新潟家庭裁判所高田支部 平成16年(少ハ)1号 決定 2004年2月26日
少年 R・J (昭和62.1.1生)
主文
少年を中等少年院に戻して収容する。
理由
(申請の趣旨及び理由)
本件申請の趣旨及び理由は、本件記録中の関東地方更生保護委員会作成の平成16年2月2日付け戻し収容申請書記載のとおりであるから、これを引用する。
(当裁判所の判断)
第1少年の遵守事項違反の事実等
1 少年は、平成13年11月5日、当裁判所において、窃盗、恐喝、同未遂、住居侵入保護事件(以下「基本事件」という。)により初等少年院送致決定を受け、平成14年11月14日赤城少年院を仮退院した。少年は、仮退院に際し、犯罪者予防更生法34条2項各号の事項(以下「一般遵守事項」という。)のほか、同法31条3項に基づき特に定められた事項(以下「特別遵守事項」という。)として、「他人の金品に手を出さないこと(第3号)」、「他人を脅したり暴力を振るって金品を奪うようなことをしないこと(第4号)」、「交通法規を遵守し、運転免許を取得するまでは車両を運転しないこと(第5号)」、「暴走族や不良集団関係者等素行の良くない者と交際しないこと(第7号)」等の遵守を誓約した。
2 しかし、少年は、以下のとおりの遵守事項違反をした。
(1) 少年は、平成15年7月、暴走族「○○」を結成し、約30人の構成員を集め、自らその初代総長となり、その後、いわゆる特攻服を作製してこれを日常的に着用し、多数回暴走行為を繰り返した。これは、一般遵守事項第2号(「善行を保持すること」)及び特別遵守事項第7号に違反する。
(2) 少年は、公安委員会の運転免許を受けないで、平成15年10月28日午前1時30分ころから午前1時40分ころまでの間、新潟県上越市○○××番地の×少年宅から同市○△××××番地×○○店までの道路において、原動機付自転車を運転した。これは、一般遵守事項第2号及び特別遵守事項第5号に違反する。
(3) 少年は、同日午前1時40分ころ、前記○○店において、同店経営者A管理にかかる成人雑誌1冊を窃取した。これは一般遵守事項第2号及び特別遵守事項第3号に違反する。
(4) 少年は、同日午前3時15分ころ、同市○○××××番地×○○境内において、B(当時14歳)に対し、同人の腹部を膝蹴りするなどの暴行を加えた。これは、一般遵守事項第2号及び特別遵守事項第4号に違反する。
(5) 少年は、同月29日午後11時ころ、同市○○町×丁目×番×号○○鉄道株式会社○○駅前付近において、C(当時16歳)及びD(当時16歳)に対し、語気鋭く因縁を付けて金員の交付を要求し、即時同所において、畏怖しているCから現金5000円の交付を受けてこれを喝取し、同年11月上旬ころ、同市○○××××番地××ラーメン○○亭前において、畏怖しているDから現金2万円の交付を受けてこれを喝取した。これは、一般遵守事項第2号及び特別遵守事項第4号に違反する。
第2処遇について
少年は、平成14年11月に少年院を仮退院したが、平成15年1月、少年院で知り合った他県在住の暴走族構成員との交遊を復活させ、同年3月ころから無免許運転を繰り返し、同年7月、前記第1の2(1)のとおり暴走族を結成して総長に就任し、同年10月以降、同(2)から(5)の各非行を敢行したものであるが、本件につき引致状の執行を受けるまで、捜査機関や保護観察所等に対し、非行への関与を一切否認する態度をとり続けていた。日常生活においても、ほとんど真面目に働こうとせず、家庭内では母に対し金銭をせがむなど好き放題に振る舞い、暴走族関係者や不特定多数の異性等との遊び中心の生活を続け、更生の兆しはみられないままであった。
少年は、発覚しなければ悪いことをしてもよいという不良集団特有のねじ曲がった価値観を深く身につけており、このまま放置すれば、窃盗、恐喝、暴行、道路交通法違反等の非行を繰り返す可能性が高い。しかるに、少年の父は、これまでの強権的な姿勢を改め、少年を受け止めるべく努力しようとしたけれども、結果的には少年を放任することとなり、少年に対峙する自信を失っているし、母は、従前と同様に、少年を受容しようとするあまりに甘やかす傾向が強く、家庭の指導力は限界にきている。また、少年は、保護観察所の指導にも表面的に従うだけで、実質的にはこれを無視して遵守事項違反を繰り返していたものであり、もはや社会内処遇による改善更生を期待することは極めて困難であるといわざるを得ない。
