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最高裁判所大法廷 昭和23年(れ)65号 判決 1948年7月14日

主文

本件再上告を棄却する。

理由

辯護人徳岡二郎提出の再上告趣意について。

本件勾引状と勾留状とが紛失して記録に綴込まれていないこと並びに被告人が昭和二十一年七月八日勾留せられ同月三十一日附で辯護人徳岡二郎から保釋の申請があったので第一審判決宣言の日である同年八月五日保釋によりその翌日出所したことは記録により明である。

そこで、假に所論がすべて肯認すべきもので被告人が勾引状及び勾留状によらないで違法に勾引勾留せられ、その侭違法に保釋の日迄勾留を繼續せられたとしても、夫は別な救濟の方法によるべきことであって、右の各違法は本件に於ては第二審判決に影響を及ぼさないことは明白である。第二審判決從って又これを是認して被告人の上告を棄却した原上告判決には日本国憲法に違反する點は存しない。論旨は理由がない。

本件に對する裁判官齋藤悠輔、沢田竹治郎の意見は次のとおりである。

刑訴應急措置法第十七條第一項は、「高等裁判所が上告審としてした判決に対しては、その判決において法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかについてした判断が不当であることを理由とするときに限り、最高裁判所に更に上告することができる。」と規定している。そして右にいわゆる「処分」とは、憲法第八十一條の「最高裁判所は一切の法律、命令、規則又は處分が憲法に適合するかしないかを決定する權限を有する終審裁判所である。」との規定中の「處分」と同一意義であって、立法若しくは行政行爲としての處分を指し、司法處分をいうものでない。右憲法の規定は司法權の範圍就中立法及び行政行爲に對する違憲審査決定權につき司法裁判所にその優位を認めた規定であって裁判又は個々の司法處分に對する審判權を規定したものではない。かゝる審判權は司法固有の領域における異議手續若しくは抗告、控訴、上告等の上訴手續又は再審、非常上告等の非常上訴手續として訴訟法において規定すべき事柄であって、前記憲法第八十一條の規定するところではない。それ故所論勾引並びに勾留に對する不服申立は本件第一審の段階において抗告を以て主張するは格別前記措置法第十七條によるべきではない。すなわち、本件上告は原上告判決の判斷が右措置法所定の「処分」に關しない點で再上告適法の要件を缺き既に此の一點で不適法たるを免れない。

よって裁判所法第十條但書第一號、刑事訴訟法第四百四十六條により主文のとおり判決する。

この判決は裁判官齋藤悠輔、沢田竹治郎を除く裁判官全員の一致した意見によるものである。

(裁判長裁判官 塚崎直義 裁判官 長谷川太一郎 裁判官 沢田竹治郎 裁判官 霜山精一 裁判官 井上登 裁判官 栗山茂 裁判官 庄野理一 裁判官 齋藤悠輔 裁判官 藤田八郎 裁判官 岩松三郎 裁判官 河村又介)

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