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最高裁判所第一小法廷 平成元年(オ)931号 判決 1993年3月11日

上告人 尾村裕司

被上告人 国

代理人 加藤和夫 寳金俊明 小尾仁 池本征男 下田隆夫 田中清 高山浩平 塚本伊平 中村正幸 ほか三名

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人吉田恒俊、同佐藤真理、同相良博美、同坪田康男の上告理由第一点ないし第四点について

所得税法二三四条の規定に基づく質問検査の範囲、程度、時期、場所等実定法上特段の定めのない実施の細目については、質問検査の必要があり、かつ、これと相手方の私的利益との衡量において社会通念上相当な限度にとどまる限り、権限ある税務職員の合理的な選択にゆだねられていると解され(最高裁昭和四五年(あ)第二三三九号同四八年七月一〇日第三小法廷決定・刑集二七巻七号一二〇五頁参照)、これと同旨の原審の判断は正当として是認することができる。また、所論の点に関する原審の事実認定は、原判決挙示の証拠関係に照らして首肯するに足り、右事実関係の下において、(一)奈良税務署の税務職員が、質問検査の際、奈良民主商工会の事務局員の立会いの要求を拒否した点に違法は認められない、(二)奈良税務署長が、上告人の税務調査への協力が得られないため、上告人の帳簿書類に基づく調査をあきらめ、反面調査によって本件係争各年分の上告人の収入金額を把握して本件各更正をした点にも違法は認められない、とした原審の判断は、いずれも正当として是認することができる。原判決に所論の違法はない。論旨は、違憲をいう点を含め、原審の専権に属する事実の認定を非難するか、又は原審の認定しない事実をまじえ、独自の見解に立って原判決を論難するものにすぎず、採用することができない。

同第五点について

原審の適法に確定した事実関係の下においては、奈良税務署長のした昭和四六年分更正及び同四七年分更正についてはもちろん、同四八年分更正についても、国家賠償法一条一項にいう違法は存在しないものというべきであり(最高裁平成元年(オ)第九三〇号、第一〇九三号同五年三月一一日第一小法廷判決参照)、そうすると、上告人の本件損害賠償請求はすべて理由がないものとして、これを棄却すべきものであったといわなければならない。したがって、慰謝料額の算定の不当をいう論旨は、結局、原判決の結論に影響のない事項についての違法をいうに帰し、採用することができない。

よって、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判官 三好達 大堀誠一 橋元四郎平 味村治 小野幹雄)

上告理由<略>

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