最高裁判所大法廷 昭和39年(さ)7号 判決 1965年7月14日
主文
原略式命令を破棄する。
被告人は無罪。
理由
検事総長馬場義続の非常上告申立の理由について。
本件略式命令請求記録および所論略式命令書によれば、京都簡易裁判所は、昭和三八年一一月一日、「被告人は昭和三八年一〇月二六日午後五時一五分頃第一種原動機付自転車北九五八八号を運転して京都市中京区三条通りを西進中、京都府公安委員会告示により車両の右折が禁止され、かつ、右趣旨の道路標識が設置してある同区三条木屋町交差点を右折したものである」との事実を認定し、これに対し道路交通法七条一項、九条二項、一一九条一項一号、道路交通法施行令七条、罰金等臨時措置法二条、刑法一八条、刑訴法三四八条を適用し、被告人を罰金三、〇〇〇円(換刑処分、二五〇円を一日)に処し、かつ、右仮納付を命ずる旨の略式命令を発し、即日その謄本を被告人に送達したことおよび右略式命令は法定の期間内に正式の裁判の請求がなされなかったので同年一一月一六日確定したことをそれぞれ認めることができる。
しかしながら、被告人の本件所為当時施行されていた、道路交通法七条一項の規定に基づく昭和三五年一二月一九日京都府公安委員会告示第五一号(昭和三七年三月一三日同委員会告示第一二号による改正後のもの)の定めるところによれば、京都市中京区三条木屋町交差点における車両の右折のうち、三条通りを西進した場合における原動機付自転車の右折は禁止されていなかったのであるから、右略式命令認定事実は、罪とならなかったものといわなければならない。
してみれば、本件において原裁判所が前記略式命令を発したのは違法であって、原略式命令は法令に違反し、かつ、被告人のため不利益であること明白であるというべきである。
よって刑訴法四五八条一号、三三六条前段により裁判官全員一致の意見により主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 横田喜三郎 裁判官 入江俊郎 裁判官 奥野健一 裁判官 石坂修一 裁判官 山田作之助 裁判官 五鬼上堅磐 裁判官 横田正俊 裁判官 草鹿浅之介 裁判官 長部謹吾 裁判官 城戸芳彦 裁判官 石田和外 裁判官 柏原語六 裁判官 田中二郎 裁判官 松田二郎 裁判官 岩田 誠)