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最高裁判所第一小法廷 平成7年(あ)891号 決定 1998年10月21日

本籍・住居

東京都国分寺市西町三丁目八番地八

税理士

宮入本一

昭和七年六月一四日生

右の者に対する法人税法違反被告事件について、平成七年八月九日東京高等裁判所が言い度した判決に対し、被告人から上告の申立てがあったので、当裁判所は、次のとおり決定する。

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人五三雅彌、同後山英五郎の上告趣意は、事実誤認の主張であって、刑訴法四〇五条の上告理由に当たらない。

よって、同法四一四条、三八六条一項三号により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 遠藤光男 裁判官 小野幹雄 裁判官 井嶋一友 裁判官 藤井正雄 裁判官 大出峻郎)

平成7年(あ)第891号

上告趣意書

被告人 宮入本一

上記の者に対する法人税法違反被告事件についての上告の趣意は、下記の通りである。

平成7年11月20日

弁護人 五三雅彌

同 後山英五郎

最高裁判所

第一小法廷 御中

1、原判決には、判決に影響を及ぼす重大な事実の誤認があり、原判決を破棄しなければ、著しく正義に反すると認められるので、原判決を破棄の上、本件を東京高等裁判所へ差し戻す、との判決を求めるものである。

以下に、その具体的詳細を指摘する。

2、先ず、第一に指摘しておかなければならないこととして、

(1) 原判決は、被告人宮入は、「会社の経理事務担当者の渡部から受取った仕入、売上、在庫のリスト等を基に」昭和62年10月下旬ころ、相被告人であった鈴木昭三(以下、単に鈴木という。)に対して、すずや建設株式会社(以下、「会社」という。)の昭和62年9月期の「決算に関する試算表、および、同期の利益を分かり易く記載したメモを作成し、これを鈴木に示して、経常利益が21億円余になることを説明したこと、鈴木は、宮入に対し、納税額が2億円程度の申告書を作って欲しいと依頼し、宮入は、当初渋ってはいたものの、結局これを受け入れ、右依頼に沿う方向で、利益圧縮の操作をすることを承諾した」と認定し、(原判決7枚目裏)この時期において、鈴木との法人税逋脱の共謀が存したとの事実認定に立脚し、この誤った認定を前提として、その後に行われた、宮入の会社の諸経費の集計等について、「数額の一部除外や過大・架空計上などの方法による殊更なる利益圧縮操作を行った」と認定しているのであるが、そもそも、この前提判断それ自体が事実の誤認であり、その全く曇った色眼鏡を通して、以後の被告人宮入の行った集計行為を、事実経過を全く正確に判断することなく、利益圧縮工作であると決め付ける論理を展開しているのであって、その一連の判断過程は、すべからく誤りそのものなのである。

(2)被告人宮入の、本件における会社の決算申告に向けての集計行為の実態は、本件における控訴趣意書に記述した通りであり、その記載内容、および、これに関する被告人宮入の意見を、原審における平成7年7月11日付被告人宮入の陳述書(資料添付済み)の各記載内容を、具に検討すれば、明らかになるはずであるのに、原判決は、これを全くと言っても過言ではないように吟味せず、叙上のように、本件は、鈴木と被告人宮入の共謀によって、すべてが進められたとする前提判断から、この陳述書、および、その裏付けの資料をまともに、深く検討することもせず、後記のように、控訴趣意書で弁護人が述べてもいないことを、恰も主張しているごとく曲解するなど、その判断経過は、杜撰としか言いようのないものである。原審では、控訴趣意書提出後10ケ月余も控訴審の公判期日を開かず、しかもわずか二回(実質的審理は1回の)で、原判決の言渡しをしたのであるが、この間の証拠検討など、まともにしていたか否かについて、多大の疑問なしとしない。

上告審においては、この被告人の陳述書、および、その添付資料についても充分に精査検討を願いたい。

(3)そして、上記のごとく、原判決は、誤った前提結論に立脚し、その前提判断を崩さないような論理を展開しているのであるが、これが、明らかに誤ったものであることは、下記の一事をもってしても、明白である。すなわち、

(イ)原判決の認定するように、「税理士として、本件業務に関与し、関与の態様如何によっては、自らの税理士登録の抹消にも繋がる」のであって、最初「渋っていた」被告人宮入が、会社のために、同期の会社の決算につき、巨額、かつ、加大な利益圧縮に加担しなければならないという、動機形成の合理性は、本件では、全く無い。

(被告人宮入には、原審で提出ずみの、平成7年7月11日付陳述書の27頁に記述したように、平均以上の顧客数を保有していたところであり、会社から受け取った、会社決算に伴う金50万円の金員は、国税当局からも正規の「決算報酬」として認知され、違法な支出として損金性を否定されていない点を、充分に銘記すべきである――上記陳述書27頁表)

殊に、被告人宮入は、控訴趣意書「10、土地重課税の算出について」と題する部分(28頁以下参照)に詳述したように、昭和62年になって、出席した各種税務講習会において、講師として招かれた税務署職員から、「今年度は、土地取引関係業者については、重点的に税務申告をチェックする」と、繰り返し聞かされており、これにもとづき、会社の経理担当者である渡部に対し、正しい経計処理をすることを進言するとともに、早急な修正申告を会社側で行うという確約を得て(渡部も第一審、第二回公判で「申告後に修正申告を出さなければならないのでその作業をする話しが宮入からあって、そういう話も含めて正しい経理処理をやろうかということで、見直し作業をはじめた」ことを認め、原審尋問でも、相被告人鈴木は、被告人宮入のこの申出を、事実上承認した。)、会社の法人税申告書の写しを、会社が、取引銀行から、借入れ申込みのための資料として必要と言われているということで、取り敢えずこれを提出したものである。

(ロ)上記(1)の原判決の認定するように、被告人宮入が、鈴木と本件逋脱を共謀していたとのことであれば、被告人宮入は、その税法、および、経理に関する専門的知識と経験を駆使して、鈴木から示された、いわゆる「損益書A」をもとに、結論として、下記差引利益図のうち、納税額2億円となる経常利益算出のために、一枚の用紙上で、各勘定科目の数字を、単純に手作業で調整すれば事足り、一々、各勘定科目の数字を集計したり、不足の資料を提出させたりする必要など全く無かったし、鈴木自身も、この最初の段階でなされたと認定された「共謀」にもとづき、鈴木自身、もっと積極的に、しかも早急に、被告人宮入に対して、この最後目標達成のための、数字合せ、および、そのための資料の調整を行えば、申告期限内の申告は、優に間に合わせることもできたはずなのに、本件では、このような働きかけを被告人宮入には、何ら行った形跡は全くないし、加えて、「損益書A」のみならず、その「B」、「C」など、被告人宮入に見せてもいない「損益書」や、後記のように何の役にも立っていない「損益書D」――これは、申告期限である昭和62年11月30日の2日前の11月28日に作成されたことになっている――を、わざわざ作らなければならなかった合理的必要性も、全く皆無だったのである。

差引利益図

<省略>

(ハ)そして、プロ中のプロである被告人宮入は、自ら関係して提出した会社の申告書に対する税務署のチェックが行われるのが必定との認識の上に立っていたことは、上述した通りである。原判決7枚目裏に認定しているように「当初渋っていたものの結局これ(納税額が2億円程度の申告書の作成)を受け入れた」とする以上なおさら、そのチェックに対する対応を、当然に考えるのが最も自然の成り行きであり、一方では会社内部において、金2億円の税額支払いということで、会社の利益逋脱のために算出した経常利益に見合う資料だけを残し、その余の分を除外するなどの隠蔽工作を行い、他方では、取引の相手方と通謀して、反面資料となりうるものを隠すなどの、口裏工作の打合せを行わせる指示をするなど、プロとして、税務署のチェックに対する対応を、予め行うといった手段をとるであろうことも、極めて常識的に推認されるところである。

(ニ)しかしながら、本件全証拠を調査しても、この当然あるべき工作についても、被告人宮入には、上記(ハ)のごとき行動を取ったあと始末の形跡は全く皆無であり、このことは、平凡なことながら、本件においては、極めて重大であり、この一事をもってしても、被告人宮入において、鈴木との逋脱の共謀が無かったことは明白であると判断されて然るべきである。

(ホ)被告人宮入は、少ない限られた事務用員を使い、会社のために、割ける限られた時間を費やし、会社から与えられた資料をもとに、正確と思われた数額を集計し、当期の勘定科目に入れられるべきものは入れ、来期分に該当すると思料されるものについては、来期分として除外するなどして、誠実に集計した(人的、時間的制約のために、その過程において、結果として、誤集計があったとしても、鈴木との上記共謀とは、何の関係もない。)ところである。

(4)なお、本件における、鈴木、渡部、および、渡部の行動・主張の概要を参考までに図示すると、別表記載の通りである。

(註)※は「共謀」の争点部分である

<省略>

3、以上の通り、被告人宮入には、鈴木と本件逋脱を共謀しなければならない、そもそもの合理的必要性は全くないばかりか、共謀した場合のその発覚を免れるための資料の隠蔽、加工、取引相手方への働きかけ等の工作を、全くしていないのであって、この一事をもってしても、税務の専門家である被告人が一枚加わった逋脱という場合、通常の常識では、到底上記「共謀」があったとは考えられない。

以下に、具体的資料にもとづき、共謀の事実の無かったことを、更に明確にする。

(一)被告人宮入には、鈴木との共謀の事実が無い。

<1>会社は、決算申告のための正確な資料を被告人宮入に提出していない。

宮入試算表のもとになった「渡部リスト」は、正しいものではなかった。しかしながら、一・二審ともに、この「渡部リスト」は正しいものとの前提を踏襲し、これを墨守し、被告人宮入の主張の排斥を計っている。