そうすると、少年が、身柄を拘束された後は遵守事項違反をすべて認め、当審判廷において、反省している旨述べ、暴走族とは関わらないようにするなどと供述していることなど、少年に有利に斟酌しうる一切の事情を十分に考慮しても、少年に非行を繰り返さないためには、この際、少年を中等少年院に戻して収容し、じっくりと時間をかけて、さらに内省を深めさせ、規範意識や就労意欲等を身に付けさせるための再度の矯正教育を施すのが相当である。そして、少年の非行性が基本事件による収容時に比してさらに深化していること、面従腹背の構えが強いこと、能力的な限界があり、理解力が劣っていることなどの事情によれば、通常の長期処遇よりも比較的長期の処遇期間(1年6月程度)を設定するのが相当であると判断されるから、その旨の処遇勧告を付することとする。
第3結論
よって、犯罪者予防更生法43条1項、少年審判規則55条により少年を中等少年院に戻して収容することとし、主文のとおり決定する。
(裁判官 松井修)
処遇勧告書<省略>
〔参考〕 戻し収容申請書
戻し収容申請書
○○第○○号
平成16年2月2日
新潟家庭裁判所高田支部 御中
関東地方更生保護委員会
次の者は、少年院を仮退院後新潟保護観察所において保護観察中の者であるが、少年院に戻して収容すべきものと認められるので、犯罪者予防更生法第43条第1項の規定により申請する。
1 氏名等
氏名・年齢 R・J(昭和62年1月1日生)
本籍 新潟県上越市○○××番地の×
住居 新潟県上越市○○××番地の×
(新潟少年鑑別所 留置中)
職業 無職
2 保護者
氏名・年齢 R・B(昭和29年10月27日生)
住居 新潟県上越市○○××番地の×
職業 地方公務員
3 本件保護処分
決定裁判所 新潟家庭裁判所高田支部
決定の日 平成13年11月5日
4 仮退院に関する事項
許可委員会 関東地方更生保護委員会
許可決定の日 平成14年10月21日
仮退院施設 赤城少年院
仮退院の日 平成14年11月14日
5 保護観察の経過及び成績の推移
別紙1「保護観察の経過及び成績の推移」のとおり
6 申請の理由
別紙2「申請の理由」のとおり
7 必要とする収容期間
(本人は20歳未満の者である。)
8 参考事項
当委員会の審理開始決定に伴う留置期限は、平成16年2月4日である。ただし、本申請により、留置期限は、同年2月14日となる。
9 添付書類
1 本人に対する質問調書(甲)謄本(平成16年1月26日付け)2通
2 実母に対する質問調書(乙)謄本(平成15年12月17日付け)1通
3 引致に関する面接票謄本(平成15年11月6日付け) 1通
4 本人に対する面接票謄本(平成15年12月22日付け) 1通
5 本人に対する面接票謄本(平成16年1月8日付け) 1通
6 被害者に対する面接票謄本(平成16年1月14日付け) 1通
7 実母に対する面接票謄本(平成16年1月23日付け) 1通
8 保護観察官作成の口頭聴取書写し(平成15年12月15日付け)1通
9 引致状謄本 1通
10 少年院仮退院許可決定書謄本 1通
別紙1 保護観察の経過及び成績の推移
(保護観察の経過)
1 平成14年11月14日、実父母の出迎えを受けて赤城少年院を仮退院し、新潟保護観察所○○駐在官事務所(以下「駐在官事務所」という。)に出頭し、担当保護観察官(以下「主任官」という。)の面接において遵守事項について説明を受け所定の手続を終了した後、担当保護司(以下「担当者」という。)のもとを来訪し、指定帰住地である新潟県上越市○○××番地の×の実父のもとに帰住した。
2 同月29日、担当者のもとを来訪し、求職中である旨等を報告した。
3 平成14年12月は往訪1回、来訪1回。駐在官事務所へ出頭しての主任官面接が2回。
(1) 同月17日、本人は駐在官事務所に出頭したが、髭を生やし眉毛を剃っていたので、主任官は本人に反省文を提出させた上で、翌日、再度出頭するように指示した。
(2) 同月18日、本人は髭を剃って再度出頭した。主任官は本人に遵守事項を確認させ、再度反省文を提出させ、すみやかに就労するように指導した。
(3) 同月26日、本人から駐在官事務所あてに電話連絡があり、新潟県新井市所在の○○測量設計に就労が決まったが、冬季は仕事がないので雪が消えたら出社するようにと言われ、その間○○営業所でアルバイトをすることにしたと報告した。
