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新潟地方裁判所長岡支部 平成7年(ワ)110号 判決 2001年2月15日

甲事件原告・乙事件被告

総評・全日本建設運輸連帯労働組合新潟支部

(以下「原告組合支部」という。)

右代表者執行委員長

佐藤松喜

乙事件被告

佐藤松喜

乙事件被告

総評・全日本建設運輸連帯労働組合新潟支部岡惣分会

(以下「原告組合分会」という。)

右代表者分会長

岡栄一

甲事件原告・乙事件被告

岡栄一

甲事件原告

その余の甲事件原告らは別紙1原告目録記載のとおり

丙事件原告

別紙1原告目録記載のうち,大渕順一,大塚新松,丸山泰雄,金子武弘

甲事件原告ら・乙事件被告ら訴訟代理人弁護士

今井誠

髙野義雄

右今井誠訴訟復代理人弁護士

辻澤広子

丙事件原告ら訴訟代理人弁護士兼

五百蔵洋一

右髙野義雄訴訟復代理人弁護士

平澤千鶴子

森井利和

馬場泰

甲事件被告・乙事件原告・丙事件被告

株式会社岡惣

(以下「被告会社」という。)

右代表者代表取締役

岡きよ子

右訴訟代理人弁護士

渡辺修

吉沢貞男

山西克彦

冨田武夫

伊藤昌毅

峰隆之

(注)以下,単に「原告」という場合は甲丙事件における原告を,単に「被告」という場合には甲丙事件における被告をそれぞれ指称する。なお,乙事件における被告佐藤松喜は,甲丙事件における原告となっていないので「被告佐藤松喜」と指称するが,甲丙事件における原告らと併せて指称する場合には,一括して「原告ら」と指称することとする。

また,書証番号の記載は,特に明記しない限り甲事件のものである。

主文

[甲事件]

一1  被告会社が,別表1懲戒処分一覧のうち,平成6年3月28日及び同年7月25日に懲戒処分対象者たる原告らに対し,同年12月30日に原告岡栄一に対し,それぞれなした各懲戒処分は,いずれも無効であることを確認する。

2  被告会社は,別表2原告認容額一覧の賠償認容額欄のとおり,同表の原告らに対し,それぞれ,賠償認容額欄記載の各金員及びこれに対する平成7年6月14日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

3  被告会社は,原告組合支部に対し,金300万円及びこれに対する平成7年6月14日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

4  甲事件原告らのその余の請求はいずれも棄却する。

[乙事件]

二1 原告組合支部及び被告佐藤松喜は,被告会社に対し,各自金88万円及びこれに対する平成6年12月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

2 被告会社の原告岡栄一に対する請求を棄却する。

3 被告会社の原告組合分会に対する訴えを却下する。

[丙事件]

三1 原告大渕順一,同大塚新松,同丸山泰雄及び同金子武弘が,いずれも被告会社に対して労働契約上の権利を有する地位にあることを確認する。

2 被告会社は,平成11年1月以降本判決確定に至るまで,毎月28日限り,原告大渕順一に対し金23万6800円,同大塚新松に対し金23万9770円,同丸山泰雄に対し金23万5900円,同金子武弘に対し金23万8400円の割合による金員をそれぞれ支払え。

3 原告大渕順一,同大塚新松,同丸山泰雄及び同金子武弘の訴えのうちの本判決確定の日の翌日以降,毎月28日限りの各金員請求に係る部分をいずれも却下する。

[甲乙丙事件]

四 訴訟費用は,甲乙丙事件を通じ,これを5分し,その3を被告会社の負担とし,その余を甲事件原告ら及び乙事件被告佐藤松喜の連帯負担とする。

五 この判決は,第一項2,3,第二項1及び第三項2に限り,仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求の趣旨

一  甲事件の請求

1  被告会社が,別表1懲戒処分一覧のとおり,平成6年3月28日,同年7月25日及び同年12月30日に,懲戒処分対象者たる原告らに対してなした各懲戒処分は,いずれも無効であることを確認する。

2  被告会社は,別表3<略>原告計算額一覧の賠償請求額欄のとおり,同表の原告らに対し,それぞれ,賠償請求額欄記載の各金員及びこれに対する平成7年6月14日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

3  被告会社は,原告組合支部に対し,金1100万円及びこれに対する平成7年6月14日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

二  乙事件の請求

乙事件被告らは,被告会社に対し,各自金88万円及びこれに対する平成6年12月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

三  丙事件の請求

1  主文第三項1と同旨

2  被告会社は,平成11年1月以降毎月28日限り,原告大渕順一に対し金23万6800円,同大塚新松に対し金23万9770円,同丸山泰雄に対し金23万5900円,同金子武弘に対し金23万8400円の割合による金員をそれぞれ支払え。

第二事案の概要

一  はじめに

甲事件は,原告組合支部に属して原告組合分会を結成した従業員たる原告らが種々の組合活動をしたことに対し,使用者たる被告会社において不当労働行為を行ったとして,その懲戒処分の無効確認,無効な出勤停止処分に伴って不支給とされた賃金の支払い,ストライキ解除通告後の労働時間について不支給とされた賃金の支払い,他の従業員に比較して低額な一時金しか支給されなかった不法行為に基づく損害賠償及び被告会社の団結権侵害による精神的苦痛に対する慰謝料の支払いを求めるとともに,原告組合支部自身も被告会社に対して団結権侵害による不法行為に基づいて損害賠償を求めた事案である。

これに対し乙事件は,被告会社が,原告組合支部が行ったストライキは正当な争議行為とはいえず違法な業務妨害行為であるとして,原告組合支部及びその執行委員長並びに原告組合分会及びその分会長に対して,不法行為による損害賠償を請求する事案である。

丙事件は,同事件原告ら4名が被告会社から整理解雇されたが,これは整理解雇としての合理的な理由を欠き解雇権の濫用があり,また,組合活動嫌悪を動機とする不当労働行為であるから無効であると主張して,従業員たる地位確認と賃金支払いを請求する事案である。

二  争いのない事実等

1  当事者

(一) 被告会社は,生コンクリート製造販売業,砂利採取製造販売業等を営む昭和36年設立の株式会社であり,平成5年4月の社名変更後の会社の規模は,資本金2000万円,平成5年11月10日当時の従業員数は38名(後記2)である。

(二) 原告組合支部は,昭和62年4月,新潟県小千谷地域において建設業等を営む使用者のもとで働く労働者によって結成された労働組合であり,平成8年2月当時の組合員は約150名である。原告組合支部は,平成12年5月,従前の名称「小千谷支部」を「新潟支部」と変更した。原告組合支部の組合員は,上部組織である総評・全日本建設運輸連帯労働組合にも個人の資格で加盟している。

原告組合支部には,下部組織として,職場ないし地域別に設けられた11位の分会があり,原告組合分会は平成5年11月に結成されたところ,原告組合支部の規約によれば,同支部が使用者と労働協約を締結し,分会は,日常の職場での活動単位として,原告組合支部の方針を具体的に推進するものとされている。

2  原告らの労働契約及び原告組合分会の結成

原告岡栄一及び別紙1原告目録記載の原告らは,平成5年11月10日当時,被告会社の従業員であったが(<証拠略>は同年12月1日当時の従業員名簿である。),同日,その他の従業員らと共にいずれも原告組合支部に加入して合計27名が組合員となり,下部組織として原告組合分会を結成した。(<証拠略>,顕著な事実)

3  懲戒処分等

(一) 平成6年3月28日の懲戒処分

被告会社は,平成6年3月28日,別表1懲戒処分一覧のとおり,原告岡栄一に出勤停止7日,原告位下公男ほか4名にけん責の懲戒処分を行った。

右出勤停止による原告岡栄一の逸失賃金は金7万3100円である。

(二) 平成6年7月25日の懲戒処分

被告会社は,平成6年7月25日,別表1懲戒処分一覧のとおり,原告位下公男に出勤停止5日の懲戒処分を行った。

右出勤停止による原告位下公男の逸失賃金は金5万0050円である(これが同人の別表3原告計算額一覧・出勤停止分欄の金額である。)。

(三) 平成6年12月30日の懲戒処分

被告会社は,平成6年12月12日に原告組合分会の組合員らにより被告会社敷地において行われた争議行為に関連して,平成6年12月30日,別表1懲戒処分一覧のとおり,原告岡栄一に出勤停止1か月,原告位下公男ほか13名にけん責の懲戒処分を行った。

右出勤停止による原告岡栄一の逸失賃金は金23万1800円である(これと前記(一)の逸失賃金の合計が,同人の別表3原告計算額一覧・出勤停止分欄の金額である。)。

(四) 争議行為を巡る賃金一部不払い

被告会社は,平成6年12月12日の争議行為に関連して,別表3原告計算額一覧・1日分欄のとおり,争議行為に参加した原告岡栄一ほか17名に対し,平成6年12月分賃金の1日分を一律支払わなかった。

右不払い分のうち勤務2時間分の賃金は,同表・2時間分欄のとおりである。

(五) 平成6年冬期一時金の査定格差

被告会社は,平成6年12月21日,別表3原告計算額一覧・一時金支給額欄のとおり,原告岡栄一ほか8名に平成6年冬期一時金を査定して支給した。

右支給額と当時の基本給の1.5か月分との格差は,同表・格差欄のとおりである。

4  整理解雇

(一) 被告会社は,平成10年11月21日,原告大渕順一,同大塚新松,同丸山泰雄及び同金子武弘(以下「原告大渕順一ら」ともいう。)に対し,「経営上やむを得ない事由」があるとの理由により,同年12月25日付けで原告大渕順一らを解雇する旨の意思表示(以下「本件整理解雇」という。)をした。

(二) 被告会社は,平成12年5月24日の本件第12回口頭弁論期日において,原告大渕順一らに対し,本件整理解雇が無効とされた場合に備えて解雇の意思表示(以下「本件予備的整理解雇」という。)をした。

(三) 被告会社における賃金支払いは,毎月20日締め同月28日払いである。被告会社は,本件整理解雇により,原告大渕順一らの就労を拒絶し,原告大渕順一らに平成10年12月21日以降の賃金を支払わない。

平成10年12月21日以降の確実な賃金支給額は,原告大渕順一につき月額23万6800円,同大塚新松につき月額23万9770円,同丸山泰雄につき月額23万5900円,同金子武弘につき月額23万8400円である。

5  被告会社における就業規則の内容

(一) 平成6年5月以前の被告会社の就業規則(<証拠略>)

(1) 懲戒はけん責,減給,出勤停止及び懲戒解雇の4種類で,けん責は始末書を取り将来を戒め,出勤停止は始末書を取り7日以内の出勤を停止する(就業規則35条)。

(2) 懲戒事由としては,勤務怠慢,素行不良等,規則に違反し会社の秩序・風紀を乱したとき(同規則36条2号),他人に対し暴行脅迫を加え又その業務を妨害したとき(同5号),職務上の指示命令に従わず職場の秩序を乱し又乱そうとしたとき(同10号)等がある。

(3) 賞与(一時金)は臨時の賃金で,会社の営業成績により支給することがあり,時期は概ね8月,12月の2回とする(賃金規定4条,5条)。

(4) 解雇事由としては,事業の縮小等止むをえない業務の都合により必要があるとき(就業規則21条3号)等がある。

(5) 休業に関する規定はない。

(二) 被告会社の新しい就業規則(「平成6年6月1日実施」等とされ,同年6月21日ころに労働基準監督署が受理したもの,<証拠略>)

(1) 懲戒はけん責,減給,出勤停止及び懲戒解雇の4種類で,けん責は始末書を取り将来を戒め,出勤停止は出勤を停止し,その期間の賃金を支給しない(就業規則39条)。なお,出勤停止期間につき7日間の上限はなくなった。

(2) 情状によりけん責,減給または出勤停止とすべき懲戒事由としては,勤務怠慢,素行不良,本規則違反等で会社の秩序を乱したとき(同規則40条2号),故意又は不注意のため建物,機械設備,製品その他物品を破損し紛失したとき(同3号),他人に対し暴行脅迫を加え又その業務を妨害したとき(同4号),故意又は重大な過失によって会社に損害を与えたとき(同8号),業務上の指示命令に従わず職場の秩序を乱したとき(同9号),その他前各号に準ずる行為により秩序を紊したとき(同10号)等がある。

(3) 賞与(一時金)の規定は前記(一)(3)と同様である(賃金規定4,5条)。

(4) 解雇事由としては,事業の整理・縮小その他人員縮小の必要があるとき(就業規則29条3号)等がある。なお,「止むを得ない業務の都合により」との文言は削除された。

(5) 休業は業務上の都合により行われ,会社の責に帰すべきときは6割の限度で賃金を支給する(同規則32条)。

三  争点及び争点に関する当事者の主張<当事者の主張略>

1  <1>平成6年3月28日,<2>同年7月25日,<3>同年12月30日の各懲戒処分の有効性

2  本件ストライキ終了後のストライキ参加者の賃金請求権

3  被告会社の不当労働行為により従業員たる原告ら及び原告組合支部が被った損害の賠償請求

4  違法な本件ストライキにより被告会社が被った損害の賠償請求

5  本件整理解雇及び本件予備的整理解雇の有効性

第三争点に対する判断

一  判断の前提となるべき事実

原告組合支部と被告会社との労使紛争の経緯等につき,関係各証拠によれば,以下の各事実が認められる。

1  被告会社の沿革等

被告会社は,昭和36年4月に設立され,同社生コン部は昭和43年9月に設置され,現在まで営業を継続している。同部の業務内容には,製造,輸送,試験があり,まずバッチャープラントにおいて主原料のセメントに砂利・砂といった骨材及び水,混和剤を練り混ぜる方法で製造し,これをミキサー車に積載して工事現場まで輸送し,荷卸し(打設)する。試験業務は,出荷する生コンクリートの品質保持のため各種の検査の実施にあたる。被告会社にはこの他に,砂利部及び総務・管理部門が存在する。

被告会社の生コンクリート製造販売の出荷量は,昭和54年度から平成元年度にかけ,概ね4万から6万立方メートルで推移し(昭和55年度は一時的な需要原因のため,約10万8700立方メートルであった。),平成2年度から平成5年度までは,概ね4万立方メートル前後で推移した。