しかしながら、この「渡部リスト」と本件税務申告後に、修正申告用に集計し直した「修正リスト」ならびに、これらリスト項目についての国税当局の算定額の比較をした表は、下記の通りである。

渡部リスト、同修正リスト、国税当局の多数額比較表(円)

<省略>

(註)(1)(A)の渡部リストは、被告人宮入に交付され、「宮入試算表」の資料となったものである。

(2)(B)の修正リストは、第一審提出の証拠番号73の渡部の供述調書に添付されたものであって、同調書で「昭和63年9月期のすずや建設の決算の期首となる同62年10月1日現在の試算内容を明らかにしておこうということになって、同62年9月期の決算内容をチェックしたものです。」と調書上はされているが、実際には、後記のように、被告人宮入が、渡された資料だけによっては正確な申告ができないので、早急に会社の資料を見直し、修正申告を為すという提言に対し鈴木、渡部がこれを確約したことにもとづき、実行されたものであって、この早期の修正申告という点については渡部は第一審公判でこれを認め、原審において、鈴木は、同人作成のメモにもとづく尋問で、この修正申告の確約を否定することができなかったものである。

上記の表を対比すれば、直ちに判るように、原判決で、「正しい」ものと認定されている(A)の渡部リストは、被告人宮入の申告前の「早急なる修正申告」についての提言を、鈴木、渡部が確約したことにもとづく、(A)リストの見直しによって正しいとされる(B)の修正リストが出来上がったが、それも、国税当局の調査(C)によって、その正確性が否定されるといった具合に、(A)の渡部リストは、もともと正しいものではなかったのである。

この各上記の相違は、単なる数字上の誤差なのではなく、その各内容自体において相違が生じ、これを集計した結果が、上記差として表面化していることに充分注目しなければならないのであるが、原判決は、上記の相違それ自体に目もくれようともしていないのであって、その不当なことは、多言を要しないところである。

なお、(B)の修正リストへの実行について、渡部は、上記検面調書では、被告人宮入より申付けられた「修正申告」のことを一切触れていない。これを検察官の前で供述することは、渡部が被告人宮入に渡した会社の仕入、売上、在庫の各リスト、もともと、すでにがでたらめなものであったことを自認する結果をもたらし、捜査当局より、少くとも鈴木との共犯の嫌疑をかけられることは、目に見えていたからにほかならない。

このように見てくると、後述する、鈴木から渡部のみに対する不当な金11億7,822万円の仕入計上の指示の点を加味するならば、本件において渡部は、刑事責任を追及されても、少しもおかしくない立場にあったことは容易に推認できるところであり、それだからこそ渡部は、修正リストの作成意図を、上記検面調書上もごまかし通したのである。原判決は、この渡部の捜査当局に対する基本的な行動態様に、何らの注意も払わなかったため、結果として、表層的な「共謀」の誤認に陥っていることを、ここに指摘しておく。

<2>以上のように、会社の経理事務担当者である渡部リストは、もともと正しいものではなく、被告人宮入は、最初から正しい資料を会社側から与えられてはいなかったものである。

以下に、一審・二審を通じて、最も問題とされている仕入を重点として、会社側より渡部を通じて渡された資料をもとに、以下に、被告人宮入に渡された「渡部リスト」が、もともとの正しくなかった点を詳しく検討し、原判決の認定の不当性をさらに指摘する。

<3>「渡部リスト」の集計仕入高金315億5,277万7,200円(下記表(註)これは、渡部のH3.10.11付検面調書添付資料1の1に記載されているものである。なお、鈴木の損益書Aでは、金319億1,861万円となっていて、これから渡部リストの集計仕入高を差引くと、3億6,584万円となり、渡部リストはこの分だけ仕入資料がはずされていることに帰し、会社内部で、被告人宮入とは無関係に、すでに最初から手がつけられて工作されていたことが明らかである。)は、明らかに正しいものではなかったのであり、これは、会社の税務申告後に、被告人宮入の指示に従い、渡部が、会社に存した被告人宮入にも見せていなかった、売買契約書等の仕入資料を加味して算出した結果の修正仕入高は、金325億4,121万6,200円(下記表)となっていて、後に渡部は前記「渡部リスト」について、実に金9億8,843万9,000円()もの増額修正することになっている。これだけの差額が生じた基となった「渡部リスト」の仕入額が、正しいものだった、とどうして言えようか。この修正仕入高の変動額からするならば、最初の出された「渡部リスト」の仕入高は、一体どういう意図のもとに、しかも、どのような経過で提出されたものかについて、本件の鈴木らの当初の意図が奈辺に存したのかを究明する上で、絶対に欠かすことのできない究明検討課題の筈であったにも拘らず、これに関する捜査は全く為されていないし、一審・二審を通じて、何の検討・判断もされていない。

殊に、被告人宮入のように専門家とは言え、同人、および、補助事務員だけの事務所で、しかも、他の顧客との事務対応を迫られるといった限られた時間内で、与えられた資料をもとに、何らの強制調査権もない被告人宮入が、自らの正しいとする判断に立脚して分析、集計したのとは異り、国家権力の総力をあげて反面調査等あらゆる角度から調査検討を加え、最終的に正しいとされた仕入高は、金321億5,577万9,677円(下記表)であるが、これと、上記渡部の修正仕入高との差額(同表)は、金3億8,543万6,523円であって、この修正仕入高は、それだけ減額されるものの、当初の「渡部リスト」のそれに比し、金6億0,300万2,479円(同表)増額されたものが、正当とされる数額ということに帰する。

仕入高の比較表 (資料5修正損益計算書 資料13 第10期P/L により作成)

<省略>

<4>上記表の差引計算額を列挙すると、

(イ)=13億1,200万円

(別表(1)参照、なお、この色の説明は、別紙(一)参照)

(ロ)=9億8,843万9,000円

(別表2参照、なお、この色の説明は、別紙(二)参照)

(ハ)=3億2,356万1,000円

(別表3参照、なお、この色の説明は、別紙(三)参照)

(ニ)=3億8,543万6,503円

(別表4参照、なお、この色の説明は、別紙(四)参照)

(ホ)=7億0,899万7,503円

(別表5参照)

となるのであって、真に問題とされるべきものは、上記表と同との比較ではなく、上記のように国税局の総力をあげての調査によって、最終的に正しいとされた同と同との差額である金7億0899万7,503円なのであって、この差額が生ずる中に、鈴木との共謀を含めて、被告人宮入りの本件逋脱の意図が看取できるか否かということに帰するのである(一・二審ともに上記「渡部リスト」が正しいとする絶対的立場に立っているのであるが、上記のように、それは間違いであることは明白である。)

そして、この差が生ずる原因の詳細については、別表(1)ないし(5)記載の通りである。

<省略>

(一)

<4>の(イ)は、別表(1)BとCの比較として、次のように色付けした。

(イ)被告人宮入が、申告書作成に先立って調査した際には、売買契約書が無かったもの(桃色)。

渡部リストには有ったものの、決算書作成までの時点で契約書が見当たらなかったために、仕入高に計上しなかったものである。そして、これは、仕入の減額となり、当期利益が増加する結果をもたらす。本件にいう脱税とは、反対方向の処理となっているものである。

<ロ>渡部リストには計上されていないが、後に契約書が会社から提出されたもの(黄色)。これは、仕入高がプラスとなり、当期の利益が減少する結果となるが、正しい方向への修正である。

<ハ>契約書が存在し、その最終残代金支払いの定め時期よりして、当然、残代金の入金が済んでいるものと被告人宮入は判断をし、仕入に計上したところ、後になって、申告後最終残金の支払いが為されなかったため、仕入に計上すべきでなかったとされたもの(青色)。(これによって、結果的には、仕入高がプラスになり、当期利益は減少することになる。この点につき、原審では、「宮入による架空計上」を誤認しているが、この事実は、一審で証拠に提出されている、平成元年4月11日付大蔵事務官作成の物件別取引明細調書と、決算書の付属書類中の棚卸資産の内訳書、売上高内訳書等によって、証明されているところである。)

<ニ>渡部リストの期末棚卸在庫にあったので仕入に計上したもの。報告書No.324~315(6件)合計金11億8,815万8,000円(仕入高に追加計上)報告書No.324~327(5件)合計金30億5,294万円(仕入高から減額)差額18億6,432万2,000円が仕入高の減額、利益の増加となる。これは、例え、宮入の事務処理のミスとしても、利益増額へつながり、脱税工作にはなり得ないものである。

<省略>

(二)

<4>の(ロ)は別表(2)BとDの比較として、次のように色付けした。

<イ>渡部リストの作成時には契約書が存在せず、渡部の見直し時までに契約書が発見された(黄色)

<ロ>渡部リストの見直し時、渡部リストの記入ミスが判明した(橙色)。

<省略>

(三)

<4>の(ハ)は別表(3)CとDの比較として、次のように色付けした。

<イ>被告人宮入が申告書作成に先立って調査した際には、売買契約書がなかったもの(桃色)

渡部リストにはあったものの、決算書作成までの時点で契約書が見当たらなかったために仕入高に計上しなかったものである。そして、これは、仕入の減額となり当期利益が増加する結果をもたらす。

<ロ>決算書の作成時までには契約書が会社から提示されず、渡部が「渡部リスト見直し時には契約書があったもの(黄色)は、仕入高が減少となり、当期の利益が増加する結果となる。

