最高裁判所大法廷 昭和23年(れ)992号 判決 1948年12月27日
主文
本件上告を棄却する。
理由
辯護人佐藤直敏の上告趣意第一點の一について。
しかし、所論親族關係の存在は、單に法律上刑の免除の原由たるに過ぎないから、これが主張の存しない限り、必ずしも、これが審判をなすの要あるものではない。そして本件では上告人は原審において、これが主張をした形跡がなく、また特にその存在を疑わしめるに足る特別の事情も存しないのみならず、記録を精査すると、原審第一回公判廷において、裁判長は被告人に對して「太田善四郎、内藤晴男、佐々木浩一等は知合か」と訊問したのに對して、被告人は「太田は知っていましたが他の二人は知りませんでした」と答えている。又右公判廷において、裁判長が證據調として被告人に對する司法警察官の訊問調書を讀み聞け意見辯解を求めたのに、被告人は何もないと答えている。そして、右訊問調書には「問、お前は内藤晴男、太田善四郎、佐々木浩一と親戚關係なきや、答、今迄顏は知っていましたが氏名は知りません人々でした。親戚關係はありません」とあるから、原審は所論の被告人と窃盗本犯との間に親族關係の有無について、審理しその關係を認めなかったことが明白である。それ故この點に對する所論は採るを得ない。(その他の判決理由は省略する。)
よって刑訴法第四四六條に從い、主文のとおり判決する。
この判決は、裁判官全員の一致した意見である。
(裁判長裁判官 塚崎直義 裁判官 長谷川太一郎 裁判官 沢田竹治郎 裁判官 霜山精一 裁判官 井上登 裁判官 栗山茂 裁判官 真野毅 裁判官 島 保 裁判官 齋藤悠輔 裁判官 藤田八郎 裁判官 河村又介)