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旭川地方裁判所 平成9年(ワ)95号 判決 1999年2月25日

第一事件原告

旭川通運株式会社

被告

糺助

ほか二名

第二事件原告

藤原昇

ほか一名

被告

糺助

主文

一  被告糺、被告藤原及び被告会社は、原告に対し、各自二六一万〇一二七円及びこれに対する平成八年一月一九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  被告糺は、被告会社に対し、四〇八万八八二二円及びこれに対する平成八年一月一九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

三  被告糺は、被告藤原に対し、一二七万六三四六円及びこれに対する平成八年一月一九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

四  原告の被告糺、被告藤原及び被告会社に対するその余の請求並に被告会社及び被告藤原の被告糺に対するその余の請求をいずれも棄却する。

五  訴訟費用は、原告に生じた費用を被告糺、被告会社及び被告藤原の負担とし、被告糺、被告会社及び被告藤原に生じた費用はこれを通じて二分し、その一を被告糺の、その余を被告会社及び被告藤原の負担とする。

六  この判決は、一ないし三項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

一  第一事件

1  被告糺、被告藤原及び被告会社は、原告に対し、各自二六三万三一五五円及びこれに対する平成八年一月一九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告糺、被告藤原及び被告会社の負担とする。

3  仮執行宣言

二  第二事件

1  被告糺は、被告会社に対し、七五五万四〇四〇円及びこれに対する平成八年一月一九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

2  被告糺は、被告藤原に対し、二九〇万六七九五円及びこれに対する平成八年一月一九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

3  訴訟費用は被告糺の負担とする。

4  仮執行宣言

第二主張(第一事件)

一  請求原因

1  事故の発生(以下「本件事故」という。)

(一) 日時 平成八年一月一九日午後〇時一〇分ころ

(二) 場所 北海道樺戸郡新十津川町字花月三八四番地付近(国道二七五号線道路上)

(三) 態様

(1) 被告糺は、普通乗用自動車(札幌五三に六八〇一、以下「糺車」という。)を運転して、本件事故現場を月形町方面から新十津川町市街方面に向かい直進していたところ、折から自車の前方の交差点で左折待機中であった小野剛運転の普通乗用自動車(札五八に七三八一、以下「小野車」という。)に追突した上、そのはずみで対向車線に進出した。

(2) 被告藤原は、大型貨物自動車(室蘭八八き一一八一、以下「藤原車」という。)を運転し、本件事故現場を新十津川町市街方面から月形町方面に向かい直進していたところ、前記(1)のとおり、自己の進路車線に進入してきた糺車との正面衝突を回避しようとして対向車線に進出した。

(3) 原告の従業員である大窪信司は、原告所有の車両二台(トラクターヘッド・旭川一一あ七六八三、シャーシ・旭川一一を六五一六、以下併せて「原告車」という。)を運転し、糺車の後方から本件事故現場を糺車と同方向に向かい直進していたが、前記(2)のとおり、藤原車が自車の進路車線に対面進出してきたため、藤原車との衝突・接触を回避しようとして左転把とともに急制動の措置をとり、道路左側に停止させたが、藤原車の前部が原告車のトラクターヘッドとシャーシの連結部分に衝突した。

2  原告の損害

(一) 車両破損による損害(修理費用相当額) 一八四万七六一二円

内訳 (1) トラクターヘッド 一六〇万円

(2) シャーシ 二四万七六一二円

(二) 現場処理費 二一万二二六三円

内訳 (1) 機械(クレーン)等荷役費 七万七九四五円

(2) 作業員費(五人分) 七万六七六〇円(別紙1のとおり、一人につき一万五三五二円。)

(3) 代替運送費 五万七五五八円

(三) 休車損害 五七万三二八〇円(別紙2のとおり。)

(四) 合計 二六三万三一五五円

3  責任

(一) 本件事故は、

(1) 被告糺において、自車を運転進行中、車間距離保持義務ないし前方注視義務を怠る過失により先行車に追突し、そのはずみで自車を対向車線にはみ出させたこと、

(2) 被告藤原において、当時、降雪と地吹雪により視界が約一〇〇ないし一五〇メートルしかない状況のもと、かかる天候状況や道路状況(アイスバーンではなく、圧雪状態)等に合わせ、予め減速・徐行するなどの適切な速度保持の措置をとっていれば、衝突を回避することはできたものであり(道路状況がアイスバーン状態であったならば、より一層安全に配慮して適切な速度保持の措置をとるべきであったうえ)、仮に右措置をとっていなかったとしても、糺車を認めた時点で制限速度を遵守の上、適切な制動措置をとっていれば、対向車線への進出が不可避であったとはいえず、さらに対向車線への進出がやむを得ないものであったとしても、その前後に適切な制動・転把を行うことで原告車との衝突は回避できたにもかかわらず、右各適切な措置を怠った過失により、対向車線に進出して原告車と衝突したこと、

