大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第一小法廷 昭和25年(し)24号 決定 1953年4月25日

主文

本件各特別抗告を棄却する。

理由

抗告の趣意第一について

本件証人尋問期日が被告人及び弁護人大道寺慶男に通知がなかったから憲法三七条二項に反するというのであるが、刑訴二二七条の証人尋問の場合には、必ずしも被告人及び弁護人の立会を要するものとはされておらず、かかる刑訴二二八条二項の規定が憲法三七条二項に違反しないことは、当裁判所大法廷の判例(判例集六巻六号八〇〇頁)であるから、右証人尋問に当って被告人、弁護人の何れか又はその双方或は弁護人中の何名に立会を許すかということも右証人尋問をする裁判官の裁量に属することであり、(しかも本件において被告人及び全弁護人が右各証人尋問に立ち会い反対尋問権を行使する機会を与えられている)またその通知に当りどの程度の準備の余裕を与えるかということも同様裁判官の裁量に属するものと解すべきであり、このような措置が何ら憲法三七条二項に反しないことは前記判例の趣旨に徴し明らかなところである。

同第二について

本件証人尋問請求には、刑訴二二七条二項の疎明がなく、また同条一項の要件もないから、憲法三七条二項に反するというのであるが、右証人尋問請求書に添附された同証人等の検察官に対する供述調書の記載により疎明があったことを認めるに足りるばかりでなく、その余は刑訴二二七条の要件たる事実の誤認を前提とする憲法違反の議論に止まり特別抗告適法の理由にならない。

よって刑訴四三四条、四二六条一項に従い裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 入江俊郎 裁判官 真野 毅 裁判官 斎藤悠輔 裁判官 岩松三郎)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例