大判例

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最高裁判所大法廷 昭和22(れ)201 判決

主 文

本件上告を棄却する

理 由

弁護人柴田勇助上告趣意は「原審判決ハ憲法違反デアル即チ原審ハ被告人ガ戯レ

ニ若キ婦人ノ胸ポケツトニ半分程出テ居タ小鏡ヲスリ取ツテ其ノ場テ警官ニ捕ヘラ

レ直チニ返シタト云フ事実ニ対シ懲役六月ノ実刑ヲ科シタノデアリマス之ハ余リニ

モ人権ヲ軽視シタ判決デ憲法第十三条ニ違反シタモノデアルト信ジマス被告人ハ数

人ノ児ノ父デアリ毎日真面目ニ働ラク左官職人デアリマス唯十数年前ニ仕事場カラ

針金ヲ自家用ニ持帰ツタト云フ廉デ懲役ニ処セラレタコトガ前科トナツテ居リマス

ガ唯此ノ点ダケデ此度モ懲役ノ実刑ヲ科スル判決ヲセラレタモノト思ヒマスカ夫レ

ハ確カニ憲法ニヨリ保障セラレタ人権ヲ無視尠クトモ軽視シタモノデアルト信ジマ

ス速カニ原判決ヲ破毀シテ適正妥当ナル御裁判ヲ頂キ度ウ存ジマス」というにある。

憲法第十三条には「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福

追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国

政の上で、最大の尊重を必要とする」と規定されている。この規定は、個人の尊厳

と人格の尊重を宣言したものであることは勿論であるが、個人の生命、自由、権利

も、社会生活の正しい秩序、共同の幸福が保持されない限り、所詮それは砂上の楼

閣に終るしかないのである。されば同条には「公共の福祉に反しない限り」との大

きな枠をつけており、また他方において憲法第三十一条においては、社会秩序保持

のため必要とされる国家の正当なる刑罰権の行使を是認しているのである。されば、

被告人が現時国民に非常なる害悪を与え国民憎悪の的である掏摸を行つたことに対

し、原審が諸般の事情を考慮して、実刑を科する判決を言渡したことは、事実審で

ある原審の自由裁量権に属することであつて、これをもつて憲法違反乃至違法であ

ると言うことはできない。従つて論旨は理由なきものである。

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よつて裁判所法第十条第一号、刑事訴訟法第四百四十六条により主文のとおり判

決する。

以上は裁判官全員の一致した意見である。

検察官宮本増蔵関与

昭和二十三年三月二十四日

最高裁判所大法廷

裁判長裁判官 塚 崎 直 義

裁判官 長 谷 川 太 一 郎

裁判官 沢 田 竹 治 郎

裁判官 栗 山 茂

裁判官 真 野 毅

裁判官 庄 野 理 一

裁判官 島 保

裁判官 斎 藤 悠 輔

裁判官 藤 田 八 郎

裁判官 岩 松 三 郎

裁判官霜山精一同井上登は病気の為署名捺印することができない。

裁判長裁判官 塚 崎 直 義

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