の被告糺及び被告藤原の各過失行為が原因で発生したものである。

(二) 被告藤原は、被告会社の従業員として、本件事故当時、被告会社の事業である一般区域貨物自動車運送事業に従事し、そのために藤原車を運転していた。

4  よって、原告は、被告糺及び被告藤原に対しては、共同不法行為に基づく損害賠償として、被告会社に対しては、使用者責任に基づく損害賠償として、それぞれ二六三万三一五五円及び本件事故日である平成八年一月一九日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二  請求原因に対する被告糺の認否

1  請求原因1(一)、(二)の事実は認める。

2  請求原因1(三)は否認ないし争う。被告糺は、本件事故直前時速約二〇キロメートルの低速度で慎重に前方を注視して運転しており、前車とも十分な車間距離を保って運転していたが、先行する小野車が左折のため急ブレーキをかけ突然停止したため小野車に追突し、糺車は反対車線に進出して雪山に突っ込んで停車した。その後、被告糺は、滝川方面から時速約七〇キロメートルを超える速度で進行してくる藤原車を前方約一五〇メートルの地点に発見した。そして糺車は約五〇センチメートル程後退したが、被告糺は藤原車が適切な制動操作を行って自車の手前で停止してくれるかまたは適切なハンドル操作を行って自車を回避してくれると信じてそのまま停止待機していた。しかし藤原車は糺車を回避できず、糺車後部に接触した後、そのまま対向車線に進出して原告車と衝突したものである。

3  請求原因2の損害額はいずれも争う。

4  請求原因3(一)のうち、被告糺の責任に関する主張は争う。被告糺には本件事故に関する過失はない。本件事故発生原因は、藤原車が糺車を発見した後、適切な制動措置を講じることなく漫然と制限速度を超えた著しい不注意運転を継続したことにある。被告糺は、通常の運転者であれば当然にとるであろう藤原車の回避措置を信頼して行動したものであり、被告糺に賠償責任はない。

三  請求原因に対する被告藤原及び被告会社の認否

1  請求原因1(一)、(二)、(三)(1)及び(2)の事実は認める。

2  請求原因1(三)(3)の事実中、原告車の進行方向及び衝突の結果は認め、その余は知らない。

3  請求原因3(一)(2)のうち、被告藤原の責任に関する主張は争い、同(二)の事実は認める。被告藤原は、前方を注視しながら普通に自車を運転していたが、糺車が追突事故を起こすとともに、突然藤原車の走行車線に進出してきて、また、当時現場路面はアイスバーンの状況であり、急制動措置をとることは危険が大きく、かつ急に減速して車輪をロックするならばエンジンが停止しハンドル操作が不可能となって糺車と正面衝突する恐れもあり、結局、被告藤原としては糺車との衝突を回避するためハンドル操作により反対車線に進出するしかなく、しかも糺車を回避してから原告車と衝突するまでの間に左へ急ハンドルを切る余裕はなく、従って原告車との衝突は不可避であった。本件事故の原因は、糺車がその先行する小野車に追突し、藤原車の車線に進出してきたことにあり、被告藤原に過失はない。なお、糺車が藤原車の走行車線に進入してきたとき、藤原車が糺車の約一五〇メートル手前にいたことは否認する。糺車は、藤原車の前方約五五メートルの地点に進入してきたものである。

第三主張(第二事件)

一  請求原因

1  右第二、一1(第一事件の請求原因)に同じ。

2  被告会社及び被告藤原の損害

(一) 被告会社 七五五万四〇四〇円

内訳 (1) 車両本体、冷凍機及び保冷箱 七〇〇万円

(2) 休車損害 五五万四〇四〇円

(別紙3のとおり。)

(二) 被告藤原 二九〇万六七九五円

(1) 被告藤原は、本件事故により頭部打撲、右前胸部打撲、左第五指捻挫の傷害を負い、砂川市立病院へ事故日である平成八年一月一九日から六日間入院し、さらに同年四月八日まで通院加療した。

