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最高裁判所第一小法廷 平成6年(行ツ)55号 判決 1994年6月16日

広島県芦品郡新市町大字戸手二三八二番地の六

上告人

株式会社ミツボシコーポレーション

右代表者代表取締役

道前伸洋

右訴訟代理人弁護士

品川澄雄

松本重敏

舟本信光

滝澤功治

美勢克彦

同弁理士

宮本泰一

大阪市中央区船越町一丁目四番七号

被上告人

島田商事株式会社

右代表者代表取締役

島田堯行

右訴訟代理人弁理士

小谷悦司

右当事者間の東京高等裁判所平成三年(行ケ)第一五九号審決取消請求事件について、同裁判所が平成五年一一月三〇日言い渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告の申立てがあった。よって、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人品川澄雄、同松本重敏、同舟本信光、同滝澤功治、同美勢克彦、同宮本泰一の上告理由について

所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。右判断は、所論引用の判例に抵触するものではない。論旨は採用することができない。

よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 三好達 裁判官 大堀誠一 裁判官 小野幹雄 裁判官 大白勝 裁判官 高橋久子)

(平成六年(行ツ)第五五号 上告人 株式会社ミツボシコーポレーション)

上告代理人品川澄雄、同松本重敏、同舟本信光、同滝澤功治、同美勢克彦、同宮本泰一の

上告理由

上告理由第一点

原判決は、特許法第三九条第三項、特許法第二九条の二の解釈、適用を誤っており、その違法は結論に影響を及ぼすことが明らかであるから破棄を免れない。

一、即ち原判決は、本件発明を先願考案と対比するに当たり、特許請求の範囲及び実用新案登録の範囲の記載そのものを対比することなく、発明、考案の構成要件の中の一つのみを抽出して対比するという違法な適用をなした結果、各請求の範囲記載の各要件の結合によってもたらされる発明、考案そのものの技術的思想の把握、対比を怠たり、同一性を否定した審決の判断を理由なくして誤りとし、これを取消したもので、明らかに結論に影響する誤りを犯している。

1、もともと立法趣旨が二重特許(重複特許)を排除することにある(注1)特許法第三九条第一項、三項、実用新案法第七条第一項、三項における先後願が同一というためには、技術的思想の異同が客観的に識別されるものでなければならず、客観的なものは発明の構成、即ち請求範囲記載の構成要件とされるところからいって(注2)、「先願と後願の特許請求の範囲に記載された事項を対比するべきものであり、先願の特許請求の範囲の記載内容に表わされた技術的思想を理解するために明細書の発明の詳細な説明の欄の記載を参酌することができるのは当然であるが、他方明細書の発明の詳細な説明の欄の記載からすれば発明の必須の構成とされている事項であっても、特許請求の範囲に全く記載されていない事項を記載があるものとすることはできないのものというべきである」(東京高等裁判所、昭和六〇年(行ケ)二〇五、平成三年二月二七日判決、特許庁公報審決取消訴訟判決集(23)三五〇頁数値制御通電加工装置事件)(注3)。

従って明細書記載以外の事項によって認定するのは論外というに外ならない。

2、然るに原判決は、「先願明細書及び図面には、このような編組織についての明示的な記載はない(このことは原告において自認するところである。)」(三二頁二行乃至五行)としながら、「先願考案において、挿入糸の編組織としてプレンコード編を選択することを積極的に排除しなければならない特段の事由は求められないことを総合すると、」(三二頁末行乃至三三行三行)として明細書の記載以外の事項を掲げ、先願考案を客観的に示す記載としては、後記3項に述べるように、構成要件を示す前提要素に過ぎず、他の結合要件によって明確に限定されている「編目形成糸及び挿入糸により形成された基布」という一般的な技術事項のみを取上げ、本件発明の構成要件Bは、右基布を記載した構成に含まれるものであって上記記載に実質的に記載されているものと認定した(三三頁三行乃至七行)。

3、先願考案の登録請求の範囲は、原判決三〇頁六行乃至一三行に認定されているように、「編目形成糸及び挿入糸により形成された基布に対し」(甲)、「非伸縮性モノフィラメント糸が編幅の両耳における少なくとも1ウェールずつ分離した他のウェールに対し、緯方向に往復挿入されてなり、」(乙)、「ポリウレタン等の伸縮性糸が上下を緯方向の挿入糸により押さえられて、ウェール間又はウェールに挿通されてなり、」(丙)、「耳部のウェールが非伸縮性モノフィラメント糸の耳端の突出部を被覆するように耳部を形成していることを特徴とする」(丁)、「衣料用芯地」(戊)という甲乃至戊の要件の結合によつて構成されているものであり(後記請求範囲対比表参照)、甲は独立して編組織を示す要件ではなく(原判決別紙図面2の第4図、第5図、第6図-先願明細書実施例-によっても挿入糸4、4′、4″は編目(ループ)を形成していないことは明らかであるし、原判決も-『4′は生地中央を連結するための挿入糸であって・・・各ウェールを連結する。』-三〇頁一八、一九行、三一頁二、三行、同頁四、五行とする)、乙乃至丁の諸要件に限定されて全体として「衣料用芯地」を構成する一要素に過ぎない。