被告会社は,昭和61年12月,本店所在地近隣の新潟県小千谷市高梨町<以下略>に工場(以下「被告会社工場」という。)を設置し,同所において現在まで操業している。

被告会社工場には,搬入道路の出入口付近に事務所,試験室,出入口正面奥には生コンクリートプラント,出入口右手奥に砂利プラント,汚水処理施設がそれぞれ設置され(別紙2<略>図面),生コンクリートプラントは,生コンクリートの製造設備である「バッチャープラント」1か所その他の設備で構成され,付近に「生コン部休憩室」が設置され(別紙3<略>図面),セメントサイロ近傍に「E棟」がある(別紙2図面)。

被告会社は,オーナー一族(被告会社本店所在地に居住)の岡惣四郎が従前より経営していた同族会社であり,「合資会社岡惣砂利店」と「株式会社高梨生コン」が平成5年4月に合併して「株式会社岡惣」となって現在に至っている。経営者(社長)は,平成5年5月ころまでに同族の岡弘(惣四郎の子)にかわった(その後,平成7年5月には同族の岡周作にかわったが,周作は平成11年7月1日死亡し,周作の妻(弘の子)である岡きよ子が就任した。)。

被告会社における平成5年11月当時(原告組合分会結成前)の職制は,岡弘が社長,岡周作が専務であって,さらに管理職として(一)生コン部長(総務・管理担当,勝野剛),(二)生コン部製造課長(生コンクリートプラント担当,和田利明),(三)砂利部長(金子三男)がいた。

原告岡栄一及び別紙1原告目録記載の原告らは,いずれも昭和40年ころから昭和63年ころまでに被告会社に入社し,生コン部輸送担当あるいは砂利部運転手,試験室勤務,オペレーターとして稼働していた。同人らには従前,賃金のみならず,賞与(一時金)が支給されていたが,一時金の金額や従業員毎の格差の有無については,オーナー一族が明確な基準もなく一存で決定していたものであり,詳細は不明である。

また被告会社では,従前懲戒処分の発令はなかった。定年後,60歳を超えて勤務を継続した従業員も存在した。

(<証拠・人証略>)

2  組合分会結成直後の状況

原告岡栄一及び別紙1原告目録記載の原告らをはじめとする27名(当時の管理職以下全従業員数は38名)は,平成5年11月10日,いずれも原告組合支部に加入し,下部組織として原告組合分会を結成し(前記第二の二2),原告組合支部が「労働組合法上の交渉当事者にあたる」と被告会社に通知された。

原告組合支部は,同日,被告会社に対し,原告組合分会事務所(以下「分会事務所」という。)の貸与等,協議合意条項採用,賃金・労働時間の諸問題につき,団体交渉を行うよう文書で申し入れ,同月22日,被告会社と第1回の団体交渉が行われたが,申し入れに対する回答は,同月26日付けの被告会社回答書によりなされた。

被告会社は,同月26日,原告組合支部と原告組合分会に宛て,同月30日に団体交渉を行う旨回答したが,さらに同月30日,原告組合分会に宛て,「貴分会よりの要求事項については企業内の事として分会長代表者との間に於て円満な話し合を基本に完結を致したく」「尚団体交渉等の進め方については貴分会長以下三役と会社側代表者同数により行いたい旨申し添い(ママ)ます」と文書で申し入れた。

原告組合支部と被告会社は,団体交渉のうえ,同年12月15日,朝礼参加時の賃金未払分と有給休暇取得時に賃金及び一時金をカットした分を,過去2年分に限り,同月30日に支払う旨合意した。

さらに原告組合支部と被告会社は,同年12月22日,<1>36協定を原告組合支部と締結し,平成6年3月末日までに内容を協議する,<2>分会事務所は会社敷地内に与え,詳細は早期決定するよう努力する,<3>冬期一時金を組合員一律43万円とするなどを合意した。

原告組合分会は,当時,被告会社工場の生コン部休憩室を事務所として利用していたが,被告会社は,平成5年12月22日,原告組合支部と原告組合分会に宛て,分会事務所につき「現行通り利用を認めます。細部は検討中です」と回答した。

(<証拠・人証略>)

3  組合員の減少・脱退と平成6年の春闘

原告組合分会の組合員数は,結成当時27名(全従業員38名中)であって(前記2),当時の事務・管理部(生コン部長勝野剛以下6名)のうち1名,生コン部輸送担当(15名)のうち14名,生コン部試験室(4名)のうち3名,生コン部製造課(製造課長和田利明以下3名)のうち1名,砂利部(砂利部長金子三男以下10名)のうち8名が,いずれも組合員であった。

原告組合分会の組合員和田和夫(生コン部輸送担当運転手),同阪詰光治(砂利部オペレーター)は,平成6年1月下旬,被告会社を定年退職したが,被告会社に再雇用されることはなかった(阪詰光治はその後原告組合支部を脱退し,イズミ産業に採用された。後記7)。和田和夫の再雇用問題で,原告組合支部の要請に対し,被告会社は「現行どおり60歳で退職せよ」と返答するのみであった。

被告会社は,平成5年11月11日,生コン部長勝野剛,砂利部長金子三男,製造課長和田利明の3名(いずれも非組合員)を新たに取締役に就任させ,勝野剛を総務部長,和田利明を生コン部長とするとともに,生コン部輸送担当運転手の佐藤菊一と砂利部従業員大平正明(いずれも非組合員)を同様に取締役とし,さらに同月22日,「生コン部次長」「砂利部次長」のポストを新設し,佐藤菊一を生コン部次長に,大平正明を砂利部次長とした。

組合員和田孝司(事務・管理部唯一の組合員,事務・総務係)は,平成6年1月31日,原告組合支部を脱退した(その後同人は,被告会社が新設した「総務課長」のポストに就任した。)。

組合員金子正男(生コン部輸送担当運転手),同阪詰秀逸(生コン部輸送担当運転手),同水瀬正男(砂利部オペレーター)の3名は,同年2月14日,原告組合支部を脱退した(その後3名は,被告会社が新設した「営業課長」「輸送課長」「砂利部係長」のポストに就任した。)。

さらに組合員大平由広(生コン部輸送担当運転手)は,同年2月10日,同安部貞夫(砂利部オペレーター)は同月27日,原告組合支部を脱退した(その後2名は,自己都合あるいは定年退職した。)。

以上の結果,同月末には,原告組合分会の組合員数は19名(全従業員36名中)まで減少した(別表5<略>)。

原告組合支部は,同年3月7日,被告会社に対し,「94春闘要求」として,協議合意条項採用,賃金・労働時間の諸問題(賃上げ,休暇,退職金,福利厚生,組合活動への便宜等)の要求を行ったところ,被告会社は,同月25日,要求に対する諾否と「基本給の2.5%±αの賃上げを実施する。(αは勤務成績に基づいて決定する。)」を記した回答書を発し,被告会社において従業員の賃金査定制を導入する旨表明した。

原告組合支部は右査定制導入に抗議したが,被告会社は,同年5月分賃金から非組合員の賃上げを実施し,組合員の賃上げは実施しないとの対応をとった(組合員分は,平成7年2月28日に支払われた。)。

(<証拠・人証略>)

4  分会事務所の設置,就業規則改訂,夏期一時金交渉

分会事務所に関し前記2のとおり合意・回答が存在し,原告組合支部は「E棟」2階倉庫の貸与を希望していたものの,被告会社は,平成6年3月20日ころ,原告組合支部と事前協議せず一方的に,被告会社工場の汚水処理施設付近にプレハブ平屋を設置して,分会事務所として貸与することとし,同年5月ころ,生コン部休憩室を組合活動のために使用することを禁止した(別紙3図面参照)。

原告組合支部は,同年5月25日,被告会社に対し,はじめてストライキ(3時間の時限スト)を行った。

被告会社は,同年4月13日,小出労働基準監督署から,36協定なしの時間外就労や就業規則の一部違法規定(年次有給休暇)の是正勧告を受けたところ,これを契機に新しい就業規則を作成(<証拠略>,前記第二の二5(二),ただし「管理職手当」に関する部分は同年10月ころ作成)することとし,同年6月4日,「就業規則を全面的に改訂・施行する」と原告組合支部に通知し,意見を求めた。原告組合支部は,同月9日,大要「意見は提出するが,分量が多く,大幅な内容変更が行われているので,変更理由の説明を求めるため,団体交渉を要求する」と回答した。

これに対し被告会社は,同月14日,就業規則改訂の件で同月27日に団体交渉を行うと申し入れた。ところが一方では,是正勧告の期限が平成6年6月16日であったことから,小出労働基準監督署に対しては,同月16日,「組合から意見書の提出がないので就業規則改訂に関する組合の意見書は提出できない」と回答する対応をとった。小出労働基準監督署は新就業規則(<証拠略>)の届出を受理し,被告会社は同年6月21日,右受理を従業員らに通知した。

原告組合分会の組合員らは,同年6月27日,生コン部休憩室の使用を禁止されたため,屋外で組合活動の集まりを行ったところ,被告会社は,原告組合分会に宛て,これが無許可集会であるから禁止すると通告した。

原告組合支部と被告会社は,平成6年夏期一時金につき,同年7月15日から同年8月11日まで合計4回の団体交渉をし,被告会社は「1.3か月±α」を支給する旨申し入れたが,原告組合支部は,査定制に抗議するとともに,従前の経緯で「被告会社が組合敵視している」旨非難し,被告会社は「就業規則改訂で意見を出さないのは責任放棄で,組合敵視と見なすことは異常」と反論するなど合意に至らず,被告会社は,同年8月10日,非組合員に対し夏期一時金を支給し,組合員には支給しないとの対応をした(組合員分は,平成7年2月28日に支払われた。)。

(<証拠・人証略>)

5  原告大塚新松の退職問題,イズミ産業の設立,冬期一時金交渉

被告会社は,原告組合支部と協議することなく,組合員原告大塚新松(生コン部輸送担当運転手)に対し,平成6年10月24日ころ,業務の都合による退職を求めた。

これに対し原告組合支部は,同月28日,組合員の労働条件事項であるとして団体交渉を申し入れ,翌11月15日,被告会社と団体交渉が行われたが,被告会社は,原告組合支部と交渉すべきか,大塚新松の処遇をどうするかは今後検討すると応じた。

ところで被告会社は,同年10月25日,資本金500万円の30パーセントないし50パーセントを出資して,イズミ産業を設立登記した。

イズミ産業は,被告会社工場所在地を本店とし,被告会社工場の事務所に「株式会社 岡惣 有限会社 イズミ産業」と看板を掲げ,代表取締役には岡きよ子(前記1)の妹の夫である田中勉,取締役には岡周作(当時被告会社専務),岡きよ子(当時被告会社総務・管理係),勝野剛(前記1),和田孝司(前記3),金子正男(前記3),阪詰秀逸(前記3)が就任し,独自の従業員は平成8年3月まで一切存在せず,「セメント・生コン販売,砂利・砂・砕石等の販売」を目的とするなど,被告会社の実態との区別が困難な会社であった。

原告組合支部は,平成6年11月11日,イズミ産業の設立・経営が組合員の労働条件に影響するとして団体交渉を申し入れたが,前記団体交渉(同月15日開催)では,被告会社が交渉に全く応じなかった(以後,後記6に至っても交渉に一切応じなかった。)。

原告組合支部は,被告会社に対し,平成6年冬期一時金の要求を行っていたところ,被告会社は,同月15日,原告組合支部と原告組合分会に宛て,一時金を「基本給の1.2ケ月±σ(σは,人事考査により決定する。)」の金額を支給するという査定制を前提とし,あわせて36協定不存在の解消を要求する回答書を発した。

原告組合支部と被告会社は,右一時金の回答を巡り,同月29日に団体交渉を行ったが,原告組合支部は査定制の前提に対して抗議し,合意に至らなかった。なお,平成6年夏期一時金や冬期一時金に関する団体交渉において,被告会社側責任者として専務岡周作が出席していたが,同人は「即答できない」「(自分は)最高責任者ではない」との立場に終始した。

原告組合支部は,同年12月12日,被告会社に対し,第2回目のストライキ(本件ストライキ)を行った。原告組合支部は,同日午前8時20分,原告組合分会の組合員全員が参加するストライキ(実施期間は同日午前8時20分から解除通告まで)を文書で被告会社へ通告して開始し,同日午後3時,解除通告を同様に文書で行った。

被告会社は,同月14日,原告組合支部と原告組合分会に宛て,一時金を「1.5ケ月±σ(σは成績査定による。)」という修正回答を行い,原告組合支部と被告会社は,同月15日に団体交渉を行った。原告組合支部は査定制の前提に対して抗議した。

しかしながら一転して,原告組合支部と被告会社の間に,同月20日,「平成6年度年末賞与について1.5ケ月±σ,σは人事査定による,但し,減額幅は最大0.4ケ月とする。支払日 平成6年12月21日とする」旨の合意が成立した。

ところが被告会社は,平成6年12月29日,原告組合支部と協議することなく,組合員たる原告大塚新松(本項前記)に対し,翌年1月1日付けで砂利部オペレーターへの配置転換を命じた(その後,当庁裁判官の仮処分手続での話し合いを契機に和解が成立し,平成7年10月1日,同人に対し,生コン部輸送担当運転手への配属が発令された。)。

被告会社は,平成7年5月上旬,右仮処分手続(街頭宣伝活動差止)を申し立て,原告組合支部らは,同月24日,甲事件の訴えを提起した。被告会社は,同年12月27日,乙事件の訴えを提起した。

(<証拠・人証略>)

6  希望退職募集,配置転換等,処遇格差,36協定問題

被告会社は,原告組合支部と協議することなく,平成7年9月19日ころから約1か月間,被告会社工場の事務所内に希望退職者の募集を掲示し,同年12月6日には,再び募集を掲示するとともに,朝礼で従業員に周知した。

原告組合支部は,同月13日,被告会社に対し,協議がないことに抗議するとともに,希望退職に関し団体交渉を申し込み,募集理由を資料を示して具体的に説明するよう求め,同月19日,平成8年1月20日,同年2月21日と合計3回の団体交渉が行われ,同月13日にはストライキ(午前8時40分開始,午前10時30分解除)を行った。