<1> 治療費 三五万六七九五円

<2> 慰謝料 八〇万円

(2) 休業損害 一七五万円

被告藤原は、事故日である平成八年一月一九日から同年五月末日まで被告会社を休職しその間一七五万円(月額三五万円)の給与収入を失った。

3  責任

被告糺は、自車を運転するに当たり、車間距離を適正に保ち、また間断なく前方を注視すべき義務があるところ、これを怠って自車を小野車に追突させ、そのはずみで藤原車進行車線へ自車を進入させた過失により、折から自車線を進行してきた藤原車をして、糺車を回避すべく対向車線に進出させ、対向してきた大窪運転の原告車に衝突させたものである。

4  よって、被告糺に対し、不法行為に基づく損害賠償として、被告会社は七五五万四〇四〇円、被告藤原は二九〇万六七九五円及び右各金員に対する本件事故日である平成八年一月一九日から各支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二  請求原因に対する被告糺の認否

1  請求原因1(一)、(二)の事実は認め、同(三)は否認ないし争う。

被告糺の主張は、第二、二2記載のとおりである。

3  請求原因2の損害額はいずれも争う。

4  請求原因3は争う。被告糺の主張は、第二、二4記載のとおりである。

第四証拠 本件記録中の書証目録及び証人等目録記載のとおり。

第五理由

一  本件事故の発生日時及び場所については、当事者間に争いがない。

二  本件事故の態様並に被告糺及び被告藤原の過失について

1  証拠(甲5の1及び2、6の1ないし4、7の1ないし4、乙イ1、2の1ないし8、3の1ないし4、4の1ないし18、5、6の1ないし6、7、8、乙ロ1、証人藤原良造、被告糺本人、被告藤原本人)と原告と被告藤原及び被告会社間で争いのない事実によれば、次のとおり、認められ、この認定を覆すに足りる証拠はない。

(一) 本件事故現場は、直線道路(国道二七五号線)で片側一車線、幅員約九メートル(片側約四・五メートル)ではあるが道路端に除雪によって積まれた雪山があり実際に走行可能な道路幅は片側約三・五メートル、制限速度五〇キロメートル毎時、原告車、糺車及び藤原車が走行するのに視界を妨げるようなものはなく、天候はほぼ良好、路面は圧雪アイスバーン状態であった。

(二) 糺車は、普通乗用自動車(札幌五三に六八〇一・トヨタルシーダ、四輪駆動車、スタッドレスタイヤ装着)で車体の幅一・六九メートル、長さ四・六九メートル、高さ一・七九メートル、車両重量一・七五トン、藤原車は、大型貨物自動車(室蘭八八き一一八一)で車体の幅二・四九メートル、長さ一一・九メートル、高さ三・七メートル、車両重量一一・七六トンであった。

(三) 被告糺(大正六年八月八日生、本件事故当時七八歳)は、四八歳頃から自動車を北海道内で運転しており、本件事故まで約三〇年の運転経験があり、冬季の雪道の運転にも馴れていた。被告藤原(昭和二六年一〇月一〇日、本件事故当時四三歳)は、平成六年一一月から被告会社に勤務する職業ドライバーであった。

(四) 被告糺は、普通乗用自動車(札幌五三に六八〇一)を運転して、本件事故現場を月形町方面から新十津川町市街方面に向かい時速約四〇ないし五〇キロメートルの速度で、先行する小野剛運転の普通乗用自動車(札五八に七三八一)に追従して直進進行していた。小野車が前方の交差点で左折したが、被告糺はそれに気がつくのが遅れ(前方不注視)、ほぼ左折し終えた小野車の左後部に追突するとともに、それを避けようとしてハンドル右に切ったことから対向車線に進出し、ある程度減速した速度で、約二三・六メートル先の道路右端の雪山に突っ込んで停止した。その結果、対向車線(実際の走行可能な幅員は約を三・五メートル)の半分以上を塞ぐこととなった。

