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最高裁判所第一小法廷 昭和23年(れ)886号 判決 1948年12月09日

主文

本件上告を棄却する。

理由

被告人上告趣意について。

しかし、所論窃盗既遂の判示事実は原判決舉示の證據である第一審公判廷における被告人の判示同趣旨の供述記載と被害者の盗難被害始末書中の判示に照應する被害顛末の記載によってこれを肯認することができるから原判決には證據によらずして事実を認定した違法並びに被告人の自白だけで事実を認定した違法はない。そして憲法第三六條にいわゆる「残虐な刑罰」とは人道上残酷と認められる刑罰を意味するものであることは當裁判所の判例(昭和二二年(れ)第三二三號同二三年六月二三日大法廷判決)に示すとおりであるから原判決が記録上明白な前科五犯の被告人に對し僅かに懲役三年の刑に處したからといって、所論のような憲法違反の違法はない。なお假りに所論のごとく第一回公判期日と召喚状の送達との間に三日の猶豫期間を存しなかったとしても、原審第一回公判調書によれば、昭和二三年五月一〇日に開かれた本件公判期日には被告人も辯護人西川誠も出廷し何等異議なく答辯辯論していること明白である、それ故、假りに所論の點に違法があるとしても、原判決に影響を及ぼさないことは明らかであるから、上告の理由とはならない。論旨はすべて採るを得ない。

よって刑訴第四四六條によって主文のとおり判決する。

この判決は裁判官全員の一致した意見である。

(裁判長裁判官 沢田竹治郎 裁判官 真野毅 裁判官 齋藤悠輔 裁判官 岩松三郎)

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