大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。
官報全文検索 KANPO.ORG
月額980円・今日から使える・メール通知機能・弁護士に必須
AD

最高裁判所大法廷 昭和26年(あ)3104号 判決 1952年1月23日

主文

本件上告を棄却する。

当審における訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

弁護人石渡秀吉の上告趣意について。

第一点 犯行の動機に関する所論のごとき事実の主張は、刑訴三三五条二項にいわゆる「法律上犯罪の成立を妨げる理由……となる事実」の主張に該当しないことは明らかである。また所論に引用する大審院判例は正当防衛の主張に対し判断を示さなかった事案に関するものであって、本件原審判決は毫もこの大審院判例と相反する判断をしたものと認めることはできない。論旨は、それ故採るを得ない。

第二点 所論は、死刑一般を違憲であると主張するものではなく、単に具体的に刑法一九九条の普通殺人罪に対する死刑の規定は残虐な刑罰であるから、原審判決は憲法三六条に違反すると主張するのである、しかしながら、殺人は尊厳な個人の生命を奪うものであって社会的人間生活の安全を根底から破壊する憎むべき反社会的行為である。今日の時代と環境とにおいて、殺人罪に対し社会の秩序と公共の福祉を護るために刑罰として死刑を科する場合のあることは、必要であり是認さるべきであると言わなければならない(判例集二巻三号一九三頁参照)。それ故、刑法一九九条の規定は、憲法三六条に違反するところはない。また本件の具体的事案において死刑を科したことも違憲と認むべき点は存在しない。論旨は理由なきものである。

第三点 所論は、量刑不当の主張であって適法な上告理由と認め難い。

被告人の上告趣意について。

所論は、事実誤認・量刑不当の主張を出てないものであって適法な上告理由に当らないから、採用するを得ない。

よって刑訴四〇八条に従い主文のとおり判決する。

この判決は裁判官全員一致の意見である。

(裁判長裁判官 田中耕太郎 裁判官 沢田竹治郎 裁判官 井上 登 裁判官 栗山 茂 裁判官 真野 毅 裁判官 小谷勝重 裁判官 島 保 裁判官 斎藤悠輔 裁判官 藤田八郎 裁判官 岩松三郎 裁判官 小林三郎)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例