(五) 被告藤原は、大型貨物自動車(室蘭八八き一一八一)を運転し、本件事故現場を新十津川町市街方面から月形町方面に向かい制限速度を超える時速約六〇ないし七〇キロメートルの速度で直進していたところ、糺車が自己の進行車線に進入し、道路端の雪山に突っ込んで停止したのを前方に確認した。そして、被告藤原は、制動措置を講じて糺車との衝突を回避するか、あるいはハンドル操作により同車との衝突を回避するか一瞬判断に躊躇し、結局、後者の方法をとることとして反対車線に進出し、突っ込んでいた雪山から若干後退してきた糺車の右後部と道路のほぼ中央部で接触(擦過)したものの、糺車との衝突は回避した。しかし、藤原車は自車の走行車線に戻ることはできず、そのまま直進して原告車のトラクターヘッドとシャーシの連結部分に衝突した。

(六) 原告の従業員である大窪信司は、原告所有の車両(トラクターヘッド〔旭川一一あ七六八三〕とシャーシ〔旭川一一を六五一六〕を連結したもの。)を運転し、糺車の後方から本件事故現場を糺車と同方向に向かい直進していたが、藤原車が自車の進路車線に対面進出してきたため、藤原車との衝突・接触を回避しようとして左転把とともに急制動の措置をとり、道路左側に停止させたが、藤原車前部が原告車のトラクターヘッドとシャーシの連結部分に衝突した。

2  以上に基づき検討する。

(一) 被告糺は、被告藤原において、制動措置あるいはハンドル操作により糺車との衝突は回避でき、制動措置を講ずることなく漫然と制限速度を超えた著しい不注意運転を継続した結果、本件事故が発生した旨主張する。また、被告藤原及び被告会社は、糺車が突然反対車線に進出してきたために、同車との正面衝突をさけるため反対車線に進出したものであって、その後自車線に戻ることは不可能で、結局、原告車との衝突を回避できる可能性は無かった旨主張する。

(二) 右1で認定のとおり、藤原車が反対車線に進出して原告車に衝突したのは、糺車が藤原車の進行車線の半分以上を塞ぐ形で停止していたため、糺車との衝突を回避するためであり、糺車が反対車線に進出したのは、被告糺の前方不注視により小野車に追突した結果である。

(三) そして、被告藤原において、前方に糺車が停止していることを確認した際の、藤原車から糺車までの距離であるが、約一五〇メートルあって、被告藤原において制動措置あるいはハンドル操作により糺車との衝突を回避できたことを基礎づける証拠【乙イ1、7、証人藤原良造、被告糺本人】もあるが、これらはその調査方法やその根拠に照らして必ずしも信用性が高くなく、さらに事故現場見取図【甲5の2。これは、当事者立会による実況見分調書添付のものと認められ、説明が付されていないものの被告藤原が糺車を発見した際の両者の距離という趣旨と推認される「A~<4>五五・二メートル」との記載がある。】、被告藤原本人尋問の結果、加えて、被告藤原は糺車との衝突を避けるために制動措置を講ずるのではなく、対向車線に進出して糺車を追い越すことでこれを回避しようとしたことに照らして信用できない。他方、被告藤原は、前記事故現場見取図の五五・二メートルよりも短い約三〇メートルの地点で糺車との衝突の危険を感じた旨供述するが確たる根拠はなく、これも直ちに信用できない。

結局、被告藤原において、糺車との衝突を制動措置を講ずることによって十分回避できると判断可能なほどの距離はなかったが、制動措置を講ずるか否か判断に迷う程度の距離であったものと推認される。

(四) したがって、被告藤原において、当時の走行速度(時速約六〇キロメートルないし七〇キロメートル)で制動措置を講ずることによって、糺車との衝突を回避できる可能性があったものとは直ちに認められないが、そもそも制限速度(時速五〇キロメートル)を遵守するのは当然のことであるうえ、圧雪アイスバーンという制動措置を講ずることが極めて困難な道路状況にあったのであるから、その道路状況に応じた速度で進行していれば制動措置を講ずることによって、糺車との衝突を回避することはできたものと推認され、原告車との衝突については被告藤原に過失があったものと認められる。被告藤原及び被告会社の主張は採用できない。

他方、被告糺は、その過失(前方不注視)によって、小野車に追突して糺車を反対車線に進出させ、その車線の半分以上を塞いだものであり、本件事故現場のような見通しのよい直線道路を圧雪アイスバーンの道路状況のもとであっても制限速度を超過して走行してくる車両のあることは北海道内においてままあることであって、被告糺の右過失と藤原車が反対車線に進出する結果になったこと及び藤原車が原告車と衝突するに至ったこととは相当因果関係が認められ、結局、被告糺には本件事故を惹起させたことについての過失があるものと認められる。被告糺の主張は採用できない。

