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最高裁判所大法廷 昭和24年(新れ)335号 判決 1951年4月18日

主文

本件各上告を棄却する。

当審における訴訟費用は全部被告人下村重満の負担とする。

理由

被告人下村重満弁護人長野国助の上告趣意第一点並びに被告人中田公弘弁護人長野国助、同青木彦次郎、同滝沢国雄の上告趣意第一点について。

各論旨中の(一)はいずれも刑法死刑の規定は憲法九条に違反するというのであるが、同条の規定から死刑廃止に至らねばならないと解すべき理由を見出すことはできない。されば各論旨(一)はいずれもとるをえない。各論旨中の(二)及び(三)はいずれも刑法死刑の規定はそれぞれ憲法一三条、三六条に違反するというのであるが、そのとるをえないことは当裁判所昭和二二年(れ)第一一九号同二三年三月一二日大法廷判例(判例集二巻三号一九一頁)の示すとおりである。されば被告人両名をそれぞれ死刑に処した第一審判決を是認した原判決をもって所論憲法の各規定に違反すとなす各論旨はいずれも理由がない。

被告人下村重満弁護人長野国助の上告趣意第二点について。

論旨は結局中止未遂の主張に対する原判決の判断は刑訴三三五条二項に違反するというのであるから、明らかに刑訴四〇五条所定の上告適法の理由にあたらない。そして原判決のこの点に対する判示は同条項にいわゆる法律上刑の減免の理由となる事実上の主張に対する判示として毫も欠くるところがないから、刑訴四一一条を適用すべきものとも認められない。

同第三点並びに被告人中田公弘弁護人長野国助、同青木彦次郎、同滝沢国雄の上告趣意第三点について。

論旨はいずれも結局判決の是認した第一審判決の量刑の不当を主張するにとどまるものであるから、明らかに刑訴四〇五条所定の上告適法の理由にあたらないし、また記録を精査しても刑訴四一一条を適用して原判決を破棄しなければいちじるしく正義に反するとも思われない。

被告人中田公弘弁護人長野国助、同青木彦次郎、同滝沢国雄上告趣意第二点について。

論旨は被告人の犯行当時心神耗弱の状況にあったとの主張に対する原判決の説示は法令の違背であるとの主張であるから明らかに刑訴四〇五条所定の上告適法の理由にあたらない。そして原判決のこの点に対する説示は正当で違法ということはできないから、刑訴四一一条を適用して原判決を破棄しなければいちじるしく正義に反するものとはいえない。

被告人両名弁護人安部万太郎の上告趣意第一点について。

しかし、刑法死刑の規定が違憲のものでないことは被告人両名の弁護人長野国助等の各上告趣意第一点について説明するとおりであって、論旨に摘示する当裁判所の判例を変更する必要を認めない。論旨はとるをえない。

同第二点について。

論旨に主張するような原判決の事実誤認、再審事由及び審理不尽の違法は全記録を精査するもこれを認めるに足る証跡が発見されない。されば本件には刑訴四一一条を適用すべきものとも認められない。

被告人下村重満の上告趣意について。

論旨は結局事実誤認の主張に帰し刑訴四〇五条所定の上告適法の理由にあたらない。そして論旨に主張する判示第三の強盗殺人同未遂の所為中殺人の所為は被告人両名が強盗の犯行を終って屋外に出た後に、平田、八坂両名の行ったものであるとの事実はこれを認めるに足る証跡を記録上発見することができないから、第一審判決並びにこれを是認した原判決には所論の事実誤認は認められない。されば本件には刑訴四一一条を適用すべきものとは思われない。

よって刑訴四〇八条一八一条一項に従い裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 長谷川太一郎 裁判官 沢田竹治郎 裁判官 霜山精一 裁判官 井上 登 裁判官 栗山 茂 裁判官 真野 毅 裁判官 小谷勝重 裁判官 島 保 裁判官 斎藤悠輔 裁判官 藤田八郎 裁判官 岩松三郎 裁判官 河村又介)

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