<ハ>契約書が存在し、その最終残代金支払いの定め時期よりして、当然、残代金の入金が済んでいるものと被告人宮入は判断し、仕入に計上したところ、後になって、申告後最終残金の支払いが為されなかったため、仕入に計上すべきではなかったとされたもの(渡部が「渡部リスト」の見直しの際、前記のことが判明し削除した場合を含む)(青色)。

仕入高がプラスになり、当期利益は減少することになる。

ただし、期末在庫に計上しているので、結果的に利益の増減には影響が全く無い。

<ニ>渡部リストの期末棚卸在庫にあったので仕入に計上したもの。報告書No.311~315(6件)。

合計金11億8,815万8,000円(仕入高に追加計上)。報告書No.324~327(5件)。

合計金30億5,294万円(仕入高)から減額。差額18億6,432万2,000円が仕入高の減額、利益の増加となる。

<ホ>渡部リスト等の誤記その他(橙色)

<省略>

(四)

<4>の(二)別表(4)AとDの比較として、次のように色付けした。

<イ>契約書が存在し、これにもとづく、その最終残代金支払いが確定しているため、当然に、残代金の入金が済んでいるものと渡部は判断をし、仕入に計上したところ、後になって、申告後最終残金の支払いが為されなかったことが判明し、当期の仕入に計上すべきでなかったとされたもの(青色)。

<ロ>会社の支払った迷惑料、造成費、立退料について、国税当局は、仕入に該当するものと判断し、仕入高が増加したが、会社側では、これらを外注費として計上した。その他、渡部の計上ミスの場合を含む(緑色)。

<省略>

この表の中で、最も重要なのは別表(5)であって、この点については、特に後述するが、結論を先に述べるならば、原審の判断は、ここでも明らかに事実を誤認しており、この誤認は、叙上のように、被告人宮入には、鈴木との間で、当初からの本件逋脱の共謀があったとする全く曇った色眼鏡を通して、本件各証拠を捉えた結果にもとづくものなのである。

<5>なお、原判決では、「宮入が21億円という数字を・・・その後の操作の出発点としたことは動かない事実であり、最終的に、修正損益計算書の当期利益に当たる金額を2億6,024万3,381円と算出して・・・本件法人税確定申告書を作成・提出しているのであるから、その間の金額の操作に、合理的な説明がつかない限り、意図的に除外、計上等の操作をして、利益の圧縮工作をしたものとみるほかはない」という前提をとっている。

しかしながら、この前提それ自体も誤っているのである。すなわち、損益書Aを交付された被告人宮入は、自宅兼事務所にこれを持帰って、計算した結果の宮入試算表を作成し、上記21億余の数字を出したことは事実であるが、これは、単に、損益書Aからする計算では、鈴木の言っているような2億円余には、なりっこないということを、数字で明確に示すためだけの目的で記述された数字であって、被告人宮入において、この数字を第一審、および、原審判決の言っているような最終目的とする金2億円余の経常利益に押さえるために、各勘定科目における数額を、正当と思料される根拠に依拠することなく、ただ勝手気ままに、単なる数字上の変更を加えたこのような事実が存するならば、正に判決でいう「操作」そのものと言えよう。しかし、被告人宮入には、上記21億余円について、上記のような、単なる数字の変動を行ったという事実は全くなく、右試算表と関係なく、会社にある全資料の提出を求め(しかし、全部の資料が渡されず、しかも、渡された資料も、内容が不詳、あるいは、正しいものではなかった)、それを独自に分析、集計をし、まとまった積算数額をそれぞれ計上して行っただけであって、その間の各数字の積算の経過に鈴木、あるいは、渡部の意思は、全く介入しないばかりか、被告人宮入は、客観的資料を離れた数字の操作をした事実は皆無なのである。

原判決の言う「21億円という数字を・・・その後の操作の出発点とした」という表現は、言葉を替えて言えば、「21億円という数字をもとに鈴木と共謀した結果、何の合理的根拠もなく、単に数値を動かすように計った」ということに帰するものであって、原判決は、結局は、事実関係あるいは、数値関係の実態を正視するという客観的態度を忘れ、被告人宮入は、鈴木との共謀によって、本件逋脱を計ったという色眼鏡で、被告人の行動を最初から理解していたという、何よりの証左なのである。

<6>上記<2>の各数額の相違が発生した根本的原因は、今期は、前記までの事業内容と様相を全く異にし、不動産取引のおびただしい数をこなしていたのに、会社では、取引台帳はおろか、所定の会計帳簿も全く不整備で、鈴木は、独自の記帳はするものの、会社の経理担当者との連繋は不徹底極まりないといった、どんぶり勘定そのものであって、当期の決算を求められた被告人宮入は、会社の仕入額の積算について、経理担当責任者の渡部を介して、会社から予め渡されていた契約書をもとにして自己の判断で作成を続けて来た「物件台帳」を基礎として、会社側より渡された渡部リストの照合作業という方法をとらざるを得なかった。

しかしながら、この渡された資料内容に、その後変更(例えば、キャンセル、値引)があったことなどについての正しい内容の連絡は、全く為されず、被告人宮入は、自分の目で見た資料より作成された「物件台帳」の正確性については、何らの疑問も感じなかったのであった。

この点、強制捜査能力のある国税当局が、組織を上げて、取引の相手方に対する反面調査を加味するなどして、調査するのと違い、会社側の協力を期待できず、人的にも時間的にも制約された状況下において積算しなければならなかった被告人宮入の調査には、自ら限界があったことは事実なのである。

しかしながら、被告人宮入は、この仕入高の積算過程において、ことさら、作為的な意図のもとに積算そのものに手を加え、会社の利益計算に逋脱のための操作を加えたりなどは、全くしていないところである。

そして、参考までに、被告人宮入の行った売上高集計の作業と、国税局の行ったそれ等を対比して図指すると、次の通りとなる。

<省略>

<7>殊に、決算書における仕入高と国税局算出のそれとの差額は、<4>の(ホ)に記したように、金7億0899万7,503円前者の方が多い。

これは、原審において提出した陳述書資料を、別表(5)として色付けしたように

(イ)被告人宮入が、申告書作成に先だって調査した際には、売買契約書が無かったもの(桃色。渡部リストにはあったものの、決算書作成までの時点で、契約書が見当らないと言われその提出が無かったために仕入高に計上しなかったものこある。そしてこれは、仕入の減額となり当期利益が増加する結果をもたらすもので、本件にいう脱税とは、反対方向の処理となっているものである。原判決の認定するように鈴木との共謀があるのなら、渡部リスト通りに計上するのが、被告人宮入のとるべき道のはずなのに、正に反対の行動をとったことになる。)。

(ロ)渡部リストの作成時には、契約書が存在せず、後にこれが提出されたもの(黄色。これは仕入高がプラスとなり、当期の利益が、正しい方向で減少する結果となる。)

(ハ)被告人宮入の作成したこの記述は、自ら作成した資料であるため正しい数額と認識していた物件台帳に記載があり、渡部リストに記入があるので、決算書にも計上したが、国税局側では計上しなかったもの(橙色。これによって仕入高は増額し、当期利益が減少することになるが、期末在庫に計上されていて、利益の増減はく、脱税にはつながらない。)。

(ニ)会社の支払った迷惑料、造成費、立退料について、国税当局は、仕入れに該当するものと判断し、仕入高の増加(当期利益の減少につながる)したが、会社側では、これらを外注費として計上していたため、仕入高が減少し、当期利益の増加につながるが、他方経費がへることになり、プラスマイナスゼロで、何ら脱税の結果をもたらさないもの(緑色。)

(ホ)契約書が存在し、その最終残代金支払いの定め時期よりして、当然、残代金の入金が済んでいるものと被告人宮入は判断をし、仕入に計上したところ、後になって、申告後最終残金の支払いが為されなかったため、仕入に計上すべきでなかったとされたもの(青色。これによって、結果的には、仕入高がプラスになり、当期利益は減少することになる。この点につき、原審では、「宮入による架空計上」を誤認しているが、被告人宮入は当期物件を売上高の原価として処理し、あるいは期末在庫に計上しているので、結果的に利益の増減には影響が全く、脱税の結果を与えていない。

この事実は、一審で証拠に提出されている平成元年4月11日付大蔵事務官作成の物件別取引明細調書と決算書の付属書類中の棚卸資産の内訳書、売上高内訳書等の記載によって、証明されているところである。)。

(ヘ)渡部リストの期末棚卸在庫にあったので、仕入に計上したもの。報告書No.311~315(6件)合計金11億8,815万8,000円(仕入高に追加計上)報告書No.324~327(5件)合計金30億5,294万円(仕入高)から減額。差額18億6,432万2,000円が仕入高の減額、利益の増加となる。これは、被告人宮入の事務処理上のミスであったとしても利益増額になるので、脱税工作とは考えられない。(紫色。)

(ト)最終残金が入金されなかったため、鈴木から渡部に対する指示によって、被告人宮入に対して何らの通知、連絡なしに渡部の見直しリストからはずされ、国税当局も仕入から除外した金11億7822万円。(赤枠)

といった原因によって、申告における仕入高と、国税当局のその計上額との差額が発生したのであって、この経過は以上の物的証拠によって、充分に説明され得るのに、原審では、これら関係証拠を見る目を全く開かなかったために、「合理的説明に欠ける」「不自然」という結果だけを説くことになってしまっているだけなのであって、叙上のように、この間の差額の間には、何ら逋脱の意図が介入されていないことも明白である。

<8>なお、上記<7>に関連して、原判決は、この金11億7,822万円について、「渡部が右11億7,800万円余を計上したことは、利益の減額方向に働くけれども、期末棚卸高においても同様に計上すべきでないのにこれを計上している・・・点では、利益の増加方向に働いているから、・・・結局、売上原価の計上は影響せず、したがって、売上利益の増減にも影響しないことになり、宮入の知らないところで、渡部によって既に利益の圧縮が計られていたことにはならない」と判示している。

