新潟家庭裁判所三条支部 昭和32年(家)9号 審判 1959年12月24日
申立人 佐川ヒサ(仮名)
相手方 川田良子(仮名) 外三二名
主文
第一、別紙第二目録の不動産はこれを申立人佐川ヒサの単独所有とする。
第二、申立人佐川ヒサは別紙第三目録の相手方に対しそれぞれその名下の金額及びこれに対しこの審判確定の日から完済に至るまで年五分の割合による金額を支払うこと。
理由
第一、申立人は昭和三一年一〇月一五日当庁に対し遺産分割の調停を申立てた。
その申立の要旨は、被相続人が昭和二三年六月○日死亡し相続が開始したが被相続人には妻、直系卑属、直系尊属がなく兄弟姉妹及びその代襲者が相続人であり、共同相続人は全部で三四名である。遺産は別紙第二目録の不動産(宅地)である。昭和二九年一二月○○日当庁において被相続人の遺産について遺産分割の調停が成立したのであるがその時共同相続人中五名がその調停事件に参加していなかつたので再度遺産分割の調停を求めると、いうのである。
ところで、この調停事件(当庁昭和三一年(家イ)第六五号)は、昭和三二年一月○○日不成立となつたので、本件審判事件に移行するに至つたのである。
第二、(調査の資料)
昭和二九年(家イ)第七六号遺産分割調停事件の記録及び家庭裁判所調査官藤田吾三郎、同亀山弘文の各調査報告書並びに本件記録における戸籍の謄抄本、当庁嘱託による他庁からの調査報告書、関係人の審問結果、鑑定人堀英郎の不動産価額の鑑定結果等全記録に基き審査した。
第三、(調査の結果)
一、(身分関係)
被相続人佐川三郎は佐川幸男(明治四二年九月○○日死亡)佐川ミネ(昭和一一年一月○日死亡)間の三男であるが妻子なく昭和二三年六月○日死亡し、その兄弟姉妹及びその代襲者が相続することになつたのである。
その兄弟姉妹の氏名続柄等は別紙第四目録の(1)の示すとおりであつて、同表の七女スミは生存し八分の一の法定相続分を有するものであるが、その他の兄弟姉妹はいずれも被相続人より先に死亡し、イシ、タキ、ミネ、キイ、キミ、ナミ、文三の七名は、各直系卑属があるので第四目録の(2)のA、B、C、D、E、Fに示すとおり代襲相続の関係を生じたものである。
二、(法定相続分)
各相続人の法定相続分は別紙第五目録のとおりである。すなわち、被相続人の兄弟姉妹として相続すべき地位にある者は八名であるから各八分の一の相続分を有すべきところ、生存者五島スミを除く七名については各その直系卑属が代襲相続する関係である。
ところがその直系卑属においても別紙第四目録の(2)に示す如く死亡した者があつて、その相続分の帰属はかなり複雑であるがその算出の根拠は別紙第五目録の算式に示すとおりである。
三、(相続分の譲渡)
本件共同相続人の内、川田良子、川田敏一、川田治、川田康司、須藤哲也、松井正己、川田四郎、田村千里、寺元アキヨ、斎川アイ、小出一夫、小出昌一、松野ミキ、浦辺正俊、真田光子、赤木昌代(旧姓浦辺)、浜村テル、川井雄吉、本田洋、本田公夫(旧姓原)、本田四郎、佐川君枝、渡部圭子、小山幸子(旧姓小出)、五島スミの以上二五名は昭和二九年一二月二二日いずれもその相続分を申立人佐川ヒサに対し贈与した。又、共同相続人の内田マリは昭和三四年六月一六日その相続分を申立人佐川ヒサに贈与した。なお、共同相続人中浦辺正俊、真田光子、赤木昌代の三名は昭和三二年二月○日その父浦辺俊一の死亡により同人の相続分を相続したが、浦辺正俊、真田光子は昭和三四年八月二○日に、赤木昌代は同年九月四日に、それぞれ、その相続分を申立人佐川ヒサに贈与した。
四、(遺産)
被相続人の遺産は別紙第二目録に示すとおりである。その価格は現時の時価であつて、鑑定人堀英郎の鑑定の結果を採用したものである。