つまり、右「編目形成糸及び挿入糸により形成された基布」とは単に先願考案が対象とするものが芯地であることを表明する前提技術を指称しているに止まる前提要素なのである。

4、また、原判決は、本件発明の要旨について、本件特許明細書における特許請求範囲第一項の記載をそのまま引用しながら(二頁一八行乃至三頁九行)、その先後願の対比における技術的意義については構成要件Bとして「各ウェールより1ウェール飛び以上離れたウェールとの間においてジグザグ状に横に振り、各ウェール間に振り糸の重合により重複部分2′を形成」の部分のみを全体の構成と切離して抽出し(原判決三一頁一七行乃至一九行)、一般技術にすぎないプレンコード編であるとの認定に立ち、一方先願考案の実施例である4図、5図、6図(原判決別紙図面2の第4図、第5図、第6図)に記載されている挿入糸4、4′、4″はデンビー編であるとし、その上で本件発明は先願考案に明示的な記載はないが、本件発明は先願考案に実質的に記載されているとしたものである。即ち原判決は、特許請求の範囲の記載自体によることなく判断した結果、「振り糸の重合により重複部分2′を形成」(原判決八頁一七行)するとして編目(ループ)を構成していることが明らかな合繊フィランメント糸2を、(原判決別紙図面一の第1図、第2図、第3図-本件発明実施例を参照すれば、第2図、第3図の重複部分2′を形成している糸2が他方、第1図によって全て編目(ループ)を構成していることが明らかである。)前記先願考案の編目を構成しない「挿入糸に相当する。」(原判決三一頁一五行)として、先願考案と本件発明の構成要件上の違いを看過して同一とする誤認に陥ったものであって、結論に影響を及ぼすこと明らかである(末尾添付別紙技術誤認説明参照)。

5、なお、原判決は、デンビー編及びプレンコード編が周知の編組織であること、いずれの編組織を選択するかは当業者が選択容易なことをあげているが(三二頁一二行乃至二〇行)、進歩性判断についてはともかく、構成要件として明確に相違している先後願の成否に関する発明、考案の異同の判断にかかわる事項ではなく、この点からも原判決が特許法第三九条第三項の適用を誤っていることが明らかである。

二、 原判決の判断が特許法第二九条の二によるものとしても、同条は「特許出願に係る発明が当該特許出願の日前の他の特許出願または実用新案登録出願であって、当該特許出願後に出願公告若しくは出願公開又は・・・・実用新案公報が発行されたものの願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された発明又は考案と同一であるとき」と規定している通り、比較すべき先願の対象が明細書中の請求の範囲の記載にとどまらず、願書に最初に添付した明細書の詳細な説明及び図面の記載に迄拡大されるだけであって、原判決が本件発明の要旨の把握、先願明細書との具体的な技術的思想としての対比の方法についての解釈、適用を誤っていることは、前項一によってすでに明らかである。

1、原判決は前一項で主張した通り、本件発明の特許性の有無として本件発明の要旨、即ち特許請求範囲に記載された各要件により結合された技術的思想としての本件発明が、先願考案明細書に記載されているかどうかを検討すべきであるのに、構成要件Bについてのみ分離して対比しているに過ぎず、特許法第二九条の二の適用を誤っているという外ない。(前一の4、後記上告理由第二点の2参照)(注4)

2、そして先願考案の明細書に記載があるというためには、具体的技術的思想として特定された記載があるということが必要である(注5)。

然るに原判決は「ステッチ糸4と合繊フィラメント糸2からなる本件発明の基布において、合繊フィラメント糸2の編組織は『各ウェールより1ウェール飛び以上離れたウェールとの間において、ジグザグ状に横に振り、各ウェール間に振り糸の重合により重複部分2′を形成』するという構成」(原判決三一頁一四行乃至二〇行)と、本件発明の特徴的部分を具体的構成として取り上げながら、「先願明細書及び図面には、このような編組職についての明示的な記載はない(このことは、原告において自認するところである。)」(三二頁二行乃至四行)として、原判決自体、先願明細書の詳細な説明及び図面に本件発明の具体的構成がないことを自ら認定しているのであるにも拘らず、これに反して出願明細書に本件発明と実質的に同一の記載があると結論づけるのは正に特許法第二九条の二が規定する先願との同一性についての違反を犯しているものである。

