大判例

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最高裁判所大法廷 昭和23(れ)771 判決

主 文

本件上告を棄却する。

理 由

弁護人伊藤環の上告趣意について。

被告人が原審公判において、所論のごとく近親者に数名の精神病者がある旨の供

述をしたことは、記録上明らかである。(尤も、被告人は第一審の公判では裁判長

の右に関する問に対して、姉の子だかに気が狂つて縊死したものがあるそうですが、

そのほかには気が狂つた者かあるとは聞いたことはない旨答えているので、原審は

右第一審における被告人の供述から推して、原審における多数近親者に精神病者か

ある旨の供述を直ちに措信しなかつたものとも推測される。かつ、原審において、

右のごとき被告人の供述があるにかゝわらず、立会の弁護人からも、特に被告人の

精神鑑定を申請した形跡のないところからみても、右原審における被告人の供述は、

その真実性に多分の疑を抱く余地がある。)しかし、たとえ、被告人が公判におい

て、右のごとく、その近親者ことに母、兄等に多くの精神病者がある旨の供述をし

ても、原判決の認定した本件犯行の動機、経過、事後の処置等については、特に犯

人の精神状態の異常を思わしむるような点もないのであつて、かゝる場合に、裁判

所が右犯罪の情状及び被告人の公判廷における言語、動作、その他諸般の状況から

して、被告人の精神状態について、別段疑惑を挾むべき徴候を認めないときは、特

に専門家の精神鑑定に付することなくして、被告人の犯行当時の精神状態に異常は

なかつたものと判断しても、これをもつて、所論のごとく原審に審理不尽の違法あ

りということはできない。論旨は理由がない。

被告人の上告趣意について。

論旨は、要するに、原審の事実誤認を主張するに過きないのであつて、原判決の

法律違背を理由とするものでないから、適法なる上告の理由とはならない。

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よつて旧刑事訴訟法第四四六条に従い主文のとおり判決する。

この判決は裁判官全員一致の意見である。

検察官 長谷川瀏関与

昭和二四年六月二九日

最高裁判所大法廷

裁判長裁判官 塚 崎 直 義

裁判官 長 谷 川 太 一 郎

裁判官 沢 田 竹 治 郎

裁判官 霜 山 精 一

裁判官 井 上 登

裁判官 栗 山 茂

裁判官 真 野 毅

裁判官 小 谷 勝 重

裁判官 島 保

裁判官 斎 藤 悠 輔

裁判官 藤 田 八 郎

裁判官 岩 松 三 郎

裁判官 河 村 又 介

裁判官 穂 積 重 遠

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