最高裁判所大法廷 昭和24年(オ)8号 判決 1949年4月20日
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人森長英三郎、同福田力之助、同上村進上告理由第一点について。
しかし、労働組合法第二六条によれば、労働委員会を構成すべき労働者を代表する委員の委嘱は、同法第五条の労働組合の推薦に基くべきもので所論方法例にいわゆる推薦委員会がこれを推薦するものでないこと明白である。そして原審認定によれば前記労働組合は所論方法例による手続を推薦委員会に委任したものと認めたのである。されば、原判決がその理由において推薦委員会が方法例に準拠しない推薦投票の方法を決定するためには、本来推薦権を自主的に有する労働組合より事前の委任若しくは事後の承諾を受くることを要するものとしたのは正当である。そして、原判決は、所論のように方法例を労働者に対する規則又は慣習法規と解したものでないことその説示に照し明瞭であるから、本論旨は、採るを得ない。
同第五点について。
しかし、労働組合法第二六条第二項は、労働委員会を構成すべき労働者を代表する委員につき、「労働者ヲ代表スル者ハ労働組合ノ推薦ニ基キ行政官庁之ヲ委嘱スベキモノトス」と規定し、同条第五項は「労働委員会ニ関スル事項ハ本法ニ定ムルモノノ外勅令ヲ以テ之ヲ定ム」と規定している。そして憲法第一五条は公務員の選定をすべて選挙の方法によるべきものとしたものではなく又労働組合法第二六条の規定は労働委員の推薦を選挙の方法によるべき旨規定していないのである。されば、所論昭和二一年勅令第一〇八号労働組合法施行令第三七条中の労働組合の推薦を得ること能わざる場合における都道府県知事の職権委嘱に関する規定は、憲法第一五条労働組合法第二六条に違反するところはなく、また、かゝる職権委嘱は所論のごとく法律上の根拠なしともいえない。本論旨も採ることができない。(その他の判決理由は省略する。)
よつて民訴第四〇一条第九五条第八九条により主文のとおり判決する。
本判決は、裁判官全員の一致した意見である。
(裁判長裁判官 塚崎直義 裁判官 長谷川太一郎 裁判官 沢田竹治郎 裁判官 霜山精一 裁判官 井上登 裁判官 栗山茂 裁判官 真野毅 裁判官 小谷勝重 裁判官 島 保 裁判官 斉藤悠輔 裁判官 藤田八郎 裁判官 岩松三郎 裁判官 河村又介 裁判官 穂積重遠)