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最高裁判所大法廷 昭和24年(新れ)241号 判決 1950年4月26日

主文

本件上告を棄却する。

当審における未決勾留日数中六〇日を本刑に算入する。

理由

弁護人鍛冶利一、同山村利宰平の上告趣意第一点について。

本件は所論昭和二三年一月一日施行の裁判所法の一部を改正する法律によって改正された裁判所法第三三条第一項第二号、第二項但書の規定によって井原簡易裁判所が第一審として審判したものであることは所論のとおりである。ところが裁判所の事物管轄に関する事柄は憲法第八一条の場合を除いては、国会が事件の性質、種類、裁判所の機能その他諸般の事情を考量して、時宜に適するように法律を以って規定するところに一任されていると解すべきことは昭和二二年(れ)第二八〇号同二三年七月二九日大法廷判決(判例集第二巻第九号一〇〇七頁以下参照)に示すとおりである。そして所論裁判所法の一部を改正する法律は迅速な裁判をなすべき憲法の要請、裁判所の機能、事件の種類、性質、件数等に鑑み従来地方裁判所の裁判権に属せしめていた事件の中刑法第二三五条の窃盗罪若しくはその未遂罪に係る訴訟を簡易裁判所の裁判権に属せしめ、これ等の事件又はこれ等の犯罪と他の罪とにつき刑法第五四条第一項の規定によりこれ等の罪の刑を以って処断すべき事件においては簡易裁判所は三年以下の懲役を科することができると定めたものであることは所論裁判所法の一部を改正する法律案の提案理由に照らして明らかなところであって、被告人の人種、信条、性別、社会的身分又は門地によって差別をしたものでないことは多言を要しないところである。されば右改正法律は憲法第一四条に反するものではなく、従って所論は採用し難い。

同第二点三点四点及び弁護人山村利宰平の上告趣意について。

論旨第二点は原判決には公判調書の証明力についての判断に違法があって判決に影響を及ぼすべき重大な事実の誤認があるというのであり、同第三点は原判決には理由不備と重大なる事実の誤認があるというのであり、また同第四点は原判決には採証についての違法があるというのである。次に弁護人山村利宰平の上告論旨は原判決の刑の量定を不当なりと主張するものである。されば論旨はいずれも刑訴四〇五条の定める上告の理由に当らないし、また、同四一一条を適用すべきものとも認められない。

よって刑訴法第四〇八条により上告を棄却すべきものとし、当審における未決勾留日数の算入については刑法第二一条に従い主文のとおり判決する。

以上は裁判官全員一致の意見である。

(裁判長裁判官 塚崎直義 裁判官 沢田竹治郎 裁判官 霜山精一 裁判官 井上 登 裁判官 真野 毅 裁判官 小谷勝重 裁判官 齋藤悠輔 裁判官 藤田八郎 裁判官 岩松三郎 裁判官 河村又介 裁判官 穂積重遠)

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