被告会社は,右各団体交渉において,赤字額を口頭で述べたものの,「経営権の侵害だから,経営についての資料提示は基本的に考えていない」として,新潟県全体と地区生コン協組の出荷量を示す資料のみを提示し,被告会社に関する経営資料提示に一切応じなかった。また経営圧迫の原因は,人件費ではなく「業務妨害等」であると説明した。

また被告会社は,原告組合支部と協議することなく,平成8(ママ)年12月31日付文書により,組合員原告大平昭伊(生コン部試験室勤務),同丸山泰雄(生コン部製造課勤務)に対し,平成8年1月1日以降,生コン部輸送担当運転手への配置転換を命じた。

原告組合支部は,右配置転換の理由を説明するよう団体交渉を求めたが,被告会社は,前記同月20日,同年2月21日の各団体交渉において「出荷量が減少した」「業務の必要」と口頭で説明するのみであった。

被告会社は以後,希望退職募集,配置転換等の問題に関し,しきりに原告組合支部に対して団体交渉を持ちかけたが,資料の提示を事前に求める原告組合支部の要請に一切応じず,平成8年2月18日,新潟県地方労働委員会のあっせん応諾を拒否し,同年6月21日,この姿勢を原告組合支部に回答した。

原告組合支部は,被告会社の右姿勢に抗議するため,原告大渕順一(生コン部輸送担当運転手)をはじめとする原告組合分会所属の組合員ら(全17名)をして,同年春ころ,赤腕章を着用する活動を行うとともに,同年3月28日,被告会社が団体交渉における誠実交渉義務に違反しているなどとして新潟県地方労働委員会に対し救済命令を申し立てた。

ところでイズミ産業(前記5)は,平成8年3月に1名,同年4月に1名,同年6月に1名の従業員を採用したが,このうち2名は元被告会社従業員大平由広,安部貞夫(いずれも前記3)であり,同年7月にはさらに2名(うち1名は被告会社定年退職者の阪詰光治(前記3))が採用され,以上5名全員が被告会社へ出向するとして被告会社で働いていた。

一方で,平成8年7月当時の原告組合分会の組合員数は,平成6年2月末(前記3)以降,右大平由広,安部貞夫以外に組合員2名が定年退職し,組合員1名及び非組合員1名が自己都合退職し,非組合員1名が新採用されたことにより,16名(全従業員31名中)まで減少していた(別表5)。

被告会社は,平成8年6月ころから,天候や現場の都合上生コンクリート出荷が減少した際,同社生コン部輸送担当運転手で原告組合分会所属者には草刈りや構内の掃除等を命じる一方で,イズミ産業からの出向者には生コンクリート輸送に従事させる処遇を行った。

原告組合支部は,この差別処遇に抗議して,平成8年7月10日,被告会社に対し時限ストライキを実施するとともに,過積載に関する新潟陸運支局の口頭是正勧告(平成7年11月,イズミ産業に対し),新潟運輸局の文書是正指導(平成8年4月,被告会社に対し),車両使用停止処分(平成8年4月,イズミ産業に対し)を受けて,組合員らをして,平成8年7月10日,被告会社工場付近道路上において,被告会社ミキサー車の停止を求め,車両後部に昇って過積載の有無を確認する活動を行った。

原告組合支部は,同年8月20日,再び被告会社の姿勢に抗議するとともに,同月29日,イズミ産業従業員との差別処遇改善と引き替えに,36協定締結に向けた対立点(有効期間等)で被告会社に譲歩する旨申し入れた。

ところが被告会社は,同月30日,イズミ産業からの前記出向者5名を含めれば過半数を組織する労働組合が存在しないとして,「株式会社岡惣従業員代表選出委員会」(委員長・「総務課長」和田孝司(前記3))の提示する従業員代表(労働基準法36条1項)である「砂利部係長」水瀬正男(前記3)との間で,同年9月,原告組合支部と何ら協議なしに,新たな36協定を締結した。

新潟県地方労働委員会は,原告組合支部の前記救済命令申立てに関し,平成9年1月,イズミ産業に関する交渉拒否を含めて,被告会社の原告組合支部との団体交渉における誠実交渉義務違反を認め,ポスト・ノーティスを命じる救済命令を出した。

これに対し被告会社は再審査を申立てたものの,中央労働委員会は平成11年8月4日,被告会社のより具体的な内容の誠実交渉義務違反を認めた(取消訴訟は提起されず,再審査の判断が確定した。)。

(<証拠・人証略>)

7  政党調査団,玉石選別作業,過積載問題,ロックアウト

原告組合支部は,救済命令(前記6)を受け,平成9年2月,新潟県小千谷地域の建設会社に対し,右命令の内容を周知させるとともに,被告会社への指導を要請し,改善されなければ国の方針に従って公共工事に参加させないよう申し入れた。

参議院議員を筆頭とする政党調査団は,同年10月13日,小千谷市役所や地区生コン協組等を視察し,被告会社と原告組合支部との労使紛争の実態を調査した。これに伴い原告組合支部は,被告会社周辺での街頭宣伝活動を再開した。これに対し,被告会社は,同月21日,原告組合支部と原告組合分会に宛て,その街頭宣伝活動を非難するとともに,同月23日,原告組合支部が政党調査団を動員して,被告会社を公共工事から締め出す活動を行っており,「無法なやり方」であると従業員らに説明した。

被告会社は,玉石需要に応じる砂利販売の一環として必要と称し,同年11月末ころから,被告会社工場敷地内で,重量が数十キロに及ぶ大玉石を山と積み上げ,それらを人力で選別する作業を従業員らに命じるようになり,同年12月の降雪時,原告組合分会の組合員に同作業を行わせた。

原告組合支部は,右作業が降雪による危険や人力に耐えない不当な作業であるとして,被告会社へ抗議を行い,作業従事を拒否した。これに対し,被告会社は,平成10年1月14日,原告大渕順一(前記6),原告大塚新松(前記5,6),原告金子武弘(生コン部輸送担当運転手等)に対し,右作業の業務指示に速やかに従うよう命ずるとともに,従わない場合には懲戒処分があり得る旨警告する文書を交付した。

ところが右作業に関しては,小出労働基準監督署が安全ではないと指導したので,一転して被告会社は,同月23日,新たに7項目の安全対策(人力を限定,石の取崩しには機械を使用,点検,誘導者等の安全措置,着雪,悪天候への対応等,丙事件・<証拠略>)をとるよう従業員に指示することとなった。

また,新潟県小千谷市内の大手建設会社であるK土建工業株式会社は,原告組合支部から資料を示されたことから,平成10年1月12日,生コンクリートの納入に関し過積載が確認されたとして,被告会社に対し31日間の取引一時停止を通知した。

原告組合支部は,同月27日,新潟県小千谷地域の建設会社に対し,救済命令や玉石選別作業,取引一時停止等を周知させるとともに,被告会社への働きかけを依頼し,被告会社との取引継続の問題性を尋ねる旨の申し入れを行った。

被告会社は,同月28日,原告組合分会に宛て,原告組合分会が地労委命令違反,労働安全衛生法違反などの「事実無根の記載」をし,被告会社との取引停止を求める文書を配布することは,被告会社の経営を崩壊させる「反企業的性格の表れ」と非難し,「悪質な要求行為を繰り返さないよう」厳重に申し入れる文書を交付し,さらに同様の文書を同年2月4日,同月26日にも交付した(同月26日付け文書は原告組合支部にも宛てられた。)。

被告会社は,同年3月13日,原告組合支部と原告組合分会に宛て,同日午前8時以降,原告組合分会の組合員の就業を禁止するロックアウトを通告した(期限は明示せず)。

右ロックアウト期間中,非組合員(13名,全従業員25名中)による業務は継続された(平成8年7月(前記6)以降,ロックアウト当時まで,組合員3名が被告会社を定年退職し,組合員1名が自己都合退職し,非組合員2名が自己都合退職した。なお,原告組合分会三役である副分会長原告田村政雄は平成9年2月に,分会長岡栄一は同年4月にいずれも定年退職した。別表5)。適宜,ミキサー車の代車も使用された。

被告会社は,平成10年4月20日,原告組合支部と原告組合分会に宛て,同日をもってロックアウトを解除すると通知し,翌21日より業務に従事するよう命じた。

(<証拠・人証略>)

8  加水問題,一時休業,本件整理解雇を巡る団体交渉等

原告組合支部は,平成10年5月22日,被告会社に対し,新潟県内の新桜町トンネル工事現場で,施工業者から生コンクリートの加水行為を指示されたとして,事案解明と再発防止に関し団体交渉を申し入れた。この件は新聞に報道され,被告会社は右現場への出荷停止を余儀なくされた。

被告会社は,同年6月2日,原告組合支部と原告組合分会に宛て,被告会社には何ら責任はなく,むしろ関与した組合員を明らかにせよと表明し,さらに同月22日,「加水問題」の不当な組合活動による出荷停止のため出荷量が激減し,重大な経営危機が発生したとして,<1>希望退職者を全部門から7名募集,<2>生コン部輸送部門から乗務員5名程度の当面休業,<3>イズミ産業の解散,の方策をとる旨通知し,原告組合支部から団体交渉の申し入れがあれば対応する旨表明した(イズミ産業は同月18日に廃業し,従業員佐藤和明が同年7月21日,被告会社へ新たに採用された。)。

原告組合支部は,同年6月23日,希望退職,一時休業の必要性につき会社経営資料に基づき協議するよう団体交渉を申し入れ,同資料の具体例を示し,事前提示を求めた。

被告会社は,同年7月1日,原告組合支部と原告組合分会に宛て,希望退職,一時休業等につき同月9日に団体交渉を行うと通知し,同日,団体交渉が行われたが,被告会社の経営資料は一切提示されず,休業対象者の協議もなかった。この際,被告会社から「希望退職者の募集について」と題する文書(丙事件・<証拠略>,退職金に基本給2か月分を加算支給,募集期間1か月)が手渡された(翌日,同じ募集告示が従業員になされた。)。

被告会社は,同月10日,生コン部輸送担当運転手の組合員原告大平昭伊(前記6),同大渕順一(前記6,本項前記),同大塚新松(前記5ないし本項前記),同丸山泰雄(前記6),同金子武弘(本項前記)に対し,「基本給の6割を支給」の条件で同月13日から2か月の休業を命じるとともに,原告組合支部と原告組合分会に宛て,右人選内容を連絡した。

原告組合支部は,同月13日,被告会社に対し,いまだに希望退職や休業の必要性や夏期一時金の回答につき具体的な説明がないし,「基本給の6割」は労働基準法違反であると抗議して,提示希望の経営資料リストを示した。被告会社は,「加水問題」関与の組合員が明らかにされず,被告会社の過積載のみを問題視するのは不当と非難したが,原告組合支部と被告会社は,同年8月6日,夏期一時金の支給に関し合意した。

被告会社は,同月10日,「希望退職者の募集(第2次)」と題する文書(丙事件・<証拠略>,募集期間,同年9月9日まで,退職金に月例給与3か月分の加算支給)を従業員に示した。同文書には「応募者未達の場合,整理解雇を実施します」との記載があった。

被告会社は,同年9月11日,原告組合支部と原告組合分会に宛て,希望退職,一時休業の延長等に関し,同月18日に団体交渉を行うよう申し入れた。ところが一方で,原告組合支部との協議なく,同月11日,一時休業中の5名に対し,同月12日までの休業期間を1か月延長する旨通知した。

被告会社は,同月16日,整理解雇等に関し団体交渉を申し入れるとともに,「整理解雇の実施の件」(丙事件・<証拠略>)と題する文書において,出荷量の数字には触れず,売上高の数字のみを挙げて経営状況を説明し,すでに損益計算書を団体交渉で示したとして,乗務員5名を解雇することとし,対象者人選は別途提示すると通知した。原告組合支部は,同月19日,被告会社に対し,売上高の数字はそう称しているだけで,損益計算書は一切示されたことがないと厳しく抗議し,改めて提示希望の資料リストを示した。

被告会社と原告組合支部は,同月28日,希望退職,一時休業の延長,整理解雇等に関し団体交渉を行ったが,その際にも,被告会社は経営資料を一切提示せず,損益計算書の一部だけは見せても良いがそれ以外は全て必要ないとし,必要がない理由の説明も拒否した。

被告会社は,同年10月2日,「決算報告書(損益計算書,貸借対照表)」を団体交渉の席上で示すと通知したが,原告組合支部は,同月5日,事前の経営資料提示がなければ協議が不可能であり,労働委員会のあっせん申立てを行うと通知し,同月7日,新潟県地方労働委員会に対し,被告会社が資料の提示なしで団体交渉を行おうとする件のあっせんを申し立てた(被告会社は同月12日,あっせんに応諾した。)。

ところが被告会社は,同月13日に再び資料提示を前提とせず,同月15日に団体交渉を行うよう通知したり,同月19日には,「会社決算書と出荷状況の推移(過去5年間)」を席上提示するので,同月22日に団体交渉を行うよう強く申し入れるなどした。原告組合支部は,同年11月5日の第1回あっせん期日に先立ち,従前示したリストの経営資料を提示するよう求めた。

被告会社は,同月22日,原告組合支部と原告組合分会に宛て,本件解雇基準を示すとともに,同月23日,「決算書(3か年分),損益計算書(5か年分),出荷状況の推移(5か年分)」の提示に応じると回答した。

ところが被告会社は,同月28日,原告組合支部に対し,決算書につき貸借対照表の項目抜粋のみ,損益計算書も項目抜粋のみ,出荷状況の推移は特別に作成した表(以上につき丙事件・<証拠略>)しか手渡さなかった。

新潟県地方労働委員会において,同年11月5日,前記申立てに係るあっせん事件第1回期日が開かれ,第2回期日は同年12月9日とされた。

被告会社は,同年11月5日,団体交渉を行う旨通知し,同年11月14日,整理解雇に関する自主的団体交渉が行われた。原告組合支部は,交渉の席上,被告会社提示の前記経営資料に関する詳細な質問を文書で提出した。さらには同月20日,第2回目の自主的団体交渉が行われた。

