新潟家庭裁判所三条支部 平成11年(家)1073号 2000年4月12日
主文
1 被相続人の遺産を次のとおり分割する。
(1) 申立人X1は、別紙遺産目録1記載の土地のうち(1)ないし(3)の土地を単独取得する。
(2) 相手方X2は、別紙遺産目録1記載の土地のうち(6)ないし(12)の土地及び同目録4記載の電話加入権を単独取得する。
(3) 相手方Y1は、別紙遺産目録1記載の土地のうち(4)、(13)、(15)、(16)の土地及び同目録2記載の各建物を単独取得する。
(4) 相手方Y2は、別紙遺産目録3記載の株式を取得する。
(5) 申立人X1は相手方Y1に対し、金200万円を本審判確定の日から3か月以内に支払え。
(6) 申立人X1は相手方Y2に対し、金370万円を本審判確定の日から3か月以内に支払え。
(7) 相手方X2は相手方Y2に対し、金998万円を本審判確定の日から3か月以内に支払え。
2 本件手続費用は各自の負担とする。
理由
一件記録に基づく当裁判所の事実認定及び法律判断の要旨は、以下のとおりである。
1 相続の開始と相続人及び法定相続分
被相続人Aは、平成7年6月27日に死亡し、相続が開始した。その共同相続人は、被相続人の配偶者Y1(相手方。以下「相手方Y1」という。)、被相続人と相手方Y1との間の長男X1(申立人。以下「申立人」という。)、二男X2(相手方。以下「相手方X2」という。)、二女X3(相手方。以下「相手方X3」という。)である。
本件では適式の遺言がないので、その相続分は法定相続分により相手方Y1は2分の1、その余の相続人は各6分の1である。
2 相続分の譲渡
被相続人死亡後、相手方Y1は、自己の相続分を申立人に譲渡する旨の意思表示をしたものの、その後、相手方Y1は申立人夫婦と不和となり、申立人夫婦が家を出る形で別居した。このため、相手方Y1は右意思表示を撤回した。このように、相続分の譲渡の効力については疑義があるため、譲渡はなかったものとして扱うこととする。なお、申立人も相手方Y1が遺産分割により遺産を取得することは了解している。
3 遺産の範囲及びその評価
(1) 一件記録によれば、別紙遺産目録1記載の土地のうち、(5)と(14)の土地は、いずれも平成10年12月3日に燕市に売却されていることが認められるから、遺産分割の対象とはならない。
(2) 別紙遺産目録1記載の土地は、以下のとおり大きく5区画に分けられる。
A区画 (2)の土地
B区画 (1)、(3)の土地
C区画 (4)、(13)、(15)、(16)の土地
D区画 (6)、(7)、(10)の土地
E区画 (8)、(9)、(11)、(12)の土地
(3) 各区画の土地の利用状況は以下のとおりである。
A区画 申立人が倉庫(かなり堅固なもの)の敷地として利用し、相手方X2が車庫(比較的簡易な造り)として利用し、Bが通路としても利用している。
B区画 被相続人の弟のBが、(3)の土地の北側に接した燕市<以下省略>の土地を所有し敷地一杯に居宅を建て、玄関も南側に向けているため、同人が(3)の土地を家人の通路及び自家用車の駐車場と通路として遅くとも昭和40年ころから利用してきている。(1)の土地は、相手方Y1、Bが畑として利用している。
なお、B区画の南側は県道に接しているが、県道よりも約2.40メートル低い位置にあり、県道を進入路として利用することは事実上不可能である。そのため、B区画への進入路は北側の道幅の狭い側道のみとなる。
C区画 別紙遺産目録2記載の各建物の敷地及び庭等として利用されており、右各建物は、相手方Y1が相手方X2とともに、居住・利用している。
D区画 相手方Y1が畑として利用している。
E区画 道路ができたことによって生じた残地、(11)、(12)の土地を畑として第三者(C家)に低額で貸している。(8)、(9)の土地は雑種地として放置されている。
(4) 一件記録(相手方X2作成の不動産価格意見書、相続税申告書の記載等)によれば、各区画の土地の評価は以下のとおりである。なお、A区画とB区画一体のとき、その価値は個別の場合よりも高いものといえそうであるが、A区画もB区画もBの土地利用権の問題が潜在していること、不動産価格意見書がA区画を登記簿地積より4平方メートル多い202平方メートルで計算して465万円と評価していることなどから、一体の場合であっても、A区画の評価額を465万円としたうえで、評価額は個別の場合と同額に考えることとする。
A区画 465万円
B区画 1572万円
