大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第一小法廷 平成4(あ)131 判決

主 文

本件上告を棄却する。

理 由

弁護人堀良一、同安部尚志の上告趣意のうち、死刑に関して憲法違反をいう点は、

現行の死刑制度が憲法に違反しないことは当裁判所の判例(最高裁昭和二二年(れ)

第一一九号同二三年三月一二日大法廷判決・刑集二巻三号一九一頁、最高裁昭和二

四年新(れ)第三三五号同二六年四月一八日大法廷判決・刑集五巻五号九二三頁)

及びその趣旨に徴して明らかであるから、所論は理由がなく、被告人の捜査官に対

する自白に関して憲法三八条、三一条違反をいう点は、記録を調査しても、自白の

任意性を疑わせる証跡はないから、所論は前提を欠き、その余の点は、憲法違反及

び判例違反をいう点を含め、実質は単なる法令違反、事実誤認、量刑不当の主張で

あって、適法な上告理由に当たらない。

被告人本人の上告趣意のうち、迅速裁判の保障に反するとして憲法三七条一項違

反をいう点は、記録によると、被告人に対する起訴から原判決まで所論の年月を要

していることは、その指摘するとおりであるが、記録上うかがわれる諸般の事情を

総合して考えると、本件においては、憲法三七条一項に定める迅速な裁判の保障に

反する異常な事態に立ち至ったものといえないことは明らかである(最高裁昭和四

五年(あ)第一七〇〇号同四七年一二月二〇日大法廷判決・刑集二六巻一〇号六三

一頁参照)から、所論は理由がなく、その余の点は、憲法違反及び判例違反をいう

点を含め、実質は単なる法令違反、事実誤認の主張であって、適法な上告理由に当

たらない。

また、記録を調査しても、刑訴法四一一条を適用すべきものとは認められない(

記録によると、被害者四名の殺害はいずれも被告人が単独で行ったとする点を含め、

第一審判決に事実誤認はないとした原判断は、是認することができる。本件は、A

- 1 -

との内縁関係を解消するのやむなきに至った被告人が、これはAの実姉のBらの仕

打ちによるものであるとして同人らを恨み、深夜、出刃包丁を携えて同人方に押し

入り、就寝中の同人並びにその夫、母及び娘を次々と出刃包丁で突き刺して、右四

名を殺害したというものであって、本件犯行の罪質、動機、態様、結果に照らすと、

被告人の罪責は誠に重大であり、原判決が維持した第一審判決の死刑の科刑は、や

むを得ないものとして当裁判所も是認せざるを得ない。)。

よって、同法四一四条、三九六条、一八一条一項ただし書により、裁判官全員一

致の意見で、主文のとおり判決する。

検察官矢野収藏 公判出席

平成九年九月一一日

最高裁判所第一小法廷

裁判長裁判官 藤 井 正 雄

裁判官 小 野 幹 雄

裁判官 高 橋 久 子

裁判官 遠 藤 光 男

裁判官 井 嶋 一 友

- 2 -

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!