3(一)  以上の次第で、被告糺、被告藤原及び被告会社は、原告が本件事故により被った損害を賠償する責任があるものと認められる。

(二)  また、被告糺は、被告藤原及び被告会社が本件事故により被った損害を賠償する責任があるものと認められる。

三  原告の損害について

1  原告車の破損による損害

証拠(甲1、2、8、10、証人窪田明規夫)によれば、原告車の破損による損害は、トラクターヘッドの修理費月一六〇万円、シャーシの修理費用二四万七六一二円の合計一八四万七六一二円と認められる。

2  現場処理費

証拠(甲3、4、10、証人窪田明規夫)によれば、(一)機械(クレーン)等荷役費七万七九四五円、(二)作業員(五人分)五万三七三二円(作業に要した時間は現場までの往復時間を入れて五時間程度であるから、作業員の日当相当額の七〇パーセントを基礎に算定するのが相当である。15,352×5×0.7=53,732)、(三)代替運送費五万七五五八円の合計一八万九二三五円と認められる。

3  休車損害

証拠(甲9、10、証人窪田明規夫)によれば、休車損害は五七万三二八〇円と認められる。

4  合計二六一万〇一二七円

5  したがって、原告の被告糺、被告藤原及び被告会社に対する請求は、二六一万〇一二七円及びこれに対する本件事故日である平成八年一月一九日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金を請求する限度で理由がある。

四  被告藤原、被告会社の損害について

1  被告会社の損害

(一) 車両本体、冷凍機及び保冷箱

証拠(甲6の3、4、7の4、乙イ3の1ないし5、5、6の1ないし6、9の1ないし8、10、11、乙ロ1、2、8、被告藤原本人、被告会社代表者本人)によれば、

(1) 本件事故により、藤原車の運転席部分は修理可能ではあるもののほぼ修復不能と評価できる状況になり、冷凍機及び保冷箱も修理を要する状態になったこと、また、その修理費用は少なくとも四五五万六九八八円【乙イ9の1ないし8】であったこと、

(2) 藤原車は、初年度登録が昭和六三年六月の車両(同種車両の新規調達価格は一七〇〇万円程度。本件事故までに約七年六月が経過。)であり【甲7の4、乙イ9の6、11、乙ロ1】、被告会社が購入する以前に保冷庫自体は取り替えられ【被告会社代表者本人】、被告会社は、保冷庫取替後の藤原車を平成六年一〇月二九日に代金八〇〇万円で購入し【乙ロ2】、本件事故までに約一年二か月が経過していたこと、

(3) 藤原車については、時価額一七〇万円(車検費用を考慮して二七五万円)との査定がなされていること【乙イ9の1ないし9、11】、が認められるが、右(3)の時価額については、右(2)の事実に照らすと、取り替えられた保冷庫の価値が含まれていないものと推認され、したがって、その時価額を基礎に経済的全損か否かを判断するのは相当ではなく、他方、冷凍機及び保冷庫については車両本体と一体として評価するのが相当と認められ、そして右(2)で認められる被告会社の購入価格と購入時から本件事故までの期間に照らすと、藤原車については、本件事故当時において右(1)の修理費用(四五五万六九八八円)を上回る価値があったものと推認されるから、結局、その損害額は右修理費用四五五万六九八八円と認めるのが相当である。

(二) 休車損害

証拠(乙ロ3、被告会社代表者本人)によれば、休車損害は五五万四〇四〇円と認められる。

(三) 合計五一一万一〇二八円

2  被告藤原の損害

(一) 治療費及び慰謝料

証拠(乙ロ3、4、7、被告藤原本人)によれば、被告藤原は、本件事故により、頭部打撲、右前胸部打撲、左第五指捻挫の傷害を負い、砂川市立病院へ事故日である平成八年一月一九日から六日間入院し、さらに同年四月八日まで通院加療し、その治療費として三五万六七九五円を要したことが認められる。また、被告藤原が本件事故により被った傷害の内容・程度と治療経過(頭部打撲については、平成八年二月一九日治癒)や、したがって、その後は右前胸部打撲の治療(湿布と痛み止め)に要した期間(約五〇日)であったことを総合すると慰謝料としては四〇万円とするのが相当である。