他方,被告会社は,同日,団体交渉とは別に,原告組合支部と原告組合分会に宛て,本件整理解雇の人選対象を原告大渕順一らとし,整理解雇後は「新体制」(丙事件・<証拠略>の「1名兼務」を「生コン・計」に合算すると,人員は27名から21名の減員となる。)へ移行する旨の通知を郵送した。原告組合支部は,このような被告会社の姿勢に激しく抗議したが,被告会社は第2回あっせん期日(同年12月9日)で「解雇は実施済み」と述べ,あっせんは不調に終わった。

被告会社は,同月16日,原告組合支部と原告組合分会に宛て,「会社の経営状況と対策」と題する文書(丙事件・<証拠略>)を通知したが,一方で,同月14日,原告組合支部の種々の抗議行動が悪質かつ違法で厳重抗議すると警告を発し,同月18日,違法な組合活動を理由に原告組合分会の組合員渡辺良春(砂利部運転手,原告組合分会書記長,分会三役で当時唯一被告会社在籍)を同月20日付けで懲戒解雇すると文書で通告した。

原告大渕順一らは,同月23日,丙事件の訴えを提起した。

(<証拠略>)

9  小括

以上の原告組合支部と被告会社との間の労使紛争の経緯等に照らせば,その特色として,以下のとおり小括できる。

すなわち,従前において,被告会社が自ら認めるように,一時金等の労働契約上の重要事項につき明確な基準もなく決定され(前記1),朝礼参加時を労働時間と見なさず,有給休暇取得に対応して賃金等をカットする状況が存在するなど,被告会社の労使間には数多くの問題が存在し,このため被告会社従業員がいわゆる「地域労組」である原告組合支部へ大挙して加入する事態に至った。

被告会社は,当初はこれらの労使間の問題に前向きに対応し,2年間に限定して賃金・一時金未払分を支払うよう是正したり,36協定問題や分会事務所問題,冬期一時金一律支給に応じるなどした(前記2)。

しかし平成6年初頭以降,被告会社は,原告組合支部に対する不誠実な対応を頻発させ,その傾向は一貫している。これは前記3ないし8の経緯を詳細に見れば明らかと判断される。

なるほど,原告組合分会結成以来,原告組合支部及び原告組合分会が,その要求を実現するために,複数回の争議行為を行ったり,被告会社の取引先に対して被告会社との取引停止を働きかけるなどして,被告会社の業務に少なからぬ支障を及ぼし,そのことが被告会社の対応を強硬にした側面も否定できない。しかしながら,前記3ないし8の経緯に照らせば,原告らがそのような行動に及んだのは,被告会社が原告の求める正当な資料提供に応じないなど原告組合支部との労働条件に関する団体交渉に誠実に対応しなかったために,やむにやまれず個々の対応に出ざるを得なかったものと認めるのが相当である。これらの対応が具体的状況のもとですべて結果として適法・相当であったかはどうかは格別,原告らは,強く影響を及ぼす手段に出る前に被告会社との交渉による解決を図ろうとする姿勢を見せており,それでも原告らが当該手段に出たのは,現状の継続が却って被告会社を不当に利すると考えた場合が大半であると認められる。被告会社が原告らの個々の対応を理由として自己の不誠実な対応を正当化することには理由がないと言わざるを得ない。

二  懲戒処分の有効性(争点1)について

1  平成6年3月28日の懲戒処分

医師登木口進作成の平成6年3月4日付け診断書(<証拠略>)によれば,昭和24年5月7日生の金子正男なる人物が,平成6年3月3日,「狭心症の疑い」「不眠症」と診断されて財団法人小千谷総合病院に入院し,「2週間の入院加療を要す。但し臨床経緯によってはこの限りではない」と診断されたことが認められ,(証拠略)によれば,右人物が前記一3の脱退組合員金子正男(以下「正男」という。)であると認められる。

被告会社は,懲戒処分通知書(<証拠略>)の理由欄記載のとおり,右症状が原告組合分会所属の組合員による吊し上げや退職の強要によるもので,原告組合支部の組織的なものと主張し,正男作成の陳述書(<証拠略>)や被告会社代表者(岡周作)の供述(平成11年2月17日実施)31頁以下,76頁以下は,概ね右主張に沿う内容となっている。

しかし,右診断書の内容を前提としても,「狭心症の疑い」という症状が被告会社の主張するように集団的な吊し上げ行為に起因するものであるかどうかは不明で,カルテや既往歴などの詳細な身体症状,正男の生活状況,業務による身体的負荷,過食,寒気等の有無等に関するより詳しい証拠がなければ判断できない。被告代表者(岡周作)は,正男の症状が吊し上げ行為によるものと理解している旨供述するが(平成11年2月17日実施,92頁),右代表者は「病院に行くように勧めたかは覚えていない」「付き添っていったかは覚えていない,忘れた」などとその詳細を述べようとしない(同代表者(同日実施)90頁以下)ことからすれば,その判断の根拠は極めて薄弱である。

他方,正男作成の陳述書(<証拠略>)によれば,平成6年3月1日の吊し上げや退職の強要は午前8時の朝礼時,被告会社工場の事務所入口付近で約10分間行われたとされ,正男から報告を受けたという右代表者によれば,別紙3図面「玄関」付近であるという(同代表者(岡周作)(平成11年2月17日実施)35頁)。しかし,朝礼時,事務所玄関という人目の多い場所で,集団で罵倒,怒号して約10分も非難攻撃できたとはおよそ考えにくく,右代表者の関係者としても場所が場所だけに容易に制止し得たはずである。この点で,朝礼が8時に始まるので原告組合分会所属の組合員が正男と30秒から1分程度言葉を交わしただけと述べる原告大渕順一の供述(<証拠略>)の方が合理的な内容というべきである。

また,平成6年2月25日の吊し上げや退職の強要に関し,右代表者の尋問後,録音テープ(<証拠略>)が提出された。被告会社代表者(岡周作)は「テープをよく聞いて処分した」と供述する(同代表者(同日実施)83頁)が,これを聴取し,反訳書(<証拠略>)の正確性を検討した結果,録音テープには程度を超えた怒号や罵声は一切認められず,吊し上げに類すべき畳みかけるような発言の連続もない。その内容は,正男が組合脱退理由を十分に説明せず,不誠実な対応をとることを非難するものであるが,非難は情理に訴える節度あるもので,退職すべきと示唆する発言がある一方,「組合やめる時は身を引く」との正男自身の発言を撤回し,脱退する理由を言える範囲で誠意をもって説明して,皆に謝罪するという選択肢があることを示唆し,最終的には正男の自由な判断に委ねるというものである。

結局のところ,懲戒処分の対象となった原告らの退職強要や吊し上げ行為により正男が入院を余儀なくされたという前記の正男作成の陳述書(<証拠略>)や被告会社代表者(岡周作)の供述はすべて裏付けの乏しい抽象的なもので,原告岡栄一の供述(19頁以下,60頁以下)や原告大渕順一作成の陳述書(<証拠略>)のとおり,原告らが労働組合の正当な行為として,正男に対し,平成6年2月25日と3月1日,事情聴取のうえ慰留の説得活動をしたに過ぎないと認めるのが相当である。

よって,被告会社が行った別表1懲戒処分一覧のうち,平成6年3月28日に懲戒処分対象者たる原告らに対しなした各懲戒処分はいずれも無効であり,被告会社は,原告岡栄一に対し,出勤停止分に見合う賃金を支払うべき民法上の責任がある。

2  平成6年7月25日の懲戒処分

被告会社は,懲戒処分通知書(<証拠略>)の理由欄記載のとおり,原告位下公男が平成6年5月ころから7月にかけて「業務命令に対してことごとに反抗し」「非組合員(従業員大平由広)に嫌がらせの言動を繰り返した」と主張し,被告会社代表者(岡周作)は,陳述書(<証拠略>)で「記録の残っているもの」として合計4回(平成6年7月12日,同月18日,同月19日,同月21日)の具体的事実を述べ,右代表者の供述(平成11年2月17日実施,39頁以下,92頁以下)は右主張に沿う内容となっている。

そこで,以下これらの事実につき検討を加えると,(一)「平成6年7月12日に従業員大平由広へ嫌がらせの言動をした」かは,同人は当時既に自己都合退職していたから嫌がらせの必要に乏しいはずで(別表5,丙事件・<証拠略>),同人の被害申告も見当たらない。(二)「同月18日にミキサー車整備作業指示へ従わなかった」かは,生コン部長でなく直接の業務命令権限を持たない総務部長(当時)・取締役(常務)勝野剛が,配車責任者と連絡をとらずに,配車待ちで待機していた原告位下公男に車両整備を命じたことにより右事態に至ったと認められる(<証拠略>)。(三)「同月19日に休憩室で待機中姿勢を正す指示へ従わなかった」かは,右代表者も「この件で具体的に支障があったかはわからない」(同代表者(同日実施)93頁以下)という程度のもので,指示の必要性自体に疑問が残る。

ところで,(四)「同月21日午後5時以降にミキサー車洗車作業続行指示に従わなかった」かについては,午後5時以降は被告会社においては所定時間外であるところ(<証拠略>,就業規則9条)「法定労働時間外」と「所定時間外」を区別せず一律に労使間で合意することが実際上多いものの,厳密には労働基準法上両者を区別するべきで,午後5時以降の「所定時間外」であっても「法定労働時間外」でなければ36協定がなくとも必要があれば業務指示は可能と解される(<証拠略>,就業規則1条)。

しかしながら,原告岡栄一(<証拠略>)や同丸山茂(<証拠略>)作成の各陳述書によれば,原告組合支部は当時,労働条件向上のための順法闘争として,36協定なしの「時間外」労働拒否を行っていたのであり,この活動は法律を客観的に要求する以上の仕方で遵守し事業能率を低下せしめるいわゆる順法闘争であって,労務の不完全な停止としての怠業類似の争議行為と見るべきであり,原告位下公男が(四)の際にミキサー車を破壊,毀損するなどの積極的手段を用いたり,その他違法な態様をとったことを認めるに足る証拠はなく,消極的な態様の争議行為として正当なものであったというべきである。

結局のところ,被告会社代表者(岡周作)が指摘する(一)ないし(四)の懲戒事由は,いずれも事実自体が認められないもの((一)),必要性の乏しい命令に従わなかったことを理由とするもの((二)(三)),正当な争議行為を理由とするもの((四))であるから,前記第二の二3(二)の懲戒処分を発令する根拠は何ら認められず,その余の点について判断するまでもなく無効である。よって,原告位下公男は右出勤停止期間分の未払賃金請求権を有し,その金額は別表2原告認容額「出勤停止分」欄記載のとおり,5万0050円となる。

3  平成6年12月30日の懲戒処分

前記一5のとおり,原告組合支部は,平成6年12月12日,被告会社に対し,ストライキ(労務の不提供)を行い,その際原告組合支部は,同日午前8時20分,原告組合分会の組合員全員の参加するストライキ(実施期間は同日午前8時20分から解除通告まで)を文書で被告会社へ通告して開始し,同日午後3時,解除通告を同様に文書で行ったものである。

そして,(一)同日午前8時20分のストライキ突入時,原告大渕順一が運転するミキサー車1台が,被告会社工場バッチャープラント(別紙3図面)付近で停止したこと,(二)このミキサー車に近づこうとした被告会社専務(当時)岡周作に対し,その前方に原告組合分会の組合員らが立ちふさがったことはいずれも当事者間に争いがなく,さらに,これらが「被告会社役員によるスト破り防止のため」「対抗上強力なストライキでなければ意味がない」趣旨で行われたことは原告らが自認するところである。

さらに関係証拠によれば,(一)でストライキ開始の連絡を受け,車内運転席に座ったまま労務の不提供に至った原告大渕順一は,バッチャープラント(別紙3図面)下「すぐ近く」に停車し,ストライキ解除の同日午後3時まで車内に引き続き滞留し続けたこと(原告大渕順一(平成10年7月8日実施)16頁以下,37頁以下,<証拠略>),(二)についても,身動きできない状態はなかったが,原告組合分会の組合員らが取り囲んだ事実はあり,岡周作が同日午後3時までに4,5回,事務所から出て停車したミキサー車に近づこうとするのを,スト破りをさせないため,岡周作を取り囲んでその行動をとめ,団体交渉を求めたところ,同人が事務所に引き返すという状況を繰り返したこと(原告組合支部代表者佐藤松喜13頁以下,<証拠略>),(二)の「取り囲み」行為は原告組合分会所属18名と原告組合支部で他分会所属約30名の合計約48名のうち,多数の者が関与したこと(原告組合支部代表者佐藤松喜11頁以下,<証拠略>)がそれぞれ認められる。なお,本件全証拠を検討しても,右ストライキの際,被告会社専務(当時)岡周作のその他行動の自由が制約された状況は窺われず,暴行等の人に対する有形力の行使を認めることはできない。

しかしながら,右ストライキの態様に照らせば,原告大渕順一やその他原告組合分会の組合員は,単に労務の不提供を行ったのではなく,他分会所属の組合員と現場において共同して,被告会社が当然管理し使用するべきミキサー車1台を約6時間40分にわたり占拠し,その使用を妨害したのみならず,同車をバッチャープラント下「すぐ近く」に停車させた状態を継続させ,同プラントの使用も約6時間40分にわたり妨害したというべきである。

すなわち,<証拠略>の写真から認められる停車位置は,他の,ミキサー車が安全に進入できないことは明らかで,原告大渕順一は「最初はバッチャープラントの下だったが,誘導されて徐々に前進し,同じ場所にとどまってはいなかった」(同人(平成10年7月8日実施)37頁以下)と述べるものの,これは「会社が仕事をする気配がないから」「スト破りをする気配がないから」(同人(同日実施)38頁)であり,被告会社がバッチャープラントを稼働させる事態になれば,周囲の者(すなわち原告組合分会所属,他分会所属の組合員)の誘導を受け,後退して同プラント下へ戻るべき状況が存在した。原告大渕順一は「ミキサー車に横断幕がはられ外が全く見えなかった」というが(同人(同日実施)18頁,39頁,なお<証拠略>),ストライキ開始の連絡を受けたならば,即時ミキサー車を降りれば良く,これが困難であった事情は何ら認められない。

