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最高裁判所第一小法廷 昭和24年(新そ)1号 判決 1952年12月11日

主文

原判決が少年法五一条は不定期刑を科すべきものとした規定であると解釈した法律解釈の部分を破棄する。

理由

福岡地方裁判所飯塚支部は昭和二四年六月三〇日被告人広瀬勝に対し、同被告人は昭和六年一一月一〇日生れであって、当時まだ一八才に満たない少年であるが昭和二四年五月六日採銅所村農業協同組合事務所に到り奥田義勝と共謀の上金品を強奪しようと企て同事務所に就寝中の番人村上岩生の頭部を棍棒で強打し意識不明に陥れ更に風呂敷及び布切れで同人の眼や口を緊縛し、同所の金庫内に在った同組合所有の現金一六万七千三三円を強奪して強盗の目的をとげ前記村上の頭部その他に全治一〇日間を要する傷害を与えた旨の犯罪事実を認定し被告人の判示所為は刑法二四〇条前段、六〇条に該当するので所定刑中無期懲役刑を選択し尚お被告人は少年法二条一項六八条一項の少年であるから同法五一条を適用すると説示して被告人を懲役一〇年以上一五年以下に処する旨の判決を言渡し、その後上訴申立期間内に被告人からも検察官からも上訴の申立がなく同判決は昭和二四年七月一四日確定するに至ったものであることは記録上明らかなところである。ところが原審の適用した少年法五一条にいわゆる「一〇年以上一五年以下において懲役又は禁錮を科する」とは一〇年から一五年までの間の定期の懲役又は禁錮を科する趣旨の規定と解すべきことは多言を要しないところであるから、同条を適用して前期の不定期刑を科した原審判決は明らかに同条の解釈をあやまった結果であって、本件非常上告はその理由があるものといわなければならない。さりながら原審が同条を適用したのは正当であってその科刑が被告のために不利益なものとは断定することができないから、原裁判所が少年法五一条の解釈をあやまり同条は不定期刑を科することを規定したものであるとの法律上の見解部分に限りこれを破棄すべきものとする。

よって刑訴四五八条一号本文に従い裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 沢田竹治郎 裁判官 斎藤悠輔 裁判官 岩松三郎)

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