最高裁判所大法廷 昭和27(あ)1896 判決
主 文
原判決及び第一審判決を破棄する。
被告人両名を各罰金一〇〇〇円に処する。
右罰金を完納できないときは、金二〇〇円を一日に換算した期間その被
告人を労役場に留置する。
訴訟費用中第一審におけるものは、被告人両名の連帯負担とし、原審並
びに当審におけるものは被告人両名の平等負担とする。
本件公訴事実中、昭和二一年勅令第三一一号違反の点については被告人
両名を免訴する。
理 由
弁護人星宮克己の上告趣意第一、二点及び被告人両名の各上告趣意について。
裁判官真野毅、同小谷勝重、同島保、同藤田八郎、同谷村唯一郎、同入江俊郎の
意見は、昭和二一年勅令三一一号「連合国占領軍の占領目的に有害な行為に対する
処罰等に関する勅令」は、平和条約発効と同時に当然失効し、その後に右勅令の効
力を維持することは、憲法上許されないから本件勅令違反の点については犯罪後の
法令により刑が廃止された場合にあたるとするものであること、昭和二七年(あ)
第二八六八号同二八年七月二二日言渡大法廷判決記載の右六裁判官の意見のとおり
であり、又裁判官栗山茂、同岩松三郎、同河村又介、同小林俊三の意見は、右勅令
三一一号は、平和条約発効後においては、本件に適用されている昭和二〇年九月一
〇日附連合国最高司令官の「言論及び新聞の自由」と題する覚書第三項の「連合国
に対する虚偽又は破壊的批評及び風説」を「論議すること」を禁止する部分は憲法
二一条に違反するから、右指令を適用するかぎりにおいて、平和条約発効と共に失
効し、従つて、本件勅令違反の点は犯罪後の法令により刑の廃止があつた場合にあ
たるとすること、昭和二七年(あ)第二〇一一号同三〇年四月二七日言渡大法廷判
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決記載の栗山、岩松、河村、小林各裁判官の意見のとおりである。よつて以上一〇
裁判官の意見によれば、本件公訴事実中右勅令三一一号違反の点は、犯罪後に刑が
廃止されたときにあたるから、原判決及び第一審判決は、この点において、これを
破棄しなければ著しく正義に反するものと認める。
同弁護人の上告趣意第三点について。
第一審判決及び原判決は、被告人等の思想、信条、政治的立場により被告人等を
建造物侵入罪として処罰したものではないから、原判決が憲法一四条に違反すると
の所論はその前提を欠くものであり、その他の所論は、第一審判決の認定していな
い事実を主張し、被告人等の行為が建造物侵入罪とならないというのであつて、結
局事実誤認の主張に帰し刑訴四〇五条に規定する上告理由にあたらない。論旨は採
用することができない。
よつて、刑訴四一一条により原判決及び第一審判決を破棄し、同四一三条但書に
より更に判決をするのであるが、被告人等の所為中第一審判決の確定した同判示第
一の建造物侵入の点は、刑法一三〇条、六〇条、罰金等臨時措置法二条、三条にあ
たるので、所定刑中罰金刑を選択し、その金額の範囲内で被告人両名を各罰金一〇
〇〇円に処し、右罰金を完納できないときは刑法一八条により金二〇〇円を一日に
換算した期間その被告人を労役場に留置し、訴訟費用については、刑訴一八一条、
一八二条を適用し、被告人両名をして主文四項記載のようにこれを負担させ、次に
本件公訴事実中、第一審判決判示第二の昭和二一年勅令三一一号違反の点は、犯罪
後に刑が廃止されたときにあたること前記のとおりであるから、刑訴三三七条二号
により被告人両名を免訴すべきものである。よつて主文のとおり判決する。
弁護人の上告趣意第一、二点及び被告人両名の各上告趣意に対する、裁判官田中
耕太郎、同斎藤悠輔、同本村善太郎の反対意見は、次のとおりである。
平和条約発効前に犯した昭和二一年勅令三一一号違反の罪に対する刑罰は平和条
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約発効後といえども、廃止されたものといえないことは前記昭和二七年(あ)第二
〇一一号の大法廷判決記載のわれわれの意見のとおりである。
なお、右の点に対する各裁判官の補足意見は前記昭和二七年(あ)第二〇一一号
の大法廷判決に記載乃至引用したとおりである。裁判官霜山精一、同井上登は退官
につき評議に関与しない。
検察官安平政吉、同竹原精太郎、同宮崎三郎、同神山欣治出席
昭和三〇年一〇月一二日
最高裁判所大法廷
裁判長裁判官 田 中 耕 太 郎
裁判官 栗 山 茂
裁判官 真 野 毅
裁判官 小 谷 勝 重
裁判官 島 保
裁判官 斎 藤 悠 輔
裁判官 藤 田 八 郎
裁判官 岩 松 三 郎
裁判官 河 村 又 介
裁判官 谷 村 唯 一 郎
裁判官 小 林 俊 三
裁判官 本 村 善 太 郎
裁判官 入 江 俊 郎
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