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旭川地方裁判所 昭和27年(ワ)566号 判決

原告 島津フサ

被告 留萠市

一、主  文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

二、事  実

原告訴訟代理人は、「別紙目録<省略>記載の各土地が原告の所有であることを確認する。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決を求めその請求の原因として、「別紙目録記載の各土地はいずれも原告の所有であるところ、被告は昭和二十七年三月十日、訴外建設大臣の命令で、既に同年一月二十八日付建設省告示第五五号で決定されていたところの本件土地を含む留萠市都市計画事業中部土地区劃整理地区に都市計画法に基く土地区劃整理を施行することとなり、同年九月二日本件(1) ないし(7) の土地につき原告に対し換地予定地指定の通知をし、次いで同年十二月十七日換地処分をし、且つ本件(8) (9) の土地を、その登記簿上の所有名義人である訴外農林省を所有者とし同(10)(11)の土地を同じく登記簿上の所有名義人である訴外佐々木彌八吉を所有者として、換地処分をした。しかしながら、

一、被告は昭和二十三年十一月項から本件(1) の土地上に原告に無断で住宅六棟を建築所有して右土地を不法に占拠していたから、かかる土地を都市計画区域に編入し、換地処分をすることは、公序良俗に反し許されないところであつて、右処分は当然無効であると言わなければならない。

二、次に被告が本件(8) ないし(11)の土地を訴外農林省又は佐々木彌八吉の所有として換地処分をしたこと前述のとおりであるが、右各土地はいずれも原告の所有である。すなわち、(8) の土地は被告所有の住宅六棟並びに原告所有の住宅一棟があつて宅地として使用され、(9) の土地は海産物乾場として使用され、(10)(11)の土地は宅地に接しているから宅地としての価値が十分であつて、以上いずれも農地でないのに拘らず、訴外国は昭和二十三年十二月二日右(8) (9) の土地を、同年同月三十一日右(10)(11)の土地をいずれも不在地主の小作農地として自作農特別措置法第三条に基き買収したうえ、(8) (9) の土地については昭和二十七年二月十三日農林省名義に所有権移転登記をし、(10)(11)の土地については昭和二十五年三月六日農林省名義に所有権移転登記をし且つ同日訴外佐々木彌八吉に所有名義を移転した。

かくの如く訴外国は右各土地を農地でないにも拘らず農地として買収したうえ、原告に対し右に関する買収令書も対価金も交付しなかつたから、訴外国のなした右買収処分は当然無効であつて、本件(8) ないし(11)の土地は依然原告の所有するところである。にも拘らず被告は慢然これを農林省又は佐々木の所有地として換地処分をしたのであるから、その無効であること言を俟たない。

以上の次第で本件(1) 及び(8) ないし(11)の土地に対する被告の換地処分は取消を俟つまでもなく当然無効であると言わなければならないところ、行政法規の一般原則に拠ると、右換地処分の無効は被告が区劃整理のためにした換地処分全部の無効をも招来するわけであるから、本件各土地はいずれも原告の所有するところである。よつてその確認を求めるため本訴に及んだと述べ、被告の抗弁事実を否認した。<立証省略>

被告指定代理人は、本案前の抗弁として訴却下の判決を求め、その理由として「本訴請求は、帰するところ被告が土地区劃整理の為になした行政処分の取消又は変更を求めんとするものに外ならないのであるから、本来行政事件訴訟特例法に基きその救済を求むべきであるのに拘らず、通常事件として訴を提起したことは不適法である」と述べ、本案につき主文同旨の判決を求め、答弁として「原告主張の事実中(1) ないし(7) の土地が原告の所有にして、被告が右土地につき原告主張のとおりの換地処分をしたこと、(8) (9) の土地を訴外農林省の、(10)(11)の土地を訴外佐々木の各所有として換地処分をしたこと、右(8) ないし(11)の土地が訴外農林省又は佐々木の所有名義となつた経緯が原告主張のとおりであること(但し訴外国が原告に対し買収令書も対価金も交付しなかつたとの点は不知)、(1) (8) の土地に被告所有の住宅が存することは認めるが、(8) ないし(11)の土地が宅地の性質を有し或は海産物乾場として使用されていた事実は不知、その余の事実はこれを否認する。被告が本件(1) の土地の一部に住宅を建築したのは、当時右土地が訴外留萠土地区劃整理組合(以下整理組合という)の替費地となつており、右組合においてその処分権を有していたので、被告は右土地を右組合をら将来買受ける約束の下に借受けて住宅の敷地としたものであるところ、その後整理組合が解散したので、被告は原告代理人訴外丹野甦宝に対し右土地を買受けたい旨申入れ種々交渉を重ねたが不調に終つたものであるから不法占拠ではない」と述べた。<立証省略>

三、理  由

先ず被告は原告の本訴が不適法であると抗争するので、この点につき考えるに、本訴は被告が都市計画法による土地区劃整理のためにした換地処分の無効を理由として、別紙目録記載の土地が原告の所有であることの確認を求めるものであつて、被告主張のように右行政処分の取消又は変更を求めるものではない。そうして行政処分が当然無効である場合に、その行政処分の無効確認を求めると、本訴のようにその無効を理由として私法上の法律関係の確認を求めるとは、原告の自由に選択しうるところであるから、被告の主張は採用の限りでない。

