最高裁判所第一小法廷 平成3年(あ)476号 判決 1998年4月23日
主文
本件上告を棄却する。
理由
弁護士内藤隆外四名の上告趣意のうち、憲法違反をいう点は、死刑が憲法一三条、三六条に違反するものでないことは当裁判所の判例(最高裁昭和二二年(れ)第一一九号同二三年三月一二日大法廷判決・刑集二巻三号一九一頁)とするところであるから、理由がなく、その余は、事実誤認、量刑不当の主張であって、刑訴法四〇五条の上告理由に当たらない。
また、所論(弁護人徳永高外一名の弁論における陳述を含む。)にかんがみ記録を調査しても、同法四一一条を適用すべきものとは認められない(本件のうち、身の代金目的拐取、殺人、拐取者身の代金要求は、無為徒食の生活をしていた被告人が、大金欲しさから、自宅に奇食していた遊び仲間三人と共謀の上、小学校時代の同級生であるA男(二一歳)を山中に誘い出して誘拐し、いきなり一升瓶で頭部を殴打するなどして同人を転倒させた上、その頭部を目掛け、こもごも重量のあるコンクリートブロック片を投げ付けて殺害し、その父親に身の代金五〇〇〇万円を要求した事案であり、自らの利欲のために手段を選ばず、当初から殺害するという計画の下に、被告人を信頼し切っていたA男を言葉巧みに誘い出し、A男が被告人に「タモッチ助けてくれ。」と哀願するのを無視してA男を殺害した上、A男が生存しているように装って多額の現金を要求するという冷酷、非情な犯行であって、動機に同情の余地はなく、態様ことに殺害方法が残虐であり、結果も誠に重大である。さらに、監禁、強姦は、A男誘拐の際たまたま一緒にいたA男の恋人を引き離した上、A男の身を案じる同女を欺き、あるいは脅しながら、口封じのためいずれ殺害するつもりで、前後一二日間にわたって連れ回し、その間、前記共犯者のうち乙及び丙と共謀して強姦した事案であって、その悪質さも看過し難い。共犯者の中には被告人より年長の甲がいるが、右一連の犯行の発案から実行に至る全過程で被告人が主導的、中心的役割を果たしていたことは否定できず、その犯情は、無期懲役の確定した甲と比較して、より重いものといわなければならない。また、遺族らの被害感情や、社会に与えた影響にも徴すると、被告人がいまだ若年であり、成育環境にも同情の余地があること、一応の反省の態度を示していることなど被告人のため酌むべき一切の事情を考慮しても、その罪責は誠に重大というべきであって、原判決が維持した第一審判決の死刑の科刑は、やむを得ないものとして当裁判所もこれを是認せざるを得ない。)。
よって、同法四一四条、三九六条により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 遠藤光男 裁判官 小野幹雄 裁判官 井嶋一友 裁判官 藤井正雄 裁判官 大出峻郎)