(二) 休業損害

証拠(乙ロ3、4、6、7、被告藤原本人)によれば、被告藤原は、本件事故による傷害の治療のため平成八年一月一九日から六日間入院し、その後、同年四月八日まで通院したことが認められ、さらに同年四月九日から就業することについて「やろうと思えばできたけど、元の仕事はちょっと無理かなと思いました」【被告藤原本人】との供述に照らすと、本件事故日から平成八年四月八日までの八一日間について休業損害を算定するのが相当であり、また、本件事故直前には月収三五万円であったのだから、休業損害は九四万五〇〇〇円と認められる(350,000×81÷30=945,000)。

(三) 合計一七〇万一七九五円

3  前記二で認定した本件事故態様と被告糺の過失内容、被告藤原の過失内容を総合すると、

(一) 被告会社の被った損害(五一一万一〇二八円)については、その二割を過失相殺により減ずるのが相当であり、被告会社の損害額は四〇八万八八二二円と認められ、

(二) 被告藤原の被った損害(一七〇万一七九五円)については、右事情に加え、被告藤原が、本件事故当時、シートベルトをしておらず【被告藤原本人】、本件事故により被った傷害の内容に照らすと、シートベルトの未装着が損害の拡大に寄与したものと認められることをも総合すると、その損害額から二割五分を過失相殺により減ずるのが相当であるから、被告藤原の損害額は一二七万六三四六円となる。

4  したがって、被告会社の被告糺に対する請求は、四〇八万八八二二円及びこれに対する本件事故日である平成八年一月一九日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金を請求する限度で理由があり、被告藤原の被告糺に対する請求は、一二七万六三四六円及びこれに対する本件事故日である平成八年一月一九日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金を請求する限度で理由がある。

五  よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 坪井宣幸)

別紙1

作業経費調査票

自動車課配属正社員賃金

稼働日数 24日

稼働人数 33人

本給 3,334,500円

特別給 1,501,800円

職務手当 13,500円

技術手当 289,000円

走行キロ手当 33,132円

住宅手当 853,500円

家族手当 1,086,200円

残業手当 2,854,528円

小計 9,966,160円

法定福利費(17%) 1,694,247円

厚生福利費(5%) 498,308円

合計 12,158,715円

1日一人当たり賃金

12,158,715÷24日÷33人=15,352円

1日の作業経費 15,352円

別紙2

休車損害調査票

1 被害車両登録番号 旭11あ7683 /旭川11を6516

車名:型式 三菱:トラクターヘッド /フルハーフ:シャーシー

年式 昭和61年9月 /平成6年8月

最大積載量 9t /20t

2 被害車両事故前三ケ月間の運送収入、走行距離及び燃料消費量

3 経費(事故前三ケ月の月平均額)

<1> 燃料油脂費 144,660円(1,785l×76円/l当たり:オイル9,000円)

<2> 車両修繕費 21,340円(タイヤ摩耗費、一か月点検費等)

<3> 人件費 230,280円(15,352円×15日)

合計 396,280円

4 実車率

48%(44日÷92日=0.48日)

5 休車日数

40日(H8.1.20~2.28)

営業可能日数 40日

6 修理実日数

40日(H8.1.20~2.28)

7 休車損害

運送収入 経費 実車率 営業日数 1日当たり休車損害額

844,182円-396,280円×48%÷15日=14,332円

8 休車損害額

1日当たりの休車損害額 営業可能日数 休車損害額

14,332円×40日=573,280円

別紙3

休車損害調査票

1 被害車両登録番号 室蘭88き1181

車名・型式 ニッサンディーゼル P―CD54V

年式 昭和63年6月

最大積載量 8t

2 被害車両事故前三ケ月間の運送収入走行距離及び燃料消費量

3 経費(事故前三ケ月の月平均額)

<1> 燃料油脂費 238,320円(2,940l×78円/l当たり、オイル9,000円)

<2> 車両修繕費 20,000円(タイヤ摩耗費、一カ月点検費等)

<3> 人件費 350,000円(11,667円×16日)

合計 608,320円

4 実車率

53%(49日÷92日=0.53日)

5 休車日数

45日(H8.1.20~3.5)

営業可能日数 45日

6 修理実日数

45日(H8.1.20~3.5)

7 休車損害

運送収入 経費 実車率 営業日数 1日当たり休車損害額

980,000円-608,320円×53%+16日=12,312円

8 休車損害額

1日当たりの休車損害額 営業可能日数 休車損害額

12,312円×45日=554,040円

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