3、原判決は先願明細書を検討するに際し、「前掲甲第第一〇号証、甲第一二号証及び第一三号証によれば、デンビー編及びプレンコード編はいずれも先願考案の出願当時周知の編組織であったことが認められること、これらの編組織の態様からして要求される生地の厚さ等を考慮して、いずれの編組織を選択するかは当業者において適宜選択し得る事項と考えられること、先願考案の挿入糸もウェール間又はウェールに挿通された糸の上下を押さえるものであるから、挿入糸の編組織として、デンビー編と同様にプレンコード編が適用できることは当業者において容易に理解し得ることが認めれること、先願考案において挿入糸の編組織としてプレンコード編を選択することを積極的に排除しなければならない特段の事由は認められないことを総合すると、」(原判決三二頁九行乃至三三頁三行)として、恰も進歩性判断のごとくデンビー編及びプレンコード編等の周知事項をとりあげている。

もし、法第二九条の二の適用としての先願との対比として先願考案の明細書の記載を検討する場合に、公知技術、公知性を参酌するのであればこの場合はあくまでも、先願明細書に記載されている具体的記載との対比としてなされるべきは当然である。(注6)

そして、対比の結論も先願明細書中の具体的記載との対比として導かれるべきものである。

然るに原判決が抽象的記載はおろか、自ら全くこれに触れた記載のない事項であることを認めていながら、デンビー編及びプレンコード編の技術事項を恣意に一業者ないし一業界の出願若しくは解説書の記載内容を根拠に取上げ、しかも恰も特許法第二九条二項の適用の如く容易推考性、進歩性に等しい判断材料として、卒然として先願考案の実用新案登録請求範囲中の「編目形成糸及び挿入糸により形成された基布」の構成に含まれるものであって、上記記載に実質的に記載されている(原判決三三頁三行乃至同頁六行)としたことは法第二九条の二の解釈、適用を誤った凡そ違法な判断という外ない。

請求範囲構成要件対比表

本件特許発明の特許請求範囲一項記載の発明の構成要件は次の四要件からなる芯地である。

C、フィラメント糸1

「所要の編巾一杯にわたり両側端に耳部を形成しながら往復編成してなる弾撥性の強い可撥性合繊モノフィラメント糸」

B、フィラメント糸2(原判決の構成要件B)

「各ウェールより1ウェール飛び以上離れたウェールとの間においてジグザグ状に横に振り、各ウェール間に振り糸の重合により重複部分2を形成してなる任意の合繊フィラメント糸」

D、フィラメント糸3

「前記モノフィライメント糸1層に対し前記糸2層と同一面又は多面の少くとも一面において縦方向に挿入してなる適官数のフィラメント糸」

A、ステッチ糸4 (原判決でいう構成要件A)

「前記各糸1、2、3を各ウェールにおいて縦方向に一体に編止めしてなるステッチ糸」

E、右A乃至Dより成る芯地

先願考案(甲第二号証)の特許請求範囲記載の構成要件は、次の要件より成る。

甲 編目形成糸及び挿入糸により形成された基布に対し、

乙 非伸縮性モノフィラメント糸が編幅の両耳における少くとも一ウェールずつ分離した他のウェールに対し横方向に往復挿入されてなり、

丙 ポリウレタン等の伸縮性糸が上下を横方向の挿入糸により押さえられて、ウェール間丈はウェールに挿通されており、

丁 耳部のウェールが非伸縮性モノフィラメント糸の耳端の突出部を被覆するように耳部を形成していることを特徴とする。

戊 右甲乃至丁より成る衣料用芯地

上告理由第二点

原判決は、特許要件の成否を審理する前提としてされるべき発明の要旨認定に関し、特許法第三六条第四項の解釈、適用を誤り、御庁の判例にも違反しており、原判決の結論に影響を及ぼすことが明かであるから、破棄を免れない。

1、原判決は、前項記載の通り、本件発明の要旨認定に当たり、特許請求の範囲第一項の記載をそのまま引用しながら、本件明細書の記載によることなく、「ステッチ糸4(先願考案の編目形成糸に相当する。)からなる本件発明の基布において、合繊フィラメント糸2の編組織は、各ウェールより1ウェール飛び以上離れたウェールとの間においてジグザグ状に横に振り、各ウェール間に振り糸の重合により重複部分2′を形成するという構成(構成要件B。前掲甲第一〇号証によれば、このような編組織をプレンコード編と称することが認められる。)」 (三一頁一四行乃至三二頁一行)として、先願明細書及び甲第一〇号証の記載によって認定するという逸脱した誤りを冒している。

