最高裁判所大法廷 昭和35年(あ)2303号 判決 1962年4月04日
主文
本件上告を棄却する。
理由
被告人本人の上告趣意について。
論旨は、風俗営業等取締法三条に基づく東京都風俗営業等取締法施行条例二二条は、憲法一三条、二二条一項及び二五条等に違反すると主張する。
風俗営業等取締法三条は、都道府県は、条例により、風俗営業における営業の場所、営業時間及び営業所の構造設備等について、善良の風俗を害する行為を防止するため必要な制限を定めることができるものとし、東京都の風俗営業等取締法施行条例二二条は、右規定に基づいて「営業時間は、キャバレー、ナイトクラブ及びダンスホールは、午後五時から同十一時三十分まで、その他の営業は、午前十時から午後十一時までとする。ただし、特別の事由があって、あらかじめ公安委員会の承認を受けた場合は、この限りでない。」と定めている。しかして右のように営業時間を規制する所以のものは、同法一条に掲げるような風俗営業について、特に深夜に及び営業することを認めるにおいては、往々にして売淫や賭博その他善良の風俗を害する行為を誘発する虞れあるがためであって、しかも右条例二二条但書によれば、かかる虞れのない特別の事由ある場合においては、あらかじめ公安委員会の承認を受けて、深夜営業をなすこともできるものと解せられる。それ故右条例二二条による営業時間の制限は、右のような弊害を防止するために必要な措置であって、公共の福祉のために是認されるべきである。従って所論違憲の主張はすべて採用できない。
よって刑訴四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 横田喜三郎 裁判官 斎藤悠輔 裁判官 藤田八郎 裁判官 河村又介 裁判官 入江俊郎 裁判官 池田克 裁判官 垂水克己 裁判官 河村大助 裁判官 下飯坂潤夫 裁判官 奥野健一 裁判官 高木常七 裁判官 石坂修一 裁判官 山田作之助 裁判官 五鬼上堅磐 裁判官 横田正俊)