4 平成15年1月は来訪2回。○○測量設計の所在地は、新潟県中頸城郡○○町○○×××―×であり、12月中は5日間、1月に入って4日間稼働したと報告した。
5 平成15年2月は来訪2回。1月30日から2月4日まで左目上の脂肪を除去する手術のため○○病院に入院した。稼働日数が少ないため、ハローワークで求職活動をしているが、両親が本人の稼働意欲を評価してくれていると報告した。
6 平成15年3月は来訪2回。2月から3月の稼働日数は7日間。同月14日、原動機付自転車の運転免許試験を受験したが、学科で不合格であった。社長の紹介で4月から新潟県新井市所在の○○サービスに転職することになった。
7 平成15年4月は往訪1回。来訪1回、同月1日から新井市○○町×―××―×所在の(有)○○サービスで土工として稼働を開始したが、同月の稼働日数は7日間。本人の原動機付自転車等の無免許運転が認められたので、同月25日の来訪時、担当者が無免許運転について指導したが、本人は、兄の友人がバイクに乗って遊びに来ているだけだと無免許運転の事実を否定した。
8 平成15年5月は来訪2回。駐在官事務所へ出頭しての主任官面接1回。
赤城少年院在院中に知り合ったE(長野保護観察所事件係属中)が本人宅に出入りしていたため、同月12日、主任官は長野保護観察所からEあての出頭指示書を受理し、担当者経由で同書を本人宅にいるEに交付したが、同月20日の主任官面接実施時には、Eは、すでに長野県へ戻っていた。本人は、「4月上旬から新潟県上越市○○○×―××―××所在の○○産業に解体工として就労開始し、5月は8日間稼働した。Eとは深い付き合いはしていない、中学同級生のFがバイクに乗って遊びに来る。バイクの免許は実技は合格したが、学科試験で不合格で困っている。」と報告した。遵守事項は全てそらんじてみせ、素直な応答であった。
9 平成15年6月は来訪2回、主任官往訪1回、駐在官事務所へ出頭しての主任官面接1回。
同月17日、駐在官事務所での面接時、本人は、「○○産業は6月上旬に解雇され、○○測量設計に復職し6日間稼働した。しかし彼女の働いているガソリンスタンドで働きたい。」と言う。眉を極細にし、交友関係等生活全般にわたり落ち着きが見られないので、主任官は、今後も不安定な生活を続けるならば県外への住み込み就職を話し合う旨告げた。
同月22日来訪時、交際中のG(当16歳)が本人の子を妊娠したことが判明した。
同月24日主任官が本人宅を往訪し、両親を交えて本人を指導した。本人は「彼女が産みたいというし、別れたくないから産んでもらう、彼女の職場であるガソリンスタンドの面接を受けるつもりである。」と報告した。主任官は、相手方と出産についてよく相談すること、早期就労を目指すことを厳重指導し、両親には彼女の両親と話し合いの場を持つよう助言した。
10 平成15年7月は来訪2回。
(1) ○○ガソリンスタンドで就労することが決まったが、制服が届かないと言う理由で稼働に至らなかった。○○海岸の海の家のアルバイトも天候不順で稼働に至らなかった。
(2) Gの妊娠については、両親が彼女の両親と話し合う機会を持たないまま、流産で終結した。本人は収入がないため彼女から小遣いをもらうこともあるという。
(3) HとIが運転する自動二輪車の後部座席に乗っての暴走行為及び河原でバーベキューをしての飲酒の件で警察官から注意された旨を述べていたので、担当者が厳重指導した。
11 平成15年8月は来訪2回。5日間のみ○○産業で稼働したと報告した。
12 平成15年9月は来訪2回。同月4日、駐在官事務所へ出頭しての主任官面接1回。
(1) 家庭裁判所調査官から上越市内の山麓線において本人が自動二輪車を無免許運転しているのを目撃したとの連絡を得ていたので、主任官が問い正したところ、本人は無免許運転を否定し、本人宅においてある自動二輪車は兄の友人の物であると主張した。ただし、中学3年生かつ無免許のJ運転の原動機付自転車の後部座席に乗っていたことを述べていたので、道路交通法違反であることを指摘し、本人に反省文を書かせ、今後そのようなことをしないよう厳重指導した。
(2) 就労は○○産業で7日間と低調で、彼女との夜遊びで警察官に注意を受け、外で飲酒しているが家では飲んでいないと報告した。
13 平成15年10月は来訪2回。同月14日駐在官事務所へ出頭しての主任官面接1回。