2、最高裁判所昭和六二年(行ツ)第三号、平成三年三月八日第二小法廷判決(民集四五巻三号一二三頁)は、特許法第二九条第一項及び第二項所定の特許要件についてであるが、「特許出願に係わる発明の新規性及び進歩性について審理するに当っては、この発明を同条一項各号所定の発明と対比する前提として、特許出願に係る発明の要旨が認定されなければならないところ、この要旨認定は特段の事情のない限り、願書に添付した明細書の特許請求の範囲の記載に基づいてされるべきである。特許請求の範囲の記載の技術的意義が一義的に明確に理解することができないか、あるいは一見してその記載が誤記であることが明細書の発明の詳細な説明の記載に照らして明らかであるなどの特段の事情がある場合に限って、明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌することが許されるにすぎない。このことは特許請求の範囲には、特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項のみを記載しなければならない旨定めている特許法第三六条第四項二号の規定(本件特許出願については昭和五〇年法律第四六号による改正前の特許法第三六条第五項の規定)からみて明らかである。」としている。

3、先願に関する特許性の前提として欠くことのできない要旨認定についても前記上告理由第一点で述べたように、特許法第三九条第三項もしくは特許法第二九条の二(注4)の趣旨からして全く同様であって、前記1の逸脱した判断は御庁の判例にも明らかに反する違法なものといわねばならない。

上告理由第三点 原判決は理由齟齬、審理不尽であり破棄を免れない。

一、審決は先願考案には構成要件Bが記載されていないことを明言しているのであるから、いやしくもこの判断を違法として取消す以上、先願考案についてはその明細書記載に基づき、先願考案、本件発明それぞれを全体として対比し、その上で特許法第三九条第三項、特許法第二九条の二の先後願の同一性についての認定を行うのでなければならないのに、先願明細書の記載によることなく、本件特許発明の構成要件Bが先願の請求範囲に記載要件の中の一要素に止まる、「編目形成糸及び挿入糸により形成された基布」(甲の要件、以下基布要件という)に包含されるという判断に立って、直ちに本件発明は先願明細書に記載されているとし、審決を違法として取消した判決は理由に飛躍があり齟齬しており、破棄を免れない。

二、原判決の理由の構成は以下の通りである。

(イ) 先願考案の明細書に開示されている挿入糸、編組織はデンビー編である(緯方向挿入糸の編組織として、糸を相隣接するウェール間をジブザグ状に横に振るもの、甲第一〇号証)。

(ロ) 本件発明のステッチ糸4(先願考案の編目形成糸に相当する。)と合繊フィラメント糸2(先願考案の挿入糸に相当する)からなる本件発明の基布における構成要件Bの編組織はプレンコード編である(甲第一〇号証)。

(ハ) 先願考案は「編目形成糸及び挿入糸により形成される基布」とのみ規定し、特定のものに限定していない。

(ニ) 甲第一〇号証、甲第一二号証、甲第一三号証によれば、デンビー編及びプレンコード編は先願考案出願当時周知技術であったことまた、右デンビー編である先願の挿入糸の編組織としてプレンコード編を適用できることは当業者において容易に理解し得ることが認めらること。

(ホ) 先願考案において挿入糸の編組織としてプレンコード編を選択することを積極的に排除しなければならない特段の理由は認められないこと。

以上(イ)乃至(ホ)を総括すると、本件発明の構成要件Bは先願考案の「基布要件」に含まれるのもので先願考案に実質的に記載されていると認めるのが相当である。

(一) 右(イ)(ロ)(ハ)(ニ)(ホ)の理由による原判決理由は、審決が特許法第三九条三項乃至特許法第二九条の二の先後願につき判断しているのに、先願考案と本件発明の対比に当り、原審決が全く判断していない本件発明についての特許法第二九条の要件を独自に判断し、先願考案出願前の周知技術に照らして、本件発明は先願考案に比して進歩性がないとの結論を導きその上で、先願考案と同一であるとして原審決を取消したものにひとしく、明らかに理由に飛躍があり、法律の適用を誤るのもである。

(二) 右判決理由は凡そ特許法第三九条第三項、特許法第二九条の二に基づく審決の判断を取消す理由としては的はずれというほかならない。

(1) まず特許法第三九条三項の適用の下において、先願考案と本件発明の同一性を結論するためには、何よりも、明細書の記載の中から不可欠要件のみを摘出して記載した先願考案、本件発明のそれぞれの請求範囲をこそ各構成要件の結合による不可分一体の各請求範囲として、その技術的意義を対比して結論すべきである(上告理由第一点の一参照)。

また、特許法第二九条の二による同一性の判断としては、「願書に最初に添付した明細書または図面に記載された発明または考案」との同一性によるべきであるのに、判決は先願考案の明細書に基づくことなく周知技術を引用しての判断に立って同一性を導くという誤りを犯している(上告理由第一点の二参照)。

