最高裁判所大法廷 昭和36年(オ)1106号 判決 1962年3月14日
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人早川義彦の上告理由一、二について。
論旨は、公職選挙法二五一条の二及び二一一条の規定は、憲法一三条、一五条及び三一条等に違背し無効であると主張する。
昭和二九年一二月法律二〇七号による公職選挙法の改正により「当選人が選挙運動を総括主宰した者の選任及び監督につき相当の注意をしたとき」等を免責事由から削除して、いわゆる連座制の規定を強化したことは所論のとおりであるが、右連座制の強化は、ひつきよう、公職選挙が選挙人の自由に表明せる意思によつて公明且つ適正に行われることを確保し、その当選を公明適正なる選挙の結果となすべき法意に出でたるものと解するを相当とする。ところで、選挙運動の総括主宰者は、特定候補者のために、選挙運動の中心となつて、その運動の行われる全地域に亘り、その運動全般を支配する実権をもつものであるから、その者が公職選挙法二五一条の二掲記のような犯罪を行う場合においては、その犯罪行為は候補者の当選に相当な影響を与えるものと推測され、またその得票も必ずしも選挙人の自由な意思によるものとはいい難い。従つてその当選は、公正な選挙の結果によるものとはいえないから、当選人が総括主宰者の選任及び監督につき注意を怠つたかどうかにかかわりなく、その当選を無効とすることが、選挙制度の本旨にもかなう所以であるといわなければならない。叙上と反対の見地に立つて前記公職選挙法二五一条の二及び二一一条が所論憲法各条に違反するとの主張は凡て採用できない。
同三について。
論旨は、原判決の総括主宰者に関する認定を非難するに過ぎないから、上告適法の理由とならない。
よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 横田喜三郎 裁判官 斉藤悠輔 裁判官 藤田八郎 裁判官 河村又介 裁判官 入江俊郎 裁判官 池田克 裁判官 垂水克己 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一 裁判官 高木常七 裁判官 石坂修一 裁判官 山田作之助 裁判官 五鬼上堅磐)