(以下、ロ号図面)の説明
ロ号物件は被告が商品名「ジャイプワイヤー」で販売している合成樹脂製の「ロープ連結環」であり、図一はその正面図、図二はその右側面図、図三はA―A指示線断面図、図四は平面図、図五はB―B指示線拡大端面図である。尚、ロ号物件は大小サイズの異なる二種が存在する。
二 ロ号物件の形態
ロ号物件の形態はロ号図面に記載されているとおりであり、次の<1>乃至<5>及び<1>’乃至<5>’として特定される。なお、ロ号物件は、大きさがイ号物件の約二分の一である点を除きイ号物件と同一の形態である。
1 基本的形態
<1> ロ号物件は正面から見て、上部側が下部側より巾広い変形C状体である。
<2> 右変形C状体の右側における上下端部間にはロープを該変形C状体内に挿入する間隔が設けられている。
<3> 右間隔には縦長にして下側程巾広のリング体が架設されている。
<4> 右リング体の下端部は変形C状体の下端部にその両側が上下にズレる状態で嵌入されている。
<5> 右リング体の折曲上端部は変形C状体の上端部内側に弾圧当接している。
2 具体的形態
<1>’ 変形C状体はストレート杆の上端部に斜め下方に六〇度程度で傾斜し、ストレート杆の約二分の一の長さの上杆が連設され、この上杆の端部には湾曲して下端部が真っすぐおりずやや内側へ向かった状態にして上杆の長さの約半分の長さの湾曲上短杆が連設され、またストレート杆の下端部には下杆という程でもない湾曲部が存在し、この湾曲部の端部には真っすぐ上がらずやや外側へ、即ち右湾曲上短杆へ向かう下短杆が連設されている。
<2>’ ストレート杆、上杆、湾曲上短杆、湾曲部及び下短杆(変形C状体の構成杆)は、ストレート杆部か断面略三角形状(側辺は凹湾曲辺)、その余の杆部が断面変形三角形状、即ち、内縁より外縁の方が肉薄な構成であり、この内縁の肉厚巾は湾曲上短杆の長さの約三分の一である。また、下短杆の先端部表裏面には一部つぶれた面が存在する。また、湾曲上短杆と下短杆との間のロープを挿入する間隔の長さは湾曲上短杆の長さとほぼ等しい長さである。
<3>’ リング体を構成する線材はその径が変形C状体を構成する杆の内縁肉厚部の約四分の一であり、また、このリング体の下側の巾は上側の巾より僅かに広くなっている。
<4>’ リング体の下端部の両側におけるズレはおよそ一方が他方よりリング体構成線材の径一つ分である。
<5>’ リング体の折曲上端部の変形C状体の上部内側への当接長さはおよそ変形C状体の構成杆の内緑肉厚部とはほぼ等しい長さであり、また、この変形C状体の上部内側には凹部及び鉤部が形成され、この凹部にリング体の折曲上端部か当接するように構成されている。
ロ号図面
図1
図2
図3
図4
図5
<省略>