(2) 原判決は先願考案の請求範囲の中から、要件乙に該る緯に振った挿入糸4、4′、4″のみを抽出し、これを先願考案の明細書の記載によることなく、編目形成糸によるデンビー編であるとした上で、先願考案の「基布要件」(甲)は基布の形成について挿入糸の編組織について特定のものに限定してないとしている。

先願考案の請求範囲の乙丙丁戊の要件はとりもなさず、この「基布要件」(甲)を限定する要件そのものであるのに、原判決は一切この点を看過している。

のみならず右のように、先願明細書の記載によることなく認定した一般技術としての、デンビー編とプレンコード編を対比してその相互の互換容易性を認定してこれをもって本件発明と先願考案の同一性の判断の根拠にしている。

これは先願考案との同一性の認定とかかわりない判断理由である。

判決はデンビー編、プレンコード編は要求される生地の厚さ等を考慮して、当業者に於て適宜選択し得る事項というが、これは一般的な分類としてのデンビー編とプレンコード編のみに関しては正しいとしても、デンビー編でもない先願考案の糸4、4′、4″、(乙の要件)を具体的な特定の技術的思想を構成する一要素である本件発明の構成要件Bに容易に置換できるというものでもないし、先願の糸4、4′、4″をプレンコード編に置換するという発想自体が凡そ根拠のない所論である。(別紙技術誤認説明参照)。

(3) 更に判決は先願考案がプレンコード編を積極的に排除しなければならない特段の理由がないと述べている。

これは発明考案は具体的に記載されたその記載に基づいて 先後願の同一性を判断すべしとする特許法第三九条、同第二九条の二の法理を離れて、積極的に排除する特段の理由がないからということを根拠に、先願考案明細書に全く記載のないデンビー編、プレンコード編にについての一般的な技術事項を引用して、先願と本件発明の同一性を導いたことは凡そ理由として飛躍しているものである。

(4) 原判決は審決が判断してるのは、本件発明における合繊フィラメント糸2の編組織である構成要件Bが、先願明細書に記載されているか否か、ということであるとしている(原判決三三頁一六行乃至一九行)。審決の判断は構成要件Bが先願明細書に記載されていない以上、両者が特許法三九条三項、特許法第二九条の二の先後願関係として同一でないことは明白であるとしての判断であることは明らかである。

従って、審決の右判断を取消すに当たり、単に先願考案の中の一構成要件であり且つ極めて上位概念として表現されている「基布要件」に、本件発明の構成要件Bが包含されるということを根拠に構成要件Bが先願考案に実質的に記載されているとしたことは、凡そ失当な飛躍した誤った理由である。

先願考案の甲「基布要件」は、凡そ芯地は「挿入糸」と「編目形成糸」の両者の組合せによって成るものであるという先願発明の対象技術(前提技術、所謂プレアンブル)を表明しているにすぎない要件である。

従って、同じく芯地に関する本件発明が先願考案構成要件中の上位概念として表現されている、右甲「基布要件」に含まれること自体は少しも異とするに当らない。

本件発明の構成要件Bが先願考案の「基布要件」(甲)に含まれるということは、少しもそれ故に本件発明が先願考案の記載に実質的に開示されているという判決の示した理由に連なるものではないことはこの一点のみに着目してみても明らかである。

(5) 結論

一言にしていえば、原判決のいうデンビー編とプレンコード編が容易に置換できるということと、本件発明が先願の「基布要件」に含まれるということは、何ら関連のもたない事項であるし、また本件発明が先願の「基布要件」に含まれるということも本件発明の構成要件Bが実質上先願考案に記載されているという結論を導くことにはならず、結局原判決は先後願を同一とする重要な事項の説示を欠落し、審理不尽であり破棄を免れない。

四、結び

以上の通り、原判決の理由は齟齬し飛躍があり、破棄を免れない。

注の部

注1

<1> 東京高等裁判所、昭和四八年一月二三日判決

(無体集五巻一号一頁)

<2> 東京高等裁判所、昭和四八年一〇月九日判決

(無体集五巻二号四一〇頁)

<3> 東京高等裁判所、平成元年一一月二八日判決

(特許庁公報審決取消訴訟判決集(12)、一三五頁)

注2

前注1の<1>は、「特許法第三九条第一項の立法趣旨が重複特許の排除にあることに照らせば、二個の発明が別発明であるためには、両発明の異なることが客観的に識別されるものでなければならないことが明らかであるから、発明の同一性の有無を判断する基準は右の観点からこれを選ばなければならない。そうだとすると発明の構成は発明を客観的に表現したものであるから、これを基準として発明の同一性の有無を定めることができる。」とする。

