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最高裁判所第一小法廷 昭和24年(れ)1056号 判決 1949年8月18日

主文

本件各上告を棄却する。

理由

被告人川上富志太弁護人佐々木良一、同正木亮、同坂野英雄上告趣意第一点について。

しかし原判決がその判示第一の一として所論摘示のように「大源武夫等が……杉山方を襲い……杉山組と同家附近で乱鬪をし……龜谷新八は川上屋内で侵入し來る杉山方の高森敏夫を薪て殴打し」と判示しているばかりでなく、その他原判決の冒頭文及び判示第一事実の冒頭文をその引用の証拠(第一審第二回公判調書中相被告人森本一男、同中桐啓二、同真田達男、同屋敷信雄、同朴一根、同中原俊二、同友森金一、同清水博美、第一審第三回公判調書中相被告人大源武夫、同龜谷新八、同高森敏夫等の各供述記載並に原審公判調書中相被告人福岡恒一、篠真一の各供述記載参照)に対照して判読すれば判示第一事実の一の実行行爲担当者数名が川上組を背景としてその威力を示して本件暴行等を行ったものであることが容易にうなづかれるのである。されば右各冒頭文において、本件実行行爲たる暴行等が相手方に多衆の威力を示してなされたものであることを判示しているものであるといえるから原判決には所論のような理由不備又は擬律錯誤の違法は存しない。

論旨はそれ故理由がない。

被告人野田計司弁護人小林右太郎上告趣意第二点について

しかし原判決が判示第三の事実中「正当の事由がないのに拘らず」と判示したのは、所論のごとく公安委員会の許可をうけるに拘らずこれを受けなかったという趣旨のことを判示したのではなく、單に本件所持罪の成立を阻止する事由がないのに拘らずという趣旨を念のために説明したにすぎないこと明らかであるから論旨前段は採ることができない。次に仮りに被告人が刑事巡査の求めに應じて即座に本件日本刀を同巡査に差出したとしても必ずしも被告人の本件所持罪の成立を阻却するものではないのであるから、原判決の正当事由ないのに拘らずとの判示は被告人が本件日本刀を刑事巡査の求に應じて引渡をしなかったことを指すのでないことはいうまでもないところである。從って被告人が刑事巡査に日本刀を引渡さなかったわけが被告人において同巡査が日本刀を提出すべく要求した理由を認識していなかったからだとしてもかかる認識の有無は本件所持罪の成否に関係のないことからである。そして本件所持罪の成立に必要な犯意は被告人が日本刀であることを認識しながら自己の実力支配内に置くを以って足るのであるから、その所持の動機時間等が所論のとおりであるとしても犯意の存否に消長を來すものではないといわなければならぬ。

されば原判決がその判示第三の事実を認定し、被告人を銃砲等所持禁止令に問擬したからといって原判決には所論のような罪とならない事実を認め、不法に法令を適用したのみならず犯意に関し審理不盡の違法あるものとはいうことができない。論旨は理由がない。(その他の判決理由は省略する)

よって旧刑訴四四六條に從い主文のとおり判決する。

この判決は裁判官全員の一致した意見である。

(裁判長裁判官 沢田竹治郎 裁判官 真野 毅 裁判官 斎藤悠輔 裁判官 岩松三郎)

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