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最高裁判所大法廷 昭和27年(あ)2903号 判決 1953年12月09日

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人静永世策の上告趣意前段について。

本件が昭和二五年一〇月六日大阪簡易裁判所において公訴棄却となった事件につきその後検察官が再度公訴を提起したものであることは所論のとおりであるが、右大阪簡易裁判所の公訴棄却の判決は、その理由とするところは、起訴状によれば上告人多田国雄に対しても公訴が提起されていることは明らかであるが、同人に対する公訴事実の記載が欠除しているから、右公訴提起の手続がその規定に違反したため無効である場合に該当するものであるというにあって、刑訴三三八条四号によりなされたものである。所論は、憲法三九条は二重処罰のほか、二重起訴をも禁じた趣旨であり、何人も裁判所により放免せられたると、処罰されたるとを問わず、同一犯罪について再び審判せられることのない旨を保障したものと解すべきであるとし、従って本件再度の公訴提起は憲法三九条違反であり、同九七条及び刑訴三四〇条の趣旨からも破棄を免れないと主張するのである。しかし、憲法三九条は、本件のように、起訴状に公訴事実の記載が欠除していることを理由として公訴棄却の判決のなされた場合において、同一事件につき再度公訴を提起することを禁ずる趣旨を包含するものではないと解するのを相当とするのであって、所論は理由がない。

同後段は量刑不当の主張であって、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。また記録をしらべても同法四一一条を適用すべきものとは認められない。

よって同法四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 田中耕太郎 裁判官 霜山精一 裁判官 井上 登 裁判官 栗山 茂 裁判官 真野 毅 裁判官 小谷勝重 裁判官 島 保 裁判官 斎藤悠輔 裁判官 藤田八郎 裁判官 岩松三郎 裁判官 河村又介 裁判官 谷村唯一郎 裁判官 小林俊三 裁判官 本村善太郎 裁判官 入江俊郎)

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