同旨注解特許法第二版、上巻三七一頁参照

注3

同旨、吉藤幸朗、特許法概説[第9版]一五一頁乃至一五二頁、注解特許法第二版上巻三六六頁、三六九頁参照

注4

東京高等裁判所、昭和六二年六月一六日判決(昭和五九年(行ケ)第三〇五号)特許庁公報参考審判決集(12)三三六頁は、「特許法第二九条の二は、後願の出願後に出願公告又は出願公開された先願の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載されている発明又は考案と同一の発明についての後願は、拒否される旨を規定とするが、右規定が後願に係る発明の特許性の有無を決定する判断基準としての機能を有することからすれば、右同一性の判断は、後願に係る発明の要旨とされる構成、即ち特許請求の範囲における必須の構成要件と、先願の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載されている発明又は考案をその対象とすべきものであることは明らかであって、」とする。

注5

東京高等裁判所、平成元年一一月三〇日(昭和六二年(行ケ)第四九号)特許庁公報審決取消訴訟集(11)四一六頁は、「特許法第二九条の二は、特許法第三九条により認められた先願の保護の制度を拡大し、特許出願後公告又は公開されたものの最初に添付された明細書又は図面(当初明細書)に記載された発明について、その出願人に先願者としての地位を認め、後に出願されたこれと同一の発明は特許を受けることができないことを定めたものである。かように当初明細書の発明が後願を拒絶する理由となる以上、その記載内容は特定の技術的事項について具体的な技術的思想を開示し、補正又は分割をした場合に、それを特許請求の範囲に記載できる事項に関するものであることが必要であり、当該出願に係る発明の新規性、進歩性を示すための説明資料まだは比較資料とされた従来技術、他の実験例、発明の生成過程における中間物質等記載は、同法条の二により、後願を拒絶できる発明とは認めることはできない。」とする。

注6

東京高等裁判所、昭和六〇年九月三〇日(昭和五八年(行ケ)第九五号)無体財産権関係民事訴訟裁判例集第一七巻三号四二八頁は、特許法第二九条の二の適用について、次の通り判示している。「明細書の記載を解釈するに当たり、その出願前(優先権主張のある場合は優先権主張日前)の公知事実を参酌することは許されないわけではないが、それはあくまで当該明細書自体から知ることができる具体的内容に関連する場合に限られるものと解するべきであって、(中略)極めて抽象的記載についてまで係る解釈をもちこむことはいたづらに明細書の記載内容を技術的に広く認めることとなり、後願者に対する関係で不当に有利に扱うこととなり、相当とは認めがたい。」

以上

技術誤認説明

誤認説明の要点は以下の通りである。

「編目形成糸」とは編目(ループ)を形成する糸(例えば「α」の如く)であるのに対し、「挿入糸」は単に挿入され、編目(ループ)を形成しない糸(例えば「く」の如く)であり、両者は全く異なる構成である。

先願考案の実用新案登録請求の範囲中の「編目形成糸及び挿入糸により形成された基布」が、「挿入糸」及び「編目形成糸」として、両者を明確に区別して記載しているのもこのことを示すものに外ならない。

然るに原判決は「編目形成糸」と「挿入糸」とが芯地(編地)の構成要件としての基本的な差異であることを理解せず、本件発明の構成要件Bにおける合繊フイラメント糸2が「編目形成糸」であり、先願考案の4、4′、4″の「挿入糸」とは構成用件として実質上異なるものであるにもかかわらず、一般技術の編目形成糸であるデンビー編と、同じく編目形成糸であるプレンコード編は当業者が適宜選択し得るという前提に立ち、先願考案の挿入糸である4、4′、4″をもって、編目形成糸であるデンビー編であると誤認し、その上で先願考案においても、プレンコード編を選択することを積極的に排除しなければならない特段の事由は認められないとして、本件発明の構成要件Bは先願考案の「編目形成糸及び挿入糸により形成された基布」なる構成に含まれるとし、先願考案に実質的に記載されていると誤って判決している。

しかし、前述のとおり先願考案の「挿入糸」は「編目形成糸」ではないし、デンビー編でもない。従って、デンビー編とプレンコード編が編目形成糸として、一般技術としてたとえ当業者において適宜選択し得るものであったとしても、先願考案の挿入糸を編目形成糸であるプレンコード編に置き換えることはできないのである。

そもそも上述の通り、先願考案の4、4′、4″は、デンビー編ではないのである。

本件発明の構成要件Bが、先願考案に実質的に記載されているとした原判決は芯地の構成要件の誤認の上に立つ判決に外ならない。

以下詳述する。

一、「編目形成糸」とは編目(ループ)を形成する糸であるのに対し、「挿入糸」は単に挿入され、編目(ループ)を形成しない糸である。

右は文言上明確であることはもとより、原判決が引用、添付している甲第七号証の実施例の図である原判決別紙図面2の第4、5、6図(本書末尾にも添付している)にも明確に記載されている。

