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旭川地方裁判所 平成19年(む)65号 決定 2007年2月15日

主文

本件申立てを棄却する。

理由

1  本件申立ての趣旨及び理由は,別添の弁護人ら作成の裁定申立書第1の4及び第2の5記載のとおりであり,これに対する検察官の意見は,別添の検察官作成の意見書第2記載のとおりである。

2  そこで検討するに,弁護人らが開示を求めている平成18年11月6日付け旭川方面情報通信部情報技術解析課長作成の「解析結果について(回答)」と題する書面(以下「本件書面」という。)は,本件被害者であるAの携帯電話及びミニSDカードを解析した内容が記載された書面であり,作成者が解析結果を供述した書面ということができ,同人の署名又は押印があるものと推認される。そして,検察官は,甲9号証により,本件犯行後の被告人と被害者との間の電子メール送受信状況等を立証しようとしており,本件書面は,その事実の有無について,作成者が供述したものといえるので,本件書面は,刑事訴訟法316条の15第1項6号に該当する。

3  しかしながら,本件書面のうち,被告人と被害者との間の電子メール送受信記録部分については抄本として既に開示されている。弁護人らは,甲9号証に記載された送受信状況には誤りないし意図的な取捨選択があるとして,甲9号証の証明力を判断するには,不開示となった部分も開示されることが必要不可欠であると主張する。しかし,被告人の携帯電話及びミニSDカードの解析結果について記載した書面が任意に開示されていることが窺われ,これによっても被告人と被害者との間の電子メール送受信状況が明らかになることを考え合わせると,本件書面の不開示部分が甲9号証の証明力を判断するのに重要であるとまではいい難い。

4  また,本件不開示部分には,被害者と被告人以外の者との送受信状況が記載されているところ,これが開示されれば,被害者のみならず,送受信相手である第三者のプライバシーや通信の秘密まで侵害されることになり,弁護人に限って開示するなどの開示条件を付したとしても,その弊害は大きいといわざるを得ない。

5  以上の点を総合して考慮すれば,本件書面の不開示部分については,これを開示するのが相当とはいえず,本件申立ては理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり決定する。

(裁判官 田尻克已)

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