しかしながら、鈴木は、直接自ら唯一人で、当該取引に関与し、最終残金が入金されていないことを熟知しており、従って、仕入額に計上してはならないものであることを百も承知しながら、敢えて、渡部に指示して、渡部リストにこれを計上させ、しかも宮入にこれを知らせないでおくという行為そのものは、鈴木と経理担当者である渡部とが、相謀って脱税の意図を遂げようとした(たまたま、渡部は、期末棚卸高より、落とすことを忘れたに過ぎない。)と評価する方が、より素直な見方というべきで、この評価を誤った原判決は、その基本的な態度とともに非難に値するものである。

これに加え、被告人宮入が、修正申告を早急に提出することを鈴木、および、渡部が事前承認したために、申告書を作成・提出した後、渡部は、渡部リストを見直し、この11億7,800万円余を、最終残金が入金となっていないことを理由に、当期の仕入高、および、期末棚卸高からそれぞれ引落とし減額した、見直しリストを作って、国税当局にだけその旨の説明をするなどしたがため、当局も、この数額を仕入金額に計上しなかったのであり、(まともな経理担当責任者であれば、これだけの巨額な数字である以上、通常はこのことを、被告人宮入には、当然通知するはずであるのに、これを実行しなかったということは、渡部の会社の正しい情報を被告人宮入に伝えようとする姿勢が最初から欠けていた証憑と言えよう。)この結果、被告人の作成した会社の決算書上の仕入額は、最初の渡部リストに含まれていたこの数額が、そのまま置いてけぼりされる結果をもたらし、上記仕入高の比較表CとAとの差額に大いに影響を与え、この仕入高だけの比較値を見た場合、申告額における仕入高の数値は、一見いかにもいい加減なものであるという印象を与え、その差額について「仕入架空計上」として、利益圧縮工作の結果と誤認される結果をもたらすことは、否めない事実なのである。

(二)原判決は、「共謀」の事実関係を誤認している。

(1)原判決は、宮入試算表の作成意図(単に、納税額2億円前後の決算にはなり得ないという説明のためだけのもの)を曲解し、共謀の第一歩と捉えていることは、上述した通りである。

(2)そしてこの会社は、上述したように、経理上は、全くどんぶり勘定であって、前期とは全く様相を異にしていて、期間利益が一体どの位となるのかについて、昭和62年10月末の「損益書A」の作成時点で、会社はもとより、被告人宮入は、予め把握することは不可能であった。

(3)被告人宮入は、「宮入試算表」において利益21億余円と算出はしているが、未集計の外注費、支払手数料等が、多々あるものと渡部リスト全体の数字からみて容易に推認され、しかも、各物件に対する経費の振り分けが未完了の段階で、これら経費の計上ができずそこにいるばかりか、鈴木からも未集計のものが多々あると聞かされていて、この金21億余円が、正しい期間利益であるなどという認識を被告人宮入は、唯の一度も抱いたことはない。

しかも、「損益書A」を集計すれば利益は金14億円余であり、鈴木自身も会社の当期の期間利益が、本当に正しいものと認識していたかどうか全く不明である(なお、第一審において鈴木は、「会社の期間利益は、4~5億円位と考えていたが、利益2億円の申告書を作成したので、その程度の利益しかなかったのかと思った」などと、被告人宮入の計算時まで分からなかったかのごとき供述をしているが、それは多分に責任逃れの供述ではある。)。

(4)この「損益書A」について、原判決は、上述したように、「鈴木は、宮入に対し、納税額が2億円程度の申告書を作って欲しいと依頼し」「宮入は、当初渋っていたものの結局これを受け入れ、右依頼に沿う方向で利益圧縮の操作をすることを承諾した」(以上、判決書7枚目)「不動産取引が中心であるすずや建設において、経常利益が15億円に達することは、損益書Aを一覧すれば判明することであり、・・・鈴木の明確な逋脱の意図が最初に宮入に示されたことを意味する」とあり、鈴木が「損益書A」を被告人宮入に示して、脱税を恰も強要したかのように判断している。

(5)鈴木が「脱税を強要した」とするならば、昭和62年10月28日付で作成された「損益書D」のように、当期利益額を明示した上で、これを宮入に示すのが本当の姿であり、鈴木は、予め明示したこの当期利益額になるように、売上、および、仕入、在庫等の数字を加工して、被告人宮入に渡すといった方法をとるのが最も自然で、期限内の申告を実行する早道であることは疑いの余地が無い。

しかも、鈴木が実際に作成したとする、同11月23日付「損益書B」、および、同年同月27日付「損益書C」なども、何もことさらに考え考え作成する必要など全くなかったところである。

(6)参考までに、理解しやすいように、本件における問題となっている主要な勘定科目を対比すると、下記の勘定科目対比表記載の通りである。

勘定科目対比表

<省略>

(7)そして、全体において、「損益書A」の期末在庫の数字と、「損益書D」のそれとを入れ替えて、被告人宮入にこれを示せば、「損益書D」の利益に帰するのであって、あとは、税務当局の調査に備えて、資料の隠蔽、取引相手方との話合い等の証拠隠しをすれば一件落着となるものである(鈴木は、「損益計算書」の用紙を数多く所持し、銀行の融資のための資料として、適当な数字を書き込んで提出して来たこの方面のエキスパートであることは、同人の尋問結果でも明らかであって、鈴木が、その気になれば上記のことは、いとたやすく実行できる立場にあった。)。

(8)なお、上記2(3)(ハ)にも記述したように、「鈴木において損益書Aを示して納税額が2億円程度の申告書作成高を求めたのに対し、被告人宮入は、『当初渋っていた』ものの結局これは受け入れた」と認定しているが、渋っていたという被告人宮入は、不動産取引業種についてのその年のチエックは厳しいことを百も承知していたところであり、このような経過で、鈴木との共謀が成立したというのであれば、税務事務のプロとして、予め当然して然るべき、逋脱についての証拠煙滅工作を、全く行っていない不自然さこそ、原判決の上記認定は誤りであることを雄弁に物語っていると言うべきである。

(9)これに加え、鈴木は、渡部に対し、渡部リストを作成して被告人宮入にこれを渡して後に、物件No.296国分寺市西恋ヶ窪所在の物件11億7千万余円について、「仕入に計上しても在庫に計上するべきではないという指示が鈴木社長からなされたため、その指示に従い・・・」(渡部供述調書甲No.11 番号74)とあるように、この事件に深く関与している渡部に指示が出されたとするが、仮りに原判決の認定のように、この段階で鈴木と、被告人宮入との間で本件逋脱についての「共謀」が存在したのであれば、この指示は、渡部に対して行うこと前に、直接、鈴木から被告人宮入に対して行うのが当然の成行きというべきであり、この鈴木の指示が直接被告人宮入に行われず、しかも、渡部を通じて同被告人には何ら伝えられなかったという事実は、原判決認定の上記「共謀」の瓦解を示す以外の何ものでもない。

(10)第一審における冒頭陳述書等によれば、「11月中旬頃、宮入は、利益を約12億円に圧縮した『試算表』を持参した」ことになっているが、一・二審を通じてこの「試算表」なるものが証拠として提出されてはいない。

被告人宮入は、社長の鈴木から損益書Aを示され、渡部リストが提出され、その宮入試算表を作って、納税額が金2億円前後の当期の期間利益にはなりっこないということを論証し、これに対し、仲介手数料等経費について、さらなる資料があるという鈴木の言を受けて、関係資料の提出を求める等した上で、各項目の資料についての可能な限りその精査・検討を加え、正しいと判断された資料についての積算を行い、その結果、当初の数額に移動が生じた(被告人宮入は、利益圧縮のためのいかなる操作もしていない。)のであって、「利益圧縮」という原判決の表現自体、被告人宮入において、当初から逋脱の意思があり、鈴木と共謀の上、これを実行したとすることを前提とするものであり、誠に失当な表現という外はない。

そして、被告人宮入は、依頼者の代表者である鈴木から上記積算経過において、尋ねられれば、その時点で、現在での積算経過を報告するのは当然の職責であり、これを報告したことがあったかも知れないが、約12億円という試算表なるものを被告人宮入が作成して、鈴木に提出したなどという事実は、実在しない。

このようなことからして、原判決の認定するように、「昭和62年11月18日ころ、経常利益を12億円程度にまで圧縮して鈴木に説明した」(原判決7頁裏)とするのは、当初において本件「共謀」が存したということの事後説明としての認定であることは間違いないところであり、その前提を誤認している原判決は、その色眼鏡を通じての、本件における被告人宮入の積算の一連の流れを曲解しているに過ぎないものである。

(11)被告人宮入は、会社から提出された資料に欠けているものがあるではないかとも思料される上に、鈴木と渡部に対し、重課の計算をしてみると、会社から提出された関係書類上だけからでは、正しい数額の申告ができないこと、会社には隠された、未提出の資料がまだ残されているのではないかと気付いたため、会社からの資料提出の遅れにより期限内申告は間に合わない、どうせ遅れるなら申告時期を大幅に遅れても、全資料を改めて徹底的に洗い直し、正しい税務申告をすべきではないかと、鈴木、および、渡部に勧告した。

