最高裁判所第一小法廷 昭和23年(れ)1258号 判決 1949年2月10日
主文
本件上告を棄却する。
理由
辯護人鍛冶利一、同星清の上告趣意第四點について。
しかし、食糧管理法施行令第一〇條の二にいわゆる生産者とは、同條制定の趣旨に照らし同條の適用については、名義上供出義務者たる生産者のみを言うものではなく、これと共に一家共同の仕事として実際上生産に從事する本人の妻のごときをも含むものと解するを相當とする。そして本件では所論倉治妻長谷川チン同伊太郎妻長谷川クマの各始末書には自分の家で穫った米を賣渡した旨の記載あり、また所論長四郎妻岡本スギの始末書には自分で作った米を闇賣りした旨の記載が存するから、原判決がこれらの始末書の各記載を被告人の同趣旨の供述と綜合して同人等を判示のごとく米の生産者と認定したからと言って所論のように證據によらず同人等を米の生産者なりと斷定した違法ありといえない。本論旨もその理由がない。(その他の判決理由は省略する。)
よって舊刑訴第四四六條に從い主文のとおり判決する。
この判決は裁判官全員の一致した意見である。
(裁判長裁判官 齋藤悠輔 裁判官 沢田竹治郎 裁判官 真野 毅 裁判官 岩松三郎)