原告らは「操業を実力で阻止したことはない」と反論するが,原告らのいう「スト破り防止」が原告大渕順一の労務不提供の維持にとどまらず,あるいは,単なる被告会社工場敷地上の平穏な滞留及び言論や行動による意見表明にとどまらず,原告大渕順一をして被告会社の営業用車両内に滞留させ続け,同車両を移動させるため被告会社側の者が近づくのを多数の者によって4,5回にわたり阻止し,被告会社の重要な設備使用を長時間にわたり阻害するものであって,不法に使用者側の自由意思を抑圧しあるいはその財産に対する支配を阻止する行為というべく,これを正当な争議行為と解することはできない。

原告らは「他のミキサー車が簡単に進入できる状況があれば,生コンクリート販売業の特殊性ゆえに,ストライキの実効性が確保できない」と反論するが,労務不提供の団結維持は,被告会社工場敷地で操業を阻害しない限度で平穏に行えばその実効性を確保し得るのであり,また,労使間の圧力手段としての実効性についても,たとえ被告会社が生コンクリート販売業であったとしても,少人数の非組合員や地区生コン協組,代車業者に依頼して操業する不正常な状況が,そうでない正常な状況と比較して被告会社の運営を阻害することは自明であって,これを達成するべく,労働者が団結してその持つ労働力を使用者に利用させないことは正当な争議行為であるが,これを踏み越えて,現実に被告会社のバッチャープラントを使用させず,約6時間40分にわたり同プラントを使用すべき法律上の利益を奪うことは許されず,その程度は軽微とはいえない。この理は,従前からの被告会社の不当労働行為等諸般の事情を考慮しても,報復や自力救済はもとより許されないのであるから,前記一1ないし5の紛争の経緯を十分に考慮しても,地方労働委員会のあっせんに訴えるなどの手段を試みず,当該時期に「対抗上強力なストライキ」を行ったことが法秩序全体の見地から許容されるべきものであるということはできない。

ところで,前記第二の二3(三)の原告位下公男ほか13名に対するけん責につき,被告会社専務(当時)の岡周作が本人らから弁明を聴取することをせず,適用すべき就業規則の条項を明示せずに発令したと認められる(被告会社代表者(岡周作)(平成11年2月17日実施)59頁以下,同代表者(同年4月21日実施)36頁以下,<証拠略>)。

しかしながら,岡周作は「原告組合分会の従業員のうち,3名は業務妨害行為に加わらなかったので懲戒しなかった」(同代表者(同年2月17日実施)60頁以下)と供述するなど,ストライキ参加者を慎重に選別する姿勢が見られ,また,通知書(<証拠略>)の文面上「会社の業務を実力で妨害した」ことが発令根拠であり,これが新旧就業規則(前記第二の二5(一)(2),(二)(2))に規定される「他人に対する業務妨害」に該当することは明白である(ここにいう「他人」とは自己以外の者で業務上関係を持つべき自然人及び法人を指し,被告会社を含むと解するのが相当である。)。

よって,前記第二の二3(三)の原告位下公男ほか13名に対するけん責については,本件証拠上,発令すべき根拠事実(業務妨害行為への共同参加)が認められ,また,不当労働行為及び適正手続違反を理由とする原告らの懲戒処分無効の主張には理由がない。

しかし,前記第二の二3(三)の原告岡栄一に対する出勤停止1か月の処分については,本件証拠上,原告岡栄一には,ストライキの前日夜,「地域労組」たる原告組合支部の代表者執行委員長(佐藤松喜)ほか支部三役,執行委員,12の分会代表者の合計24,5名からなる「岡惣闘争委員会」へ参加し,この一員としてストライキの内容を話し合った事実,翌日のストライキの現場に参加し,行動した事実が認められるだけで,ストライキの指揮命令は「岡惣闘争委員会」委員長である佐藤松喜が行い(原告大渕順一8頁以下,原告組合支部代表者佐藤松喜8頁以下),原告岡栄一の首謀者としての何らかの具体的活動や「組織的にやった分会(独自の活動)」(被告会社代表者(岡周作)(平成11年4月21日実施)36頁,88頁)を認めるに足る十分な証拠はない。また,前記一1のとおり,原告岡栄一には懲戒処分を発令されるべき前歴がない。以上のとおり,原告岡栄一には業務妨害行為の首謀者である事実は何ら認められず,また,その共同参加の程度や前歴のないこと等に照らせば,出勤停止1か月の処分はけん責のみの他の原告らに比して著しく重く不当であり,処分の平等性・相当性を欠き無効である。よって,原告岡栄一は右出勤停止期間分の未払賃金請求権を有し,その金額と平成6年3月28日付の無効な出勤停止処分に関して有する賃金請求権を加えると別表2原告認容額「出勤停止分」欄記載のとおり30万4900円となる。

三  ストライキ解除後の賃金請求権(争点2)について

なお,本件証拠(原告組合支部代表者佐藤松喜17頁)によれば,平成6年12月12日午後3時にストライキを解除した趣旨は,当日の生コンクリート出荷分が翌日に回されたり,他業者に割り振られたためであると認められ,これを踏まえ,被告会社は「業務遂行が終日不能となった」のでストライキ参加者の就労を拒否したと主張する。

右主張は,生コンクリート出荷が不能となれば,被告会社には(ストライキの後始末以外の)業務が存在しないという前提にたつものと理解できる。しかし,被告会社専務(当時)の岡周作は,別の場面では,生コンクリート出荷が終了した従業員に洗車作業を命じたり(<証拠略>,前記二2の事実(四)),生コンクリート出荷がなく待機中の従業員に車両整備作業を命じること(<証拠略>,前記二2の事実(二))を被告会社の正常な業務と理解しており,少なくとも車両整備作業は,生コンクリート出荷を前提とせず,被告会社において当時日常的に従業員に命じるべき業務といえる。

これに限らず,被告会社を巡る就労環境においては,一般清掃作業や翌日の出荷作業の準備等,種々の付随的業務が存在すべきことは明白で,被告会社代表者(岡周作)は,これら付随的業務の存在及びその必要性を慎重に検討しないまま,労務提供の準備がある原告組合分会の組合員(原告大渕順一22頁)に対し,前記第二の二3(四)の取扱いをしたと認められる(同代表者(平成11年2月17日実施)56頁以下)。

以上によれば,終日一切の業務を不能ならしめたともいえず,にもかかわらず,労務提供の用意がある処分対象者らからの労務受領を拒絶したものであるから,被告会社は民法536条2項により,別表2原告認容額一覧「2時間分」欄記載の各金員を支払う民法上の責任を負う。

四  従業員たる原告ら及び原告組合支部の被告会社に対する不当労働行為を理由とする損害賠償請求(争点3)について

前記一3のとおり,原告組合分会の組合員数は,平成5年11月10日の結成当時27名(全従業員38名中)から,平成6年2月末には19名(全従業員36名中)と激減した。その後,同年3月に「94春闘要求」が行われ,同月7日付けで原告組合支部の要望は伝えられた(<証拠略>)が,被告会社作成の団交記録(<証拠略>)では「第7回」(同月18日)で右要望に対する被告会社の回答がなされた形跡はなく,同月25日付け回答書(<証拠略>)でようやく回答が行われ,しかも,「第8回」(同月29日)の団体交渉において,被告会社側は「従業員の賃金査定制」を重要な協議内容と位置付けていない(<証拠略>に記載なし)ことが明らかである。

また,前記一4の小出労働基準監督署への「組合からの意見書の提出がない」との対応は,被告会社が原告組合支部との団体交渉のスケジュールを伝え忘れたという不注意の可能性も一応考えられるが,分量が多いため内容説明を求めて原告組合支部が団体交渉の場での説明を求め,被告会社も右目的での団体交渉通知を行いながら,その直後に組合の意見はないと監督署に通知していること,被告会社代表者(岡周作)は「意見書も出ませんので,意見書のでないまま提出して受理させていただきました」と供述し(同代表者(平成11年4月21日実施)47頁),不注意への何らの弁解もないことからすれば,むしろ右対応は原告組合支部への意見提出の機会付与を意図的に軽視してなされたものと推認すべきである(なお,<証拠・人証略>参照)。

これら個別的検討のほか,和田和夫の再雇用問題での被告会社の対応や査定制導入の経緯(前記一3),被告会社が分会事務所につき原告組合支部と協議をせず一方的に設置・貸与した経緯(前記一4),平成6年夏期一時金団体交渉において,査定制の根拠を一切示さない姿勢(前記一4),義務的団体交渉事項と認めるべき原告大塚新松の退職問題やイズミ産業問題への被告会社の対応(前記一5),団体交渉で交渉権限がない趣旨の発言(前記一5)等の経緯を子細に見ると,平成6年初頭以降,被告会社に原告組合支部との間で誠実に交渉しようとの意思が乏しいことは明らかである。

(別表1) 懲戒処分一覧

<省略>

被告会社が分会結成直後の平成5年11月30日に原告組合分会に宛てて「企業内の事として」原告組合分会だけと交渉する旨の文書(<証拠略>)で申し入れていることにも照らせば,被告会社には,平成6年初頭以降,原告組合分会に対しては格別,いわゆる「地域労組」としての原告組合支部に対し,これを嫌悪して,無視若しくは,敵視する反組合的な意図・動機があると認めざるを得ない。被告会社は,平成6年年末において,原告組合支部の組合員である他分会所属の者(原告組合支部代表者佐藤松喜10頁以下)を「外部の支援者」(<証拠略>)に過ぎないと断じており,もはや単なる制度の知識不足(<証拠・人証略>)ではなく,「地域労組」としての原告組合支部の存在を意図的に認めようとしていないと認められる。

原告らは,以上に加えて,脱退への働き掛けや異常な非組合員昇格人事も行われたと主張する。

前記一3のとおり,原告組合分会の組合員数がわずか3か月余りの間に約3割も減少し,これが結成直後の時期に特異的に発生した(別表5)ことに照らせば,いまだ加入意思が強固な段階にもかかわらず,何らかの外部的要因により働き掛けを受けるべき情況の存在が窺われ,実際に管理職昇進を条件に組合脱退を働き掛けた事実も認められること(<証拠・人証略>)にも照らせば,右組合員数急減の背後に被告会社の脱退への働き掛けがあったと推認しても不合理ではない(<証拠・人証略>)。

また,被告会社の従業員数,資本規模,業務内容に照らせば,前記一3の時期において,なぜ取締役を多数登用し,新しいポストを多数設置したのか,具体的な理由は一切不明であって,取締役(常務)勝野剛は職務内容を全く説明できていない(勝野剛60頁)。「営業課長」には独立した営業部門の存在が窺われず,部下の存在が明確ではない(前記一1,3)。前記一6で「砂利部係長」が管理監督者(労働基準法41条2号)ではない適法な従業員代表ならば,少なくとも部下の人事や考課に関与することは全くあってはならず,管理職ポストたるべき実態がない筈である(なお,<証拠・人証略>参照)。

(別表2) 原告認容額一覧

<省略>

以上によれば,被告会社は,原告組合分会結成後間もなくしてから,反組合的意図・動機に基づいて,組合員に働きかけて分会からの脱退を慫慂し,従前からの非組合員及び脱退した元組合員らを必ずしも必要とは思われない新設の管理職ポストに就けるといった昇格人事を行ったものと認められる。

次に,冬期一時金に関する査定格差の合理性について検討する。

前記一5のとおり,原告組合支部と被告会社の間には,平成6年12月20日,「平成6年度年末賞与について1.5ケ月±σ,σは人事査定による,但し,減額幅は最大0.4ケ月とする。支払日 平成6年12月21日とする」旨の合意(<証拠略>)が成立した。原告岡栄一は,勝野常務が「それほどまで減額しない。」と言った旨供述するが(原告岡栄一70頁以下),これは文書化されておらず(原告岡栄一右供述部分),他に減額幅を加減するとの合意があったことを認めるに足る証拠はない。合意(<証拠略>)の内容としては,文面どおり,基準支給額が1.5か月分であって,ここから最大0.4か月の減額か,増額(限界なし)の人事査定が行われるものと理解するほかない。

ただし,右人事査定が恣意的に行われることはもとより許されず,右合意の内容も,基準支給額(1.5か月分)から減額,増額されるべき人事査定が合理的であるとの趣旨を含むものと解するのが相当である。

この「人事査定の合理性」に関し,被告会社は「原告組合分会の組合員全体の分布」に低位の偏りがなければ合理的であるとするが,本件においては,組合員の基準支給額に具体的かつ明確な定めがあるのだから,全体平均が1.5か月分であるだけで良いとはいえず,基準である支給額を各人につき被告会社が個別にプラス(増額),マイナス(減額)すること自体,合理的な根拠に基づかなければならない。

そこで,前記第二の二3(五)の支給格差につき検討すると,被告会社代表者(岡周作)は,人事査定基準の内容や基準の各人への適用状況につき,概ね被告会社の主張のとおり供述し(同代表者(平成11年2月17日実施)23頁以下,(同年4月21日実施)37頁以下,57頁以下),基準内容等につき一応これを裏付ける証拠もある(<証拠略>)。

しかし,同代表者は,「ストライキのような業務妨害は「秩序」で非常に問題となり,その他の個別事項にも影響する」「平成6年7月から12月までの勤務態度や懲戒処分を考査した」「個別評価した後,これを総合評価をする直接の基準はない」「総合評価のやり方は「秩序」を重んじるとか,一々そういうことは答える必要はない」(同代表者(平成11年4月21日実施)40頁以下,42頁,57頁以下,39頁)と述べ,結局のところ,各人への基準適用の根拠は,主として「原告岡栄一が平成6年12月のストライキ(前記3)の首謀者であること,原告位下公男が同年7月に職場秩序を乱す行為を繰り返したこと」以外つまびらかにされず,右2名以外の前記第二の二3(五)の対象者である原告らを含めて,被告会社の把握する具体的な「出勤率」の数字や「仕事の処理量」の評価根拠たる数字(運搬量が月当たり何立方メートルかなど),その他評価結果の根拠となるべき具体的事実(誰がいつ何をしたか,どのように積極,消極に評価すべきかなど)は,本件全証拠のもとでは不明である。

