最高裁判所第一小法廷 昭和25年(あ)1333号 決定 1951年6月07日
主文
本件上告を棄却する。
理由
弁護人矢吹忠三同遠山丙市の上告趣意第一点について。
記録によれば、所論証人定方広司の証言内容は、原判決説示の如く第一審判決証拠説明に摘録されているところと同趣旨であることが認められる。そして第一審判決の事実認定はその挙示する証拠を綜合すればこれを肯認するに難くないのであって、この事実認定を是認した原判決にも所論のような違法はない。論旨は畢竟事実審の裁量権に属する事実の認定を非難するに帰し刑訴四〇五条所定の上告適法の理由に該当しない。
同第二点乃至第六点について。
所論は憲法違反を云為するけれどもその実質は単なる訴訟法違反を主張するに過ぎないものであるのみならず所論被告人の供述調書については被告人がこれを証拠とすることに同意していることが記録上明らかであるから刑訴三二六条によりいわゆる任意性調査に関する同三二五条の規定はその適用ないものといわなければならない。従ってこれが適用あることを前提とする所論は単なる訴訟法違反の問題としても採用に値しないのである。論旨はいずれも同四〇五条所定の上告理由に該当しない。なお本件では同四一一条を適用すべきものとは認められない。
よって同四一四条、三八六条一項三号により主文のとおり決定する。
この決定は裁判官全員一致の意見である。
(裁判長裁判官 岩松三郎 裁判官 沢田竹治郎 裁判官 真野 毅 裁判官 斎藤悠輔)