大判例

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最高裁判所大法廷 昭和24新(れ)250 判決

主 文

本件上告を棄却する。

当審における未決勾留日数中六〇日を本刑に算入する。

当審における訴訟費用は被告人の負担とする。

理 由

弁護人梶村謙吾の上告趣意について。

原判決は被告人に訴訟費用の負担を言渡したこと、その訴訟費用は被告人のため

に附した国選弁護人の報酬であることは所論のとおりである。そして刑訴施行法一

五条は刑事訴訟費用法の一部を改正し国選弁護人に給すべき報酬等を訴訟費用とし

たのであつてその結果裁判所が刑の言渡をしたときは国選弁護人に給すべき報酬を

訴訟費用として被告人に負担させなければならないのである。論旨は憲法三七条に

被告人が自ら弁護人を依頼することができないときは国でこれを附すると規定しそ

の費用の負担につき何等の条件をも規定しないところからみると右費用はもとより

国が負担することを前提とするものであるから刑事訴訟費用法で国選弁護人の報酬

等を訴訟費用にしたことは憲法の規定に違反するものであると主張する。しかし憲

法三七条三項は刑事被告人はいかなる場合にも資格を有する弁護人を依頼する権利

があることを保障し被告人が自ら弁護人を依頼することができないときは国でこれ

を附することを規定したものであつて弁護人の報酬等の費用を何人に負担せしめる

かという問題は右規定の関知するところではなく法律をもつて適当に規定し得る事

柄であると解すべきである。そして国選弁護人を選任するのは被告人の利益のため

であるからその費用は被告人に負担させるのが適当であつて若し被告人が貧困のた

めその費用を完納することができないときは刑訴五〇〇条の規定によつて裁判所に

その裁判の執行の免除を申立てることができる訳である然らば刑事訴訟費用法が国

選弁護人に給すべき報酬等を公訴に関する訴訟費用とする旨を規定したことは前示

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憲法の規定に違反するものではなく従つて原判決が被告人に対しその費用の負担を

命じたことは正当であるから論旨はその理由がない。

被告人の上告趣意について。

しかし所論の事由はいずれも刑訴四〇五条所定の事由に該当しないから上告適法

の理由とならない。又本件は同法四一一条を適用すべきものとも認められない。

よつて刑訴四〇八条一八一条刑法二一条により主文のとおり判決する。

以上は裁判官斎藤悠輔の補足意見を除きその他の裁判官全員一致の意見である。

斎藤裁判官の補足意見は次のとおりである。

刑事訴訟費用法は、公訴事件における訴訟費用の一般的な範囲並びに金額、支給

の条件等を定めたに過ぎないものであつて、これを被告人に負担せしむべきことを

規定したものではない。されば、刑訴施行法一五条において刑事訴訟費用法(大正

一〇年法律六八号)の一部を改正して、同法一条中の訴訟費用中に「刑事訴訟法三

八条の規定に依り弁護人に給すべき日当、旅費、宿泊料及報酬」を加え、同法七条

を「刑事訴訟法三八条の規定に依り弁護人に給すべき日当、旅費及宿泊料に付ては

第三条乃至前条の規定を準用す但し弁護人が期日に出頭し又は取調若は処分に立会

いたる場合に限る。同法三八条の規定により弁護人に給すべき報酬の額は裁判所の

相当と認むる所に依る」と改めて、国選弁護人に給すべき日当、旅費、宿泊料及報

酬を訴訟費用の一部とし、その金額を定め、国選弁護人が期日に出頭し又は取調若

は処分に立会いたる場合に、判決前に請求するときはこれを支給すべき旨を定めた

からといつて、直にその費用が被告人の負担となるものではなく、従つて、仮りに

憲法三七条が所論のような趣旨であるとしても刑事訴訟費用法が憲法の同条項に触

れる理由はない。しかのみならず、国選弁護費用を何人の負担にすべきかは憲法三

七条三項の規定するところではなく、従つて、憲法問題ではなく、刑事被告人の資

力、一般国民の利益その他諸般の事情を勘案して適当に決定すべき立法政策の問題

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であるといわなければならない。そして、刑訴一八一条一、二項が「刑の言渡をし

たときは、被告人に訴訟費用の全部又は一部を負担させなければならない。被告人

の責に帰すべき事由によつて生じた費用は、刑の言渡をしない場合にも被告人にこ

れを負担させることができる。」と規定しても、裁判所は被告人の資力その他諸般の

事情を斟酌して訴訟費用の一部である国選弁護人に要した費用を被告人に負担させ

ないこともできると解することもできるし、また、裁判所がその負担を被告人に命

じても被告人が貧困のためこれを完納することができないときは刑訴五〇〇条によ

りその全部又は一部について、その執行の免除の申立をすることができるのである

から、被告人の保護に欠くるところはない。されば、原判決が右刑訴一八一条によ

り、控訴審における国選弁護人に要した費用を被告人に負担させることを相当とし

たからといつて、違法であるともいえない。

昭和二五年六月七日

最高裁判所大法廷

裁判長裁判官 田 中 耕 太 郎

裁判官 長 谷 川 太 一 郎

裁判官 沢 田 竹 治 郎

裁判官 霜 山 精 一

裁判官 井 上 登

裁判官 小 谷 勝 重

裁判官 島 保

裁判官 斎 藤 悠 輔

裁判官 藤 田 八 郎

裁判官 河 村 又 介

裁判官 穂 積 重 遠

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