最高裁判所大法廷 昭和27(あ)2731 判決
主 文
原判決及び第一審判決を破棄する。
被告人を懲役四月に処する。
押収にかゝる日本刀一振(昭和二六年領第七〇号の一二九)を没収する。
被告人を昭和二五年政令第三二五号違反の罪につき免訴する。
理 由
弁護人杉之原舜一の上告趣意(昭和二五年政令三二五号違反に対する論旨のみで
ある。)は、末尾添附のとおりである。
裁判官真野毅、同小谷勝重、同島保、同藤田八郎、同谷村唯一郎、同入江俊郎の
意見は、昭和二五年政令三二五号「占領目的阻害行為処罰令」は、平和条約発効と
同時に当然失効し、その後に右政令の効力を維持することは、憲法上許されないか
ら本件については犯罪後の法令により刑が廃止された場合にあたるとするものであ
ること、昭和二七年(あ)第二八六八号同二八年七月二二日言渡大法廷判決記載の
右六裁判官の意見のとおりであり、又裁判官井上登、同栗山茂、同岩松三郎、同河
村又介、同小林俊三の意見は、右政令三二五号は平和条約発効後においては、本件
に適用されている昭和二五年六月二六日附及び同年七月一八日附連合国最高司令官
の指令の内容が憲法二一条に違反するから、右指令を適用するかぎりにおいて、平
和条約発効と共に失効し、従つて、本件は犯罪後の法令により刑の廃止があつた場
合に準ずべきものであるとすること、前記昭和二七年(あ)第二八六八号事件の大
法廷判決記載の井上、栗山、河村、小林四裁判官の意見のとおりである。よつて以
上一一裁判官の意見によれば、本件公訴事実中右政令違反の罪については犯罪後に
刑が廃止されたときにあたるものとして、被告人を免訴すべきものであるからこの
点に関する本件上告は結局理由がある。
裁判官田中耕太郎、同霜山精一、同斎藤悠輔、同本村善太郎の反対意見は、右政
- 1 -
令三二五号は平和条約発効後といえども、刑の廃止があつた場合にはあたらず、右
条約発効前に右政令に違反した罪については、平和条約発効後においてもこれを処
罰すべきものとすること、前記昭和二七年(あ)第二八六八号の大法廷判決記載の
右四裁判官の意見のとおりである。
裁判官真野毅の補足意見は、前記昭和二七年(あ)第二八六八号(被告人A)同
二八年七月二二日言渡大法廷判決及び昭和二七年(あ)第六六九号(被告人B)同
二八年一二月一六日言渡大法廷判決中各記載の同裁判官の補足意見のとおりである。
裁判官井上登、同河村又介の各補足意見は、前記昭和二七年(あ)第二八六八号
(被告人A)の大法廷判決記載の右両裁判官の各補足意見及び前記昭和二七年(あ)
第六六九号(被告人B)の大法廷判決記載の右両裁判官の各補足意見中本件政令三
二五号の平和条約発効後の効力に関する部分のとおりである。
裁判官岩松三郎の補足意見は、右各大法廷判決記載の裁判官井上登の右各補足意
見と同一である。
裁判官栗山茂の補足意見は、前記昭和二七年(あ)第六六九号(被告人B)の大
法廷判決記載の同裁判官の意見中本件制令三二五号の平和条約発効後の効力に関す
る部分のとおりである。
裁判官小林俊三の補足意見は、前記昭和二七年(あ)第二八六八号(被告人A)
の大法廷判決記載の同裁判官の補足意見のとおりである。
裁判官斎藤悠輔の補足意見は、前記昭和二七年(あ)第二八六八号(被告人A)
の大法廷判決及び昭和二七年(あ)第六六九号(被告人B)の大法廷判決各記載の
同裁判官の補足意見のとおりである。
次に本件公訴事実中銃砲刀剣類等所持取締令違反の点については何等上告理由の
主張はない。
よつて、刑訴四一一条五号により原判決及び第一審判決を破棄し、同四一三条但
- 2 -
書により第一審判決の確定した事実中、判示第一の事実(右政令三二五号違反)に
ついては同三三七条二号により被告人を免訴し、判示第二の事実(銃砲刀剣類等所
持取締令違反の事実)については、銃砲刀剣類等所持取締令二条二六条一号を適用
し、所定刑中懲役刑を選択しその刑期範囲内において、被告人を懲役四月に処し、
押収にかかる日本刀一振(昭和二六年領第七〇号の一二九)は、前記銃砲刀剣類等
所持取締令違反罪の組成物件であつて犯人以外の者に属しないから刑法一九条一項
一号二項により被告人からこれを没収すべきものとし主文のとおり判決する。
検察官 安平政吉、竹原精太郎、福原忠男出席
昭和二九年七月一九日
最高裁判所大法廷
裁判長裁判官 田 中 耕 太 郎
裁判官 霜 山 精 一
裁判官 井 上 登
裁判官 栗 山 茂
裁判官 真 野 毅
裁判官 小 谷 勝 重
裁判官 島 保
裁判官 斎 藤 悠 輔
裁判官 藤 田 八 郎
裁判官 岩 松 三 郎
裁判官 河 村 又 介
裁判官 谷 村 唯 一 郎
裁判官 小 林 俊 三
裁判官 本 村 善 太 郎
- 3 -
裁判官 入 江 俊 郎
- 4 -