すなわち、原判決別紙図面2の第4、5、6図の図中で編目形成糸とされる符号3の糸は(「α」の様に)編目(ループ)を形成しているのに対し、挿入糸とされる符号4、4′、4″の糸は(「く」の様に)いずれも単に挿入されるだけであり、編目(ループ)を形成していない。

二、「デンビー編」、「プレンコード編」はいずれも編目を形成する「編目形成糸」である。

1 「デンビー編」について

原判決は「デンビー編」について以下のとおり認定している。

「先願考案の明細書及び図面に具体的に開示されている挿入糸の編組織はいわゆるデンビー編(緯方向挿入糸の編組織として、糸を相隣接するウェール間をジグザグ状に横に振るものをデンビー編と称することは、前掲甲第一〇号証より認める。)であると認められる。」(原判決三一頁八乃至一三行)

原判決が引用する甲第一〇号証Ⅱ-59図には、デンビー編として編目(ループ)を形成する糸、すなわち編目形成糸が図示されている。

しかし、先願考案の明細書及び図面に開示されている挿入糸は、原判決別紙図面2第4、5、6図の4、4′、4″(本書末尾にも同一の図面を添付した)であるが、図からも明らかなとおり、いずれも単に挿入されているだけであり、編目を形成していない。

そもそも編目形成糸であるデンビー編は挿入糸ではないのであり、「先願考案の明細書及び図面に開示されている挿入糸の編組織はいわゆるデンビー編(・・・)である」という原判決の認定は誤りである。

2 「プレンコード編」について

原判決は「プレンコード編」について以下のとおり編目形成糸であることを認定しており、この認定は正しい。

「合繊フイラメント糸2の編組織は、『各ウェールより1ウェール飛び以上離れたウェールとの間においてジグザグ状に横に振り、各ウェール間に振り糸の重合により重複部分2′を形成』するという構成(構成要件B。前掲甲第10号証によれば、このような編組織をプレンコード編と称することが認められる。」(原判決三一頁一六行乃至三二頁一行)

右原判決が引用する甲第一〇号証Ⅱ-61図、Ⅱ-62図には、プレンコード編として編目(ループ)を形成する編目形成糸が図示されている。

三、しかるに原判決は以下のとおり「編目形成糸」と「挿入糸」を誤認混同し、「挿入糸」を「編目形成糸」である「デンビー編」と誤って認定している。

1 「上記認定の事実によれば、先願考案の明細書及び図面に具体的に開示されている挿入糸の編組織はいわゆるデンビー編(・・・)であると認められる。」(原判決三一頁八乃至一三行)

前述のとおり「挿入糸」は単に挿入され、編目(ループ)を形成しない糸であるから、編目形成糸であるデンビー編ということはあり得ない。

正しくは右原判決がいう挿入糸4′は編目(ループ)を形成しておらず、デンビー編ではない。挿入糸4′が編目を形成していないことは、原判決別紙図面2第4、5、6図(甲第七号証第4、5、6図、本書末尾にも同一の図面を添付した)に明確に記載されている。

これに対して、デンビー編が編目を形成している「編目形成糸」であることは前述のとおり原判決が引用する甲第一〇号証Ⅱ-59図デンビー編に明確に記載されている。

2 「・・・合繊フイラメント糸2(同じく挿入糸に相当する。)からなる本件発明の基布において、合繊フイラメント糸2の編組織は、『各ウェールより1ウェール飛び以上離れたウェールとの間においてジグザグ状に横に振り、各ウェール間に振り糸の重合により重複部分2′を形成』するという構成(構成要件B。前掲甲第10号証によれば、このような編組織をプレンコード編と称することが認められる。)」(原判決三一頁一五行乃至三二頁一行)

原判決は右のとおり、合繊フイラメント糸2を挿入糸であると認定しているが誤りである。

正しくは合繊フイラメント糸2は編目形成糸である。このことは原判決別紙図面1第1図(甲第二号証第1図、本書面の末尾に同一の図面を添付した)には合繊フイラメント糸2が編目(ループ)を形成していることが明確に記載されていることから明らかである。