C区画 3913万円
D区画 1650万円
E区画 809万円
合計 8409万円
(5) 一件記録(相続税申告書の記載、評価証明書等)によれば、別紙遺産目録2記載の各建物の評価は以下のとおりである(1万円未満四捨五入)。
(1)の建物 282万円
(2)の建物 6万円
合計 288万円
(6) 別紙遺産目録2記載の株式の評価を99万円とすることについて当事者間に異議はない。
(7) 相手方X2は、別紙遺産目録3記載の電話加入権を現在使用している。その評価額は6万円をもって相当と思料する。
4 具体的相続分の算定
遺産総額は8802万円であり、各相続分によって具体的相続分を算定すると、以下のとおりとなる。
申立人 1467万円
相手方Y1 4401万円
相手方X2 1467万円
相手方X3 1467万円
5 当事者の意見
(1) 申立人
申立人が(2)、(6)ないし(12)の土地を取得する。相手方X2が(1)、(3)の土地を取得する。 (2) 相手方X2
申立人が(1)ないし(3)の土地を取得し、相手方Y1が(4)、(13)、(15)、(16)の土地を取得し、相手方X2が(6)ないし(12)の土地を取得する。
6 当裁判所の定める分割方法
(1) 各区画の土地の利用状況からA区画とB区画は一体として利用されることが好ましいこと、A区画は申立人が倉庫(かなり堅固なもの)の敷地として利用し撤去に困難が予想されることから、申立人にはA区画及びB区画(評価額合計2037万円)を取得させるのが相当である。
(2) C区画は、相手方Y1及び相手方X2の居住・利用する別紙遺産目録2記載の各建物の敷地及び庭等として利用されていることから、右各建物とともに相手方Y1に取得させるのが相当である。C区画及び右各建物の評価額の合計は4201万円であり、具体的相続分に不足する分(200万円)は代償金をもってあてるのが相当である。
(3) D区画、E区画については、事実上、穂積家を継ぐことになる相手方X2に取得させるのが相当である。また、別紙遺産目録3記載の電話加入権は、現在使用している相手方X2に取得させるのが相当である。D区画、E区画及び右電話加入権の評価額の合計は2465万円である。
(4) 別紙遺産目録3記載の株式(評価額99万円)は、相手方X3に取得させ、具体的相続分に不足する分(1368万円)は代償金をもってあてるのが相当である。
7 よって、主文のとおり審判する。
遺産目録
1 土地
(1) 所在 燕市<以下省略>
地番 <省略>
地目 畑
地積 304平方メートル
(2) 所在 燕市<以下省略>
地番 <省略>
地目 畑
地積 198平方メートル
(3) 所在 燕市<以下省略>
地番 <省略>
地目 畑
地積 436平方メートル
(4) 所在 燕市<以下省略>
地番 <省略>
地目 畑
地積 128平方メートル
(5) 所在 燕市<以下省略>
地番 <省略>
地目 畑
地積 16平方メートル
(6) 所在 燕市<以下省略>
地番 <省略>
地目 畑
地積 242平方メートル
(7) 所在 燕市<以下省略>
地番 <省略>
地目 畑
地積 275平方メートル
(8) 所在 燕市<以下省略>
地番 <省略>
地目 畑
地積 14平方メートル
(9) 所在 燕市<以下省略>
地番 <省略>
地目 畑
地積 144平方メートル
(10) 所在 燕市<以下省略>
地番 <省略>
地目 畑
地積 49平方メートル
(11) 所在 燕市<以下省略>
地番 <省略>
地目 畑
地積 176平方メートル
(12) 所在 燕市<以下省略>
地番 <省略>
地目 畑
地積 42平方メートル
(13) 所在 燕市<以下省略>
地番 <省略>
地目 宅地
地積 431.49平方メートル
(14) 所在 燕市<以下省略>
地番 <省略>
地目 宅地
地積 36.63平方メートル
(15) 所在 燕市<以下省略>
地番 <省略>
地目 畑
地積 335平方メートル
(16) 所在 燕市<以下省略>
地番 <省略>
地目 畑
地積 226平方メートル
2 建物(いずれも未登記)
(1) 所在 燕市<以下省略>
種類 居宅
構造 木造瓦葺2階建
建坪 220.92平方メートル
(2) 所在 燕市<以下省略>
種類 倉庫
構造 木造瓦葺2階建
建坪 52.88平方メートル
3 株式
(1) a株式会社 1584株
(2) b株式会社 1000株
(3) c株式会社 106株
(4) d株式会社 1000株
4 電話加入権
番号 <省略>