これに対し、鈴木は、すでに融資を求めている銀行から、税務署へ提出ずみの決算書の写しの提出方を求められているので、少々の遅はやむを得ないが、大幅な遅は、融資の不実行につながり、会社の資金繰に重大な支障が生じるので困ると言われ、被告人宮入は、鈴木および渡部に対し、早急に修正申告書を提出することを条件に、取り敢えず現況で把握し得た正当と思料される積算数額をもって、申告書を作成提出することを提言し、鈴木らは、これを承諾したため、本件申告に至ったのであり、このことは、本趣意書の冒頭にも具体的に明示したように、渡部も、第一審で、被告人宮入のこの修正申告を早急に行うという申し入れを承認し、また鈴木も、原審において鈴木作成のメモを示した上での尋問の結果は、早期の修正申告の実行という点でのこの宮入の申し入れの事実を立証できたところである。

そして、この修正申告の申出の期日は、「申告書の提出期限が、昭和62年11月30日である」こと、「実際の申告書提出日が、同年12月14日である」ことなどから、現実に、その作成に至までの被告人宮入の事務処理能力からして、上記修正申告の実行を鈴木らが約束したのは、昭和62年11月18日前後であったと思料されるところであるが、先に述べたように、第一審および原判決認定の通り、最初の段階で本件逋脱を鈴木と共謀しているとするならば、最終的な納税額金2億円前後の結論から、逆算して数字を加工して並べたて、それに見合う具体的勘定項目の含まれている具体的数字を除去し、あるいは適当に加え、これに見合う資料を一応整えれば、足りるところであって、一々こまかい個々の項目の数字の積算をする苦労などする必要もなく、もっと早い時期に申告額の数額は、導き出されていた筈であるばかりか、早期の修正申告の提言など全く不要なばかりか、申告期限を越えてまで、種々積算する必要性も無く、期限内申告も容易だった筈のものである。

殊に、上記のように早期なる修正申告の実行を進言するなどしておきながら、被告人宮入において、原判決認定のように、「利益12億円余でどうか」などと打診すること自体、常軌を逸した矛盾した言動というべきであって、これら前後の流れの合理的解釈からするならば、かかる原判決認定の「共謀」についての内容は、現実には不存在のものと断言しても、決して間違いではない。

(12)なお、鈴木の作成した「損益書D」の作成日付は、11月28日と記載され、これが、その頃、鈴木から被告人宮入に渡されたとするが、鈴木が、「損益書A」→「損益書B」(11月23日作成とする)→「損益書C」(11月27日作成とされる)→「損益書D」と順次作成(少なくとも、このBおよびCについて、鈴木は、被告人宮入に見せたとは言っていない。)しなければならなかったことは、鈴木と被告人宮入との間で逋脱についての打合せが全く無かったことを、逆に証明して余りあるものであって、この共謀があるのなら、鈴木自身においても、一人でかかる面倒な表を作ったりせずに、原判決の認定した「共謀」にもとづき、共犯者である宮入に、もっと早い時期に端的、かつ、具体的に相談ないしは指示すれば、足りることなのである。

また、鈴木の作成した「損益書D」は、その作成された昭和62年11月28日過ぎに、被告人宮入に渡されたことは事実であっても、同人は、すでに早急な修正申告を会社で提出することの約束を鈴木より取り寄せ、同被告人は、自己の正当と思料した判断の上に立って、会社側より引渡された決算図の資料を精査検討するなどして、積算したところに従って、会社の申告書を作成したのであって、その申告書自体は、「損益書D」によって、何らの影響も受けてはいないのである。

(13)以上要するに、原判決は、鈴木の作成した「損益書A」の存在を片方に見ながら、「渡部リスト」の売上、仕入、期末棚卸高の各項目全部にわたり正確であるとの基本的立場に立って、これにもどづき作成された「宮入試算表」が、鈴木との逋脱についての共謀の出発点あると誤認したことにより、眼鏡が曇り、それ以後の被告人宮入の行動を十把ひとからげとして、本件脱税についての利益圧縮工作としか評価せず、他方その認定にもとづく共謀を遂げてからの鈴木が、その相手方である被告人宮入に対して全く見せることもなき損益書B、および、Cを、そ ぞれ何故に作らなけばならなかったかについての分析・検討を加えることを忘却する結果をもたらすとともに、その共謀したという相手方に直接・間接を問わず通じるように意図せずに、会社の経理責任者となった渡部にだけ、上記(9)のように、物件番号296の国分寺の物件(金11億7千万余円)を仕入額より削除することを申付け(この事実は、鈴木と被告人宮入との「共謀の不存在」を何よりも雄弁に物語るものである。)たりしなければならない不自然さに対しても、これを正視しようとも全くせず、より誤認性を強める結果をもたらしているのである。

そして、「渡部リスト」は原判決の認定しているように、それ自体は、正しいものでなかったことは、「渡部リスト」についての隠された資料等にもとづく、見直を渡部が実行し、このリストの数値を変更(その結果について渡部は、被告人宮入に知らせようともしなかった)し、その数値を動かしているという一事をもってしても、「渡部リスト」が正しいものではなかったのであって、原判決は、これら一連の事実誤認の流れの結果として「共謀」を誤認しているのである。

(三)原判決は、経理事務担当者渡部の検面調書、一審における尋問結果の信用性を誤認し、その結果鈴木と被告人宮入の「共謀」を認めることにもなっており、明らかに不当な判断である。

(1)本件において、共謀の根拠の資料とされる「損益書A」、および、「損益書D」のみが鈴木から、直接、宮入に交付れた以外、本件申告のための資料である「渡部リスト」をはじめ、すべての資料は、この渡部を経由して、被告人宮入に提出されたものである。

かかる点よりして、渡部は、本件においては、極めて重要な地位に居ったのであるが、この経理事務担当者の渡部を、本件事件の圏外に居ておくことにつき、原判決は、何の疑問も抱いていない。これは、渡部の供述、あるいは、調書の信憑性を誤認したことに起因する。すなわち

(イ)「渡部」は、鈴木とともに被告人宮入勧告に従って、早期に会社の当期の決算申告書についての修正申告を実行する約束をしたことを、検察官に申述べていない。

この点につき、渡部は、「(修正申告の話を検察庁で担当の検事には話す)必要はないと思いましたので、お話しません。」と一審弁護人の尋問に答えている。

この修正申告を被告人宮入が、鈴木、渡部に勧告し、彼らがこれに応じることを確約したため、取敢えず、本件税務申告書を提出することになったという経過は、本件において極めて重要なことであるが、この事実を渡部が検察官に「必要ないと思い」話さなかったということは、逆の意味で重要である。すなわち、すでに述べたように、検察官にこの修正申告の話しをすることによって、「渡部リスト」に誤りがあることを認め、これがでたらめなものであったことを自認する結果をもたらし、その共犯性を追及されるため、渡部はわざとこの事実を避けて通ったというのが実情なのである(この点についての一審における渡部の前後の供述は、自己の責任回避の言辞に満ち満ちていることは、一読しても明らかなところである。)。

(ロ)殊に、渡部は、常時、会社の事務所で執務しており、会社の営業や借入金の交渉のために銀行を訪問する等の外出は全くせず、「社長のほうでも自分なりにノートをお作りになっておられるようでして、ノートに書かれているものと契約書をリストされた書類とチェックされていたんじゃないか」と証言しているように、会社にとって一番重要な帳面である鈴木のノートとの対比等も充分可能であり、経理事務に必要な全資料が手許にあり、その気になりされすれば、正確な決算申告のための資料を作成することは、充分に可能であり、渡部の証言したところが正しければ、仮りに、種々鈴木から資料の修正を指示されても、手許にある資料を見直すことで、被告人宮入に渡した「渡部リスト」に誤りがあるかどうか、直ちに判明したはずである。渡部は、「常々宮入さんとも相談してきちんとやろうということでお話はしていました」と証言する位であるから、このリストに誤りが判明した場合、すみやかに被告人宮入に連絡するのが、経理担当者の責務のはずであることも、充分渡部は承知していたものである。

(ハ)渡部は、決算資料として被告人宮入に土地等の売買契約書を渡す時点で、この契約書の記述内容が、仕入、売上の伝票に代るべきものであるという認識を有していたが、最終残金の支払未了、従って、所有権移転登記の未了のため、これを当期の仕入、あるいは、売上に計上すべきであるか否かの判断は予め可能である筈なのに、これらの具体的取引情報を被告人宮入に伝えず、無差別に被告人宮入に渡したりしており、この契約書が上記のように仕入、あるいは、売上伝票に代るものであるから、この無差別の交付は、情を知りながら、その情を全く知らない被告人宮入をして、結果的にこの伝票を適当に操作していたと評価されるものである。

(ニ)原判決は、被告人宮入につき、「仕入を水増計上するとともに、期末棚卸高の一部を除外(「渡部リスト」が期末棚卸高を約12億円除外した結果であることを問題外としている。)する等の方法により、内容虚偽の法人税確定申告書を・・・提出したことが明らかに認められ」と判断し、渡部の上記各行為につき、これを問題外視して、何らの吟味も加えることなく、被告人宮入についての仕入・期末棚卸の数額的増減結果が、利益圧縮の脱税行為と速断し、被告人宮入の責任に転化しているのである。

(ホ)しかしながら、鈴木は、これ迄にも記述したように、渡部にのみ対して、金11億円余の物件を仕入高に計上すること、および、その分を期末在庫からの除外を各指示するなど、鈴木は、「渡部リスト」等の資料に、事実に反する偽りのものが含まれていることを充分承知していたものであり、原判決が、鈴木が、渡部とともに「修正申告の実行」を承認していた事実につき、正当な判断を加えていたならば(原判決は、安易に先ず、鈴木と被告人宮入との間に、逋脱の共謀の存在を認めたがため、この正当な判断をしようともしなかったものである。)、本件被告人宮入の刑事責任の行方は、別のところとなった筈である。