ところで,前記一4,5のとおり,平成6年7月から12月まで,夏期一時金団体交渉,原告大塚新松の退職問題,イズミ産業の設立問題,同年12月のストライキ等,原告組合支部と被告会社との間には見解を異にする事項が多く存在し,その際,被告会社は,前記二2,3のとおり,自己の見解に従わない原告位下公男に対し,その正当な争議行為等を一方的に無視して,「ことごとに反抗し」として根拠なく懲戒処分を行ったほか,原告岡栄一が「ストライキの首謀者」とも認められず,内容が不当に重いにもかかわらず,懲戒処分を行ったものである(さらには,前記1のとおり,同年3月にも,録音テープの内容と明らかに反する懲戒処分を行った。)。

このような被告会社の姿勢を見ると,人事査定で被告会社代表者(岡周作)が「増額した原告渡辺良春や原告田村政雄は当時は仕事にまじめに取り組んでいたため評価が上がった」(同代表者(平成11年4月21日実施)58頁以下)と述べたり,平成6年12月のストライキ(前記3)に参加した原告組合分会の組合員の中にも査定が高い者がおり,全体平均が1.5か月分になるように分布する(<証拠略>)ことを,「人事査定の合理性」を肯定するものと評価することはできず,結局のところ,被告会社による右格差は合理的根拠を欠く恣意的なものと言わざるを得ず,被告会社への反抗的姿勢の顕著な2人を最も低額(1.1か月分)にした関係でバランス上他の組合員をその分高額にしたものと推認するのが相当である。そして,原告位下公男や原告岡栄一への懲戒処分の根拠が欠けること,被告会社の反組合的姿勢等に照らせば,前記第二の二3(五)の支給格差は,原告岡栄一ほか8名の各格差それぞれにつき,合意の趣旨に反し全体として反組合的意図・動機に基づいて行われた違法なものであったというべきである。よって,被告会社は,右各格差相当額である,別表2原告認容額「格差」欄記載の各金額を,岡栄一ほか8名の原告らに対して,不法行為に基づく損害賠償金として支払うべき義務を負う。

原告らは,いずれも労働組合の正当な行為(慰留の説得活動,法内超勤拒否)を行った(第三の二1,2)ところ,被告会社の側の右反組合的な意図・動機を示す行動に照らせば,これら正当な行為等の故をもって,前記第二の二3(一),(二)の不利益な取扱いを受けたものと認められる。また,冬期一時金の支給格差は右のとおり違法であり,原告らはいずれも原告組合支部に加入している共通点があって,他方,反組合的な意図・動機を示す行動に照らせば,労働組合の組合員であることの故をもって,前記第二の二3(五)の不利益な取扱いを受けたと認められる。さらに,被告会社の側の反組合的な意図・動機を示す右行動それ自体も,一連のものとして原告ら各自の組合活動を行う利益への不法行為(不当労働行為)と評価すべきものである。これらを受けて,被告会社には不法行為上の責任が認められ,本件全証拠に照らし,かつ原告組合分会所属の従業員の実態を考慮すれば,いずれも精神的苦痛による慰謝料として金10万円(各人同額)を認めるのが相当である。

また,右の不法行為は同時に原告組合支部に対するものというべきで,これによる財産的損害は,前記第三の一1ないし5,同二1ないし3及び本項(四)で認定した各事情に照らせば,(一)被告会社の不当労働行為等への直接対策費の増大,(二)原告組合支部の無形的利益(団結権等)の侵害を挙げることができる。

(一)に関する証拠としては(証拠略)(損害賠償内訳)があるところ,この中には,平成6,7年に本件労使紛争がないと仮定した場合でも出費を免れない恒常的な連絡費用や活動費等に相当する部分その他も計上されていると推認できるから,本件全事情を考察し,因果関係に立つ損害額として,200万円の限度で認めるのが相当である。

(二)の具体的内容としては,原告組合支部所属の組合員内や原告組合支部と労使関係に立つ被告会社以外の事業主との間で生じた不安,危惧感等を取り除いたり,官民関係各方面へ原告組合支部の現状を説明するなどの間接的な対策費や,原告組合支部の団体内自治を乱された状況等を想定できるのであり,これら損害の存在は疑うべくもなく,本件全証拠に照らせば,因果関係に立つ(二)の損害額として,50万円の限度で認めるのが相当である。

さらに弁護士費用は,事案の難易,請求額,認容額その他諸般の事情を斟酌すると,因果関係に立つ損害として,50万円の限度で認めるのが相当である。

五  本件ストライキにより被告会社が被った損害の賠償請求(争点4)について

平成6年12月のストライキは業務妨害行為というべきであるから,原告組合支部及びこれを指揮した被告佐藤松喜には,不法行為責任が認められる。

しかし,原告組合分会は原告組合支部の一部門に過ぎないから,原告組合支部と独立した当事者能力はないというべきである。被告会社は「独自の組織体としての実体が存する」と主張し,一応原告組合分会から訴訟委任状が提出されている(顕著な事実)ものの,「独自の組織体」に関する具体的な主張はなく,本件全証拠中,原告組合分会独自の規約や独自の財産管理の存在を窺わせる証拠もない。

また,右ストライキにおいて原告岡栄一が「指示した」事実は認められず(前記第三の二3),また,分会長であるというだけで分会員の違法行為についてまで当然にこれを防止すべき義務があるとは認められないから,同人に対する被告会社の請求には理由がない。

右ストライキにより,被告会社は,当日の出荷予定数量365.82立方メートルを全量出荷できなくなった。出荷予定先の中には翌日出荷したものもありその分については損害は発生していないと原告らは主張するが,右翌日出荷の事実についてはこれを認めるに足る証拠はない。

なお,右出荷不能分の中には,ストライキが開始した午前8時20分以前に出荷したがストライキにより被告会社に持ち帰らざるを得なかったものがある(<証拠略>)。生コン出荷により被告会社が得られる利益は1平方メートル当たり6260円と認められるから(<証拠略>),結局右出荷不能により被告会社が被った損害は一応総額229万0033円となる(<証拠略>)。もっとも出荷量に応じて被告会社としては組合賦課金を1平方メートル当たり1150円支払うべきところ,被告会社はその負担を免れているので,これを損害額から控除すると186万9340円(<証拠略>)となる。ただし,地区生コン協組においては,シェア調整が行われており,一定期間内のシェア額を上回った場合には,1立方メートル当たり3210円の調整金を拠出し,逆に基準シェア額を下回った場合には,同額の調整金を支給されることになっている(<証拠略>)。被告会社は平成6年度は基準シェアを超えていたが,右ストライキ当日の出荷予定数量365.82立方メートルの出荷が不可能になったことにより拠出金相当額117万4280円の支払いを免れている(<証拠略>)。ただし,シェア移動に伴って移動される側は1立方メートル当たり550円の組合費を払わなければならない(<証拠略>)ので,右出荷不能により被告会社は20万1201円(<証拠略>)の負担を負うことになる。

以上総合すると,ストライキによる出荷不能により被告会社が被った損害は,総額で別表4のとおり89万6259円となり,これは右出荷不能分について組合内の他社がすべて代替納付しシェア調整を受けたとしても補填されない損害であると認めるのが相当である。右以外にも出荷数量自体の調整も行われることもあるが(<証拠略>),それがシェア調整金ほど基準シェアとの関係が一義的に明確なものとは認められず,右数量調整をもって出荷不能による損害がてん補されたと認めるには不十分である。

よって,原告組合支部及び被告佐藤松喜は,被告会社に対して,その内金である88万円を不法行為に基づく損害賠償として支払うべき義務がある。

六  本件整理解雇,本件予備的整理解雇の有効性(争点5)について

1  被告会社の業績は悪化したか,生コン部を縮小すべきか

被告会社は,解雇通知書(丙事件・<証拠略>)記載のとおり,本件解雇は「経営上やむを得ない事由」によると主張する。

そこで,被告会社の全体・部門別の経営の困難性が存在するか検討する。

まず,平成7年4月ないし平成11年3月までの決算報告書(丙事件・<証拠略>)を見ると,被告会社の経常損失は計数上において,

平成7年度(平成7年4月1日~同8年3月31日,以下同様) 5079万5278円

平成8年度 764万6309円

平成9年度 2412万4294円

平成10年度 (修正前) 454万2961円

(修正後) 5568万9803円

とされ(「修正」とは正規の減価償却実施を意味するという(被告会社代表者(岡きみこ(ママ)子)6頁以下)。),4年間の損失合計額は1億3825万5684円にのぼる。

しかしながら,とりわけ大きい平成7年度の経常損失額に関し,平成6年以前の決算内容の推移との整合性は不明(丙事件・<証拠略>には分割原価計算書等が添付されず,経常損失の数字をにわかには採用し難い。)であって,前記一5のイズミ産業設立(平成6年10月25日設立)と関連し,被告会社の実態と区別が困難なイズミ産業への「傭車代」名目で費用を平成7年度以降計上し始めたことにより経常損失が増大した可能性がある。この点で「販売費及び一般管理費」の「傭車代」が平成10年度に約2609万円計上されていることにつき,当時の総務・管理係(経理),現在は被告会社代表者である岡きみ(ママ)子(イズミ産業取締役を兼務,前記一5)は「ちょっと答えられません」「金額に(ママ)言われても出ない」などとあいまいな供述態度に終始している(同人53頁以下,83頁以下)。前記決算報告書によれば,この費目が平成7年度に約4247万円,平成8年度に約4723万円,平成9年度に約4398万円も計上されおり,これらが分割原価計算書「傭車料」ではなく,イズミ産業からの出向受入れと推認されるべき損益計算書「販売費及び一般管理費」中に分類されていることや平成10年7月のイズミ産業廃業後の平成10年度の右「傭車料」が大幅に減っていること,右のとおりの岡きみ子(ママ)の供述態度に照らせば,これらの「全部ではない」(同人53頁)ものの,実際の人件費を除外した各年度「販売費及び一般管理費」中の「傭車代」の相当部分は,イズミ産業の設立及び同社への傭車代支払いという形をとった計数上のものであり,実態を伴う費用と認めることができない。

次に,前記決算報告書の「部門別」の状況を見ると,「生コン部」「砂利部(骨材部)」運転手の給料合計(分割原価計算書「給料」)の推移は,

平成7年度 3771万7663円

平成8年度 3658万2961円

平成9年度 3101万3814円

平成10年度 2498万2794円

である一方で,事務・管理部(前記一3)の給料,すなわち直接生産に携わらない経理社員や管理職の給料合計(損益計算書「販売費及び一般管理費」「給料」)の推移は,

平成7年度 8043万8959円

平成8年度 6604万0412円

平成9年度 5413万9065円

平成10年度 4947万0658円

と計上されている。

これらの数字も,前記一3で多数の昇進がなされる前である平成5年度以前の内容の推移との整合性が一切不明(本件証拠上数字がない。)であるが,これら平成7年度以降の給料の推移が実態を伴っているならば,被告会社においては,直接生産に携わる従業員(平均的な給料)1人に対し,直接生産に携わらない管理部門の従業員(平均的な給料)が2人の比率で存在するという理解し難い状況が存在することになる(「TKC経営指標」(丙事件・<証拠略>)では「売上原価内訳書」の「労務費」7536万円,「損益計算書」の「役員外販管人件費」3995万円とされ,被告会社の比率と正反対の自然な状況が示されている。)。

ならば,被告会社が「縮小すべきは生コン部である」と主張する点に関し,むしろ「部門別」では,生コン部や砂利部の現業部門ではなく,異常に肥大した管理部門を縮小(とりわけ,「新体制」の生コン部関連の管理職5名(丙事件・<証拠略>からの削減)することが合理的な経営行動というべきである。

さらに,被告会社の主たる業務の業績,すなわち生コンクリート製造販売高の推移を検討すると,前記決算書によれば,

平成7年度 4億6006万5445円

平成8年度 6億7302万3226円

平成9年度 4億4912万8601円

平成10年度 3億3154万0585円

と計上されており,これに関し被告会社は「売上高が大幅に落ち込み,長引く景気後退の影響等が見られる」と主張する。

しかし,この販売高の推移を見ると,本件整理解雇(平成10年度途中)までに重大な落ち込みが発生した形跡はないばかりか,平成10年度に至る結果は平成7年度以降の生産能力(従業員数)の減少(33名から19名,別表5)に対応したものと説明することも十分可能であって,従業員数減少に先んじた販売高の減少(すなわち需要の先行減少,供給側の遊休化)を認めるに足る証拠はない。被告会社は,前記一7のとおり,平成10年春に約1か月間のロックアウトを実施しているが,これも自らの判断で製造販売を低下させたものであり,前記一7のK土建工業株式会社や新桜町トンネルに係る取引停止,出荷停止の要素を考慮したとしても,右のとおりの販売高の推移,生産能力の推移に照らせば,販売高に影響を及ぼす本件労使紛争以外の何らかの外部的要因の存在を認めるに足る証拠はない。

以上のほか,(一)前記決算書によれば被告会社の「資産合計」と「負債合計」の差額は平成10年度末でいまだ約1億0479万円あるとされ,(二)平成7年度決算期段階で前記以前からの繰り越された内部留保が潤沢であったと認められ(平成7年度貸借対照表「資本の部」「剰余金」の「別途積立金」1億7000万円),その後の「損失処理」で積立金が計数上取り崩されているものの,平成10年度末においてもなお8300万円の別途積立金を有しており,また,平成7年度以降の巨額の経常損失の相当部分が疑問であるから,取崩額の内相当額が内部留保として残存していると認められ,(三)被告会社の資金不足(ショート)の危険性を窺い知るべき具体的な長期・短期「資金繰予測」は,本件証拠上一切提出されておらず,(四)被告会社の生コンクリート製造出荷の数量の被告会社が公表した数字と実態が異なること(丙事件・<証拠略>)を現在の被告会社代表者である岡きみ(ママ)子自身が認めている(同人42頁以下,64頁以下)。

以上によれば,結局,被告会社が「経営の悪化」と述べる数字はいずれも説得力を欠き,本件整理解雇当時,さらには本件予備的整理解雇当時における被告会社の資産状況,資金繰り,経常収支の実態は,本件証拠上不明というほかなく,整理解雇の前提としての全体・部門別の経営の困難性を認めるには不十分である。

