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最高裁判所大法廷 昭和23年(れ)210号 判決 1948年7月29日

主文

本件再上告を棄却する。

理由

辯護人白石資明上告趣意第一點について。

しかし、所論裁判所法施行法第二條は、從前の裁判所における事件の受理その他の手續を最高裁判所又は下級裁判所のいずれの裁判所の受理その他の手續とみなすべきかの自由選擇權を政令に委任したものであるから、裁判所法施行令第一條は右施行法第二條の委任の趣旨に反するものではない。そして、その趣旨は夙に當裁判所の判例とするところである。(昭和二二年(れ)第一二六號及び同(れ)第一九四號同二三年七月一九日宣告大法廷判決參照)それ故本論旨は、その理由がない。

同第二點について。

所論は、要するに、本件賭博は、一時の娯樂に供する物を賭した場合であるのに、原判決はこれを認めた第二審判決を維持し且つ金錢を賭したときは一時の娯樂に供した物に該らないとしたのは被告人の基本的人權を無視し、憲法の精神に適合しない裁判であるというにある。それ故結局事実の認定及び刑罰法令の解釋を非難するに歸し、何等具體的な憲法適否の問題を理由とするものでないから再上告適法の理由とならないものである。

裁判官齋藤悠輔同沢田竹治郎の本件に對する意見は次のとおりである。

刑訴應急措置法第一七條によるいわゆる再上告は、原上告判決に同條所定の憲法適否の判斷が存在し、その判斷が不當であることを理由とするときに限り、これをなすことができるのである。そして、このことは、何人も同條を一讀すれば、直ちに、判る筈である。然るに本件においては、原上告判決に何等かかる判斷が存在しないから、再上告を以て攻撃すべき目的物を缺き、いわば獨り相撲を取ることになる。それ故本件再上告は既にこの點で不適法たるを免れない。

上告趣意第一點に關する裁判官栗山茂の意見は前記引用大法廷判決に關する同裁判官の意見と同趣旨である。

よって刑訴第四四六條に從い主文のとおり判決する。

この判決は理由に關する少數意見を除き裁判官全員の一致した意見である。

(裁判長裁判官 塚崎直義 裁判官 長谷川太一郎 裁判官 沢田竹治郎 裁判官 霜山精一 裁判官 井上登 裁判官 栗山茂 裁判官 真野毅 裁判官 庄野理一 裁判官 小谷勝重 裁判官 島 保 裁判官 齋藤悠輔 裁判官 藤田八郎 裁判官 岩松三郎 裁判官 河村又介)

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