原判決では、渡部の供述について「自ら見聞きしたことと、推測にわたることを区別している」からとして、その信用性を追認しているが、このような答えは、質問の仕方次第で何とでもなるものであって、同人の供述において、最も重要な「修正申告の承認」についての部分について、何らの吟味こそが、同人の供述の信用性があるか否かの要となることを、全く忘れた原判決の説示は、何らの説得力もないものである。

(ヘ)ちなみに、渡部が、本件申告後に先の「渡部リスト」を見直した結果の数額の差異を表にすると、下記の通りとなる。

〔Ⅰ〕<省略>

(註)控訴人宮入の弁護人の控訴趣意書10頁参照

(B)-(A)=10億8,996万9,298円

「渡部リスト」と上記(A)の調書に添付の資料による渡部見直し後の売上高、仕入高、期末在庫の比較表

〔Ⅱ〕<省略>

上記〔Ⅰ〕と〔Ⅱ〕の各対比差額の生ずる主因としては、登記ベースで経理処理をする会社であるのに、残金が未払いで登記上所有する移転登記を受けられず、このため、仕入に計上できない物件であるのにも拘らず、これを計上したという契約ベースとの故意の混同による過大計上や契約金額の変更(値引)が行われていたのに、これが伏され、そのまま仕入れに計上されたままになっていたことが判然とするとともに期末在庫については、渡部の記入ミスと考えられるものである。

この対比だけをみても、被告人宮入不在のところで、鈴木と渡部の手によって、どのような操作等が行われていたかが判然とするものである。

4、原判決は、被告人宮入が架空仕入を計上したとして、明白、かつ、重大な事実の誤認をしている。すなわち、

(一)原判決は、その13頁において、「渡部リストに計上されておらず、かつ、もちろん当局調査額にも計上されていないのに、申告に当たって計上されている物件があることが認められるのであって(・・・・・物件ナンバー233、243、253など。これだけでも9億円を超える)、これは、被告人宮入による、殊更な架空計上という以外に評価しようがないものであり、このような計上があることからしても、13億円の増額は、原判決が説示するとおり、『正常な補正操作によって、これほど大きく数字が変動することは、明らかに不自然』であると言わなければならない。」とする。

(二)この認定は、以下に述べるがごとく、明らかに、重大な事実誤認である。

(1)上記(一)において判断された、物件ナンバー233、243、253の物件については、被告人宮入は、かつて、契約書を会社から見せられ、被告人宮入作成にかかる「物件台帳」に転記したものである(この「物件台帳」は、押収されて、検察官の手許にあるが、何故か証拠として提出されていない。)。

(2)そして、被告人宮入は、本件申告書作成に際して、この「物件台帳」の記帳をもとに、仕入額の積算に加え、記帳したものである。

これら原判決指摘の物件ナンバーは、いずれも、一審証拠番号甲10-67大蔵事務官池田秀樹の平成元年4月11日付物件別取引明細調査書の(216頁)に物件ナンバー233が、同239頁に物件ナンバー243が、同298頁に整理番号287(右上の備考欄に、「No.253」と同じ、と書かれている。物件ナンバー253の住所地が「立川市羽衣町252-8」と記述されているが、整理番号287の物件所在地のように「25-2-8」の誤記で、253の物件と287のそれとは同一物件であり、結果的に地番の違いにより、2物件と見誤って二重計上されたものなのである。)に、いずれも、各記載されているのであって、被告人宮入が、申告書作成に際し、有りもしないものを、これ有るがごとくして、勝手に架空に計上したものでないことは、この調査書からも明らかである。

(3)これに加えて、上記物件ナンバー233の明細書を見ると、決済状況欄で、「62.6.29解約」と記載され、途中解約が行われたものであったが、この事実が、会社から宮入に伝えられなかったため、被告人宮入は、当然仕入がそのまま行われたものとして、本件申告時に、そのまま積算したものである。

(4)また、物件ナンバー243について、上記明細書の決済状況欄を見ると、最終代金が、ずれ込み、登記ベースによる会社の処理としては、翌決算期の仕入として、結果的に当期分として計上すべきものではなかったことに帰するのであるが、この翌決算期への最終残金の支払がずれ込んだことについての報告が、被告人宮入になされなかったこともあって、「物件台帳」に、この物件の仕入を記帳しておいた同人は、そのまま仕入が終わったものと考えて、当期の仕入に計上したものであって、架空仕入との非難を受ける理由は全くない。

(5)さらに、物件ナンバー253のものについては、上記のように、地番表示の違いにより、結果的に二重計上にはなってはいるが、この253は、申告書明細の棚卸資産表の「商品」として記帳し、期末在庫にも計上して申告済みであって、プラスマイナス→利益ゼロで、利益圧縮には、何もなっていないことは、本件申告書を具に見れば、一見して明らかなところである。なお、物件ナンバー233および243については、本件申告書中の土地重課の計算書中に、いずれも、売上に対する原価計算を行い、売上に計上している(物件ナンバー243については、原価における被告人宮入の陳述書別紙5の右側3列の左上に「243」と表示されたものが引用されており、これと同様のものが「233」として、同申告書に添付されているので、精査願いたい。)ことは、本件申告書上からも明らかであり、この売上計上により、今期の利益が増加する結果となっていて、原判決の「殊更な架空計上以外に評価のしようがない」という認定は、本件の関係証拠を、まともに一回たりとも精査検討も加えていない、何よりの証拠という外はなく、関係証拠に現れた一部分のみを表層的に捉え、これに関連する他の証拠部分との対比をすることを怠り(換言すれば、証拠それ自体を総合的に詳しく分析する能力に、全く欠けているとしか評価できないものである。)、共謀を前提として認定する基本的立場からして、すべてを「利益圧縮」ということで、早々に結論づけて終わらせてしまおうとする原判決の処理の仕方は、誠に遺憾という外ない。

(6)これらの検討を充分に行うことによって、被告人宮入が本件申告書作成において、会社から与えられた資料にもとづき、いかに全能力を傾注して、正しい申告という点に配慮したかについて、正しい認識が生じ、ひいては、このような努力をして来た被告人宮入の本件税務申告の、正しい申告を求めるまじめな努力の積み重ねの現況を正しく知ることができ、この事実よりして、逆方向より、「共謀」の安易な認定への厳しい自省の力が働くものと言えよう。

(7)原判決は、叙上のように、物件ナンバーを具体的に指摘して(この番号指摘のないもの〔No.297、No.305、No.322〕についても、前記調査書に調査計上されている。その311、312頁――これは、契約書作成して買受けたものについて、その売買代金の完済なきままに他に売却したという、いわゆる土地コロガシをし、中間省略による所有権移転登記による処理が当局の調査によって判明したが、代金未決算のこともあって、当期分の仕入から、結果的にはずされたものであるが、この間の事情が、被告人宮入には何も伝えられなかったため「物件台帳」の記帳に従い、被告人宮入は当期の仕入れに計上するなど、正しい申告を為したものと認識しているところである――、319頁、および、337頁参照。いずれも、前渡金扱いや、残金未払いで、当期において登記完了できなかったため、次期に計上されるべきものであったが、被告人宮入には、この事実が伝えられず、同人は、会社から渡された契約書にもとづき、同人作成の物件台帳に記載してあったがため、今期の仕入に該当するものと思料して、仕入に計上してしまったものである。)、「殊更な架空計上という以外に、評価しようがない」などと、具体的資料(証拠)を全く吟味しないで、身勝手な決め付けを行っている。

そして、原判決の「13億円の増額」に対する叙上のNo.233、No.243、No.253についての充分すぎるほどに書証自体で説明し得る分を除外した残り、約4億円分は、「渡部リスト」が正しいとの前提からくる残額であり、これまで繰り返し述べてきたように、この「渡部リスト」が正しくなかった以上たものである以上は、この残額分の内容について、説明させる相手方は、被告人宮入ではなく(内容が不詳で、現段階で、被告人宮入には説明できない)、このリストの作成者である渡部自身なのであることを、ここに指摘しておく。

5、原判決は、その14頁最終行から15頁にかけて、期末棚卸高について記述をしているが、被告人宮入の弁護人の控訴趣意書の記述を正しく読むことなく、仕入れに関する論述と混線した認定をするなど、もともと、この種事件の審理を正当に行うことができたか否かが、問題である。すなわち、

被告人宮入の弁護人は、控訴趣意書21頁において、本件における仕入高に関する一審判決の判断に対する意見を述べているが、この内容を正解せず、この中の「金13億1,200万円」という数字が似ていることから、原審は、「金13億9,400円余」と彼此を混同して取り違えて、「これを除くと、一部除外は2億2,100万円余にとどまるものである、という如くである」としているが、上記控訴趣意書では、そのようなことを述べてはいない。しかし、原判決は、この誤った前提に対する反対意見を縷々述べた後に、結論として「むしろ、正規の金額との間に25億7,700万円余の利益圧縮のための一部除外があったもの理解すべきものである」としているのであって、一体何を言わんとしているのか、判然としない判旨となってしまっているのである。

6、原判決の証拠不検討にもとづく事実の誤認について。

(一)原判決は、「2、被告人宮入の弁護人の主張」に対する判断(中の12頁以下で、「宮入試算表による21億円という数字を、その後の操作の出発点としたことは動かない事実であり、最終的に修正損益計算書の当期利益に当たる金額を2億6,24万3,381円と算出し、・・・本件法人税申告書を作成・提出しているのであるから、その間の金額の操作に合理的な説明がつかない限り、意図的に除外、計上等の操作をして、利益の圧縮工作をしたものとみるほかはない。」と認定している。

