大判例

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最高裁判所大法廷 昭和23(れ)1469 判決

主 文

本件上告を棄却する。

理 由

弁護人大石力上告趣意第一点について。

銃砲等所持禁止令附則第二項所定の所持許可の申請期間は同令第一条第一項第一

乃至四号に該当する銃砲等について定められたものであつて、かかる銃砲等につい

ても、右の許可申請をしないときは、右期間内の所持も不法であるとなすこと当裁

判所の判例に示されている通りである。(昭和二二年(れ)第一八一号、昭和二三

年四月一七日第二小法廷判決参照)。従つて、被告人の本件刀剣の所持が、前記許

可申請期間内であるということだけでは、所論のようにその所持の違法を阻却する

理由とはならない。原判決は、本件刀剣が前記銃砲等所持禁止令第一条第一項第一

乃至四号の孰れにも該当せず、且つ被告人が所定の期間内に所持許可の申請をしな

かつたものと認定したことは判文上明かであるから、原判決が被告人の本件刀剣の

所持を銃砲等所持禁止令第一条、第二条違反に問擬したのは当然である。又若し所

論のいわゆる提出期間云々が、当時警察等において一定の時期を限つて、銃砲等の提

出を命じ、これに応じたものは不問に付する等の措置をとつたことを指すならば、

仮りにそのような事実があつたとしても、それは固より行政上の措置にすぎないの

であるから、不法の所持を適法化するものではない。いずれにしても論旨は理由が

ない。

同第二点について。

しかし原判決は、「南の左腋下部を下方から突き刺し因て同人に対し胸腔を貫き

心臓を貫通する刺創を加」えたという事実を認定しているだけであつて、所論のよ

うに「被告人の行為による刺創一ケ所なるを判示し」ているのではないから、判示

事実と証拠説明とが一致していないという非難はあたらない。なお又鑑定書中の兇

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器に関する意見を記載した部分は、原判決が証拠として採用していないところであ

るから、この点においても判示事実と証拠との矛盾は存しない。論旨はいずれも理

由がない。

同第三点について。

論旨は被告人の行為を夢中の反射的行動であるとなし、原判決の「被告人は茲で

同人を殺害することがあるかも知れないことを認識しながら寧ろ機先を制するに如

かずと考え」という認定は、人間性を無視したものであり、それ自体不条理たる不

法を免れないと主張しているけれども、かような認定は必ずしも経験則に反するも

のではないから、所論は採用することができない。

次ぎに所論の正当防衛の主張について考えてみるに、互に暴行し合ういわゆる喧

嘩は闘争者双方が攻撃防禦を繰り返す一団の連続的闘争行為であるから、闘争のあ

る瞬間においては、その一方が専ら防禦に終始し、正当防衛を行う観を呈すること

があつても、闘争の全般からみては、刑法第三六条の正当防衛の観念を容れる余地

のない場合がある(昭和二三年(れ)第七三号同年七月七日大法廷判決参照)。原

判決の確定した事実によれば、本件闘争は賭博の賭金のことに端を発したものであ

り、被告人は一時闘争から逃れ自宅に帰つたのであるが、被害者の呼出に応じ、本

件短刀を懐中して自ら屋外に出で格闘した結果、窮地に陥つたのであるから、被告

人は所論のように単に防禦的反撃に終始したのではなく、後には自ら闘争を予期し

て相手方に立向つたものと認められる。かような闘争の結果としての殺人の所為は

全般の状況から見て、法律秩序に反するものと云うべく正当な所為と認めることは

できないから、これに刑法第三六条を適用しなかつた原判決には所論の如き違法は

ない。論旨は原判決の認定と異なる事実の主張に基いて、原判決の判断を非難する

ものであつて、その理由がない。

よつて旧刑訴法第四四六条により主文のとおり判決する。

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以上は裁判官全員一致の意見である。

検察官 十蔵寺宗雄関与

昭和二四年七月一三日

最高裁判所大法廷

裁判長裁判官 塚 崎 直 義

裁判官 長 谷 川 太 一 郎

裁判官 沢 田 竹 治 郎

裁判官 霜 山 精 一

裁判官 井 上 登

裁判官 栗 山 茂

裁判官 真 野 毅

裁判官 小 谷 勝 重

裁判官 島 保

裁判官 斎 藤 悠 輔

裁判官 藤 田 八 郎

裁判官 岩 松 三 郎

裁判官 河 村 又 介

裁判官 穂 積 重 遠

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