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新潟地方裁判所高田支部 平成8年(ワ)118号 判決 1999年4月14日

新潟県西頸城郡名立町大字名立大町一七〇七番地一

原告

細谷光男

右訴訟代理人弁護士

高橋賢一

新潟県長岡市城内町三丁目五番地八

右補佐人

吉井剛

新潟県上越市大和一丁目五番一七号

被告

株式会社ニコー

右代表者代表取締役

川村二高

右訴訟代理人弁護士

神山博之

主文

一  原告の請求を棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

一  請求の趣旨及び原因並びに原告の主張

原告はいずれも登録日を平成四年一二月二四日とする、登録番号第一九四六一〇九号(第一実用新案権)と登録番号第一九四六一一一号(第二実用新案権、第一実用新案権と合わせて「本件実用新案権」という)の実用新案権者である。

被告は別紙物件目録記載の建物(本件建物)を所有している。

本件建物のA棟は第一実用新案権の技術的範囲に属する構造を有し、B棟は第二実用新案権の技術的範囲に属する構造を有する。

(以上の事実は争いがない)

原告は本件建物建築以前に被告代表者に対し、本件実用新案権を出願中であること、登録された場合には実施料を支払ってもらう旨を話し、被告代表者も承諾していた。

なお、原告は本件建物の建築に関連して、昭和六二年一二月一八日頃、本件建物の建築を請負った株式会社石田建設工業から三〇〇万円を受け取っている。しかし、これはいわゆるラブホテルである本件建物の建築計画から保健所の許可を得て、営業開始に至るまでの営業許可手続に関する指導料であり、本件実用新案権実施許諾料ではない。

また、被告が本件建物で営業しているラブホテルには一九室あるところ、一室当たり一日少なくとも一万五〇〇〇円の売上があり、一室当たり一日に少なくとも三〇〇〇円の利益を上げている。そして、本件実用新案の実施料は売上の五パーセントが相当である。

よって、<1>被告は本件実用新案権の技術的範囲に属する本件建物でラブホテルを営業して、本件実用新案権を侵害しているので、本件建物の使用の差止を求めるとともに、<2>主位的に、実用新案法二九条により原告は被告が得た利益と同額の損害を受けていると推定されるので、損害賠償として本件建物の三年分の利益六二四七万二〇〇〇円の内金二〇〇〇万円に弁護士費用二〇〇万円を加算した二二〇〇万円及びこれに対する平成八年一〇月三〇日から完済まで年五分の割合による金員の支払いを、<3>予備的に三年分の実施料である一五六一万八〇〇〇円及びこれに対する平成八年一〇月三〇日から完済まで年五分の割合による金員の支払いを求める。

二  被告の主張

原告は本件建物の建築に関連して、昭和六二年一二月一八日頃、本件建物の建築を請負った石田建設から三〇〇万円を受け取っている(この事実は争いがない)。

これは、本件実用新案権実施許諾の対価である。

三  判断

原告は被告代表者及び本件建物の建築を請負った石田建設の代表者に、本件建物の設計には本件実用新案権の内容を盛込む、その内容を実用新案として出願するつもりである、登録されたら実施料をもらうと話したと供述(三一項ないし三六項、四〇項ないし四二項、八三項、八五項、九五項)している。他方、石田建設の代表者である証人石田一義はそのような話はなかったと証言(二二項、二四項、二五項、三〇項、三一項、四四項、五一項、五二項)している。

原告の供述はこれを裏付けるに足りる証拠はない。

また、本件建物が本件実用新案権の技術的範囲に属する構造となっているのは原告の考えに基づくものである(原告二三項ないし二七項)。ところで、原告は本件建物に関して建築を請負った石田建設から三〇〇万円を受領している。特別の事情がない限り、本件建物の基本構造(これが本件実用新案権の技術的範囲に属するものである)に関する原告のアイデア料も前記三〇〇万円に含まれると一般人が考えても不自然ではない。そして、原告において本件実用新案の実施料を別に取るつもりであったのであれば、その旨の書面が被告との間で取り交わされても不思議ではない。そして、売上に一定割合を乗じて実施料を定めるのであれば、その額は年間数百万円から時として一〇〇〇万円を超えることも考えられるから、真実、被告との間で登録後に本件実用新案権の実施料を支払うことで合意があった場合、そのことに関する書面がないのは不自然である。

登録後に、本件実用新案の実施料を支払ってもらうという話を原告が被告代表者あるいは石田建設代表者にしたことはないと認める。したがって、原告と被告間には登録後に本件実用新案権の実施料を支払うという合意は存在しないと認める。

ところで、原告が石田建設から受けとった三〇〇万円は本件建物建築に関する原告への報酬と解される。そして、本件建物が本件実用新案権の技術的範囲に属する構造を有するに至った原因が原告の発案であることからすると、除外されていることが明確で無い限り、原告が受けとった三〇〇万円の中にその対価が含まれているというほかない。本件全証拠によるも、右三〇〇万円の中に本件建物が本件実用新案権の技術的範囲に属する構造を有することの対価が除外されていることを示すものはない。

本件実用新案権の実施料は石田建設が原告に支払った三〇〇万円に含まれていると認める。

(口頭弁論終結の日 平成一一年三月二五日)

(裁判官 加藤就一)

物件目録

所在 糸魚川市大字大野字一ツ屋裏一〇七五番地、一〇七四番地

家屋番号 一〇七五番

種類 ホテル

構造 鉄骨造陸屋根二階建

床面積 一階 八七二・四五平方メートル

二階 一二二一・六六平方メートル

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