(二)この点について、仕入高についての検討は、すでに3、(一)<1>ないし<8>で詳細に述べておいたが、これに加味して、以下の通り、上告の趣意を追加する。すなわち、

<1>上記「宮入試算表」は、単なる鈴木に対する説明資料に過ぎないことは、すでに説明ずみであり、被告人宮入が、この「21億円」を出発点として、この数額を「操作」したという事実が全く無いこと、および、被告人宮入は会社から正しいものとして与えられた資料をもとに、積算した結果、数額に変動を来したというだけのことであって、数字を「操作」したと以下、宮入試算表との対比表を作成し、各項目の数額の変動について、被告人宮入が単独で、あるいは、鈴木と共謀して、この数字を変動させたものでないことの説明のための「比較表(一)」を作ると、下記の通りとなる。

いう事実は全くないことについても、すでに述べた通りである。

「比較表」(一)

<省略>

<2>下記の対比表の<1>~<6>の各科目における「宮入試算表」を作成するために被告人宮入が使用した資料。

(イ)「<1>仕入高」(科目の左の番号は下記対比表に付した科目の番号である。以下、同じ)「<6>売上高」「<5>期末棚卸高」は渡部から指示された資料「渡部リスト」により記入した。

(ロ)「<2>外注費」「<3>販売仲介料」「<4>仕入仲介料」は、会社の作成資料を待っていては、申告期限に間に合わないため、会社の提出して来た領収証を集計した。

但し、宮入試算表作成の時点では、期間中の費用とすべきか、翌期の費用とすべきか不明のものは、鈴木に照会中なので除外未集計である(詳細は陳述書2~4枚目参照)。

<3>決算書作成のために使用した資料

(イ)決算書作成のための資料も「渡部リスト」を基礎にしたことは変りないが、「<1>仕入高」については、土地重課税算出の際に渡部リストに誤りがあると考えられたので、「物件台帳」と「渡部リスト」の仕入高と照合して計上もれ分を追加し、期中の仕入と考えられないものを減額した(詳細は陳述書8~10枚目、ならびに、「土地建物仕入高対比表」(1)BとCの比較参照)。

(ロ)「<5>期末棚卸高」は「渡部リスト」の数値を結果的には、そのまま(宮入試算表と同一)計上した(「<1>仕入高」の照合――見直し――の際、期末棚卸高の内容の一部修正をしたが、全体的には修正の必要がないと考えられた。詳細は陳述書13枚目参照)。

(ハ)「<3>売上高」は、「渡部リスト」と「物件台帳」とを照合し、1-2の物件につき修正した。

(ニ)「<2>外注費」「<3>、<4>の支払仲介料」については会社から提供の領収証を中心に、次のように処理した。

会社から提供された領収証で、鈴木に照会中のものについては、期中の支出と鈴木から説明を受けたものを追加した。但し、外注費のうち、電気、ガス、水道工事については、支出額を期間中の費用にした(詳細は陳述書9~10枚目参照)。

支払仲介料については領収証が見当たらないものが多くあるので結果的には

売上高×3%を販売に係る支払仲介料として計上し、

(仕入)+(期首在庫)-(期末在庫)の金額×3%を仕入に係る支払仲介料として計上した(詳細は陳述書11~12枚目参照)。

<4>以上の結果から「決算書」(下記「対比表」参照)の各勘定科目(売上高、ならびに、売上原価の科目)の全額を算出計上したのであるが、次に宮入試算表(下記「対比表」<イ>)から「決算書」(下記「対比表のうちの<ロ>)に数値が変化した理由を説明する。

(イ)仕入高については、上記<2>(イ)の通りであるが、原審が「渡部リスト」が正しいと誤認した結果、上記「比較表」(一)<イ>宮入試算表-<ロ>決算書=13億円余が被告人宮入による仕入の水増しと判断されたが、<ハ>国税局認定額-<ロ>決算書=7億0,900万円余が仕入の過大計上で、その明細は「土地建物仕入高対比表」((3)CとDの比較)の通りで、架空計上や水増は皆無である。

(ロ)外注費については、上記<3>の(二)の通りで、これは、一般に、どの会計事務所でも同様の処理をしており、被告人宮入における処理もその例外ではない。なお、調査権を持つ税務当局が反面調査をした結果、この処理が誤りであると指摘を受けた場合、当該会計事務所では、依頼者である事業主が了承した場合には、修正申告の手続を代行することになる。

なお、すずや建設では、外注費と処理したうちには、建築工事代金のように、支払先が特定しており、領収証の日付から期中分かどうか、判断が容易であるものの他に、立退料、迷惑料、企画料等の場合は払先が不特定な個人で、その件数も多くこれらについての期中の経費か否かは、鈴木の判定に委ねるほかなかった。

鈴木は、外注費に係る検面調書で、鈴徳工務店の支払い金1,000万円は貸付金であると供述したのに、被告人宮入には本件申告前の照会に対し、期中の工事代金であると説明していたのであって、鈴木の言動は、もっての外である。

(ハ)販売に係る支払仲介料については、下記対比表の<ロ>欄「<6>売上高」(20,512,483千円)×3%=615,374千円を計上すべきであるが、「宮入試算表」の計上額は、447,766千円(下記対比表)<イ>欄<3>であるから未収計算分があり、追加計上の必要があったのは当然である。

(ニ)仕入に係る仲介料については、

A(仕入高+期首棚卸高)=(32,864,777千円(下記対比表<ロ>欄<1>)+4,214,434千円(宮入試算表))=37,079,211千円

B(期末棚卸高(対比表<イ>欄<5>))=20,878,205千円

A-B×3%=16,201,006千円×3%=486,030千円であり、

宮入試算表の計上額の420,316千円対比表<イ>欄<4>と比較すれば、未計上分があることが判明し、追加計上の必要があったのは当然である。

(ホ)期末棚卸高については、対比表<ロ>欄<5>「決算書」の金額と<イ>欄<5>「宮入試算表」の金額が同一であったが、渡部は、渡部リストを見直した結果、期末棚卸高を1,196,637千円(対比表<ニ>-<イ>)の増額をしている。

これは、「渡部リスト」が正しくなかった結果であるばかりか、誤りが判明した時点で、すみやかに被告人宮入に連絡すべきであったのに、それを怠ったものである。

(ヘ)この期末棚卸高の見直し額11億9千6百万円と仕入の見直し額9億8800万円(対比表<ニ>-<イ>の合計は21億8400万円余になり、「比較表」(一)の宮入試算表の利益21億2230万4千円-2億6,024万3千円=18億6205万7千円Bで渡部の見直し額の結果のAの金額のほうが多いことから、逆に原審のいう「操作の合理的な説明」となっていることを銘記すべきである。

(対比表)

(「比較表」(一)の<イ>欄) (「比較表」(一)の<ロ>の欄)

<省略>

(注)◎は渡部リストではなく会社から提供された領収証を集計

※は会社と国税局とで算出方法が異なるので、会社の算出方法に国税局認定額を換算した後の金額(仕入については陳述書7枚目参照)である。

<4>ちなみに、宮入試算表の当期利益の金21億2,230万4,000円は、国税局の修正損益計算書の利益である金22億2,077万7,000円とほぼ同額のため、宮入試算表の当期利益が正しかったかのごとき誤認を受け易いが、国税局による合計上の利益は、金28億7,281万1,095円であって、この点での原審の判断は、正当であるが、「金21億円を出発点として、数字を操作して、会社の当期における修正損益計算書の利益を(不当な数額である金2億6,024万3,381円に利益圧縮した」とする原判決の認定は、明らかな事実の誤認である。

本来は、国税局による利益、金28億7,281万1,095円と会社の当期の利益(公表額)金2億6,024万3,381円との間の金額に原審でいう「操作に合理的な説明がつくか否か」である(正しくない「宮入試算表」の利益21億2千万円余と、同じく正しくない会社の当期利益(公表額)金2億6千万円と比較するのは無意味なことである)。

このため「比較表」(二)で、国税局の算出の利益金額と公表額の利益の金額との間の数字の変動の内容を説明する。

(説明の便宜のため、修正損益計算書の勘定項目を、まとめられるものは一括し、かつ、千円以下の金額を切捨てる。)

「比較表」(二)

<省略>

(※)売上原価計上額2,795,707円の明細は次の通り

<省略>

〔参照事項の説明〕

上記表A1.仕入過大については、

仕入に関する「土地建物仕入高対比表」(5)によって、申告額となった経過が判然とする。

なお、鈴木の検面調書では、渡部作成の「仕入のリスト」(「渡部リスト」の後で作成されたもので渡部の見直し後の仕入高に近い金額である)と公表額を比較して鈴木は、上記仕入過大を認めている。

同 B期末棚卸高過少については、

(被告人宮入の陳述書7枚目、同弁護人の控訴趣意書23-24枚目)参照「渡部リスト」の期末棚卸高が過少であった。

同 C外注費過大については、

鈴木が認めた外注費の過大計上額は、事務員(鈴木多恵)が作成した、外注費の資料の金額と公表額とを比較した結果である。

(被告人宮入の外注費計上方法については、被告人宮入の陳述書9-10枚目に詳細を記述した通りである。)

(同弁護人の控訴趣意書20-21枚目参照)