2  生コン部縮小には本件整理解雇等以外の調整手段があったか

まず,被告会社が挙げる子会社廃業の努力は,前記イズミ産業の実態に鑑み,解雇回避のための努力として特筆すべきものとは考えられない。

次に,被告会社は,前記一8のとおり,一応期間を置いて,二度の希望退職の募集を行い,休業を実施するなど,外見上は整理解雇以外の調整手段を先行させているが,その実態は当初から生コン部輸送部門の人件費削減を主に想定するものに過ぎず(平成10年6月22日の表明<2>,同年9月16日「整理解雇の実施の件」丙事件・<証拠略>,前記一8),それ以外の費用項目の削減努力は,同年10月に新潟県地方労働委員会へあっせん申し立てが行われるに至って,ようやく同年11月20日に「新体制」(丙事件・<証拠略>)として示されたものの,「新体制」の策定時期について,取締役(常務)勝野剛は「いつつくったかと言われると,日付はわかりません」(同人65頁以下)というもので,あっせんへの動きに呼応して急きょ策定したと非難されても仕方がない経緯が窺われる。しかも策定内容が,既に前記一9で述べたとおり,「生コン部の縮小」を目的とするものであるのに生コン部関連の管理職を全く削減せず,また,5名の管理職で7名を管理するという理解し難い内容を包含しており,この管理実態につき「具体的にこんな仕事をしている・・・」(勝野剛60頁)というあいまいな説明しかできず,「新体制」中,「<3>管理職の賃金カット」について,「年間の賃金カット類は把握していません」(同人67頁)と述べ,「<1>取締役の削減」については,前記一1のとおり平成7年5月に社長の座を譲り,実質的な活動が認められない筈の岡弘「ほか2名である」(勝野剛67頁)というばかりか,「役員報酬のカット等は総額で試算したが,額は申し上げられません」(同人68頁以下)という全く不自然な応答に終始するものであって,経費分析の時的試算や経費削減効果の試算,非管理職従業員の賃金カットでの代替可能性,必要最小限の人員削減に留めるため何名の整理解雇でどれだけの費用対効果が得られるのかなど,実効的な経営分析を「新体制」策定の際に全く行わなかったのではないかとの疑念を抱かざるを得ない。従って,本件整理解雇自体,「新体制」の他の費用項目の削減努力と相まって,必要最小限のものであったと認めることができない。

結局,被告会社は,本件整理解雇当時,整理解雇以外の実効性を有すべき費用削減手段を真摯に検討することなく,前記第二の二4の本件整理解雇を行ったと認められる。

さらに,前記1のとおり,本件予備的整理解雇の当時においても,被告会社の生コン部を縮小すべき必要性を認めるに足らず,仮にこの必要性があるとしても,「株式会社岡惣組織図」(丙事件・<証拠略>)の内容の組織改革の結果,どのような費用項目の削減にどのように繋がったのか,証人勝野剛や被告会社代表者(岡きみ(ママ)子)の供述内容に照らしても,その実態は依然として不明で,被告会社が整理解雇回避の努力義務をはたしたとの結論には至らない。

3  本件解雇基準,適用範囲の合理性の有無

前記一8のとおり,被告会社は,平成10年8月10日に整理解雇の意向を表明した後,同年9月16日に「対象者人選は別途提示する」とのみ通知し,解雇選定基準の内容に関しては,同年10月22日,ようやく「整理解雇の基準」(丙事件・<証拠略>)として本件解雇基準を原告組合支部等に示した。

このような経緯に照らせば,被告会社には本件解雇基準を事前に周知しようとの姿勢が十分に見られず,基準定立への労使間における全体的な了解を達成しようとの意欲が乏しかったものと認められる。

本件解雇基準そのものの合理性を検討するうえで,このような「全体的な了解」を欠く状況に照らせば,その意味内容の理解は,それ自体の文言を合理的に解釈するものでなければならない。また,右のとおり原告組合支部等に示された本件解雇基準が被告会社によって恣意的に適用されることはもとより許されず,このことはいかなる規模及び背景を持つ事業主であっても当然のことであるから,右基準中の「2、勤務状況に問題のある者」「3、会社に対する貢献度の低い者」(丙事件・<証拠略>)の意味内容及びその適用に関しては,欠勤日数,遅刻回数等の数値化できる「勤務状況」,生コンクリート運搬数量や運搬回数,会社の勤続年数等の数値化できる「会社への貢献度」という客観的要素と,懲戒処分を含む規律違反の有無や人事査定等の主観的要素とをあわせ考慮して,整理解雇の候補者となる順序を決め,費用対効果の視点から必要最小限の順位までに選定数を抑えるべきものと解するのが相当である。

しかしながら,取締役(常務)勝野剛は,「2、勤務状況に問題のある者」「3、会社に対する貢献度の低い者」の意味をもっぱら「服務規律に違反をしているような人や成績に問題のある人」(勝野剛45頁)としか想定しておらず,整理解雇の候補者となるべき順序を割り出す努力がなされた形跡も全くないから,本件解雇基準の実際への適用状況は,もっぱら規律違反の有無や人事査定等に基づく,多分に主観的で合理性に乏しいものであったというほかはない。

次に本件解雇基準の適用範囲に関し,被告会社が,解雇選定に際し,選定選考の対象から,あらかじめ恣意的に「形式的な取締役や管理職とした非組合員9名等」を除外していたか否かは,本件証拠上定かではない。

しかし,本件整理解雇に先立つ休業で生コン部輸送部門が想定されていたこと(前記一8),本件整理解雇の対象者である原告大渕順一,同大塚新松,同丸山泰雄及び金子武弘がいずれも生コン部輸送担当運転手を本職とすることから,本件解雇基準の適用範囲が,生コン部輸送部門に限局されていたことは明らかである。この点につき,前記1のとおり,実態として被告会社の生コン部を縮小すべき必要性を認めるに足らず,むしろこれに関連する管理部門,さらに一般管理部門を縮小すべきであって,これら管理部門に本件解雇基準を優先適用しなかったことには合理性がないというべきである。

次に,原告大渕順一が平成6年3月ころ,他の従業員5名とともに,金子正男に対して吊し上げ行為をしたかについては,前記二1のとおり,吊し上げ行為の存在自体認められず,懲戒処分を発令する根拠はない。

原告大渕順一,同大塚新松,同丸山泰雄及び同金子武弘が,原告組合分会所属の従業員11名ほか原告組合支部組合員らとともに平成6年12月のストライキに参加したこと,原告大渕順一は原告組合支部の指揮でミキサー車内に滞留し続けたが,同人がストライキの首謀者とは評価できないことは,前記二3のとおりである。

原告大渕順一,同大塚新松,同丸山泰雄及び同金子武弘が,原告組合分会所属の従業員13名とともに平成8年春ころの赤腕章着用活動に参加したことは,前記一6のとおりである。しかしながら,前記一6の経緯に照らせば,右活動の目的が何らの具体的な団体交渉事項を想定しない単なる連帯感や仲間意識のこう揚に過ぎないものとはいえず,被告会社が原告組合支部に対し,不誠実な交渉態度に終始していた事情があることなどを考慮すれば,腕章着用活動が労働組合の正当な行為にあたる余地も十分に考えられるから,直ちに懲戒処分を発令すべき根拠を認めることはできない(勝野剛21頁以下は,このほかに原告大渕順一が「反抗的言動を繰り返した」などと述べるが,日時等の具体性に乏しく,採用できない。)。

原告組合支部組合員らが,平成8年7月10日,被告会社工場付近道路上で被告会社ミキサー車の停止を求め,車両後部に昇って過積載の有無を確認する活動を行ったことは,前記一6のとおりである。しかしながら,原告大塚新松及び同丸山泰雄は,実際に車両後部に昇るなどの直接的関与を明確に否定しており(原告大塚新松42項,同丸山泰雄15項,21項),勝野剛23頁以下の供述内容は,原告大塚新松及び同丸山泰雄の直接関与の有無につき著しく具体性に乏しく,採用の限りではなく,他にこれを認めるに足りる証拠はない。一方で被告会社には本人らから弁明を聴取しようとの意識が全く欠如していたものと認められる(被告代表者(岡周作)(平成11年2月17日実施)96頁)。よって,両名が直接関与したことを前提とする懲戒処分(丙事件・<証拠略>)はその根拠を欠くものというべきである。

原告大渕順一は,平成9年7月11日,「日頃から上司に対して反抗的言動を繰り返し,誠実に職務を遂行して」いないことを根拠に出勤停止2週間の懲戒処分を受けた(丙事件・<証拠略>)。しかし右根拠は,懲戒処分の対象となるべき行為の日時,場所がおよそ不特定で,一応右根拠につき,取締役(常務)勝野剛は,「原告大渕順一の無線対応が悪い」「配車へ連絡しない」「直属の上司である坂(ママ)詰秀逸の業務指示に反発する」(勝野剛25頁,<証拠略>)と述べるが,これらを裏付ける証拠は本件全証拠中に見当たらず,それ以外に阪詰秀逸との間でどのような問題があったかにつき,「状況がよくわからないので,説明を受けた」と述べ(勝野剛26頁),これを直接目撃したわけではないことを認め,なおかつその詳細を説明できないことが明らかである(にもかかわらず,尋問後に作成された陳述書(<証拠略>)は不自然に詳細過ぎる内容であって,逆に著しく信用性が乏しい。)。そして,被告会社には本人の弁明を真剣に検討する意識が全く欠如していたものであった(被告代表者(岡周作)(平成11年2月17日実施)96頁)から,右懲戒処分はその根拠を認めるに足らない。

原告大渕順一,同大塚新松,同金子武弘が平成10年1月14日,玉石選別作業への業務指示に従うよう警告を受けたことは,前記一7のとおりである。しかしながら,後記6のとおり,右業務指示は違法なものであったから,右警告を甘受すべき理由はない。

原告丸山泰雄は,平成6年8月3日,「日頃取引先や同僚等への暴言を繰り返し」たことを根拠に警告を受けた(丙事件・<証拠略>)。加えて被告会社は,同人がその後も同様の態度で,平成10年2月には玉石選別作業の業務指示を拒否したと主張する。しかしながら,玉石選別作業の業務指示は違法であり,平成6年の右警告に関しては,同時期に行われた原告位下公男に対する懲戒処分(前記二2)と同様の理解(根拠不特定,実態不明,順法闘争としての争議行為等)が可能であって(原告丸山泰雄30項(ママ)以下,これに反する限り<証拠略>は採用しない。なお,<証拠略>参照),取締役(常務)勝野剛が日時・場所等を詳細かつ具体的に説明できないことからも明らかである(同人12頁以下,なお,陳述書(<証拠略>)は具体的な内容であるものの,同人への尋問後に作成されたものであるばかりか,原告丸山泰雄の本人尋問でその内容につき被告会社が同人の弁明を聴く姿勢も全くなかったもので,著しく信用性に乏しい。)から,右警告等の正当性を認めるに足らない。

結局のところ,原告大渕順一,同大塚新松,同丸山泰雄及び同金子武弘に関しては,平成6年12月のストライキ(前記二3)へ参加した事実以外に判断要素は存在せず,たとえ右参加事実に強弱の差異があったとしても,前記のとおり,右4名に関する欠勤日数,遅刻回数,生コンクリート運搬数量や運搬回数等は一切不明であるから,右4名が全従業員の中で「勤務状況に問題があり」「会社に対する貢献度が低い」者の選定順序の上位者であると結論付けることはできない。

なお,原告金子武弘は,前記基準(丙事件・<証拠略>)中「1、年齢55才以上」に該当する(丙事件・<証拠略>)が,前記のとおり,生コン部関連の管理部門や一般管理部門へ本件解雇基準を優先適用しなかったこと自体が不合理であり,この点から,原告金子武弘を整理解雇対象者として選定することは合理性を欠いている。

4  被告会社が本件整理解雇等の必要性を誠意を持って協議しなかったか

被告会社は「希望退職募集と休業に関し自ら団体交渉を申し入れ,平成10年7月9日の団体交渉に至った」という。

しかし実際には,新桜町トンネルの加水問題を受けて,反組合的な動機の下,原告組合支部が団体交渉の申し入れがあれば対応するという受働(ママ)的な姿勢を取ったに過ぎない(前記一8)。

他方,原告組合支部は同年6月,経営状況に関する資料を求めた(前記一8)にもかかわらず,被告会社は,同年7月9日の団体交渉で,要請された経営資料のかわりに「希望退職者の募集について」という文書(丙事件・<証拠略>)を提出したに過ぎない。この際,丙事件・(証拠略)の文書記載の限度で,被告会社による希望退職等の必要性の説明がなされたものと推認できるが,右各文書記載の「生コン出荷量の大幅な減少に伴う会社経営の悪化」というだけで,何らの具体的な数字を示さなかったと認められる(そして,翌日には一時休業が実施された。)。

被告会社は,同年9月11日,原告組合支部に対して一時休業の延長等の団体交渉を申し入れる一方で,同日,一時休業の延長実施を通知した(前記一8)。延長を実施する前に団体交渉を行うのでなければ,およそ交渉する意味がないのであって,被告会社の右対応は矛盾したものである。

被告会社と原告組合支部は,同月28日に団体交渉を行ったが,その際,改めて要請(丙事件・<証拠略>)された経営資料は一切提示されず,提示の必要性の説明も拒絶した(前記一8)。このうえで被告会社が「同月29日に団体交渉を申し入れた」というのであるが,そうであればもはや満足な資料の提示もなく,具体的な費用項目の数字を巡る客観的な議論もなしに,最後の団体交渉で形式を整えたうえ,整理解雇を強行するつもりであったと非難されてもやむを得ない。

このような状況に至り,被告会社から同年10月2日,席上提示ならば資料を示すとの通知があったが,原告組合支部は同月7日,資料提示に係るあっせんを申し立てた(前記一8)。これは,現状では内容のある団体交渉は望めないとして,地方労働委員会に調整の助力を求めたものと認められ,被告会社から同月15,19日に団体交渉の申し入れがあったが(前記一8),この段階では正常な交渉を望むことはできなかったというべきである。