そこで進んで本案につき按ずるに、被告が本件(1) の地上に住宅六棟を建築所有していたことは被告の認めて争わないところであるが証人岩見晴長、内藤勝、対馬藹の各証言を併せ考えると、被告が右(1) の地上に住宅を建築した当時、右土地は整理組合の替費地となつていて右組合においてその処分権を有していたものであるところ、被告は右組合から将来買受けることを約して右土地を借受けたものであるが、右組合が昭和二十五年十二月事業未完遂のまま解散してしまつたため、ここに右土地に対する管理処分権が原告に復帰するに至つたので、被告は原告に対し、右土地の売渡方を求めたが交渉妥結に至らなかつた事実を認めることができる。右認定に反する証拠はない。してみれば右土地に対する換地処分を目して公序良俗に反するとする原告の主張を採用することができないこと明らかである。

次に訴外国が原告の所有にかかる本件(8) ないし(11)の土地を不在地主の小作農地として買収したことは当事者間に争がない。原告は右各土地は農地でなく、従つて右買収処分は無効であると主張するから、この点につき考えるに、成立に争のない甲第二号証の二、三、証人内山藤吉、丹野武四郎の各証言、ならびに検証の結果によると本件各土地は国有鉄道留萠駅の南方約三百間の個所に位置する留萠市住之江町の南西側の一角にして、同市の街はずれに所在するものであるところ、(8) の土地は訴外内山藤七、同藤吉が、その中央部より若干南寄りにある建物一棟の敷地部分を除く外、長く畑として使用していたもので、昭和十八年頃現在の市営住宅の敷地部分が整地された後にも尚右整地部分の七、八分通りが畑となつていたものであるところ、昭和二十三年九月二十五日頃市営住宅の建築が始められ同年十二月二十二日頃右住宅七棟(但し内二棟は一部分が本件(8) の土地にかかつているのみ)が竣工したが、当初から所在した建物と右市営住宅の敷地が(8) の土地の半ばを占めていること、(9) の土地は、元四番地の一の土地の一部であり、その南東側約半分は湿気が多く、北東部には四番地の一に所在する窪地の一部がかかつているが訴外内山藤吉が右窪地部分を除く爾余の部分を牧草畑として使用していたものであること、(10)(11)の土地は排水溝に沿う細長い土地であるが、この土地に接続する約一町五反の土地と一体としてその大半が畑作に使用されているものであることをそれぞれ認めることができる。右認定に反する証人古野良治の証言は措信せず、他に右認定を覆すに足る証拠はない。

そこで以上の事実に基いて判断すると、(8) の土地は、も早農地でないこと一見明瞭であるから、これを農地と誤認してした買収処分は、取消を俟つまでもなく、当然無効であると言わなければならないが、(9) ないし(11)の土地はその現状が畑でなかつたことは、検証の結果その他原告の提出援用にかかる証拠によるもこれを認め難いので、かかる土地の買収処分が無効であるとは到底解し得ない。尚訴外国が右土地を買収するに際し買収令書も対価金も交付しなかつたとの点は、原告の提出援用する全証拠を以てしてもこれを認めることができないから、本件(9) ないし(11)の土地に対する原告の主張は理由がない。

さて(8) の土地に対してした訴外国の買収処分が無効であることは右に認定したとおりであるが、被告が都市計画法による土地区劃整理を施行するに当り、右土地を訴外農林省の所有として換地処分をしたことは、被告の認めて争わないところであつて、原告は右換地処分をも無効であると主張する。しかしながら、都市計画区域内において施行される土地区劃整理に関し都市計画法第十二条によつて準用される旧耕地整理法(土地改良法施行法第四条後段により廃止後も準用の範囲内で効力を有する)による換地処分は、旧自作農創設特別措置法による農地の買収、売渡処分が、政府において農地をその地主から買収してこれを従前の小作人その他の耕作適格者に売渡し、もつて農地の所有者を変更せしめることを目的とする処分であるに反し、土地区劃整理区域内の土地所有者の変更を目的とするものではなく、従前の土地に換えて、整理工事の完了後新たに地番を付した他の土地を指定し、これを従前の土地とみなして従前の土地所有者に交付する処分であり、すなわち前者は人的変動の処分であるに反し、後者は物的変動の処分に外ならないから、たとい、土地区劃整理区域内の土地中その一筆または敷筆につきその所有者を誤認して換地処分が行われたとしても、その換地処分は有効であることを失わないのであつて、ただ従前の土地の真の所有者は、換地処分後、従前の土地の所有権に基いて換地の所有権を主張することを妨げられないものと解するのを相当とする。従つてかようの場合において、その換地処分を無効とし、さらにその他の全換地処分をも無効として従前の土地に対する所有権の確認を求めうべき筋合でない。けだし従前の各筆の土地は土地区劃整理の完了とともに、すでに消滅に帰しているからである。

よつて、原告の本訴請求を失当として棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 藤田和夫 市川通雄 神田鉱三)

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