(1) 同月14日、本人は新潟県上越北警察署に出頭した。理由は、同年9月2日に上越市立○○中学校生が○海岸の海の家に侵入して窃盗事件を起こしたが、本人もその事件現場にいたのではという容疑によるものであったが、本人は、事件への関与を否定した。
(2) 就労は○○産業で5日間、○○工業で8日間。15万円のネックレスを母にローンを組んでもらい買ったと報告した。
14 平成15年11月は来訪2回。
(1) 同年10月28日、○○店において、Bとともに万引き事件を起こし逃走した容疑で、同日、本人は新潟県上越南警察署の取り調べを受けたが、本人はBを庇うために一緒に逃げただけで、万引きはしていないと事件への関与について否認した。
(2) 就労は○○産業で6日と低調なままであった。
15 平成15年12月は往訪1回、来訪1回。駐在官事務所へ出頭しての主任官面接が1回。
(1) 同月4日、本人は新潟県上越南警察署において、同年10月28日のBに対する暴行事件についての取り調べを受けた。
(2) 同月15日、主任官が新潟県上越南警察署において事情聴取したところ、上記暴行事件は、万引き事件直後に本人が仲間を呼んで起こしたものであるが、本人は完全否認しており、両親も本人の暴力を怖れて強い指導ができずにいることが判明した。
(3) 同月17日、実母が駐在官事務所に出頭したので、質問調書(乙)を作成した。
(4) 同月22日、本人及び実母が駐在官事務所に出頭した。
本人は、同年10月28日の万引き事件の直前に、父の原動機付自転車を無免許運転したこと、定職に就いていないこと及び夜遊びや不良交遊をしているという遵守事項違反があることを自ら認めたが、暴行事件への関与は否認し、年末年始にかけて不良仲間と忘年会や誕生会などの宴会を催す予定である旨を述べたので、主任官は、現状を良く認識し考えを改めるように指導し、本人に反省文を提出させた。
(5) 同月25日、主任官が他の少年と面接した結果、本人が不良グループである△△のメンバー及び暴走族○○のメンバー等と、同月24日、上越市仲町通り所在の居酒屋等で飲食していたことが判明した。
16 平成16年1月8日、主任官が本人宅を往訪し、本人及び実父母と面接した。本人が、
(1) 平成15年12月24日に行われた不良グループ△△の宴席に参加して飲酒していたこと。
(2) 平成16年1月初旬、上越市○○所在の○○病院入院中のKを見舞うときに暴走族の特攻服を着用していったこと。
(3) 定職に就かず、求職活動も行っていないこと。
を認めたので、主任官は、それらは遵守事項に違反した行為であり、早急に改めるようにと厳しく指導した。
17 同月22日、実母が駐在官事務所に出頭したので、主任官が面接を実施したところ、本人は、
(1) 保護観察官との同月8日の面接後も生活を改めようとしていない。
(2) 冬季なので原動機付自転車等の無免許運転はしていないように見受けられるが、不良交遊は改まらず、様々な人間が自宅を出入りしている。
ということであった。
18 同月23日、新潟保護観察所は、新潟家庭裁判所高田支部に引致状を請求し、同日、同裁判所裁判官から引致状が発付されたので、同日、新潟県上越南署長あて引致嘱託をした。
19 同月26日、同警察署員が引致に着手し、新潟保護観察所に引致を執行し、本人に対する質問調書(甲)を作成した。
20 平成16年1月26日、当委員会は、戻し収容申請の審理を開始する旨の決定を行い、本人を新潟少年鑑別所に留置した。
(成績の推移)
保護観察の成績は、平成14年11月から平成15年11月の間は「普通」、同年12月以降は「不良」である。
別紙2 申請の理由
1 遵守事項違反の事実
少年は、
(1) 公安委員会の運転免許を受けないで、平成15年10月28日午前1時30分ころから同日午前1時40分ころまでの間、新潟県上越市○○××番地の×本人宅から同市○△××××番地×○○店までの道路において、原動機付自転車を運転した。
(2) 平成15年10月28日午前1時40分ころ、新潟県上越市○△××××番地×○○店において、同店経営A管理に係る成人雑誌1冊を窃取した
(3) 平成15年10月28日午前3時15分ころ、新潟県上越市○○××××番地×○○境内において、B(当時14歳)に対し、同人の腹部を膝蹴りするなどの暴行を加えた。
(4) 平成15年10月29日午後11時ころ、新潟県上越市○○町×丁目×番×号○○鉄道株式会社○○駅前付近において、C(当時16歳)及びD(当時16歳)に対し、語気鋭く因縁を付けて金員の交付を要求し、同日同所において、畏怖しているCから現金5000円を喝取した