なお、原判決が「合繊フイラメント糸2」を「プレンコード編」と認定した点は前述のとおり正しい。

3 「先願考案の実用新案登録請求の範囲においては、基布の形成に関して、上記のとおり『編目形成糸及び挿入糸により形成された基布』とのみ規定し、基布を形成する挿入糸の振り方、すなわち挿入糸の編組織について特定のものに限定しているものではないこと、前掲甲第10号証、甲第12号証(・・・)及び甲第13号証(・・・)によれば、デンビー編及びプレンコード編はいずれも先願考案の出願当時周知の編組織であったことが認められること、これらの編組織の態様からして、要求される生地の厚さ等を考慮していずれの編組織を選択するかは当業者において適宜選択し得る事項と考えられること、先願考案において、挿入糸の編組織としてプレンコード編を選択することを積極的に排除しなければならない特段の事由は認められないことを総合すると、本件発明の構成要件Bは、先願考案の実用新案登録請求の範囲中の『編目形成糸及び挿入糸により形成された基布』なる構成に含まれるものであって、上記記載に実質的に記載されているものと認めるのが相当である。」(原判決三二頁五行乃至三三頁七行)

原判決は右のとおり、先願考案の挿入糸を編目形成糸であるデンビー編であると誤って認定し、しかる後に編目形成糸であるデンビー編と同じく編目形成糸であるプレンコード編は当業者が適宜選択し得るので、先願考案においてもプレンコード編を選択することを積極的に排除しなければならない特段の事由は認められない、としている。

しかし、正しくは前述のとおり先願考案の挿入糸は編目形成糸ではないし、デンビー編でもない。従って、先願考案の挿入糸がデンビー編ではない以上、デンビー編とプレンコード編が編目形成糸としてたとえ一般技術としては、当業者において適宜選択し得るものであったとしても、先願考案の挿入糸4、4′、4″を編目形成糸であるプレンコード編に置き換えることはできない。

よって、本件発明の構成要件Bの「各ウェールより1ウェール飛び以上離れたウェールとの間においてジグザグ状に横に振り、各ウェール間に振り糸の重合により重複部分2′を形成する」任意の合繊フイラメント糸2が編目形成糸、プレンコード編なのであり、先願考案は「挿入糸」に過ぎないのであるから、この構成要件Bが、先願考案の実用新案登録請求の範囲中の「編目形成糸及び挿入糸により形成された基布」なる構成に含まれる余地は全くない。

四、「挿入糸」と「編目形成糸」が芯地の構成の差として実質上の差であること

1 前述の通り「挿入糸」は単に挿入するのみで、編目(ループ)を形造らないのに対し、「編目形成糸」(本件発明の糸2)は横振りの両端で編目(ループ)をつくり、編地を形成すると共に経緯の糸を相互に固定する役目を果たす。

つまり、「挿入糸」は「挿入糸」だけでは、編地にならず、補助的な役目(先願考案の挿入糸4′は単に生地中央部を連結するだけである)を果たすのに対して、編目形成糸は編地そのものを形成すると共に、挿入糸である糸1を編み止めし、更に芯地全体の形状を固定し、使用中の伸縮を制限するという機能を合わせもつものである。

本件発明の請求範囲の構成は次の通り、各糸について「フィラメントの種別」及び「挿入糸か編目形成糸かの別」を明確に要件とし、それらの結合として記載している。

これは挿入糸か編目形成糸の別が芯地としての本件発明のもつ作用効果を達成するために不可欠な構成であるからに外ならない。

糸1(挿入糸) 弾撥性の強い可焼合繊モノフィラメント

糸2(編目形成糸) 任意の合繊フィラメント

糸3(挿入糸) 適宜数のフィラメント

ステッチ糸4 (鎖編)

(編目形成糸)

即ち、糸1、糸3の挿入糸、緯糸である鎖編みのステッチ糸4がそれぞれ芯地として所期の作用効果をもちうるのはプレンコード編である糸2が編目形成糸だからである。

本件特許の編目形成糸2を先願考案の4、4′、4″の如き挿入糸に置換えたときは、ステッチ糸4(鎖編)のみが編目形成糸となってしまい、合繊モノフィラメント糸1の糸が平滑のため、ステッチ糸4の編目が摺動して目ずれを起こし、実用に供し得ないことなる。

更に、緯方向の芯地の形状を規制する編目がなくなってしまい、本件発明が特徴とする明細書記載の適度の柔軟性、優先性、保形性、体部へのフィット性等の作用効果(公報三欄三七行乃至四一行、四欄二一行乃至三十三行)もすべて達成できなくなってしまうのである。

2 先願4、4′、4″の「挿入糸」と本件発明2の「編目形成糸」との差が単なる形式上の相違点ではなく、実質上の差であることは以上の通り明確である。

五、 原判決は、先願考案の「挿入糸」を「編目形成糸」であるデンビー編であると誤って認定し、その結果、本件発明の構成要件Bは先願考案の「編目形成糸及び挿入糸により形成された基布」なる構成に含まれるとした上で先願考案に実質的に記載されていると誤って判決したものである。

以上

(添付図面-原判決添付と同一-省略)

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