被告会社は,同月28日に原告組合支部に対し,経営資料の一部を手渡した(前記一8)が,これは部門別の費用を前提とした具体的議論がおよそ不可能なものであって,この類の議論を被告会社が原告組合支部との間で一切しようとしない意向が認められる。前記一6によれば,被告会社は,平成8年1,2月ころ,「経営権の侵害だから,経営資料の提示は基本的には考えていない」と表明したのであるが(なお,<証拠略>参照),平成10年秋に至っても,この姿勢は一貫していたというべきである。

被告会社と原告組合支部は,同月20日にも整理解雇に関する団体交渉を行った(前記一8)が,一方で被告会社は,本件整理解雇の対象者を決定する同日付けの「通知書」(丙事件・<証拠略>)や「人員整理後の新体制について」(<証拠略>)を原告組合支部へ送付した。この送付に関し,取締役(常務)勝野剛は「団体交渉の20日に郵送しました」と述べる(同人60頁)。ならば,右「通知書」は郵便業務の行われる日中に投函され,その後(勤務時間終了後)に団体交渉が開催されたと見るのが自然の推移である。「同日の団体交渉の後に人選決定をした」とする勝野剛の供述(<証拠略>)は採用できない。

被告会社は,同年10月12日,地方労働委員会のあっせんを応諾したが(前記一8),同年11月5日,あっせん期日が開かれ,同年12月9日に続行する旨決められたにもかかわらず,「会社の経営状況が死活問題に関わる状況に追い込まれた」(勝野剛48頁)として本件整理解雇を実施した。このことにより右続行期日は無意味なものとなったが,前記1のとおり,被告会社の経営状況が「死活問題」となった状況は認められず,被告会社は,あっせんという公の場で原告組合支部と十分に討議し,自らの立場を説得的に説明する意思が乏しかったものと認めざるを得ない。

以上を総合すれば,被告会社は,本件整理解雇に際し,その必要性とその時期,規模,方法につき,原告組合支部に対して納得を得るため積極的に説明したり,原告組合支部が必要な経営資料や具体的な数字を要請すれば,必要な範囲で可能な限り提示し,提示に応じられなければ個別に誠実に理由を説明したものということはできない。その対応は,あくまで前提としての「経営権」を想定し,経営事項を包括的に秘匿する(労働法に優先する)姿勢といわざるを得ず,互いに具体的な数字(部門別・費用別)に基づき客観的かつ冷静に整理解雇の必要性を労使間で協議し,指図ではなく提案と説得を試みるという状況からは遠いものである。

さらに,本件予備的整理解雇に関し,被告会社のその後の対応も,平成7年4月ないし平成11年3月までの決算報告書(丙事件・<証拠略>)を丙事件証人小谷野毅の尋問前までに原告らに提示せず(顕著な事実),さらには証人勝野剛の尋問直前(平成12年4月11日)に至るまで原告らに提示せず(顕著な事実),また,同年5月24日の被告会社代表者(岡きよ子)の尋問前に突如として「修正後」と称する平成10年度決算報告書(<証拠略>)を提出したものであって(顕著な事実),平成11年7月1日に前代表者岡周作が死亡するまでの被告会社の反組合的な意図・動機を示す行動が失われる状況(後記6,7)を考慮しても,本件予備的整理解雇の時点においてもなお,被告会社はいまだ,誠実な対応で原告組合支部と客観的な協議を行おうとの姿勢を十分に示していなかったものと認められる。

5  以上によれば,被告会社による本件整理解雇及び本件予備的整理解雇は右で検討した4要件をいずれも満たさないものであって,解雇権濫用の故に無効といわざるを得ない。

6  さらに,被告会社の反組合的な意図・動機を示す行動(玉石選別作業,ロックアウト,休業)の有無を検討する。

前記一7のとおり,被告会社が原告組合分会所属の組合員に平成9年12月ころ以降に玉石選別作業を行わせ,これを労働基準監督署が安全ではないと指導し,改善のために被告会社が7項目の安全対策を指示したことが認められる。取締役(常務)勝野剛は,12月中の作業につき「腰痛等の問題から絶対に玉石を持たせてはいけないようにしたり,休憩時間を所定より増やしたり,重機には誘導員を付ける」(同人78頁以下)との改善すべき点を認めるが,丙事件・(証拠略)(写真)に照らせば,誘導員を付けるまでもなく重機は殆ど使用されず,もっぱら手作業で「玉石を持たせ」ていたことが窺われるのであり,この点を明らかにすべき従前の作業マニュアル(同人29頁,78頁)は本件全証拠中に存在せず,被告会社の「玉石選別作業日誌」(丙事件・<証拠略>)は活字や罫線で清書され,生の資料とはかけ離れた著しく不自然な体裁であり,その内容から想定される作業量に比較し,平成10年1,2月ころの玉石の分量が減っていない事実を取締役(常務)勝野剛自身も認めるところである(同人81頁)。

そもそも,我が国有数の豪雪地帯に所在する新潟県小千谷地域で,厳寒期に屋外で玉石を選別させる作業は,多ければ一晩で数十センチメートルも積もる降雪を除去することが前提で(丙事件・<証拠略>),人力により手作業で行うならば,著しく過酷な作業となる。

丙事件証人小谷野毅(平成12年1月26日実施),丙事件原告大渕順一,同大塚新松及び同金子武弘の各供述並びに弁論の全趣旨を総合すれば,平成9年12月に組合員が従事した厳しい玉石選別作業は,平成10年1,2月には殆ど作業が不可能で,現実には被告会社の非組合員従業員による作業は行われなかったというべきで,このような屋外・人力作業を特別な配慮もなく同年1月中旬ころに業務指示で命ずることは,本件具体的事情に照らせば,違法な業務命令であったと認められる。

被告会社は,原告組合支部が抗議を行っているにもかかわらず,このような違法で過酷な作業を意図的に原告大渕順一,同大塚新松及び同金子武弘に強い口調で命じ,かつ懲戒処分があり得る旨警告し(<証拠略>)強制したものであって,これは,原告組合支部の労働条件に関する抗議活動を全く軽視する被告会社の反組合的姿勢を示すものである。

なお,被告会社は,前記一7のとおり,平成10年3月からロックアウトを行い,その正当化理由として原告組合支部による種々の業務妨害行為の存在を挙げる。

しかし,例えば前記一7によれば,玉石選別作業に先んじて,平成9年10月に行われた政党調査団の活動を被告会社が「無法なやり方」と非難しているが,国会の参議院議員を団長とする公的側面を有する政党調査活動が恣意的に被告会社をねらい打ちにする違法行為を企図する筈がなく,被告会社における労使紛争の経緯や度重なる過積載に係る行政処分(前記一1ないし6)を国政の視点から採り上げ,適切な政治活動を行ったというべきものである。

また,同じく前記一7によれば,原告組合支部が平成9年2月(丙事件・<証拠略>),平成10年1月27日(<証拠略>)の二度,建設会社に「申入書」を送付したことが認められ,これを被告会社が「事実無根」「悪質な要求行為」であると非難しているが,「申入書」の文面上,要求するなどの文言が一切使用されておらず,文意は申し入れの趣旨の範囲内と認められ,仮に被告会社の信用,名誉を実質的に毀損するものであったとしても,前記一ないし五及び本項(六)の全事情に照らせば,重要な部分につき真実の摘示と認められ(労働安全衛生法違反は玉石選別作業の判示のとおりで,これ自体から地労委命令違反等も推認できる。),これを前提とした記載が意見ないし論評としての域を逸脱したものでないことも明らかであって,申し入れの経緯,動機,とりわけ本件の背景に国会議員の公的な政党調査活動が存在するという公益的側面・目的を考慮し,さらに被告会社の生コンクリート製造販売高に与えた影響の程度(前記1)等一切の事情を総合すれば,違法性を欠くものというべきである。

その後,前記一7のとおり,被告会社は,平成10年3月13日から約1か月間,原告組合分会所属の組合員をロックアウトする行為に出たのであるが,前記1のとおり,これを遡る期間において,被告会社の生コンクリート製造販売高が生産能力減少に比して急激に落ち込む現象は存在せず,また,右のとおり,「申入書」の交付に違法な業務阻害行為性を認めることはできないのであって,被告会社の右ロックアウトは攻撃的ないしは予防的性格を有するというほかなく,これを正当な行為と是認することはできない。

被告会社は,違法な玉石選別作業,誠実団体交渉義務違反等を指摘する原告組合支部の正当な活動を抑圧するか,あるいは予想されるべき原告組合支部との労使紛争の激化に先んずるために,右の違法なロックアウトを敢行したものと認められ,これは,原告組合支部を意図的に敵視する被告会社の反組合的姿勢を示すものというべきである。

さらに,前記一8のとおり,原告組合支部が同年5月22日に加水行為に関する団体交渉の申し入れを行い,これが新聞に報道されて,被告会社は,現場への出荷停止を余儀なくされたところ,この加水行為や報道への情報提供の経緯の詳細は,本件証拠上一切不明であるというほかない。被告会社としては,原告組合支部とすみやかに事案の真相について団体交渉で話し合うべきことは当然であるのに,これを行わず,言下に自らの責任を否定し,被告会社が取引先から注文を地区生コン協組(<証拠略>)を通じて受ける際,被告会社の管理部門が営業上の理由等により便宜で加水行為を事実上許容していた可能性(なお,過積載に関し,丙事件証人小谷野毅(平成12年2月16日実施)36頁以下)を一切調査,吟味することなく,ただ執拗に「関与した組合員を明らかにせよ」と表明し続け(丙事件・<証拠略>),さらには本項(六)1の検討からは認められない「出荷量の激減」を主張して,前記一8のとおり,生コン部輸送部門で乗務員5名を一時休業させる行動に出た。しかも,以上によればまさしく被告会社の責に帰すべき休業であるのに,明確な「平均賃金」の定義規定(労働基準法12条)を無視して,基本給の6割しか支給せず(規定内容の如何に関わらず,同法に反する就業規則,労働契約は無効,同法13条,93条),このような違法な状態を3か月間も継続したものである。

前記四で検討したところに以上の事情を併せ考慮するならば,被告会社の反組合的な意図・動機を示す行動は,平成6年12月のストライキ以降,平成11年7月1日に前代表者岡周作が死亡するまで,一貫したものであったというべく,その程度は強かったものと認められ,本件整理解雇及び本件予備的整理解雇は,これを背景に行われた不当労働行為と認めることができる。

7  まとめ

よって,原告大渕順一ら4名がいずれも被告会社に対して労働契約上の権利を有する地位を確認するとともに,被告会社は本判決確定に至るまでの確実な賃金を支払う民法上の責任がある。

しかしながら,被告会社の反組合的な意図・動機を示す一貫した行動が失われる状況に照らせば,本判決確定以降の将来の給付を求める必要性を認めるべき特段の事情は認められない。

第四結論

以上によれば,原告及び被告の請求に対する当裁判所の判断は以下のとおりとなる。

一  別表1懲戒処分一覧の内,平成6年3月28日及び同年7月25日になされたすべての懲戒処分及び同年12月30日になされた懲戒処分の内原告岡栄一に対してなされた懲戒処分はいずれも無効であり(主文第一項1),被告会社は,右無効な懲戒処分たる出勤停止処分により原告岡栄一及び同位下公男に支払われなかった別表2原告認容額一覧「出勤停止分」欄記載の各賃金及びこれらに対する弁済期到来後で甲事件訴状送達の日である平成7年6月14日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を支払うべき義務がある(主文第一項2)。

二  被告会社は,別表2「2時間分」欄記載の未払賃金及びこれらに対する弁済期到来後で甲事件訴状送達の日である平成7年6月14日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を,民法536条2項に基づき同表記載の原告らに対して支払うべき義務がある(主文第一項2)。

三  被告会社は,別表2「慰謝料」欄記載の慰謝料各10万円及びこれらに対する不法行為の日以降の日である甲事件訴状送達の日である平成7年6月14日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を,同表記載の原告らに対して支払うべき義務がある(主文第一項2)。なお,別表3原告計算額一覧「慰謝料」欄記載の金員(各50万円)の内,右10万円を超える部分は理由がないので棄却することとする(主文第一項4)。

四  被告会社は,別表2「格差」欄記載の金員及びこれらに対する不法行為の日以降の日である甲事件訴状送達の日である平成7年6月14日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を,同表記載の原告らに対して支払うべき義務がある(主文第一項2)。

五  被告会社は,原告組合支部に対して,300万円及びこれに対する不法行為の日以降の日である甲事件訴状送達の日である平成7年6月14日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を支払うべき義務がある(主文第一項3)。なお,これを越える原告組合支部の請求部分は理由がないので棄却することとする(主文第一項4)。

六  原告組合支部及び被告佐藤松喜は,被告会社に対して,88万円及びこれに対する不法行為の翌日である平成6年12月13日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を支払うべき義務がある(主文第二項1)。しかし,被告会社の原告岡栄一に対する請求は理由がないので棄却することとし(主文第二項2),原告組合分会に対する請求は原告組合分会に当事者能力がないから却下することとする(主文第二項3)。

七  被告会社が原告大渕順一,同大塚新松,同丸山泰雄及び同金子武弘に対して行った本件整理解雇及び本件予備的整理解雇はいずれも無効であるから,同人らは被告会社に対して労働契約上の権利を有する地位にあることを確認し(主文第三項1),被告会社に対して同人らに解雇後の未払賃金である平成11年1月以降の賃金を被告会社の給与支払日である毎月28日限り支払うべきことを命じる(主文第三項2)。ただし,本判決確定の日の翌日以降の賃金については訴えの利益が認められないので却下することとする(主文第三項3)。

(裁判長裁判官 大谷吉史 裁判官 住友隆行 裁判官 樋上慎二)

(別紙1) 原告目録

原告 位下公男

原告 川上進

原告 大渕順一

原告 北原信男

原告 丸山茂

原告 大塚新松

原告 鳥羽貞生

原告 田村政雄

原告 丸山和一

原告 渡辺良春

原告 丸山泰雄

原告 大平昭伊

原告 金子武弘

原告 大平和成

原告 大平吉雄

原告 相波久男

原告 岡信博

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