(5) 平成15年11月上旬ころ、新潟県上越市○○××××番地××ラーメン○○亭前において、前記恐喝行為により畏怖した前記Dから現金2万円の交付を受けて、これを喝取した
ものである。
上記(1)の事実は、一般遵守事項第2号「善行を保持すること。」及び特別遵守事項第5号「交通法規を遵守し、運転免許を取得するまでは車両を運転しないこと。」に、(2)の事実は、一般遵守事項第2号「善行を保持すること。」及び特別遵守事項第3号「他人の金品に手を出さないこと。」に、(3)の事実は、一般遵守事項第2号「善行を保持すること。」及び特別遵守事項第4号「他人を脅したり暴力を振るって金品を奪うようなことをしないこと。」の前段に、(4)及び(5)の事実は一般遵守事項第2号「善行を保持すること。」及び特別遵守事項第4号「他人を脅したり暴力を振るって金品を奪うようなことをしないこと。」に、それぞれ違反する。
2 戻し収容を必要とする理由
少年は、平成14年11月14日、実父母の出迎えを受けて赤城少年院を仮退院した。保護者である実父母は、少年と生活を共にし、知人や職業安定所を通じて求職活動を手伝い、免許取得を促すなど積極的に監護指導に当たったが、少年は、稼働意欲も乏しいまま月に数日しか就労せず、仮退院後約4か月余りで、原動機付自転車の無免許運転を頻繁に繰り返すようになり、行状不安定なまま推移していたものである。
新潟保護観察所は、少年に対し、遵守事項を遵守し、早期に仕事に就くこと、無免許運転をしないことについて、保護司の指導のみならず、保護観察官による直接指導を繰り返し実施したが、少年は、保護観察官や保護司の指導に表面的に従うに過ぎず、実父母にも少年の生活実態について、保護観察官や保護司に虚偽の報告をさせ続けていた。
さらに少年は、交際していた女子を妊娠させるなど放縦な生活を続けていたため、新潟保護観察所は、早急な就労先決定と就労の継続、地元の不良交友関係の整理を強く促したが、少年は、就労を継続することなく中学生の運転する原動機付自転車に同乗するなど違反行為を続け、上記「遵守事項違反の事実」(1)及び(2)記載の非行に及んだ上、その発覚をおそれて上記「遵守事項違反の事実」(3)記載の非行に及び、さらに遊興費欲しさに「遵守事項違反の事実」(4)及び(5)記載の非行まで惹起したものであり、それぞれの非行について警察の取り調べを受けるなど更生の機会を与えられながら、非行への関与を否認する態度をとり続けていたものである。
新潟保護観察所は、少年に非行事実を認めさせ、不良交遊に耽溺した遊興生活を改めるよう厳しく指導を続け、実父母の対応についても助言したが、少年は、不就労状態で不良仲間と共に堂々と飲酒や夜遊びを繰り返し、特攻服を着用して外出するなど暴走族への関与をうかがわせる行為を取り始めたため、平成16年1月26日、新潟保護観察所に引致されたものである。
保護観察官及び保護司は、実父母の協力を求めながら、少年に対し、遵守事項を遵守するよう、再三にわたり指導を重ねてきたが、少年は、その指導を無視し、上記のとおり、遵守事項に違反する行為を繰り返したほか、その供述によれば、平成15年7月ころから暴走族を結成して活動しており、このまま放置すれば、近い将来、道路交通法違反、窃盗、恐喝及び暴力行為等の非行を繰り返すおそれが極めて高いもので、社会内処遇による少年の改善更生は著しく困難な状況に至っているものと認められる。
実母は、保護観察官や保護司の指導助言を受けて、少年を更生させるべく努めたものの、少年が全くその行動を改めないばかりか、暴力的に振る舞うため、暴力の被害をおそれて保護観察所や保護司に少年の行状について真実を伝えることができず、少年の言いなりになった結果、監護意欲を喪失し、少年の引き取りを拒否している状態であり、これ以上の監護を期待することは困難である。
一方、実父は、少年に対して高圧的な関わりを反省し、折り合い改善に努めていたが、少年の傍若無人な振る舞いに強く指導することをためらっているものであり、今後の少年に対する実父の保護指導は全く指導できない。
以上を総合的に検討すると、少年を再び少年院に戻して収容し、改めて矯正教育を施し、健全な生活習慣を身に付けさせ、遵法精神の涵養を図り、併せて保護環境の調整を行うことが少年の更生にとっては必要、かつ相当な措置であると思料する。