なお、被相続人は相続人等に対し生前贈与もなく、遺産に関する遺言も存在しない。
第四、(結論)
以上判示するところにより、本件遺産に対し現在相続分を有する者は、申立人及び第三目録に示す下村ユミ外六名、合計八名であつて、申立人は自己個有の相続分一五分の一に他からの贈与を受けた相続分を合せると五七六分の四九三という圧倒的に大量の相続分を有し、他の七名の相続人の相続分は第五目録第三目録に示すとおりであるから、これ等の相続分に応じて遺産を分割すべきこととなる。
而して、本件遺産たる土地の状況を観るに、三筆の境界線も必ずしも明白ならず、それに、佐川洋所有の家屋二棟と第三者所有の住家が八棟存在し土地使用関係も複雑であり現物を分割することは妥当でないと認めるし、それに申立人が圧倒的な相続分を有するのであるから、本件土地全部を同人の単独所有となし、同人に他の共同相続人に対し債務を負担させる方法を以て相当と考える。
そこで、申立人の負担すべき債務額は遺産たる土地の合計価額二百九十六万八千八百七十円に対し各共同相続人の相続分を乗じ円未満の額はこれを切捨て別紙第三目録に示すとおりとなるのである。ところで申立人はその債務額について、この審判確定の日から完済に至るまで民法所定の利率年五分の割合による遅延利息を付して支払うべきものとし、主文のとおり審判する。
(家事審判官 荒井重与)
第一目録~第四目録(省略)
第5目録 各相続人の法定相続分
相続人氏名
算式
法定相続分
備考
川田良子
1/8×1/7×2/3×1/4=
1/336
亡父良男が1/8×1/7のところ、これを子として2/3更に子4人であるからその1/4宛
川田敏一
同上
1/336
川田治
同上
1/336
川田康司
同上
1/336
川田マリ
1/8×1/7×1/3=
1/168
亡夫の1/7に対し妻として1/3
須藤哲也
1/8×1/7=
1/56
松井正己
同上
1/56
川田四郎
同上
1/56
田村千里
1/8×1/7=
1/56
寺元アキヨ
同上
1/56
斎川アイ
同上
1/56
小出一夫
1/8×1/4
1/32
亡母タキの相続人子4人
小出昌一
同上
1/32
松野ミキ
同上
1/32
浦辺正俊
(1/8×1/4×1/4)+{(1/8×1/4×1/4)÷3}×1/3=
10/1152
亡母フエの分1/8×これを子4人であるから1/4宛及び和男の相続した亡父俊一の分の1/3を加う
裏田光子
同上
10/1152
赤木昌代
同上
10/1152
下村行夫
(1/8×1/4×1/4)×1/3×2/3=
1/576
和男の分の1/3が岩夫に更にその2/3
下村ユミ
(1/8×1/4×1/4)×1/3+(1/8×1/4×1/4)×1/3×1/3=
4/1152=1/288
和男の分の1/3及び岩夫の1/3
浜村テル
1/8
1/8
川井雄吉
同上
1/8
本田洋
1/8×1/5=
1/40
本田公夫
同上
1/40
本田四郎
同上
1/40
佐川君枝
同上
1/40
渡部圭子
同上
1/40
佐川ヒサ
1/8×1/3+1/8×1/5=
1/15
小山幸子
(1/8×1/3+1/8×1/5)×1/2+1/30×2/3×1/2=
2/45
亡母ナツの1/2及び芳夫を相続した亡父の分に対する2/3×1/2
小出伸
1/30×1/3=
1/90
亡夫の分の1/3
小出ゆき
1/30×2/3×1/2=
1/90
亡父の分の2/3×1/2
大川マツ
1/15
1/15
佐川ヒサと同棲
内山セン
1/8×1/5=
1/40
亡父文三の1/5
佐川洋
同上
1/40
同上
五島スミ
1/8
1/8