同 D販売に係る支払仲介料については、

(被告人宮入の支払仲介料の計上方法については、被告人宮入の陳述書12枚目を参照、この頁は、仕入に係る仲介料の計上方法と共通、なお、同弁護人の控訴趣意書22枚目。

◎鈴木の検面調書(乙2-12 編てつ2160)「販売に係る仲介手数料」の供述結果では、

渡部が作成した販売の支払仲介料の資料の金額 583,715,840円―<イ>

国税局が算出した販売の支払仲介料の金額 557,095,006円―<ロ>

を比較して<イ>-<ロ>=26,620,834円を鈴木は過大計上額と認めた。

同 E仕入れに係る支払仲介料過大計上額については、

鈴木の検面調書(乙3-17編てつ2848)「仕入れた物件に関する仲介手数料」の供述結果では、

渡部が作成した仕入の支払仲介料の資料の金額 963,839,330円―<イ>

国税局が算出した仕入の支払仲介料の金額 818,787,580円―<ロ>

を比較して<イ>-<ロ>=145,651,750円を鈴木は過大計上額と認めた。

以上仕入から支払仲介料までの過大計上額の原因はすべて、会社の資料が不正確であったことによるもので、被告人宮入が鈴木と共謀したことではないことを証明している。

同Fその他については、

被告人宮入の処理上のミスが原因と考えられるもの含まれるが、しかし、29,464千円の内容には、次の要因が混在しており、しかも、関係資料がすべて押収されているため、原因の解明は困難である。

外注費の状況 (鈴木検面調書 乙3-15 編てつ2637) ならびに仕入の状況 (鈴木検面調書 乙2-14 編てつ2492) で、鈴木は、鈴徳工務店の支払10,000,000円は貸付金である、と供述しているが、

被告人宮入は、鈴木の期中の工事代であるという説明により、外注費で処理した。

同上の調書で鈴木は、国土利用計画法に抵触しないように、1~2の物件について仕入代金の一部を、企画料という名目で支出したと供述しているが、この場合、国税局では、該当金額を外注費から仕入に振り替えたが、被告人宮入は、領収証記載の通り、外注費で処理した。

<5>以上のように集計処理した結果が、当期利益金2億6,024万円余という数額なのであって、被告人宮入が、何の具体的根拠もなく、当期利益額を圧縮するために、勝手気ままに、数額を変動せしめたことは全くないものである。

一審、および、原審の判断の前提として、その実態、内容に反し、「渡部リスト」が正しいという誤った前提に立ったために、判断に混乱が生じてしまっているものであることは、間違いない事実である。

<6>被告人宮入は、渡部から、「渡部リスト」を資料として、一番最初に受け取ったのは、仕入の資料なのであって、それは昭和62年10月21日のことであった。

この時点では、会社側では、仲介料の資料は未整備の状況下にあり、引渡を受けられる状況下にはなかった。

そして、被告人宮入が、仕入・外注費、仲介手数料の集計を実際に行ったのは、正しい「土地重課税」計算するためには、被告人宮入において、会社の損益計算書、貸借対照表の作成が実行してから行う必要性があり、また、土地重課税の計算には、約20日位が必要なのであった(証拠等関係カード甲10-65、同66参照)。

7、また原判決は、外注費、および、支払仲介手数料についての「当期分として計上すべきか否かはっきりしないものは、当期に計上したと供述しているので・・・・・・・やはり、売上原価の過大計上の意図があったと認められる」とするが、この原判決の認定は誤っている。すなわち、

(一)「当期分として計上すべきか否か、はっきりしない」分というのは、外注費のみであり、支払仲介手数料は、期末在庫の分を除き、その余の物件について、取得価格、あるいは、売却価格に対して、一律3%の割合で計算されているものであって、それは、すべて、当期の経費として計算されるので、問題となる余地はない。

それで問題となるのは、当期における外注費とされる領収証があるが、どの物件に対するものかについて、具体的な振り分けが無いため、この支出が、今期の売却済物件に対するものか、あるいは、在庫物件に対してのものかが、不明のものがあったため、被告人宮入は、当期の経費として計上したに過ぎないものである(なお、この明細については、原審において提出済みの被告人宮入の陳述書9頁以下に詳述してあるので、精査願いたい。)。

(二)このような経理処理は、どこの会計事務所でも、通常行っているものであり、被告人宮入事務所においてもその例外では無い。

一般には、かかる処理に対し、強制調査権を持つ税務当局が、相手方取引先に反面調査をした結果、当該処理が間違っている旨の指摘があれば、当該会計事務所では、その関与左記の事業主に照会し、その実態が判明するのであって、この場合、関与先依頼者の同意があれば、当局の指摘するところに従って、修正申告作業を代行するのが通常である。

(三)本件にあっても、捜査機関である検察庁においてさえ、「売上及び原価等集計表」(甲1-2)「売上高の金額についてと題する捜査報告書添付資料――東京地方検察庁事務官吉田隆夫作成に係る平成3年10月30日のもののNo.6の一覧表中、物件番号空白(これは、どの物件のものか判らないということを示す)の「その他」の項目「2,055,500円」の表示は、物件との関連が判らないので、本来は、今期の経費なのか、在庫物件分として、来期の経費なのか判然としないものであるが、今期扱として計上しているものである。

従って、この原判決の、被告人宮入は最初から脱税の意図があったとする予断を前提とする疑問は、全く、この間の実務における経理の実情を知らない、独断なのであって、「被告人宮入に売上原価の過大計上の意図があった」との認定は、明らかに間違っているのである。

(四)なお、「宮入試算表」における外注費、支払仲介手数料については、この表を作成するまでの間に、会社から届けられた資料を積算した結果の数額なのであって、被告人宮入の作為的計上分は、全く存しないことを、念のために付言しておく。

8、被告人宮入は、本件逋脱について、鈴木とは何の「共謀」もしていないし、勿論、「共謀にもとづき、これに添った行動」を何もしていない。

逆に、被告人宮入は、会社より渡された資料にもとづき、自分自身では、正しい税務申告を出すべく、限られた事務要員と限られた時間を有効に使って、最善を尽くしたのであって、この点についての原審の非難にも拘らず、その非難の間違っていることを具体的証拠にもとづき、論証し得ることは、上述したとおりである。

本件では、社長で、一人不動産取引の実務に関与していた鈴木が、税金支払の現資を持たないこともあって、多額の脱税をするために、被告人宮入に与える税務申告の資料につき、鈴木一人が知っている正しい資料を与えず、本件が発覚すると、その刑責を免れることを計って、被告人宮入にすべての責任を転嫁しようと考えるようになり、また、会社の経理事務担当者であった渡部も、鈴木の具体的指示を受けて、正しくない渡部リストを被告人宮入に渡すなど、共犯的立場にあり、しかも、被告人宮入が、重課の計算に至ってみて、会社が提供している資料の内容は、取引の実情とかけ離れているように思料されることもあって、被告人宮入が早急に会社の税務資料の見直しと、これにもとづく正しい内容の修正申告をすることを勧告し、これに応諾した鈴木、および、渡部が、被告人宮入をして、本件申告書を提出させておき、同被告人の進言にもとづき、渡部らは、この見直しの作業を現実に行い、その結果の資料を、渡部を経由して、鈴木に渡されていた(渡部の検面調書)にも拘らず、この修正申告の約束を実行をせずにおき、具体的な本件捜査が開始されると、自分達が被告人宮入に交付した会社の税務関係基礎資料が正しいものでなかったことを自供するに等しい、この修正申告の約束について、口つむぎ、知らん顔をし、捜査官をして、鈴木、および、渡部は、検面調書の作成を為さしめ、自己の非を全く棚に上げ、被告人宮入が鈴木と共謀したとし(渡部)、あるいは、被告人宮入が、勝手に申告書を作り上げたとし(鈴木)、本件の責任を被告人宮入に押し付けようと計ったのである。

しかしながら、被告人宮入が現実に行った本件申告書の作成経過を、具に検討するとき、ケタ違い等の過失によるミスは別としても、与えられた資料をもとに、正しい内容の税務申告を、現実にしようとして、誠実に努力した跡が、歴然と、本件証拠上残されているところなのである。

原判決は、鈴木、および、渡部の責任逃れの言動の本質を深く考える事無く、本件逋脱についての被告人宮入の鈴木との「共謀」を、安直に認めて、本件関係証拠の吟味を放棄し、有罪の結論を、先に出し、これに反する事項について、的外れの認定等をなし、その結果、重大な事実誤認に陥ってしまっているのであって、この重大な誤認は、判決に影響を及ぼすことは明らかであり、これを放置することは、正義の許さざるところであるので、原判決を破棄し、提出ずみの関係各証拠を、充分に精査するなど、正しい審理を果たすために、東京高等裁判所に差し戻されるよう強く希望する。

最高検察庁検察官殿

平成7年(あ)第891号

上告趣意書の訂正

被告人 宮入本一

上記の者に対する法人税法違反被告事件についての上告趣意書中、次の点を訂正する。

平成7年11月27日

弁護人 五三雅彌

同 後山英五郎

最高裁判所

第一小法廷 御中

10頁の後に添付した「別表」(1)ないし(5)のうち、

1、(1)(インデックスに記載)のNo.1(右上角に記載)の表

2、(2)(インデックスに記載)のNo.1(右上角に記載)の表

3 (3)(インデックスに記載)のNo.1(右上角に記載)の表

4 (4)(インデックスに記載)のNo.1(右上角に記載)の表

上記各表の左下欄外の文言(コピーが不鮮明で判読できない)は、「○印 在庫になる物件」と書かれている。

5、(3)(インデックスに記載)のNo.3(右上角に記載)の表のうち、[「宮入試算表」の金額B]と記載された欄の最上部に記載された数字「192,131,000」には、橙色の色付けはされておりません(別紙表の色付けの通り)。

6、(3)(インデックスに記載)のNo.5(右上角に記載)の表のうち、[「宮入試算表」の金額B]と記載された欄の2番目に記載された数字「1,775,170,000」には、橙色の色付けはされておりません(別紙表の色付けの通り)。

以上

<省略>