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最高裁判所大法廷 昭和30年(オ)168号 判決 1958年12月24日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人栗須一の上告理由について。

社寺等に無償で貸し付けてある国有財産の処分に関する法律(昭和二二年法律五三号により改正された昭和一四年法律七八号)において、国有地である寺院等の境内地その他の附属地を無償貸付中の寺院等に譲与又は時価の半額で売り払うことにしたのは、新憲法施行に先立つて、明治初年に寺院等から無償で取上げて国有とした財産を、その寺院等に返還する処置を講じたものであつて、かかる沿革上の理由に基く国有財産関係の整理は、憲法八九条の趣旨に反するものとはいえない。この点に関する原判示は正当である。

又前記法律附則一〇条二項において、譲与又は売払をすることに決定したものについては、旧国有財産法二四条の規定は、その譲与又は売払の日まで、なおその効力を有すると定められたのも、前記国有財産の整理に関する一連の経過規定であつて、すなわち、過渡的手段としてとられた立法措置に外ならないから、同条を以て憲法八九条に違反するものとはいえない。

そして、右法律附則一〇条二項の規定は、譲与又は売払の申請がなされている土地については、その譲与又は売払の日までは、なお旧国有財産法二四条の規定の効力が存続し、すなわち、無償貸付関係は継続する趣旨であると解すべきことろ、本件について原判決の引用する第一審判決の確定した事実関係によれば、昭和二三年一月五日被上告人のなした無償譲与の申請が不許可となり、これに対し訴願を申立てた結果同年七月三一日付をもつて、前記行政処分が取消され「本件土地については、原告と被告等の本件訴訟において原告勝訴の判決が確定した後又は右判決確定前において本件土地上に所在する本件建物が完全に撤去され右土地が原告に明渡されたときは、これを原告に譲与する旨の裁決がなされた」と、いうのであるから、前記法律附則一〇条二項によつて右譲与の日まで国の被上告人に対する本件土地の無償貸付はなおその効力を有し、したがつて被上告人は、その使用権を有するものと解する相当とする。この点の原審の判断も正当であつて、所論はすべて採用できない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 田中耕太郎 裁判官 小谷勝重 裁判官 島 保 裁判官 斉藤悠輔 裁判官 藤田八郎 裁判官 河村又介 裁判官 河村大助 裁判官 下飯坂潤夫 裁判官 奥野健一 裁判官 高木常七 裁判官 石坂修一)

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