新潟家庭裁判所長岡支部 平成元年(家)5173号 1990年10月30日
主文
1 被相続人の別紙遺産目録記載(編略)の遺産を次のとおり分割する。
(1) 別紙遺産目録記載の不動産のうち、No、1、2、4、5ないし7、12ないし15、27ないし29、33ないし39、43の各不動産は、相手方宮川一恵の単独取得とする。
(2) 別紙遺産目録記載の不動産のうち、前項記載の不動産を除くその余の各不動産は、相手方井山タエ、同宮川二郎及び同宮川雄三の共有(持分各3分1)取得とする。
2 相手方井山タエ、同宮川二郎及び同宮川雄三は、相手方宮川一恵に対し、前項(2)の不動産取得の代償として、22万8142円及びこれに対する本審判確定の日の翌日から完済に至るまで年5分の割合による金員を支払え。
理由
第1相続人及び関係者の身分変動
1 本件の相続人は、表記の5名である。相手方一恵は被相続人の妻(昭和7年2月24目入夫婚姻)、両者間のそれぞれ申立人は長男、相手方タエは長女、相手方二郎は二男、相手方雄三は三男である。二女マサ子(昭和18年10月21日生)は、昭和44年11月7日死亡した。マサ子には、相続人はない。
2 相手方一恵は、その実父喜八郎死亡(昭和4年6月10日没)により、家督相続した。その後見人には実母イネが就職した。光一郎との入夫婚姻により、光一郎が戸主となった。申立人は、昭和34年12月、夕子と婚姻した。相手方タエは、昭和35年8月、井山貴之と婚姻した。相手方二郎は、昭和36年6月、山本和美と婚姻したが後に離婚した。そして昭和46年11月、松山良子と再婚し、昭和50年7月協議離婚した。子としては、宮川秀明(昭和36年7月生)がある。相手方雄三は、昭和46年2月、サヨと婚姻した。
申立人・夕子夫婦間に実子はない。昭和60年8月27日、秀明と養子縁組した。秀明は、昭和60年10月、みはると婚姻した。
第2相続財産と特別受益による持戻財産及び具体的相続分
1 光一郎の相続にかかる本件遺産は別紙の通りである。但し、No.29の一部とNo.36とは、昭和46年12月、第三者に売却され代金も受領している。しかし登記手続が未了で、本件当事者間が深刻に紛糾して、調停での解決を見なかった経緯に鑑み、ここでは一応、遺産の内に含めておく。別紙遺産目録の取得原因欄に「S7光一郎家督相続」とある本件遺産は、喜八郎から相手方一恵が家督相続し、更に光一郎の入夫婚姻により、光一郎が家督相続したものである(No.1の土地及びNo.43の建物も、権利変動の実体は、同様)。
本件遺産の具体的分割方法は、後記の通りである。
2 申立人は、昭和55年、家屋新築に際し、光一郎から400万円の贈与を受けた。これは、民法903条1項の特別受益(生計の資本としての贈与)と認める。他に特別受益及びその価格を確定できるものはない。
金銭の贈与については、贈与金額を相続開始の貨幣価値に換算した価格をもって評価すべきである。よって公知の総理府統計局発表の消費者物価指数(贈与時の昭和55年度の指数を100とすると、相続開始時昭和62年度の指数は115.34)により換算すると、上記400万円の相続開始時の価格は、461万3600円である。
申立人は、寄与分を主張するが、寄与分を定める処分の申立(家事審判法9条乙類9の2)をしていないから、寄与分を認めない。
3 みなし相続財産の価格 2933万2600円
前記本件遺産の価格2471万9000円と特別受益の相続開始時の価格461万3600円の合計額である。
4 申立人と相手方の各具体的相続分は、以下の通りである。
(1) みなし相続分(民法903条)
<1> 申立人 0円
2933万2600円×(1/2)×(1/4) = 366万6575円
366万6575円-461万3600円 = △94万7025円
<2> 相手方一恵 1466万6300円
2933万2600円×(1/2) = 1466万6300円
<3> その余の相手方ら各自 366万6575円
2933万2600円×(1/2)×(1/4) = 366万6575円
(その余の相手方らの合計額1099万9725円)
(2) 具体的相続分
<1> 申立人 0円
<2> 相手方一恵 1412万5142円
1466万6300円/(1466万6300円+1099万9725円)
= (1466万6300円/2566万6025円)
= 10/17.5
2471万9000円×(10/17.5) = 1412万5142円
<3> その余の相手方ら各自 353万1285円
366万6575円/(1466万6300円+1099万9725円)
= (366万6575円/2566万6025円)
= 1/7) = 2.5/17.5)
2471万9000円×(2.5/17.5)
= 353万1285円
(その余の相手方ら合計額 1059万3855円)
第3分割の方法
よって申立人の相続分は、零であるから、同人を除き、相手方4名で本件遺産を分割する。
その方法は、本件遺産の種類、位置、形状、従前の利用状況、当事者の分割方法に関する意見、調停の経過等、本件に現れた一切の事情を総合し、主文1項の通りに分割する。しかるに上記分割方法によるときは、相手方宮川一恵の取得する不動産の価格は、合計1389万7000円で、同女の前記具体的相続分の価格に22万8142円不足する。よってその余の相手方3名に、主文2項の通り上記不足額を、同人らが取得する不動産の代償として、相手方一恵への支払義務を負担させることとする。
よって主文の通り審判する。